会場内全てが呆気に取られていた(二度目)
か弱く(見える)小柄な少女が鎧騎士を下し、騎士試験本選の第一回戦を突破したのだから。
しかも
「何だったんだ? あの紅く染まった剣は?」
アルケディウス第一皇子 ケントニス様が首を捻っている。
でも皇王陛下と皇王妃様は少し違う表情だ。
「マリカ? 其方があの技をカマラに教えたのか?」
「良くお解りですね。カマラにたまたま入手した剣を授けた時、『精霊の書物』で見えた剣士が精霊魔術を使う技を試してみるように教えました。
後はフェイなどが魔術の基礎を教えていたようです」
「今世に、まさか魔術剣士が復活しようとはな」
「魔術剣士?」
「ああ、ごく稀に現れる剣士でありながら魔術を使用できる者だ。古の時代、精霊国女王が幾人かお連れになっていたのを見た覚えがあるし、精霊国から授けられたり購入したりした剣を使って各国でも真似ごとが出来た者もいた。
不老不死世界になってからは誰一人として使うことができなくなったが……」
精霊国騎士団長が話していたように、昔はそういう技術、技能の持ち主がやっぱりいたらしい。精霊国だけでは無く外の七国でも。
不老不死者には基本的に精霊魔術が使えないから、精霊国が滅んだ後は外の世界で使える者はいなくなり技術も途絶したということか。
「以前、リーテはライオットには魔術戦士の素質があると言っていたが、お前は興味が無いと言って無視していただろう?」
「ああ、そういうこともありましたな」
各国の王族は精霊神の血を引いているから、精霊魔術が使える素養がある。
精霊魔術が使える素養があれば魔術剣士になれるかもということか。
「お父様は魔術剣士に興味は無いんですか?」
「無いな。俺は剣と剣以外に余分なモノが無い、真っ向からの戦いが好きなんだ」
うん、いかにもお父様らしい返事。
あ、そうだ。
「お父様、皇王陛下。魔術剣を復活させて使ったことが問題になったりしますか?
私が提案して使って貰ったので、失格とか準騎士資格剥奪なんてことにはしないで頂きたいのですが……」
ちょっと心配なので確認してみる。
私が武器を授けたり余計な事をしたせいでカマラが規定に反する。
術を使ったから失格とかになったら可哀想だ。でも、お父様も皇王陛下もそれは心配するなと首を横に振って下さった。
「カマラがお前の配下な事は皆知っているし、特別な武器や防具をもっていたとしてもそれは資産力や伝手という本人の実力の範疇だ、問題となることは無い」
「むしろもはや伝説に近い技術を復活させたことを評価したい。話を聞きたいものだな。
精霊石の剣を持つ者は多くは無いがいる筈だ」
「後で時間を作らせます」
よかったと安堵する。
相手が不老不死者だと、ズルをして直接剣と意思を交し、経路を繋いだカマラと同じ方法を取らない限り、精霊石の剣があったとしても魔術剣を使うのは難しいと思うけど。
でもこれがきっかけで、魔術師のように子どもの登竜門になってくれたらいいかもしれない。
子どもに剣を取らせて戦うのかと嫌だけど。
そんな会話をしているうちにカマラ達が退場し、第四試合が行われ、終わっていた。
第四試合は軽装で腰に剣を帯びた絵に描いたような騎士と、鎧騎士の戦いで軽装の騎士が圧倒的な実力差で勝利した。勝利した騎士は騎士試験本選の常連レスタード卿だという。
外見年齢は……うーん、アラフィフ?
