宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第七十二話……カリバーン帝国貴族の兵役負担制度

公開日時: 2020年12月5日(土) 16:18
文字数:2,034

「損益分岐点は単位あたり75帝国ドルといったところでしょうか?」


「75……、微妙ポコね……」

「微妙ですわね……」


 惑星ベルの海洋型アダマンタイト掘削施設の見積もりを、内政型アンドロイドであるヨハンさんに計算してもらう。

 ここ最近のアダマンタイトの単位当たりの相場は、70~80帝国ドル。

 カリバーン帝国経済は戦役の期間がおわると、資源価格はさがる傾向があった。


 現在の市況では、この掘削プラントを稼働しても利益はほぼないという試算だった。



「じゃあ、掘りましょう!」

「利益が出ないのに掘るポコ?」


「うん、掘ろう!」


 タヌキ砲術長殿は『お金にならないのに何故掘るのか?』という表情をしているが、私は開発プラントを建設することに決めた。

 確かに利益がでる公算は薄かったが、ここ惑星ベルには海産物の養殖以外にこれといった産業がない。

 開発プラントを作れば新たな関連産業が産まれ、大量の雇用が発生する見込みがあった。


 他にも、資源開発事業というものは継続して行わないと、保守やメンテナンスなどの技術が育ちにくく、結局それが長い目で見れば採算や経営力に直結する可能性が高かったのだ。


 ……継続は力なり、である。




☆★☆★☆


「ほう、これがアダマンタイト精製プラントですか?」


「左様でございます!」


 近隣のフェーン星系の統治者であるシャフト王が、惑星ベルに施設見学に来ていた。


 辺境星系連合国家群の構成星系の一つ、フェーン星系はカリバーン帝国の技術を導入し、高度な産業の機械化を目指している最中だった。



――フェーン星系。


 水棲型文明生物が多く住む星系で、形状は二足歩行型のナマズといったところ。

 年をとった男性は独特な髭がより長い場合が多い。


 概ね温厚な民族が多数派な人口構成だった。

 主要産業は漁業と牧畜と耕作。

 辺境連合国家群で勢力最大の穀倉地帯と人口を抱えていた。



「我が星系にもこのプラントが欲しいですな!」


 快活で立派な髭を生やしたナマズ族であるシャフト王は、ハンニバル開発公社の資源プラント資設がお好みの様だった。



「この金額でお譲りいたしますよ♪」


 私はすかさず電卓を叩き、それを王に見せ、セールスを行う。



「……しかしですな、買っても使い方がわかりませんでな」


 自嘲気味に笑うシャフト王に、更に叩き直した電卓を見せる。

 ……この好機、逃がしてなるものか。



「初期作業員講習と6か月のメンテナンス代込みで、こちらの額ではいかがでしょう?」


「おう! これなら買わせてもらうぞ!」


「有難うございます!」


「……し、しかし、ヴェロヴェマ君は軍人というより商人といった感じだな!?」


 ……バレたか?

 むしろ、そのとおりである。

 この一つ目ギガースの中身は、しがない中小企業の元営業マンであるのだから。



「毎度有難うございます!」

「ありがとうポコ!」


 タヌキ砲術長殿もハンニバル開発公社の番頭さんが板についてきた。

 最近、彼も売り上げへの貢献を熱心に行ってくれている


 好きな艦船を作るための予算の捻出は、ハンニバル開発公社の売り上げがあってこそだった。


 ……かの織田信長や武田信玄も、楽市楽座や金山開発で得た財で、無敵の軍団を作り上げたのだ。

 きっとこのやり方は間違いではないはずだった。


 (`・ω・´)シ きっと戦は金である!



 ……そのような冗談はさておき。


 特上のお得意様であるシャフト王をお見送りし、納品設備の選定を準備する。


 この取引の利益で、新たな戦闘艦を作れるのだ。

 新造艦の建造が愉しみな私であった。




☆★☆★☆


――ヴェロヴェマ子爵家。


 つまるところ私の処のことなのだが、帝国中央への納付金とは別に、負担兵役というものがある。


 俗にいう『御恩と奉公』や『いざ鎌倉!』の為の兵役の負担である。

 正確な使い方は違うかもしれないが、平時より兵力を保有し、帝国の有事の為に備える制度である。


 我がラム星系のヴェロヴェマ子爵家への負担は、戦闘艦10隻の保有が求められていた。



 現在、ハンニバル、オムライス、ジンギスカンの3隻しかいないので、あと7隻の新造艦が必要なのである。

 よって、新規の星系支配者である私は、ビジネス等の財テクで建造などの初期費用を捻出する必要があったのだ。


 他の貴族様の御家はどうして経費を捻出しているのか大いに疑問である。



 ……新造艦は大きな経済的負担ではあるものの、貴族家のものとして建造する船は、完全にその貴族家の船になるということだった。

 今までは蛮王様の為の船だったが、完全に自分の為のお船が作れるのだ。


 よって、今まで蓄積してきた資材が存分に使える。

 今回の設計の自由度は、お金が許す限りどんなものでもほぼ自由に作れたのだった。



「はやく作るポコ!」

「私にも設計させるメェ~!」


「私も船が欲しいですわ!」

「私も二隻目の船が欲しいニャ♪」



 ……みんな、やかましいな (´・ω・`)


 我が幕僚たちは、美味しいご飯か新造艦の設計の話となると、どこからともなく集まってくるのだ。



 やっぱり、自由な船が好きに作れるというのは、少し意味が違ったかもしれないな……( ˘ω˘)


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