【第三部開始】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。

夢見真由利
夢見真由利

閑話 初夢 子ども達の時間 前編

公開日時: 2022年1月2日(日) 14:00
更新日時: 2022年1月2日(日) 14:02
文字数:1,647


 

これは、夢だ。

 目が覚めた瞬間に解った。




 だって、瞬きした瞬間に目に入ったのは、この身体にとっては懐かしい、でも見覚えのない天井。

 私じゃない私の部屋。

 今はもう遠くなってしまった記憶。


『日本』


 マリカではなく、北村真理香だったころの私の家、だったからだ。

 アパートじゃなくって、私の実家。

 子どものころ住んでいた田舎の家そのまんま。





 ハッと気がついて手を見る。

 小さい。

 成人保育士 北村真理香じゃない。

 今のマリカとおんなじ位の十一~二歳くらいの大きさだ。

 部屋の様子も、小学生時代に近い。

 部屋に溢れたマンガの本。

 大事にしていたぬいぐるみ。

 ランドセル。

 一人暮らしをするようになって、実家に置いてきてしまったものばかりが溢れている。


「マリカ!」


 ぼんやりしている私にトントンと優しいノックの音と一緒に開いた扉から声がした。

 優しくて、二度と聞けないと思っていて、涙が出そうなくらいに懐かしくて。

 心は驚いているのに、身体は当たり前のものとしてそれを受け入れる。


「お母さん!」

「ああ、起きていたのね。

 だったら早く下に降りて来なさい。リオン君達を起こしてきてあげて。

 今日は一緒にキャンプに行く日でしょう? お父さん。はりきってるわよ」

「リオン君、たち?」


 そう言われて、私は違和感なく理解した。

 あ、今日は親戚の子達が泊まりに来ていて一緒にキャンプに行く日…じゃなくって…違う!!


「朝ごはんは、できてるから。

 ご飯を食べたらすぐにでかけましょ」

「はーい」


 私は慌てて起きだし、服を着ると隣の隣の部屋に駆け出した。

 クローゼットの中身も小学生時代に戻ってる。

 というか、そういうのは今は後でいい。

 適当に、でもお気に入りのワンピを着る。

 キャンプだけど、森林公園くらいなら、これでも大丈夫。


 普段、物置。

 実家のおじいちゃんや、おばあちゃんが来た時に使う客間をノックも忘れて開けてみればそこには三つの布団が敷かれていて…


「リオン! フェイ! アル?」

 

 本当に、いた。

 三人が寝ていた。

 私が転生した異世界の、大事な家族である三人が私の家に、いる。



 私の声に意識を覚醒させたのだろう。


「マリカ!」


 まず、リオンがハッと跳び起きた。

 その後に続くように


「おはようございます…リオン。アレ? マリカと…アル?」

「う…ん。あれ? なんでマリカがオレ達の男部屋にいるんだ?」


 のろのろと二人も目を覚ます。

 なんだか目をパチクリさせている。無理も無い。


「あのね。これ夢なの」

「なんだ、いきなり?」

「今、みんなは、私の転生する前の…みんなから見たら異世界にいるの」

「え? マリカの世界?」


 呆然とする皆に私は説明する。

 私も仕組みやどうして、は理解していない。

 ただ、そう解るし、感じるだけだ。


「どうしてかは解らないけど、私達は私の住んでた世界、日本にいるみたい」

「ホントに?」

「うん。ここ、私が住んでた家だもの。みんなの服も、あっちの世界のものじゃないでしょ?」


 言われてみれば、と自分の服を見る三人。

 異世界風の服じゃなく、こっちの世界の子ども服を着ていた。

 それぞれに合ったシャツ。ボーイスカウトようにお揃いのズボン。

 良く似合っている。



「いつ、戻れるんだ?っていうか、戻れるのか?」

「わかんない」

「え?」

「いつ戻れるのか、戻されるのかは解らない。でも多分、そんなに長くはない気がする。

 だから、遊ぼう!」

「へ?」

「今日はね、皆はうちの親戚の子で、近くの森林公園にキャンプに行くってことになってるみたい。

 だから、遊ぼう! この世界、少しだけど案内するから!」


 これは多分、本当に一時の夢だ。

 二度とない星の贈り物。

 向こうに戻った時、記憶が残っているかどうかも解らない。

 だからこそ、この世界『私の生きていた世界』を『みんなと一緒』に満喫しようと、私は決めたのだ。


「おい、待てよ。マリカ!」

「待って下さい」

「ちょっと落ちつけ! って、わあっ!」


 ぼんやりしているリオン達の手を、私は引っ張った。


「さあ! レッツゴー!!」


 だれかがくれた小さな夢の一時。

 戦いも陰謀も、心配も無い『子ども』の時間を、目いっぱい楽しまなきゃ!

Specialthanks 綾部響様


素晴らしいFAを頂いたので 新年初夢企画で書きました。

前中後編+エピローグで主人公達が、マリカの世界で遊びます。

中編は夕方にはアップ予定。


スーパーで買い物したり、児童館で遊んだり、キャンプしたりの他愛もない一日の夢を『お楽しみ下さい。

ステキイラストに心から感謝を。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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