金鷲の雷槌~もしも最強の無法者が銀髪碧眼美幼女になったら~

金!! 暴力!! SEX!! の無法者が銀髪碧眼幼女に……!?
ひがしやま
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第一四話 兄を想って毎日自慰行為を……

公開日時: 2022年4月15日(金) 01:49
更新日時: 2022年4月15日(金) 01:50
文字数:4,110

 そんなことを話していたら、携帯ショップの前へたどり着いた。クールは意気消沈としながら、キャメルの後ろにいる護衛を見て、キャメルやルーシへ話しかける前に彼らへいう。


「おい……チクるんじゃねェぞ? 何度もいうが、オレァ親父とおふくろには会いたくねェんだ。ガチでな。おまえらはキャメルの護衛である以前に、一応オレの使用人でもあるはずだ。わかってるよな?」


「坊ちゃまのことは隠しておきますよ。当然娘様のことも。ですが、キャメルお嬢様にはしっかりと向き合ってあげてください。毎晩坊ちゃまの写真を見ては自慰行為を──」


「わーわーわーわー!! それ以上いわないで!!」


 ……どういう家庭だよ。アニキは家族からバックレるし、妹はアニキとヤることを想像して×××をいじくり回すし。オレだって元は富豪階級の生まれだが、こんなに歪んでなかったぞ? コイツら異常過ぎやしないか?


「る、ルーシちゃんは、自慰行為なんて言葉知らないわよね?」


「ええ。まったく知りませんよ」嫌味な笑みを浮かべる。


 キャメルは真っ赤になった顔のまま、どこかへ去っていった。忙しい叔母である。


「よし、おまえらはキャメルの護衛にあたれ。オレは親子水入らずで携帯買ってくるからよ」


「承知しました」


 そしてルーシとクールはようやくふたりになれた。


「……ああ、疲れたぜ。それにしても、おまえは罪なヤツだな。キャメルがあんなに歪んだ愛情を抱くほど放置していたんだろ? ワタシだったら親からバックレても、たまには妹へメッセージのひとつやふたつくらい送るがな?」


「しゃーねェだろ。正直怖ェんだよ。ガキのころから、幼い妹がお兄ちゃん大好き、結婚する~っていうような態度じゃなかったしな。あんときからアイツ、オレに恋愛感情を抱いてたみたいだし、ガチでめちゃくちゃ怖ェんだ。でも、おまえと接してるときはちゃんとお姉ちゃんらしいところ見せてたろ?」


「そうかい? 服のセンスはガキみてェを通り越して意味不明だったし、すこしいじってやったら学校にも好きな男がいるともいっていたしな。あれじゃ、どっちが姉かわからねェよ」


 ある程度素に近い(ただし性別と年齢が違う)状態で話せるようになったルーシは、キャメルの兄であるクールへ愚痴を投げる。彼は苦笑いを浮かべるしかなかった。


 しかし、

「好きな子がいるのか。そりゃ良いことだ。オレや姉弟きょうだいみたいな無法者は、まともに人を愛せねェからな。健全に成長してるようで大変結構。なんだかんだ嬉しいよ」

 兄らしいこともいう。


「ま、おまえが嬉しいと思うんだったらそれで良い。とりあえずキャメルがいねェうちに私用携帯を買っちまおう」


「オレ、金持ってねェぞ? さっき賭け事してポーちゃんからもらった上納金全部溶かしちまった」


「ワタシは持っているだろ? 三〇万メニーをよ。まさか幼女の持っているカバンのなかに、札束と煙草しか入っていねェとは誰も思わねェし、ある意味一番安全かもな?」


「拳銃はどこに入れてんだ?」


 ルーシはスカートをすこしめくる。そこには、クールとの最後の撃ち合いで使用した安っぽい拳銃があった。


「なるほど。男だったらシャツとベルトの間に挟めば良いが、女の場合はこうするしかねェもんな」


「ああ、慣れているからなんとも思わんがね」


「けどよォ、さすがにこんな安いハンドガンじゃ、オレたちのボスとして格好がつかねェな。ポーちゃんの武器庫から良いのをもらってみれば?」


「そうだな。だが、まずは携帯がほしい」


 そんなわけでふたりの無法者は携帯ショップへと入っていく。


「おお……」


 ルーシは驚きを隠せなかった。近未来異世界、と自身で称したが、実際にここまで発展しているとは思ってもなかった。

 まず前世で見たような携帯──スマートフォンは奥のほうへ追いやられており、子どもか年寄りしか使わないようなポジションに見える。

 もっとも目立つ場所には、メガネのような物体と、腕時計のようなもの、全身が透明になっている携帯、そして実態はあれど折り畳める携帯や、丸く丸めた紙のようなものなど、到底二〇二一年日本、いや、世界を見てもあり得なかったものが置かれていた。


「最近の携帯はわけわかんねェ。オレは昔ながらのヤツを使ってるけど……姉弟、いや、ルーシはどうする?」


「そうだね……」


 どれも興味が湧くが、なかでも腕時計のようなものと紙のようなものに心を奪われた。ルーシは腕時計型の携帯を右腕につけ、ホロライトのように腕へ画面が映し出されるのを確認した。


