宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第六十話……巨大氷塊宇宙母艦ハボクック

公開日時: 2020年12月2日(水) 03:01
文字数:2,086

敵と味方は激しい砲火を交わす。

収束した光軸が空間を焼き、電磁障壁を貫く。



「味方艦二隻被弾! 航行に支障なし!」

「了解!」



「敵艦載機群発艦を確認!」


 敵の艦隊は一斉砲撃を行ったあと、艦載機を次々に発艦させてきた。

 雲霞の如き艦載機の大群が迫ってきた。



「こちらも迎撃機を出せ!」

「対空戦闘開始!」


 敵艦船は僅か5隻。

 しかし、規格外に大きな宇宙母艦を含む。


 対する我が方は18隻。

 最近は訓練にも時間を割いており、敵より練度だけは自信があった。



「マイクロ・クエーサー砲用意!」


「目標敵大型宇宙母艦の右舷エンジン」


「エネルギー充填上限3%用意良し!」

「ガンマ線バースト確認!!」


「マイクロ・クエーサー砲ファイアリングシステム・セーフティーロック解除」


「目標自動ロックオン完了!」

「射角シグナル・オールグリーン!」


「発射!!」


 ハンニバルの下部に設置された古代超兵器が眩い光軸を放つ。


 辺境連合国家の支配する星域の遺跡により、ハンニバルは超兵器の過剰なまでの威力を制御することに成功していた。



 威力を幾分抑えたマイクロ・クエーサー砲のガンマ線収縮光軸が、敵超大型艦の右舷に吸い込まれる。

 そこが私の『羅針眼』によって導かれた、敵艦の弱点だったはずだった。


 網膜を焼き切るような閃光のあと、大爆発が起こる。



「射撃結果、至近弾!」

「!?」


 敵の防御スクリーンが強大で、マイクロ・クエーサー砲は捻じ曲げられ、敵の右舷を僅かに削ったに過ぎなかった。

 恐ろしい防御力である。


 ……しかし、敵の防御出力を大きく損耗させることには成功していた。



「敵のシールド出力が落ちている間に砲撃しろ!」


「了解ポコ!」


「敵艦載機左舷接近!」


 飛来した敵の雷撃機は、機体に抱えた対艦ミサイルを電磁カタパルトで次々に射出してくる。


「取り舵一杯!」

「対空機銃左舷弾幕開始!」


 敵艦載機群が放ったミサイルを回避しながら、応戦するハンニバルとその僚艦たち。

 しかし、蜂の大群のような敵機に翻弄されていた。


 ……敵は艦載機を中心に攻撃してくる長距離戦術を得意とするようだった。

 優勢にもかかわらず、敵は接近してくる気配がないのだ。



「敵攻撃隊帰投中の模様!」


「第二波接近中!」


「いまだ! 装甲機動歩兵発進メェ!」

「要撃機発艦ニャ!」


 敵の僅かな攻撃の隙間を縫って、戦力の展開を図る我がエールパ星系艦隊。



「短距離跳躍用意!」

「目標座標はY987ポイント!」


「え!? そこには敵艦がいますわ!」

「かまわん! ぶつけてしまえ!」


「跳躍準備OKポコ!」

「跳躍開始!」


 私はこの機を逃さず、 短距離戦術ワープによって一気に敵との距離を詰めようと画策する。

 敵空母と遠距離戦を続けるつもりは無かったのだ。



「ワープアウト! 敵艦超至近!!」

「激突します!」


「防御スクリーン出力最大!」

「総員衝撃に備えろ!!」


 激しい振動とともに、ハンニバルは敵大型宇宙母艦ハボクックの左舷に衝突した。



「舷側砲台射撃開始!」

「重粒子バルカン斉射ポコ!」


 敵の主要装甲である氷塊部は、高熱でも溶けにくいハイパークリートであったが、近接火力の高いハンニバルの小口径砲群によって次々と削られていった。



「敵金属装甲部、露出!」


「主砲斉射ポコ!」


 遂に敵の外部装甲を破壊。

 敵艦内部の区画が露出した。


「装甲機動歩兵出撃! 白兵戦開始!!」


「各砲塔、装甲機動歩兵を援護ポコ!」


 ハンニバルの各種砲台の支援の下、味方の装甲機動歩兵が敵艦に乗り移る。

 敵艦と近すぎて、お互いに重力シールドも電磁障壁も上手く稼働していなかった。



「突っ込むメェ!!」


 敵方の僚艦4隻を破壊した味方が、次々に来援に訪れる。


 敵装甲が自動修復氷塊を用いた防御のため、長距離レーザービームでは氷塊にて屈折させられ、有効に打撃を与えることが難しかった。


 味方艦は敵巨艦にピラニアのように食いつき、白兵戦部隊を次々に展開させていた。



「第869ブロック占拠!」

「第62居住ブロック降伏受諾!」


「工兵中隊より支援砲撃依頼!」

「支援砲撃開始!」


 次々に、敵巨艦の内部にて戦闘を拡大。

 徐々に敵区画を陸戦部隊にて占領していった。




☆★☆★☆


 それから3時間後、我々は機関区画や中央制御室などの要所を占拠。

 艦橋にて立て籠もる、敵司令部に降伏勧告を行う。



「敵司令官より通信!」


「通信回線を開け!」


 ビデオチャットには疲労困憊の敵士官の少女の姿が映った。

 スチュワード伯爵が自死したため、降伏を受諾するという内容だった。



 こうして超巨大宇宙母艦ハボクックは我等の手に落ちた。

 最後は白兵戦という、辛酸な戦闘にて勝利した。


 ……味方の陸戦部隊の被害も大きく、双方にとって残念な戦いであった。




 そののち、この二日後にスプーン星系の攻略を開始する。


☆★☆★☆


 エールパ星系艦隊は惑星揚陸艦にて地上部隊を降下させ、優位に惑星地上戦を展開。

 主要都市を次々に陥落させた。


 さらに一週間のち、スプーン星系は降伏を受諾した。


 やはり、防衛戦にて主将たるスチュワード伯爵が不在になったことが大きかった。




 ……こうして辛くも作戦目標は達成された。


 沈没した味方艦こそなかったが、大破した戦闘艦をふくめ、艦載機にも多数の被害が出た戦いだった。




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