各王家には古の時代『精霊神』が人間の姿を借りて降り下った時に残したと言われる『世界地図』が残っていた。
かなり正確なメルカトル風地図で、長い年月の間に繰り返し写し取られ、移動商人などの命綱となっている。
(希少ではあるが金貨数枚出す覚悟があれば、普通に手に入る品)
その地図の時代から、この星の国家は七つであり、後に大聖都が加わって八国となった。
●大聖都 ルペア・カディナ
大陸の中央に位置する直径200km程の円形の国。
正確にはそのさらに中央の半径10kmくらいの神殿都市『大神殿』がルペア・カディナで、大聖都の心臓部。
外側は神殿で働く者やその家族、神殿で必要とされるものを作る一般市民が居住する区画で大聖都の神官たちからは一段低く見られている。
広い葡萄畑があり、酒蔵も沢山ある。
魔王降臨から討伐までの数百年の間、各国の王族貴族が学ぶ学び舎が大聖都にあった。
現在、その施設が毎年の正月に行われる国王会議の宿舎に使われている。
○神官長 フェデリクス・アルディクス
全ての神官を束ねる最高権力者。ということになっている。
白髪に緑の瞳。長いひげを顎に蓄えた老人。
『神』に絶対の忠誠を誓っており、その命令には絶対服従している。
命令を為し遂げる為には、脅迫犯罪も辞さない。
政治的手腕もなかなかのもので、各国王も一目置く存在。
○エリクス
勇者の転生 と世界に発表された少年。
大聖都の護衛騎士団の副団長をしていたが今は一兵卒の立場で修行をやり直している。
読心の『能力』があり、一度ライオット皇子の心を読んであだ名で呼んだ為大激怒を喰らい、退路を絶たれてしまった。
当然、偽物。剣の腕も平均レベルの子どもよりは上だが……程度。
大聖都は偽物であることを理解してエレシウスを祀り上げている様子。
○レドウニツェ
大聖都の護衛騎士団長。
下級の神官クラスの精霊術を使う事ができる。
神官長の直属で『神』への忠誠心は高い。
○グスターティオ
大神殿の料理長。現在はアルケディウスで料理修行中。
○エレシウス
8歳くらいの外見をした金髪、碧瞳の少年。
第三部開始時点で行方不明になっているとのこと。
●火国 プラーミァ王国
大陸最南に位置する王国。位置的には一番上の花びらがアルケディウスなら、その反対側の花びらがプラーミァ。
南国、ハワイ、インドにかなり近い気候。一年を通して暑い。
かなり暑い。年間を通して雪が降る事も稀。
胡椒を始めとする各種香辛料と砂糖の輸出が主な収入源。最近はそれにカカオが加わった。
戦士の国、と自称しており実際個々の戦士の実力はかなり高い。
遊びの戦も手加減をあまりしないので隣国からは好かれていないが、勝率は七国一。
騎士になる為には厳しい資格試験があり、最終的には国王直々に実力を確認される。
その為アルケディウスのように、毎年一人騎士貴族が生まれるのではなく、実力に相応しい者が現れない時には何年も合格者が出ない時もある。
王都はピエラポリス。王城はアイトリア宮殿と呼ばれている。
○国王 ベフェルティルング
第三部開始時点で一番若い国王(不老不死開始時点で二十七歳)。
五百年国を統治しているが未だに重臣からも、各国王からも若造扱いされるのが悩みの種。
薄茶色の髪、褐色の肌、紅の瞳。
身長190cmの若々しい青年。
文武に秀で統治能力も高く、国民からも精霊からも愛されている。
年の離れた(十二歳下の)妹、ティラトリーツェを溺愛していた。
従弟のライオットに嫁ぐと言い出した時にはライオットの実力を認めつつも大反対したが、最終的には押し切られた形。
それを今も少し後悔している。
○王妃 オルファリア
大貴族の娘で不老不死前の王子時代から国王を支える賢婦人。
ローズブラウンの髪、茶色の瞳。
暴走しがちな国王にブレーキをかけられる人。
○王太后 ディアノイリア
柔らかいクリームを宿した白髪、水色の瞳。
国の最高位の女性で前国王の従妹。
現在は王宮の奥から基本的には出てこないが、マリカの訪問以後は『精霊神』の巫女と以前よりは表に顔を出すようになった。
大柄な人物の多いプラーミァではかなり小さい部類に入るが、騎士資格を持つ戦士でもある。
○王子(王太子)グランダルフィ
茶色の髪、褐色の肌、火色の瞳
父親瓜二つのプラーミァの王子。
不老不死時代の開始時は十歳で、流石に不老不死を得るのは早いということで約十年子どものまま混乱の時代を生きる。
