宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第六十五話……海洋惑星ベル

公開日時: 2020年12月3日(木) 02:36
文字数:2,072

ラム星系の惑星ベルに向かう我々の呼称は【ハンニバル移民団】とした。


 星間戦闘艦であるジンギスカンとオムライスを連れて、一路ラム星系に向かうハンニバル。

 人員はわずか2250名の極めて少数の移民団の構成だった。



 ……途中、相も変わらず危険宙域で巨大アメーバと鬼ごっこをした以外は順調に宇宙航海をこなしていた。



 カリバーン帝室から頂いたラム星系は、惑星がベル一つのみのため、正規星系ではなく準星系と定義されていた。

 惑星が4つ以上ある正規の星系の統治者は、カリバーン帝国では一般的に伯爵以上であることが必要だった。


 もちろん、過疎星系でも統治や開発に成功すれば、帝室に沢山の上納金を治め出世が見込めた。

 この世界においては揺るぎない武勲を上げる以外には、帝国中央政府に財政にて貢献することで地位を上げることが出来たのだ。


 あの地方領主然としている蛮王様も、毎月帝都に上納金を沢山収めているらしい。


 私も帝国の正規提督として復活するために、この準星系ラムの統治に失敗するわけにはいかなかった。




「惑星ベルの重力圏に到達。降下用意!」

「耐熱シャッター閉鎖!」


「機関は大気圏仕様にシフト、降下用安定翼展開!」

「準備良し!」


「降下開始!」

「「「了解!」」」


 大気圏を赤い熱に覆われ降下するハンニバル。

 雲の隙間から見える惑星ベルの大地は、意外なほどに緑が多かった。


 草原が広がり、野生動物の群れらしきものが見える。

 陸地に近い海洋部に着水する。


 簡易調査結果は酸素濃度も高く、環境を操作せずに我々が棲めそうだった。

 ハンニバルは慎重に海上を進み、小さな入り江に入った。


 そこにはクジラの親子がおり、仲良く潮を吹いていた。



「海底のデータ解析開始!」

「工作隊出動!」


「了解メェ♪」


 ハンニバルから小さなボートを取り出し、先遣隊150名が陸地に上陸した。


 未知の文明があるかもしれないし、初めての上陸は慎重にされるべきだった。



「データ解析終わりましたわ♪」

「ありがとう」


 ここの入り江は意外と水深があり、浚渫工事をしなくても使えそうだった。



「う……海が大きいね」

「大きいポコ♪」


 この惑星は所謂地球型だったが、その表面面積の97%が海という海洋惑星だった。

 ……まぁ、陸地が足らないという状況でもないのだが。


 どちらかと言うと、人口が足らない。

 ヨハンさんが募集してくれた移民は約2000名。

 軍属は約250名なので、この惑星の総人口はあわせてたった2250名ということだった。

 地球と同程度の大きさの惑星に、わずか2250名の人口であった。


 移民団2000名は、概ね体のいくつかを機械化した人たちだった。

 多分事故や病気が原因だったのだろう。

 整形外科などの習慣に厳しい、ルドミラ教国周辺からの人たちが多かった。



 その夕方には、ブルドーザーなどで入り江の周りの雑木林を切り開き、簡易なプレハブ小屋のような住居を作る。

 入り江に切り出した木材で桟橋をかけ、3隻の星間戦闘艦を急ごしらえの護岸に横付けした。


 明日からは、さらに開拓し、農地などを切り開く予定だった。




☆★☆★☆


(……二週間後)



「今日もコーヒーが美味しいね♪」

「美味しいですわ♪」


「コーヒーは任せろポコ!」


 いまやタヌキ砲術長殿はコーヒーを入れるのに凝っており、エプロン姿のタヌキだ。

 お金にうるさいマルガレーテ嬢とクマ整備長殿は、仲良く入り江でのんびりと釣りをしている。


 陸戦隊長のバフォメットさんと、内政担当のヨハンさんの二人だけが、陸地で開発にいそしんでいるが、他は概ねのんびりとした日々が続いていた。




 ……ざわ。

 砂浜の辺りが騒がしい。

 海鳥が一斉に飛び立っている。



 双眼鏡で見てみると、バフォメットさん達がなにやら見たこともない半魚人の群れと交戦していた。

 ……やばい?

 こんなところに敵が!?


「味方が襲われているぞ!」

「警報発令!」


「砲術長! 支援射撃だ!」

「了解ポコ!」


 途端に騒がしくなる入り江、ハンニバルの対空砲火が次々に火を噴く。

 威嚇射撃に驚き、半魚人たちは海の中へ引き返していった。



 ……ここには人がいないと思ったけど、実は水の中に住んでいるのかな?

 なんだか、足元の水辺が急に怖くなった私だった。




☆★☆★☆


 海側にも防護柵を幾重にも築く我々。

 沢山のかがり火も焚き、夜間も警戒を強めた。

 夜分に奇襲されると堪らないからだ。


 ハンニバルもサーチライトを使い、しきりに海面を照らす。

 なんだか趣のある夜が、台無しの景色であった。




翌朝。



 ……ジャボン。



「提督! あれを見てください!」

「!?」


 入り江で警戒するハンニバルの近くに、槍に白旗を掲げた屈強そうな半魚人が現れた。

 ……どうやら軍使らしい。


 多分、交渉に来たのだろう。



 ハンニバルの艦内でボディーチェックを済まし、会議室のテーブルについてもらう。

 お茶をお出ししたら、唐突に向こうから発言された。



「……お前たちは何者だ!?」


「え!?」


 ……なんと、相手はコチラの言葉を操ってきたのだ。

 予想外の展開であった。




☆★☆★☆


ハンニバル移民団構成


〇星系航行艦

・ハンニバル

・オムライス

・ジンギスカン


計3隻


〇人員

・文民

2000名

・戦闘員

250名


計2250名


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