【第三部開始】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。

夢見真由利
夢見真由利

皇国 今までとこれからのゲシュマック商会

公開日時: 2022年12月19日(月) 07:28
文字数:2,205

 アーヴェントルクから帰国して暫く、色々と厳しい会見や仕事が続いていた。

 皇王陛下のお説教とか、神殿の礼拝とか。

 だから


「お帰りなさいませ。マリカ様。

 御無事のお帰り、心からお祝い申し上げます」

「無事戻りました。ガルフ。色々と心配をかけてごめんなさいね」

「いえ、俺の方こそ私情を取引に交えたことで、マリカ様にご迷惑をおかけしたことを反省しております」


 週開け木の曜日。

 久しぶりのガルフ、リードさんを交えたゲシュマック商会との打ち合わせは何よりの癒しだ。


「ああ、みんなと一緒は和みます。アーヴェントルクとか神殿とか皇王陛下とか、気が休まらなかったから」


 ゲシュマック商会貴族店舗に呼ぶことになったので、ラールさんも一緒。リオンにフェイ。アルもいる。

 カマラとミリアソリスもいるけど。

 去年の今頃、みんなで大祭の準備をしたり食品素材の確保に手を売ったり、セリーナやアルを救出する為に大騒ぎしていた頃を思い出す。

 時間が過ぎるのは早いものだと思う。


「アーヴェントルクの商取引については、既に報告が行っているかと思います。

 オルトザム商会にも一翼を任せる事になりましたが……」

「適切な商取引を行ってくれるのであれば、問題はありません。

 他の商会と区別することなく、後は今後の取引内容を見て継続内容を判断します」

「解りました。よろしくお願いします」


 ガルフが今回の件で、色々と恨みや思う所があるだろうオルトザム商会との関係にけじめをつける事ができたのなら、いいと思う。

 アルも報告しているだろうし私からは余計な口出しはしない。

 オルトザム商会の商会長も意外に小者だったし、ガルフが気にする価値も無いからね。



「そういえば、大祭の売り上げはどうでしたか?

 大祭後は本当にドタバタして話を聞く機会もありませんでしたが……」

「勿論、即日完売です。毎年期待度が上がっているのでなかなかにプレッシャーですが」

「それは良かった。

 確か今年は酒と醤油を使ったのでしたよね?」

「はい。今回はエルディランドから輸入してきた『サケ』を主軸にリアのおむすびと、鶏肉の串焼きを料理を出しました。

 グルケの塩漬けを付け合わせにしたのですが、これも好評価で。

 麦酒とは違う酒精は、麦酒程の爆発的な反応はありませんでしたが、酒精の味を覚え始めた者達は良い印象をもったようです」

「ゲシュマック商会本店の大祭屋台の料理には各国の移動商人達も注目していて、今年は徹夜組も出たとか」


 ガルフの言葉をリードさんとアルが補足してくれる。

 目端の利く商人達にとってゲシュマック商会の大祭屋台店舗の商品を食べるのが一種のステータスになっているらしい。

 今後の流行などを占う意味でも並ぶ価値はあると思う。


「秋の大祭の時には、アーヴェントルクのチーズか、フリュッスカイトのオリーブオイルを使ってみましょうか?

 屋台向けのレシピを何か用意します」


 チーズフォンデュやアヒージョは間違いなく美味しいけれど、屋台向きではない。

 いっそ宴で出した豚の丸焼きで行ってみるかな……。 


「マリカ様にはいつも各国の特産品や、最新のレシピを、第一に任せて下さり心から感謝しております。

 今年は麦や他の野菜類の生育もいつになくいいそうです。

『精霊神』の復活がなったおかげかもしれません」

「アルケディウスの『精霊神』様は植物を司るお方です。大地に加護を下さるそうですから、今後も期待できると思います。

『食』が世界に広がり、価値が高まれば高まるほど、適切な食品流通が不可欠です。

 悪どい商人が、食料品の流通を独占したりすることがあっては困るので、今後もゲシュマック商会の活躍に期待しています」

「必ずや、ご期待に沿ってご覧に入れましょう」


 胸を叩くガルフが頼もしい。

 アルケディウスの食については全面的に任せておける。


 あ、そうだ。


「ガルフ。相談があるのですけれど」

「なんでしょうか?」

「ゲシュマック商会は現在、食料品扱いで精一杯ですよね」

「そうですね。ちょっと外の業種に手を出す余裕はなさそうです」

「では、新しい商会を作る、もしくは信頼できる商会を択ぶのは難しいですか?」

「何故です?」

「今年の夏以降に、エルディランドから製紙加工の技術が入って来る見込みなのです。

 印刷製本は既に請け負っている商会がありますから、そちらを優先するにしても紙の製造販売を任せられる商会が欲しくって……」

「製紙、ですか。それは大きな仕事ですね」

「誰か、信頼できる人はいませんか?」


 大貴族達に話をもっていけば、我先にと手を上げるだろうけれど、できれば大きな商圏になるのが解り切っているので信頼できる人に託したい。


「リード、アルは手放せない。ラールは無理。

 ジェイド達も今の仕事はこなせるようになってきていますが、新事業となるとなかなか……」


 うーん、と本気で考え込むガルフ。


「少し、時間を頂けますか?

 ゲシュマック商会も少しずつ人材は育っていますが、そこまで大きな事業ならば相応の実力が無いと扱いきれないでしょうから……」

「お願いします」


 ゲシュマック商会で拾われた子どもは今、全員が幹部候補生として店舗や重要職を任されている。

 その後に続く第二世代も育ちつつあるそうなので期待したいかな。



 後、細かい事を打ち合わせて一通り終了。

 の筈だったのだけれど……。

 打ち合わせ終了を待つかのように話しかけて来たリードさんの言葉で、第二ラウンドが開始される。


「マリカ様。お忘れ物の件はどうなさいますか?」

 


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