宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
黒鯛の刺身♪

第二十六話……エネルギー開発進捗セリ!?

公開日時: 2020年11月28日(土) 22:15
文字数:1,908

――12月24日


 これは現実の方の日付だ。

 黄色い電飾と鈴の音が世間を賑わわす夜……。



 ……虚しい。

 これが何が虚しいかというと、お一人様であることがバレるのを恐れ、VRゲームの世界に飛び立てない自分が存在していた。


 ……コンビニまで出かけると、寒そうな格好をした若い女性がケーキを売っていた。

 なんだか買うと余計にみじめになりそうで、足早に帰途に就いた。




☆★☆★☆


「旦那様は最後ですからね!」


 副官であるクリームヒルトさんにメッされる。

 近所のスーパーで買ってきたイチゴを、私が3等分に分けたが、タヌキ軍曹殿と副官殿が選んでから私が選ぶのだ。


 なにしろ、おいしいリンゴもおいしいイチゴも見分けがつく【羅針眼】の能力は凄い。

 現実でも欲しい能力だ……。

 ……きっと新鮮な魚の選別とかできそうだよね。



 結局12月24日の夜は電脳世界の中で、3人で過ごした。

 意外と虚しさを感じないのは、なんでなんだろうな。

 むしろゲームの方が楽しい……。


 コチラでは、既に年が明けていたが、わがままを言ってシャンペンも開けた。

 記念のコルクはどこかへ飛んでいった。

 ケーキも食べたし、悪いことは何一つなかった。




☆★☆★☆


「オムライスよりエネルギー注入開始!」


「……0.1」


「…………0.2」

「エンジン内圧0.3%突破しました!」


「シリンダーにアダマンタイト注入!」

「注入しました! 内圧正常です!」


「エンジン始動!!」

「エンジン始動します!!」



――ゴゴゴォォォ……。


「エンジンかかったポコ~♪」

「よかったですわ~♪」

「ふぅ~」


 実は、超巨大化したハンニバルは自分でエンジンがスタートできない。

 外部のエネルギーが要るのだ。


 巡行速度での燃費を節約して設計したら、始動時のトルクが足らない仕様になってしまった。

 もし単艦でエンストでもしたら、宇宙のゴミとなって彷徨う運命だった……。




「いつもメンドクサイにゃ~」


 発進する用事があるときは、こうやってオムライスを呼ばないと駄目なのだ。

 誘導する宇宙船が必要だったりと大仕事だ。



「今度のボーナス弾んどくよ!」

「いつでも任せるにゃ~♪」


「寸志だけど……」

「……にゃ?」


 一旦動き出すと、艦の両側にある巨大なインテークに宇宙空間のダークエネルギーを取り込み、エンジンシリンダー内で燃料であるアダマンタイトと混合し、連続で爆縮させるのだ。


 仕組みが単純な分、燃費は良い。

 一度エンジンがかかればという前提が付くが……。




☆★☆★☆


 無事に衛星アトラスを出航したハンニバルは、宇宙海賊が潜んでいた星系である辺境星域シャーウッドに来ていた……。


 実は、彼等が燃料をどうやって調達しているかが謎だった。

 海賊の船の一隻はエルゴエンジンだったのだ。


 かのエンジンは優秀だが、燃料にアダマンタイトが必要なのである。

 アダマンタイトは帝国、共和国ともに厳重管理がなされていたのだ……。

 宇宙海賊に正規で手に入るモノでは無かった。


 数日間、小惑星帯を航行ののち……。



「宇宙油井らしきものがあったポコ!」

「確かにアダマンタイトが微量に検出されますわ♪」




――こうして、宇宙海賊の隠しアダマンタイト鉱区を発見。

 我がハンニバル開発公社は、この地域のエネルギー開発権を50年分ほど帝国政府より買い上げた。


 これは現在の世界で言えば、石油開発にあたる。

 ちょっとした巨大プロジェクトだった。



 大型化したハンニバルの格納施設で、石油プラントを運び、現地で宇宙油井を組み立てた。

 ここで燃料精製して衛星アトラスの貯蔵タンクに運ぶ手はずだった。


 現在のハンニバルは、完全には艤装が終わっていない。

 よって現在、空いている区画が多くあり、巨大な輸送艦として普段は使っていた。


 きっと全長800mは大きすぎたのだ……。




☆★☆★☆


 このころ帝国軍と共和国軍の戦線は膠着状態になっていた。

 つい最近まで共和国の方が優勢だったのだが、次期大統領選が近く、議会の反戦派を考慮したために攻撃作戦の好機を逸したのだ。

 そのため、両軍は泥沼のような戦線を打開するために奔走していた……。




「……でだ、ヴェロヴェマ大佐。このC-136方面の探査を命じる!」

「かしこまりました!」


 帝国軍総司令部から私に命じられたのは、両軍の主戦線を迂回した共和国への進撃路の開拓だった。

 いわゆる未開の地域の調査である……。


 いままで航行ルートにならなかったのには、理由がある。

 それはブラックホールや不明瞭なガス雲等の危険がある、危険宙域の可能性が高かった。




 私達はオムライスとジンギスカンをエールパ星系の防衛に残し、ハンニバル単艦での作戦実行を決めた。



 エンジンちゃん、機嫌を損ねて止まらないでね……。

 ……無事故を祈るような思いで、巨艦ハンニバルは静かに出航した。


今から10年以上も前。

作者が遊んでいたMMOではクリスマスイブ当日になると、皆さん物凄く接続率が下がった記憶があります (*´▽`*)

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