「ルーちゃんっ! 帰ろ!」
「あ、ちょっと待て。完全に忘れていたことがあった。すぐ終わるだろうからついてくるかい?」
「良いよ! なになに? 友だち? 男の子? それともキャメルちゃんとお話しするの?」
「いや、もっとひどい悪夢みてェなヤツさ」
「?」
「ほら」
ルーシとパーラは廊下を歩き、三学年用の教室のひとつにたどり着く。
そして、そこへは、見えない壁があるかのように無視される新入生がいた。
「……ああ見ると哀れなもんだ。二五歳が一八歳と一緒に授業受けているんだもんな。しかも大学ではなく高校。惨めったらありゃしねェ」
「ん? なんかいったルーちゃん?」
「いや、なにも」
もっとも、当人は気にしていないようだった。なぜならば──。
「ちょっと待てアホ。なんで学校にスキットル持ってきているんだ? 没収だそんなもん」
「ルーシさん! それはあまりにも無慈悲過ぎます! ほら、このお酒さんだってワタシに飲まれたがっていて……」
「知らねェよ。そんなに飲みたきゃせめて家へ帰れ。きょうはウイスキーの七〇〇ミリ瓶飲んで良いからよ」
「ほ、本当でしゅか? 一気飲みしても良いと?」
「好きにしろ」
「やったー!!」
ヘーラーは一目散に走ってどこかへ消えていった。
「……酒で調教できる天使。笑い話しにもなりゃしねェ」
スキットルを学校に持ち込んだアホへのフォローが終わり、ルーシはパーラのもとへ戻っていく。
「る、ルーちゃん。いまの人って何者?」
「あー……親戚みてェなものだ。あまりにも頭が弱いから、ワタシが面倒を見ている。まァ気にすることはない。二度と会う必要もない」
ルーシの口調に並々ならぬなにか触れてはいけないという感覚を感じたのか、パーラは「そうなんだー……」と弱くいうだけだった。
「さて、カラオケ行くか。だが、三人だとすこし寂しいな。そのひとりは本当に来るのか?」
「うん! メントちゃんは絶対に来るよ! だって他に友だちいないし!」
──思ったことを口に出すのは良いことじゃないな。まァ、コイツにここまでいわれるんなら、やはりそういう人間なんだろう。
「そうかい。……あ、携帯がうるせェ。先にメリットとメントと合流しておいてくれ。これがメリットの連絡先だ」
「うん! 待ってるよ~!」
そんなわけでパーラをおいて、ルーシは学校の裏側へ向かう。目的は当然ニコチン・タール補給である。
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