宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第百三十二話……N国壊滅!?

公開日時: 2021年1月15日(金) 08:12
文字数:2,116

「第六輸送船団壊滅!」

「アルセーヌ商船団全滅!」


「第八船団応答なし!」


 ルドミラ教国の商船は、皇帝クレーメンス率いる新カリバーン帝国の通商破壊戦術に直面する。

 件の宇宙海獣を用いての宇宙航路の破壊だった。



 これによりルドミラ教国にも非戦の空気が流れる。

 その一環として、激戦が続いていたアルデンヌ星域にて一時停戦、交渉がもたれた。


 この交渉は、新カリバーン帝国側の要求が、アルデンヌ星系の通行認可と、地球においての一部支配権しか求めない条件だったことにより、あっという間に和平合意し、そのことはニュースに流れた。



『我々カリバーン帝国は、地球の植民計画を実行する……』


 私はハンニバルでこのニュースを見ていた。

 しかし、次の発言で、口に含んだお茶を吹いてしまった。



『……我がカリバーン帝国は、N国に対し宣戦布告をする!』


Σ( ̄□ ̄|||) マジかよ!?



 ニュースによれば、新カリバーン帝国は、地球の極東地域の占領を目指すということだ。

 よって、極東の重要拠点であるN国を、真っ先に占領するとのことだった。


 なんで資源のないN国なんだよ。

 ……と思ったが、思い当たる節がある。


 N国の国民である金山という男が、新カリバーン帝国の提督だったという話である。



 その旨を急いで、小池勝議員に連絡をとってみると、


 彼は既に出国した後だったらしい……。




☆★☆★☆


『護衛艦あたご大破、護衛艦いずも沈没!』

『箱須賀軍港炎上!!』


『羽成空港使用不可!』


 私はハンニバルのモニターで地球のニュースを見ていた。

 最近は、この世界と地球のある世界が、情報的に近くなっていた。

 星間ギルドにお金を払えば、地球上のTV放送を見ることができる情勢になっていたのだ。


 ……しかし、地球へのワームホールって閉まるって聞いたよな。

 閉まったら、この情勢は一体どうなるんだろう??



 とりあえず情勢としては、N国の国防軍である自衛隊が、新カリバーン帝国の侵略に大苦戦していた。

 なにしろ、彼らは宇宙海獣の使い手なのだ。


 地球のニュース映像で見ると、N国がまさしく某大怪獣映画のようになっていた。

 宇宙海獣によって高速鉄道が持ち上げられ、国政の中枢である議事堂が踏みつぶされていた。

 すでに、N国の首都は滅茶苦茶な惨状になっていた。


 他にも、新カリバーン帝国とともに、ルドミラ教国も進軍。

 こちらも、地球の北半球の大都市を破壊し始めていた。

 都市部の高層ビルが倒壊し、飛行場や駅が破壊され、人々が逃げまどっていたのだ……。



「これって大変ポコ!」

「助けに行きたいクマね!」


 私も助けに行きたいのは山々だが、ワームホールのあるアルデンヌ星系の防御は堅いだろう……。

 無策で行っても、やられるだけのはずだった。


 ……しかし、なんとかしなくては。

 私は焦っていた。




☆★☆★☆


「……地球を救うための艦隊を派遣したいのですが……」


「それはまかりならん!」


「ぇ?」


「我が帝国に何の価値があるというのだ?」


 私はモニター越しに、皇帝パウリーネ様に謁見していた。



「我が国に利益がないなら、我が国の艦隊は差し向けられぬ!」


「……ですが」


「その気持ちわからぬでもない」

「……が、N国は朕に何らかの条件を出すのが筋というものだろう……」


 パウリーネ様にそういわれて、言葉が詰まる。

 確かに、我が第十艦隊とこの世界の私は、パウリーネ様のお国の部下なのだ。

 ……たしかに、私は説得力に欠けた。




「何かいい条件だせませんか?」


 ……次の日。

 私は小池勝議員に、パウリーネ様の話を告げた。



「う~ん、人の住んでいない無人島を一つ差し上げるというのでは、どうかな」


 ……これは、流石にない話だと私は思った。

 他国の兵士たちが、命を投げうつ代償に対して、あまりにも失礼だと思ったのだ。



「いくらなんでも、もう少しいい条件をください!」


「え?」


 珍しく強気な私の意見に対して、小池勝議員は意外といった顔つきだった。


 ……なめてんじゃねーぞ!!

 こっちも色々大変なんだぞ!!


 口に出して言いたかったが、黙って通信機を切った。

 まずは、交渉不成立であった……。




☆★☆★☆


 N国と新カリバーン帝国の戦いは、首都の市街地での地上戦となっていった。


 ……しかし、戦況は一転。

 泥沼の様相になっていった。


 新カリバーン帝国は、その支配地域に対して、地上戦部隊の人数が少なすぎたのである。


 それ以外にも、N国の国防軍の士気は高く、N国首都の占領はすぐに行えるという情勢ではなくなっていた。


 帝国の機械化歩兵に対し、N国自慢の10式戦車が火を噴く。

 特科の榴弾もどこからともなく、雨のように機械化歩兵たちの頭上に降り注いだ。


 他にも地上への物資を運ぶのには、宇宙海獣は不向きだった。

 なにしろエネルギー物質が大好きな彼らは、輸送物資そのものを食べてしまうからだ。

 打撃戦力としては有効な宇宙海獣であったが、苦手な分野もだんだんと露呈していった。


 それが次第にN国国防軍にバレ、大気圏に帝国の輸送艦が侵入すると、大陸弾頭弾を打ち落とすためのミサイルなどで迎撃されていった。




 ……しかし、N国に衝撃が走る。


 N国の新しい支配者と名乗る者が現れたのである。

 それは、まぎれもない地球人だったのだ。



 N国での本当の戦いは、幕をあげたばかりだった……。


(第三章・了)

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