――遍く銀河は広く、そして儚い。
例え、そこにお金があったとしても……!?
「ミスリル鉱石GETぽこ~♪」
「アダマンタイトの結晶GETくま~♪」
「儲かりますわね♪」
今日はラム星系外縁にて、資源探査……という名のお小遣い稼ぎ。
どの星系の外縁にも、だいたい小惑星地帯があり、多くの鉱石が採掘されやすい形で放置されている。
それに合わせて、急ごしらえで作った資源採掘船で資源調査をしていた。
惑星ベルより外周にある準惑星ツーリアを探査基地として、私たちはラム星系の外縁調査を進めていた。
私は軍には復帰したものの、担当職を与えられたわけではないので暇だったのだ。
カリバーン帝国としても、一貴族として上納金を治めさせた方が得策と考えているのかもしれなかった……。
それくらい武官としては暇だったのである。
……しかし、一領主としては忙しい。
開墾に治水、街づくりと、マメにやるほど目に見えて成果がでたのだ。
確かに、すぐにお金になるわけではない。
しかし、農地や街並みが広がる光景は頑張るに値するものだった。
星系ラムの中で、主星である惑星ベルにおいては、農業プラントや従来型の畑などで農作物を捻出。
漁業型養殖プラントや農場もフル回転だ。
それを担保として、外星系の他種族移民を受け入れた。
彼等が更なる増産のための労働者となり、更なる食料の賄い手となってくれた。
……、まぁ正直、自分の星系の人口が増えるだけで楽しいよね。
最近発見した準惑星ツーリアにおいては、造船と交易の為の宇宙港を急ピッチで整備中だ。
宇宙船建造ドックを新設で6基稼働。
大型交易ステーションも来月には新装OPENする。
これも一重に、今までのハンニバル開発公社の事業のノウハウあってのことだった。
……なにも利益剰余金だけが企業の資産ではない。
人・モノ・金・技術・全てが大切な資産であり宝だった。
準惑星ツーリアの造船所では、主に資源採掘船を建造していた。
資源がいくらでも必要なこと以外に、フリーの宇宙冒険者の為への建造だった。
フリーの宇宙冒険者に採掘船を安く貸し出し、採って来てもらった資源やデータを買わせてもらうのだ。
ハンニバル開発公社も大きくなり、すべての開発案件を自分たちで行うことは不可能になっていたのだ。
絶え間ない開発と情報収集は、人の手を沢山借りてでも行うべきことだった。
☆★☆★☆
「……ぇ? エールパ星系の交易品の調査ですか?」
突如はいった通信のモニターの相手は惑星リーリアの蛮王様だった。
蛮王様からはこうやって、たまに依頼が来る。
蛮王様はハンニバル開発公社の最大の御取引先だ。
無下にできるわけがない。
「……ああ、ひとつ調査を頼みたいのだが、暇はないか?」
「わかりました、早速出向いてみます!」
「たのんだぞ!」
通信が切れる。
モニターから顔を離すと、副官殿がいた。
「御用事ですの?」
「うん、蛮王様からのね……」
「浮かない顔ですわね?」
副官殿からコーヒーカップを受けとり、ふーふーとしたあと一口飲む。
「いや、交易品のなかに非合法麻薬がはいっている疑いがあるんだって……」
「……そ、それは困りましたわね」
副官殿も困ったという顔になる。
麻薬と聞いて嬉しそうな顔をする人は稀だろう。
こういう交易取引は、大体において武力勢力が背後にいる。
幕僚を集めて対応を討議する必要があった。
☆★☆★☆
「某の出番メェ~♪」
「兄者! 俺も連れていけよな!」
白兵戦が得意なバフォメットさんとアルベルト王子は、今回の麻薬疑惑の交易品調査に大変乗り気だ。
「じゃあ、二人は連れて行くとして……」
「わたしも行くクマ♪」
「僕も行くポコ♪」
ということで、ヨハンさんも含めて、全員で行くことになった。
……まぁ、みんな暇なのかな?
「エネルギー充填68.2%」
「機関シリンダー内、ガンマ線バースト確認!」
「ハンニバル発進!!」
クマ整備長に日頃からメンテナンスされているハンニバルは快調に始動する。
惑星ベルの海上宇宙港を離陸し、大気圏を急上昇。すぐに雲を眼下に見下ろす。
空は既に暗い宇宙であり、その黒さがいつも懐かしさを覚えるようになってきた。
母なる宇宙というやつだろうか?
……なにはともあれ、戦役以外での久々のハンニバルでの航海の開始だった。
☆★☆★☆
昼前にはラム星系の主星である惑星ベルを出立。
途中、お昼ごろには準惑星ツーリアの重力圏に入る。
「管制システムへ、こちらハンニバル、誘導を求む!」
「確認した! 予定通り8番ゲートへ向かえ!」
「了解!」
エンジンを絞り大気圏に入る。
ハンニバルの艦体が大気と擦れ、赤熱する。
管制システムに誘導され、岩肌が向き出た人口の海へ着水。
地下のアヴァロンの遺構へと続く8番ゲートへと静かに向かう。
海上をスクリューと水流噴射ジェットでゆっくりと進む。
窓の外には魚が楽しそうに跳ねていた。
……大きな岩盤の前で、巨大な金属製のシャッターが開き、内部の洞窟へと入る。
――準惑星ツーリアの8番ゲートとはハンニバル専用のドッグへの入り口だった。
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