宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第二十五話……宇宙海賊

公開日時: 2020年11月28日(土) 21:12
文字数:2,282

「頭領! 先ほどから怪しげな動きをする小惑星があるのですが……」


「エネルギー中和粒子は観測されるのか?」

「はい、僅かですが……」


「ばかもんが! そんな不自然な小惑星があるわけないだろ!? 迎撃用意だ!」

「り……、了解!」


「各員戦闘配置!」

「至急!第六・第七装甲パワードスーツ隊出動準備!」

「順次妨害電波の放射急げ!」


 ジャミングが徹底された中。全長3mほどの装甲パワードスーツを来た海賊たちが次々と宇宙空間に飛び出す。


 遮蔽物のない宇宙空間では、対空砲や艦載機に弱い彼らだが、ここは小惑星地帯である。

 艦砲の射線や艦載機の直進性は妨げられる。さらにここは彼らの庭のようなものだった。

 討伐されないには理由があったのだ。


 彼等の武装は肩に担いだロケットランチャー、又はチャージ・レーザーマシンガンであり、近接戦闘にとても優れていた。

 小惑星帯の中に隠れながら、大きな岩のような怪しげな物体を密かに取り囲んだ。



「いつものように、3機一体で敵の装甲の薄い部分を狙え!」

「了解!」


 巣穴に近づいた得物に、今まさに腹をすかせた兵隊アリの群れが襲わんとしていた。




☆★☆★☆


――二時間前。


「総員警戒ポコ!」


 タヌキ軍曹が警戒を発令する。

 改装され大型化したハンニバルは、初めての任務に就いていた。


 宇宙海賊の巣に近づくにあたって、ハンニバルは小惑星をくり抜いたものに身を隠して進んでいた。

 小惑星の外殻自体にさほど防御力は期待できないが、隠蔽性を上げるには優れていたのだ。


 敵索敵網に金属反応を与えず、目標の小惑星帯に侵入すること目指していた。




――ズウシィィィイイ


 雲霞の如く現れた敵の砲火を浴びて、大きな衝撃がハンニバルを襲う。


「左舷後方に爆発!」

「続いて右舷前方にも被弾!」

「後部艦橋上方に被弾!」


「接近を許すな! 反撃開始!!」

「左舷ハッチ開放ポコ! 右舷ハッチも開放ポコ!」


 タヌキ軍曹の指示に従い、ハンニバル側面の開閉式ハッチから、次々に大型ガトリンク・ビーム砲塔が顔を出す。

 そして近接する敵に大量の重粒子弾をばら撒いた。



――ドドド……

 低い射撃音が響く。

 吐き出された重粒子弾は、装甲パワードスーツ装着者たちを次々に切り裂いていった。



「近接用シャッターを開くポコ!!」


 更にハンニバル側面に埋設されていた小型シャッターが次々に開く。そこからブタ族の砲手たちが操る小型のビーム・バルカン砲が大量に姿を見せる。その数200基以上。


 先ほどより少しカン高い衝撃音も響く中、装甲スーツ姿の宇宙海賊たちの接近は阻まれ、次々にハチの巣にされていった。



 実は、オムライスの襲撃された痕から、敵の襲撃方法を特定してあった。

 おそらく敵が取り得るであろう近接戦法を逆手に取り、近接砲塔をハリネズミのように仕込んでおいたのだった。



「宇宙海賊は3時の方向へ撤退中ですわ!」

「了解! 作戦通り、ゆっくりと追撃せよ!」


 ハンニバルは逃げる宇宙海賊たちをゆっくりと追跡した。

 彼等のアジトに案内してもらうために……。


 敵は散開しながら逃げるが、やはり基地に帰りたい本能は隠せなかった。




――2時間後……。


「敵のアジトらしきところを発見ポコ!」

「ジンギスカンに連絡いたしますわね!」


「お願いします」



 敵の砲火が少し止んだところで、私は指令室の椅子に座りなおす。

 戦いは何時も緊張をもたらす。

 気の小さい私には荒事は向いてないな、と今回も思った……。




☆★☆★☆


 敵がアジトに完全に籠ったあと、強襲型の巡洋艦であるジンギスカンが突っ込み、陸戦となった。



「押しつぶすメェ~!!」


 白刃を掲げる羊の戦闘班長バフォメットさんの指揮のもと、ブタ族の戦士2500名が敵アジトに乗り込む。

 激しい白兵戦ののち、要所を次々に占拠。

 ついに敵は降伏勧告を受諾した。


 宇宙海賊の上層部は宇宙船で逃げ出したが、機雷を布いて待ち伏せていたミサイル巡洋艦オムライスによって撃沈された。



 この様なことを次々と繰り返し、私は近隣の宇宙海賊たちを根絶やしにしていった。


 この戦いを容易にしたのは、宇宙海賊たちは決して一致団結しては襲ってこなかったことだ。

 彼らには彼らの縄張りがあったのだ。

 それを超えた結束力があれば、私なぞでは到底討伐できなかった相手であろう。

 海賊という割には練度も装備も良かったのである。


 この宇宙海賊狩りで、我が戦闘班長バフォメットさんの勇名はあがり、【羊の毛皮を被った狼】と渾名されるようになった。


 ……そうなんだよな、羊のくせしてマトンとかも、いつも美味しく食べてるもんな。

 というかむしろ彼は野菜嫌いだし。

 中身は本当に狼なんじゃないかな……。




☆★☆★☆


「よくやってくれた!」


「光栄です」


 私はカリバーン帝国軍総司令部に呼び出され、帝国宰相ホーウッド公爵から直々に勲章を賜った。

 ダイヤモンドに白金をあしらった高級品だ。


 更には大佐に昇進。

 ……異例の昇進速度だ。

 今まで私を馬鹿にしていた連中が目を丸くする。


 どうやら、宇宙海賊から解放した人質の中に、帝国政府の高官の家族が混ざっていたらしい。

 そのお礼と口止め料も含めてということだった……。



「奇麗ですね♪」

「よかったらどうぞ♪」


 帝国軍の新年祝賀パーティーにクリームヒルトさんと出席しあと、勲章は彼女にあげてしまった。あとでマルガレーテ嬢に『私も欲しい』と言われてしまったが、残念ながら二個はない……。

 パーティーのご飯はもちろん美味しかった。後日このことはタヌキ軍曹に恨まれた。でも、副官しか同席できないんだよなぁ……。



 ……ゲームの世界では華々しい年末年始だったが、現実の世界では寂しく一人でクリスマスを迎えようとしていた。




 ……寂しいなぁ (´・ω・`)



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