*
ルーシとクール、ポールモールは、あらかじめ伝えておいたように、彼女が一般入試を終えるのを駐車場で待っていた。
「姉弟、煙草なんか吸うなよ。肺が真っ黒になるぜ?」
「良いんだよ。てか、おまえもどうせ吸っていただろ?」
「まーな。一八歳の誕生日でやめたけど」
「アニキは意外と健康に気を使ってますよね。クスリもやらないし」
「いつ死んだって構わねェが、苦しみながら死ぬのとあっさり死ぬとじゃ結構ちげえだろ? オレァいつか結婚して、妻とガキと孫に囲まれながら死にてェんだ」
「おまえに結婚は無理だろ」ルーシは苦笑いを浮かべる。
「わかってるさ。でも、夢くらい持ってねェと退屈だろ?」
「そうだな。ワタシは結婚なんてするつもりはねェが……あえていえば家族がほしい。ある意味似通っているかもな」
まさか性別が変わるとは思ってなかった。まさか一〇歳児になるとは思ってなかった。
だが、本質はなにも変わっていない。
そんな与太話をしていると、疲れ切った表情の女が帰ってきた。
「ご苦労。飲み行くか?」
「……皆さん、ワタシの名前を覚えましたか?」
「あ?」三人は揃って同じ言葉を発する。
「こんな扱いでも、せめて名前だけでも覚えてくれていたら、ワタシもすこしだけ頑張れる気がします。だからいってください。ワタシの名前を」
三人はニヤッと笑い、そろって首をかしげる。
そして、最初からこういうのが決まっていたかのように同じタイミングでいう。
「おまえ、名前なんだっけ?」
ヘーラーは首をガクッと落とし、どこかへ去っていった。
ルーシ、ヘーラー、クール、ポールモール、キャメル……そして新たな出会い。物語はまだまだ奇妙かつキテレツに、そして決して彼らを退屈させないように動き続ける。それだけは決定事項だ。
「それじゃま、行こうぜ。おまえら」
「おう!!」
「ああ」
「ワタシは天使なのに……」
──転移してから一ヶ月くらい。悪くねェな。人生ってのは最高に愉快だ。オレはきっとそういう星のもとに生まれてきたんだな。絶対に退屈しねェようにな。クソみてェな経験も、おもしれェ経験も、すべてが最強で最高だ。これがオレの人生だ。誰にも文句はいわせねェ!!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!