人型生命体の都、グングニル共和国は繁栄し、ユリウース星系に莫大な人口を抱えていた。その数350億。
その凄まじい勢いで増える人口を養う大地を常に求めていた。
しかし、光の速度を超えることが出来ず、星系内のみに活動が限られていた。
新宇宙暦元年。コバルト鉱石探索に訪れていたエルゴ・アダマンタイト博士はユリウース第八惑星で未知の遺跡を発掘する。後日アヴァロン超文明の遺産と命名されたインフレーション機関である。
インフレーション機関は次元跳躍を可能とし、人型生命体の文明版図は光の速度の壁を突破することになる。
共和国の版図は加速度的に拡がり続け、瞬く間に他の星系を支配することになる。
更に進出先の星系の知的生命体に戦争を仕掛け、次々に従属支配していった。
共和国政権は従属星系に対し、不足しがちな食料生産を単純強制。星系レベルで産業構造のゆがみが生じ、貧富の格差は拡大した。
新宇宙暦166年。
共和国は星系国家群と呼べるほどの版図を支配するに至った。が、穀倉地帯に設定されていた惑星アルトースが、中性子星の爆発に巻き込まれ滅びてしまう。
これにより、共和国内は各派閥に別れ、食料を奪い合う内戦が始まった。
しかし、この時点の消費カロリーを賄う食料の生産は確保されており、投機目的としての食料争奪戦である。
新宇宙暦172年。
原理資本主義の延長たるこの戦いは拡大し、共和国全土に熱核戦争を引き起こした。共和国は文明資産の実に99.86%を焼失し、その支配地は死の大地と化した。
しかし、その後も共和国ユリウース星系中央政府は従属星系に経済的圧力をかけ、食料を徴発し続けた。そのため従属星系では飢饉が発生。家族6人の夕食が小さなジャガイモ一つを分け合う事態にまで悪化した。
新宇宙暦192年。
ついに共和国の地方星系アルバトロスで反乱勃発。アルバトロス星系の反乱軍リーダーである青年カリバーンは各地で転戦。この3年後にカリバーン自身は戦死。
新宇宙暦208年。惑星リヴァイアサン成層圏の戦いにて、反乱軍は共和国軍主力艦隊を撃破。ここに共和国政府は反乱軍と講和せざるを得なくなり、すべての市民に平等に資産の分配を是とするとするカリバーン自由連邦が誕生。同時に各地方有力星系が多数、共和国政権から独立した。
新宇宙暦308年。
勢力を拡大し続けたカリバーン自由政府は運営の歪みを呈しはじめる。第12代目の書記長は遂に自らを皇帝と称し、帝政を布くに至った。以後、国号をカリバーン帝国と改め、民衆は支配階級たる貴族と、被支配階級の平民に強制別離した。
今現在をしても、熱核戦争の爪痕は大きい。星間航行可能宇宙船は少なく、食糧は慢性的な不足社会である。
【ヤリス出版・カリバーン帝国宇宙全史】より。
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私は本を読み終わった後、近くのレストランに入った。
メニューを見て、ハンバーグパスタを注文した。現実世界では普通にファミレスで頼めるが、星系国家レベルで食料不足のこの世界ではご馳走の部類だ。
惑星リーリヤは食料が豊富な惑星であることが幸いし、比較的レストランが多い。逆に、我が衛星アトラスでは同じメニューで価格が5倍もする。
勉強するといって出てきて、実はコレが食べたかったとかは内緒である。
現実の世界でも食料は足りているのに、十分食べることができない地域が生じ、紛争が起きる。
そもそも、この世界ではその食料が絶対的に足らないのだ。
当然に社会は上手くいかず、戦争が起きる。
そう考えると、衛星アトラスも食料プラントを増やさないと……、次は魚の養殖施設がいいかな。
支配地の民衆を納得させるには、政治思想じゃなくて、十分な食べものの量な気がしてきた。
それはともかく、衛星アトラスでもハンバーグパスタが普通に食べられるようにしないとね。
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「お客様、困ります!」
お会計を帝国ドル札で払ったら怒られた。帝国ドルの価値が下がって、蛮王様発行のエールパ銀貨でないと受け取ってもらえないのだ。
結局お代は銀貨3枚で支払った。
物価高騰インフレはレストランにも及んでいる。
カリバーン帝国士官としてのお給料だけだったら、今頃ピンチだったかもしれない。
惑星リーリヤには操縦の練習を兼ねて小型シャトルで来ていた。
大型艦船と違い、帰りも地上の飛行場から飛び立つ。
夜なのでガイドビーコンに従いジェット・ブラスト・ディフレクターの前に機体をセット。
発進した後、船体下部の窓から飛び立った街並みの灯を愉しむ。
成層圏で重力発生装置が自動でONになった。
重力圏離脱後。操縦席を立ち、蒼い惑星リーリヤを眺めながらミルクたっぷりのコーヒーを楽しんだ。
惑星リーリヤの発進飛行場の管制にお礼をつげた後、衛星アトラスからのガイドビーコンをのんびりと待った。
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「ぽこぉぉぉぉおお!!」
惑星アトラスに帰った後。
シャツにハンバーグソースが付いていたのをタヌキ軍曹に発見され、とても恨まれた……。
ハンバーグパスタが彼の大好物だったからだ。
「今度一緒に行こうね、うん」
「ぽこぉ♪」
──私はその晩、帝国司令部より大尉に任命された。
次の作戦任務は、共和国軍前線基地への攻撃任務だった。
ジェット・ブラスト・ディフレクターは、ジェットエンジンの噴射する高温の排気から人や物を防護するための装備、及び設備である。単に「ブラスト・ディフレクター(blast deflector)」と呼称/表記される場合もある。
「ブラスト・シールド(blast shield)」とも呼ばれる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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