ここは、未来の世界。
　ザックという男性が、不老不死の薬をついに完成させた。
　
　全人類は、歓喜した。
　
　皆が望んでいた永遠の命。
　
　人生が永遠になったことで、研究に勤しんだり、趣味に時間を使う者もいた。
　
　人口爆発による飢餓などの問題が発生した。
最初から、不老不死の世界が上手くいったわけでは、ない。
　
　しかし、研究者達も永遠の命を得たおかげで、多くの時間をそれらの問題にも研究に費やすことができた。
　
　特に、ザックは、様々な人々の要望に応え、若返りの薬、あらゆる病気や怪我を治す薬も開発して、皆の幸せに貢献した。
　
　200年後、ルイという若い男性の研究者が現れた。
その研究者は、人口の増加を不安に感じていた。
　ーこのままでは、地球が人類で溢れてしまうー
　
　そこで、火星や月に人間を移住させる研究を始めた。
　確かに、人類は、人口の増加に少し窮屈さを感じ始めていた。
　
　ルイの研究は、成功した。
火星や月に、多くの人類を移動させる手段から、食糧、住居、地球と同じように過ごせる環境など全てを整えた。
　不思議と火星や月に行く希望者を募ると、人生の成功者が多かった。
　自分に自信がある人々だからか、新しい世界を見てみたい好奇心旺盛な人々だからか。
　
　おかげで、地球の人々も火星や月に居る人々も幸せになれた。
　
　全人類は、歓喜した。
　
　しかし、面白く思わなかった人間が１人いた。
そう、今まで、一番、地位と名誉を得ていた人物、ザックだ。
　
　ザックは、不老不死の薬を作る材料の植物と共に偶発的に研究でできたあるものをずっと、隠し持っていた。
　
　それは、不老不死を止める薬を作ることができる毒草の種である。
　
　ザックは、その種から研究を始めた。
人類の不老不死を止める薬を……。
　
　研究は、上手くいった。
　
　全人類が、ザックの嘘に騙された。
なにせ、元々、人類は、不老不死の薬を飲み続けなければならず、そのことで命を保っていたから。
　
　人々は、外見の変わらないその薬を不老不死の薬だと思って、ただ飲んだだけだった。
　
　全人類は、老いたり、病気になったり、怪我をしたりして、亡くなっていった。
　
　世界は、産まれる人、亡くなる人がいて、続いていった。
　
　もちろん、ザック自身も、自暴自棄になったのか、全人類に対する重い責任を感じたのか、不老不死を止める薬を飲んだ。
　
　死ぬ時、ザックは、思った。
　ー不老不死の薬を作った私。不老不死を止める薬を作った私。確かに2人いた。どちらが正しい私か。
それは、死ぬ直前の私にもわからないー
　
　　　　　　　　了

種 未来の2人

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