戦士としての実力は高かったが父王と同じ理由で臣下からは低く見られていた。
現在は王太子として王の名代として実力を発揮している。
○王子妃 フィリアトゥリス
金髪に近い明るい色の茶髪に紅い瞳。
大貴族の娘。
不老不死開始時点では五歳でグランダルフィ王子と一緒に不老不死を得るまで子どもとして混乱の時代を生きた。
優しげに見えるが騎士資格持ちの実力者。
プラーミァ王国臣下
○カーンダヴィット
ベフェルティルング国王の腹心にして右腕。
戦士国プラーミァの騎士団長を務める実力者。
国王の幼馴染でもあり、直接の意見なども許されている。
○コリーヌ
ベフェルティルング王とティラトリーツェの乳母にして産婆。
元プラーミァの女官長でもある。ミーティラの母親。
現在はアルケディウスで国費留学生第一号として料理を学んでいる。
○クヴァール
元プラーミァの王宮魔術師
現在は弟子に杖を譲り、彼の指導と今後保護される子ども達の教育に当たることになっている。
○ウォル
現プラーミァの王宮魔術師見習い
元は大貴族の使用人で逃げ出して下町でスリをしていたところを王宮に保護される。
○ペトロザウル
プラーミァの大貴族子弟。
父親が今も健在なので大きな役職などに付けず同世代でありながら、国王しているベフェルティルングを下に見ている。
マリカを手に入れ再起しようと図ったが逆に痛い目にあうことになる。
マクレーン商会
プラーミァ第一位の服飾商
○カールスウェイ
プラーミァの商業ギルド長。
子どもを甘く見てマリカに絞られる。
フロレスタ商会
プラーミァの木工商 現在はプラーミァの食料品扱い代表
○マーカム
先見の明のある商人
○ハイファ
マーカムの養子 もと路地裏出身 バニラの発見者
●『精霊神』アーレリオス
マリカが最初に出会った『精霊神』
燃えるような赤毛と火色の瞳 ベフェルティルング国王をさらに美化したような感じの男性神。
火、熱、炎を司り、炎の精霊にはその命令は絶対。
見かけによらず、気の利く性格でマリカに自らの端末である精霊獣を与えて様子を見守っている。
●精霊獣 ピュール
火の『精霊神』アーレリオスがくれた彼の端末で、外界における手足。
外見は白いアンゴラうさぎだが額の真ん中に紅いルビーのような宝石が付いている。
まったく同じ外見の精霊獣がプラーミァにもいる。
普段はオートパイロットで獣らしく動いているが、アーレリオスはこの端末の目を借りて外界の様子を見る事ができ、マリカや他の関係者と話したり力を使うことができる。
本人は言わないが結構力を使うので、特に必要のない時には寝ているかこっそり台所などで火の精霊の力をむしゃむしゃしている。
●地国 エルディランド
日本や中国とよく似た気候の温帯湿潤エリア。
文化も他の国とは大きく違い中国ベースに日本を混ぜたような感じ。
元は農業国で、食が失われてからは国力を落していたが、不老不死時代最大の発明と言われる印刷技術の開発で力を取り戻し、食の復活でさらに注目されるようになった。
七国で唯一 大貴族制ではなく『王子』という制度を用いていて実力のある人物を身分に関わらず登用している。
○大王 ホワンディオ
大王と書いて『おおきみ』と読む。
白髪、黒い瞳、白いひげ。細身のサンタクロースのような外見をもつ。
七国王の中でも最年長。
高いカリスマで国を導いてきたが、不老不死開始時点ですでに70歳を超えており王子達に国務をほぼ任せ、隠遁に近い生活をしていた。
マリカの来訪後、正式に引退を表明した。
○王妃 メイレン
かつての第三王子(アルケディウスでいうと大貴族第一位)の娘で大王母と呼ばれる前王妃の死後、後添いとして結婚した。
40歳近く年の離れており、大王の秘書兼介護役の意味合いが強い。
○第一王子 スーダイ
黒髪、黒い瞳 良く言えば恰幅の良い、悪く言えば太った男性。
不老不死はそのままの外見が固定されるので、不老不死を得た時点で太っている人は太っているままになってしまう。
その弊害を一身に受けた人。
王子としての実力はそれなり以上にあるが、永遠の王位継承者と下に見られたあげく近年台頭してきた『カイトの一族』に仕事を取られ拗ねていた。
紆余曲折の果て復活した『精霊神』の祝福を得て不老不死後、初めての新王となる予定。
○ウーシン
スーダイ王子の腹心にして右腕。