「……時計自体にも機能があって、拡張として腕へ画面をつけているのか。おもしれェアイデアだ。コイツは買っちまうか」


 予算は潤沢だ。この携帯の値段は一〇〇〇メニー。日本円換算で一〇万円ほどである。

 そしてルーシは紙のような携帯へも触れる。


「……薄型が流行ってはいたが、ここまで薄いとはな。しかもかなり頑丈そうだ。引っ張ると画面が出てくるのか。しまうときはただの筒。こりゃ良い。これも買おう」


 こちらは一二〇〇メニー。一二万円ほどだ。

 併せて二二〇〇メニー。当然一括で支払えるし、クールの子分が急ごしらえで作った偽装身分証明書にも問題はないようなので、このまま買ってしまおう。


「お父様、これとこれ買って」ルーシはさりげなく金をクールへ渡す。


「わかった。さっさと契約を済ませよう」


 *


 ルーシは新しいものが大好きだ。古いものに価値がないとはいわないが、身につけるもの──携帯電話や腕時計、服や靴は常に新作を買う。新作は旧作の悪いところを改善し、進化させているからだ。

 そんなわけで、まさしく一〇歳の幼女らしく、ルーシは新しく買った携帯ふたつをいじくり回す。


「すげェな。ロスト・エンジェルスが発展しているってのは知っていたが、ここまでとはな」


「オレは海外に行ったことねェから知らんが、まァ発展してるんじゃねェか? 海外のニュースの写真とかたまに見るけど、正直フランソワやブリタニアには行きたくねェなって思うしよ」


 大国をはるかに凌駕する、いや、二〇二〇年代の一〇~二〇年先を進むこの国では、ルーシは退屈しなさそうである。


「さて、携帯は買った。あとは髪切って服買うだけだな」


「キャメルと服買わなかったのか?」


「ゴスロリなんて常時着られると思うか? ワタシは思わんな」


「我が妹ながら、変な趣味してんなァ……」


「というわけだ。キャメルが姿を見せねェうちに服を揃えよう。この国は寒いから、暖かい服に限るな」


 *


 要するに、全身が隠れる服である。そしてブラジャーと下着も必要だ。


「クール、いくら父親でも娘のサイズを測るのにいたらまずい。すこし待っていてくれ」


「姉弟の貧相な身体見たって仕方ねェしな」


 そんなわけでルーシはスリーサイズを測る。店員に話しかける間でもない。個室に入り、服を脱げば、勝手に身体へ適した服装を出してくれるらしい。


「バストが八〇。ウエストが五六。ヒップが七五、か。思ったより胸がでけェな。キャメルよりでかいんじゃねェか?」


 ルーシが知る限り、バストが八〇ならばBカップといったところだろうか。

 別に男どもの劣情を呼ぶ気もないので、体型はどうだって良い。

 しかし、またキャメルをいじる口実ができたことに、ルーシは鼻で笑う。


「だが、女もんのブラジャーとか買ったことねェな。さっそく携帯の出番だ」


 ルーシは腕時計型の携帯を起動する。電源ボタンに指紋認証センサーがついており、起動するのに一秒とかからない。

 だが腕時計のサイズでは小さすぎるので、腕に情報を載せる。こうなれば、おおむね普通のスマートフォンを使っているのと変わりはない。服の上でもまったく歪まず表示されるのはすごいが。


「どれどれ……。トップバスト? アンダーバスト? 呼び方? もっと簡略化できねェのかよ。女って面倒だな」


 仕方がないので、ルーシは個室の電光掲示板にふれる。そこへは、ブラジャーとパンツ、服がいくつか提示されていた。


「高けェほうが頑丈だろうが、もしかしたら成長期が来るかもしれねェからな。あのポンコツ天使がどのようにオレの身体をいじったのかは知らねェが、ここはある程度値段の安いもんにしておくか」


 とはいえ、このデパートは富裕層御用達である。安いブラジャーでも、平然と一〇〇メニーを超える。金は持っているものの、なんともバカバカしい気持ちにもなる。一〇歳児のブラジャーなんて大半の人間は気にしないだろうに。


「……ま、愚痴ばかりいってられねェ。さっさと買うもん選ぼう」


 前世、ルーシにも妹がいた。しかし、買い物に行ったらルーシの金で適当な服や下着を買っていた。だから自分で女物の服を選ぶという機会ははじめてだ。奇怪な気分になるが、受け入れるほかないだろう。


「総計……一三五〇メニーか。なになに。店員がもう用意してあって、あとは買うだけだと。便利でなによりだ」


 この刺青まみれの身体もどうにかしないとな。ほとんど全部を改ざんしたくせに、刺青は前世とまったく変わっていねェ。学生やるんなら、墨は見られねェほうが色々と楽だ。

 

「ま、全部長袖と長いスカート、長いパンツだ。バレることはないだろう」


 気候が寒い国で助かっているところがある。現在は三月だが、最高気温が一〇度行くか行かないか程度なので、こういった長めで防寒性のある服を着ている人は多い。あまり一〇歳児らしくない格好かもしれない──一六歳のキャメルの格好を見れば余計に子どもらしからぬ格好だが、大人ぶる幼女ということにでもしておけば良い。


「一三五〇メニーです」


「はい」


 カバンから一〇〇メニー札を一四枚取り出す。店員はあからさまに驚いていたが、ルーシは気にも留めない。


「え、えっと、五〇メニーのお返しです。ありがとうございました」


「いえいえ」


 もう煙草が吸いたい。まるでやったことのない行動をした所為か、脳内がニコチンとタールを求めている。


「……喫煙所へ行くか。つか、クールはどこ行った?」


 自由な男だ。時間にして一〇分も経っていないのに、彼はどこにもいなかった。一応携帯を購入した際にクールの表での電話番号は聞いてあるので、特に問題はない。


「たぶんキャメルもいねェだろ。髪切ってスーツ仕立てる前に一服しておくか」

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