あごひげを蓄えておられることも含めてかなりのアダルトに見える。
お父様といい勝負だ。
「相変わらず、鎧騎士が多いんですね。身体に傷がつかない不老不死なら、軽装で戦った方が良さそうな気がするのに」
去年も思ったけれど、鎧騎士の予選突破割合がかなり高い。どんな武器、防具も使っていい決まりだからバリエーションは広いんだけれど、約半数は鎧で防御を固めた騎士な気がする。残り半数は軽戦士で、そっちの方に実力者が多い。
「簡単だから、だろうな。技術を身に着ける為に修練を積むよりも、鎧に衝撃の分散を頼って相手の隙を待った方がいいと考える単純思考のやつが多いのだろう。そういう考えでは逆にこの不老不死社会、なかなか本当の上には行けないのだが」
情けない話だと、お父様が嘆息する。
無限の時がある不老不死社会、強くなろうと思えば修練に費やせる時間はいくらでもある。でも、その気力さえ無い人が多く、彼等は解りやすい強さを鎧に求める。
身体は傷つかなくても、衝撃や傷みが無くなる訳では無い。
魔術的力を持つ剣なら傷もつく。
衝撃やダメージを減らし、長期戦に持ち込み相手の疲労や隙をついて倒せばいい。
体力のある人こそそういう考えに陥って、鎧に頼った単純な戦い方をするようになる。
そういう戦い方でもある程度は通用してしまうのが不老不死社会なのだろう。
「本来は鎧騎士というのはそういうモノでは無い。強敵を前に恵まれた体躯と、鎧の防御力。そして技術で注意を引きつけ、仲間を護る為のものなのだが」
フリュッスカイトのルイヴィル様みたいな人だよね。
難攻不落の国の盾。後はお父様。
お父様も正式な戦いの時には白銀の鎧を纏ってた。
私は一回しか見たことないけれど。
だから逆に軽装をしている人は自分に自信がある人だということになる。
自分の身体にダメージが来ない。来ても対処できる自信がある人。
不老不死社会でも、自分に合った戦い方を考えてそれを磨き上げることを止めなかった人。
カマラの第二試合はレスタード卿との戦いになるからきっと強敵だ。頑張ってほしい。
第一ブロックの試合が終わり、第二ブロックの試合が開始された。
第二ブロックの第一試合は鎧騎士対鎧騎士、第二試合は鎧騎士対剣士で、どちらも鎧騎士が勝ち上がった。第二試合の剣士さんもかなり奮戦していたけれど、相手は鎧に防御を頼りつつも、槍の使い方がかなり巧みだった。自分の懐に相手を入れない戦い方をする。踏み込み、防御を崩しきれなかった感じだろうか?
なるほど、鎧騎士を倒す為にはその防御力を突破する技術や力が必要なわけだ。
そして第二ブロック第三試合、ミーティラ様が現れた。相手は鎧騎士ではなく、剣士さん。
手甲とブレストメール&兜で防御を固めつつ、動きやすさを重視した冒険者戦士風に見える。ちゃんと考えている人だなって思う。
そうして開始された試合、私はミーティラ様が本格的に戦うのを始めて見た。
「うわー、凄いですね。槍を手足のように操っててキレイ」
「あの槍も独特だな。こちらではあまり見ない型だ。先が三つに分かれている」
「トリシューラと呼ばれる武器よ。使い勝手は良いのですけれど、扱いが難しくてね。
ミーティラは私よりも上手に使いますね」
トリシューラ。向こうの世界もなんとなく聞いた事が在る名前だ。
普通の槍ではなく、三叉槍、所謂トライデントと呼ばれるタイプ。ただ、突くだけではなく、外側の所も刃になっている。薙いだり、叩いたりするだけでもかなりダメージが行きそうだ。
実際剣士さんもやり辛そうだ。間を開けられて近寄らせて貰えない。
突き、払い、打つ。
槍の特性を見事に活用して、相手を戦わせない戦法は見事だと思う。
勿論、それは大きな槍を振るう筋力と体力、敵との間合いを常に見極める目と、足があってこそだけれど。
「あ!」
ミーティラ様の槍の一撃を剣士さんが、自分の剣で止めた。
その瞬間ミーティラ様は槍を立てるようにして合された刃を滑らせ槍の又に落とし込むと一気に捻り込んだ。
「うわっ!」
カランと音を立てて、剣が地面に落ちる。
てこの原理のような感じで、剣を槍にひっかけ奪い取ったのだ。
素早く槍を引きまた突く、慌てる剣士の喉、胸、腹の三連打。
胸は鎧があってダメージは減ったかもしれないけれど、喉と腹には直撃ダメージが行ってる筈。
「ぐああっ!」
潰されたカエルのような声を上げて、剣士さんはそのまま後ろに倒れ込んだ。
「勝負あり! プラーミァのミーティラ!」
前代未聞、二人目の女性の一回戦突破に会場が唸りを上げる。
万雷の喝采を受けながら、ミーティラ様は舞台正面の貴賓席に向けて、丁寧にお辞儀をしてみせた。
多分、親友にして主君、ティラトリーツェ様に向けて。
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