戦士としての腕前は人間としては上位。
○シュンシ―
スーダイ王子抱えの魔術師見習いの少女。不老不死を得ていないので魔術師としては将来有望。
杖の属性から大地に関する術が得意。
元は下町の少女で地獄のようなところから救い上げてくれたスーダイ王子を慕っている。
○第二王子 グアン
数十年前にエルディランドに現れた天才『カイト』の直弟子で彼が集めた子ども達と、彼の発案で始まった仕事を行う者の集団『一族』の長。
カイトの一族は、エルディランドに印刷業と共に農業加工業も齎し、酒、醤油が近年注目を集めている。
○ユン
第二王子 グアンの子でカイトの一族。十六歳。成人したばかりだが不老不死は得ていない。
エルディランドの師長をしており、数年のうちに王子になるのではないかと言われている将来有望人物。
大君や王子の信頼も厚い。
シービン商会
カイトの一族で第十二王子が指揮する醤油、酒の直販を行う商会。
マオシェン商会
製紙、印刷を預かる商会 商会長 ダーダンはカイトの一族に支援を行った先見の明がある商人。
●『精霊神』エーベロイス
茶髪 金茶の瞳
逞しい体格の『地』の精霊神。現在は精霊獣と共に新大王となるスーダイを守護している。
●カイト(故人)
異世界転生者 片桐海斗がエルディランドで生活した時の名。
元日本人でエルディランドに製紙印刷と、醤油、酒の作り方を伝えた。
六十五歳で死ぬまで独身だったが、行き場の無い子どもを拾い育て上げ、一族の基礎を作り上げた。
●クラージュ
元精霊国 エルトゥリアの騎士団長。『神』と『精霊の貴人』の会談時に護衛として赴いたがだまし討ちに合い死亡。
その後『星』との契約により転生者となった。
現在は数度の転生を経てエルディランドの騎士貴族 ユンとなってマリカに再度の忠誠を誓う。
近日中にエルディランドからアルケディウスに移動予定。
●夜国 アーヴェントルク
七国中唯一の冬国と言われ、寒さがとても厳しい。
気候はほぼスイスと同じ、耕地の少ない貧しい土地だが鉱山から産出される鉱石と牧羊などで生計を立てている。
不老不死発生前は食料を他国に頼る貧しい国で傭兵や出稼ぎに出る者も多かった。
美しい風景は訪れた人物の心に忘れられない輝きを刻む。
王都はオルドロラス 王城はヘイエングラーニツェ城 王都の中に丘があってその丘に城が立っている。
○皇帝 ザビドトゥーリス
アーヴェントルクを五百年支配する皇帝。
兄王までは「王国」であったがザビドトゥーリスが戴冠した時『傭兵皇帝』を名乗り『皇家』と改められた。
文武両道に秀で、五百年の間に貧乏国と言われたアーヴェントルクを七国最強と言われる国力のある国にした。
定例の『戦』の提案者でもある。
兄王達を毒殺し、皇帝となった簒奪者だと国内からも国外からも思われている。
○皇妃 キリアトゥーレ
従妹にあたる国王の傍系の姫。
足が不自由で歩けることは歩けるが踊りなどはできない。
その為、唯一の娘であり世界中から崇められる『聖なる乙女』アンヌティーレを己の分身として愛情を注いで育てた。
一方で自分が『聖なる乙女』として認められなかったことに今も強い恨みを抱いている。
○皇子 ヴェートリッヒ
アーヴェントルクの第一皇子 三人の弟がいるが全員妾腹なので唯一の皇子として尊重されている。
不老不死前、一時的ではあるが魔王討伐の勇者パーティーに加わり、助けた事もある弓の名手にして武術の達人。
皇子としての職務も過不足なくこなしているが、一方で女遊びが激しく放蕩者の声も聞かれる。
二人の妻は十五人いる大貴族の三位と五位の娘。
実はとある思いを持ち、ワザとうましか皇子のフリをしていた。
『精霊神』の復活後はアーヴェントルクの神殿長を兼任し、皇帝位を本格的に狙うと皇帝自身に宣戦布告した。
○第一皇子妃 ポルタルヴァ
大貴族第三位ローリンドル伯爵 ラウクシェルドの娘
領地は山岳部で牧畜を首として皮革、羊毛を算出していた。
見かけは上品だが牧場育ちでもあり、逞しい所もある。
○第二皇子妃 アザーリエ
大貴族第五位 ミルトブール伯爵 マルティニークの娘
領地は山岳部で美しい花が育つ(逆に言えば花しか育たない)ので養蜂が盛ん。
蜜蝋燭は最高級品で需要が高い。マリカの来訪であまり重要視されていなかった蜂蜜も高く売れる事になり喜んでいる。
