――ズズズーン
S島への猛烈な艦砲射撃の後、上陸舟艇による上陸作戦が展開される。
反撃する施設には、B-2爆撃機からバンカーバスターが投下された。
……私はTV中継でそれを見ていた。
N国側の攻撃はある程度効いているように思えた。
S島を守る機械化歩兵陣地は吹き飛ばされ、海岸線には多数のN国兵士が上陸する。
更には、上空の輸送機から、沢山のパラシュート降下兵が降りて来る様は、圧巻だった。
TVのコメンテイターの話によると、新カリバーン帝国はN国首都に主力を投入していたために、S島の防備が薄かったのではないかと解説していた。
……まぁ、何はともあれ良いことであった。
☆★☆★☆
――ピンポーン
「は~い」
玄関の扉を開けると、そこには見たことのある人たちだった。
「こんにちはポコ!」
「こんにちはニャ!」
正確に言うと、違った。タヌキ亜人と猫亜人だった。
「どうぞあがって」
「お邪魔するポコ」
「お邪魔しますニャ」
二人にコーヒーをお出しすると、
「美味しいポコ、これは良い豆ポコね!」
「上等な珈琲ニャ!」
……す、すまねぇ。
スーパーの安売りのインスタントコーヒーです (´・ω・`)
――ピンポーン
また、お客だ……。
今度は誰だろう!?
「菱井さん! 駐車場に妙なもの止めないでくれます?」
大家さんだった。
駐車場には、二人が乗ってきたシャトルがデーンと止まっていた。
「す、すぐにどけます!」
……すぐに、私は二人とともにシャトルに乗り込み、飛び立った。
上空に舞い上がる。
実質上、この体では初めての宇宙への旅である。
空が奇麗だった。
成層圏まであがると、デッカイ浮遊物が見える。
衛星軌道上にあったハンニバルだった。
さすがに1200mの飛行物は大きい。
超大型のタンカーが、空に浮いているような感じだった……。
「おかえりなさい」
「ただいま」
艦橋に入ると、副官殿が出迎えてくれた。
副官殿はいつもの笑顔だったが、私は少し緊張していた。
外見が違うからである。
いわゆる、オフ会に参加した心境に似ていた。
……が、すぐ慣れる。
「N国での戦況は?」
「はい、首都西京では新カリバーン勢が優勢ですが、S島はN国が奪回したようですわ」
……え? N国凄くない??
「しかし、これをごらんください!」
メインモニターに映し出されたのは月面だった。
しかも、新カリバーンの基地が月面に建造されていたのだ。
「金山は!?」
「すでに、月面に逃げていた模様ですわ!」
……ひょっとして、S島はダミーの本拠地だったのでは?
――その二分後。
S島はすさまじい爆炎と共に、地図より消え去ったのである。
☆★☆★☆
「……では、箱須賀軍港の敵に攻撃をかけて欲しい」
「わかりました!」
ハンニバルの通信施設で、小池勝議員の紹介を受けた官僚さんと話す。
勝手に助っ人して、同士討ちになることを避けるためだ。
官僚さんは半信半疑のような顔をしていた。
そうだろう、自分が逆の立場なら、疑うに違いなかった……。
「ハンニバル始動!」
「大気圏戦闘用意!」
「「「了解!」」」
大気圏へ降下するハンニバル。
摩擦熱で外部装甲板が真っ赤になる。
「箱須賀軍港の敵が見えました!」
「良し、有視界射撃開始!」
「了解ポコ!」
箱須賀軍港には、新カリバーン帝国の星間輸送艦6隻と、宇宙海獣が二体停泊していた。
――ドドドドド
近距離用の重粒子ガトリング砲を斉射する。
他の施設に被害を与えないよう、大口径のレーザー砲などは使用を控えた。
次々に星間輸送艦が火を噴く。
宇宙海獣にも有効弾を複数与え、外殻を吹き飛び、体液がばら撒かれた。
「有効弾多数! 本艦に被害は無し!」
「良し! 戦果をN国側に伝えろ!」
「了解!」
ハンニバルは手始めとして、箱須賀軍港に停泊していた輸送船団を一瞬で壊滅させた。
その戦果は、N国政府の要人を驚愕させるに十分だった。
「素晴らしい! 君は救国の英雄だ!」
「あ、どうも……」
手のひらを返したように、小池勝議員も褒めてくれる。
……現金なような気もするけど、実際そんなもんだよね。
「英雄殿、……次もお願いしていいかな?」
「はい」
「次は羽成空港を攻撃して欲しい」
「敵地上軍を支援する航空戦力を壊滅させてほしい!」
「わかりました!」
ハンニバルは羽成空港上空まで移動。
「攻撃開始!」
「射撃開始ポコ!」
――ドドドドド
重粒子ガトリング砲弾が、大気圏用の敵攻撃機を次々に拭きとばす。
破片が飛び散り、燃料にも引火。
飛行場は文字通り、火の海となった……。
「君は素晴らしい!」
「いえ、少しやりすぎたかもですが……」
今度お礼を言ってくれたのは、官房長官だった。
飛行場を火の海にしたので、怒られるかと思って、ひやひやしていた。
多分OKだろう……。
「次もお願いしていいかな?」
「ええ、国民の義務として頑張ります!」
そう私の今の体は、N国民そのものだったのだ……。
その後も、ハンニバルは次々に、N国国防軍の支援に回る。
時に地上支援であり、時に航空支援をお手伝いし、大戦果を次々にあげていった。
……新カリバーン帝国の戦力は、ハンニバルによって、N国から次々に駆逐されつつあったのだった。
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