皇子を挟み皇子妃二人の仲は良くないが、皇子を助け支えるということでは同意しておりいざという時は力を合わせる。
○第一皇女 アンヌティーレ
長い間『神』の巫女。ただ一人の『聖なる乙女』として世界中の敬意を集めて来た皇女。
元々精霊に愛される性格をしていたが、母親の教育と『神』の巫女としての歪んだ職務で色々と捻くれ曲がってしまった。
『神』の神事は人々の力を集め、『神』に送ることがある。
他者の力を吸い取り我が物とする快感に目覚めてしまった彼女は、神事以外にも自分の為に他者の力を欲しがるようになった。
力を吸い取る事で、その人物は気力を失い、一時的に憔悴する。
その時に暗示をかけることで自分の意のままに操れることに気付き、以降彼女は自らの取り巻きに定期的に術をかけるようになった。
一方で力を奪われることを怖れ、普通人はアンヌティーレに上位者の礼を守りつつ避けるようになる。
それがさらにアンヌティーレの内なる孤独を高め、子どもを買い取っては命を吸い取って自分の若さと力を保ちつつ周囲を従えるようになった。
彼女にそれが悪い事であると教える者はおらず、母親に肯定されたことで、彼女は己の思うまま突っ走っていく。
新しい『聖なる乙女』マリカの来訪に焦りを見せた彼女は、マリカの能力を取り込もうとするが失敗。
その後『神』の配下にすべく策略を企てるが……。
夜国編終了時点では不老不死が解除されている。
これは実はアーヴェントルクの『精霊神』の怒りをかった為、ではないがそれを知る者はごく僅かしかいない。
アーヴェントルク王家臣下
○スークル
第一皇子付き魔術師 子ども上りで話の分かる人
○グレイオス
アーヴェントルクの騎士団の騎士将軍の一人。
ザビドトゥーリス皇帝の妾腹の息子。愛妻家
○ソブリオ
アーヴェントルクの神殿長
ザビドトゥーリス皇帝の妾腹の息子。アンヌティーレ皇女に心酔している。
○ヴァルナ フィアルカ コーン
元奴隷の子ども マリカに贈られた後、第一皇子預かりとしてアンヌティーレ皇女付きとなる。
(アンヌティーレ皇女が彼らに危害を加えないように、皇子とマリカは厳重な注意と監視をさせていた)
オルトザム商会
アーヴェントルクきっての金物商人
食料品扱いに興味を示してゲシュマック商会との代理店契約を望むが、態度の悪さと店主ガルフとの因縁から果たせなかった。
○ボントルモ
オルトザム商会商会長 不老不死前とある事情で出会ったガルフの若妻アデラに恋慕。
不老不死の混乱で店を失ったガルフの弱みに付け込む形で奪い取った。
本人は悪い事をしたとは思っていなかったが、食の復活により立場が逆転したガルフに黙殺され恨みを買ったことに今更ながら気付いた。
アデラは気に入りではあるが、たくさんいる妻の一人。
○アデラ
オルトザム商会商会長の第二夫人。元針子でガルフの妻。
ガルフを愛し、愛され望まれて妻になったが新婚間もなく不老不死が発生。
食料品扱いをしていたガルフが店を失うのを間近で見て彼を助けるために
『妻になれば無利子、無催促で融資を行う』
というボントルモの提案に乗ってガルフと離婚、ボントルモの妻になった。
酷い扱いを受けているわけではないが、幸せを感じた事は無い。
ガルフを今も愛しているが、裏切ったのは自分であり、よりを戻すことはできないと理解もしている。
●『精霊神』ナハトクルム
紫の髪 黒い瞳。
「夜」を司る精霊神。死と再生も預かり、死んだ人間の魂を「星」の元に送り転生させる役割ももつ。
「夜」の精霊術は主に人や生物の精神に働きかけるもので、現世利益の術は少ない。
その為アーヴェントルクではあまり『精霊神』信仰が高まらなかった。
厭世的で引きこもりがち。
一方で自分の役割の重要性も理解していて、誇りももっている。
『神』は『星』の力を奪う為に彼を封じるのが一番だと知っており、アンヌティーレの歪みを利用して『彼』の神殿を怨念で満たさせた。
マリカの舞と力が贈られるまでは闇堕ち一歩手前だったが、彼女と、助けに来た『仲間』によって己の精神と自覚を取り戻した。
端末である精霊獣は作らないつもりだったが、アーレリオスに『勝手に』作られたので今は使い倒すと決めている。
ヴェートリッヒ以外には『精霊獣』の存在や正体を語ることはしていない。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!