宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第百二十二話……戦場の魔神ヴェロヴェマ

公開日時: 2021年1月5日(火) 19:29
文字数:2,054

――俺の名はトロスト。

 階級は中将。

 カリバーン帝国宇宙軍第六艦隊の司令官だ。


 俺はこのゲームをかなりやり込んでいる。


 名のあるプログラムにチートプログラムも組んでもらって、RMTにも何百万円もつぎ込んだ。

 俺のことを師匠と慕う奴もいた。神と言って慕ってくれたやつもいた。

 やはり世の中、金だよな。

 貧乏庶民よ、くたばれてんだ。


 地球でのいざこざで、ユーザーがめっきり減ったが、俺は課金力で成り上がってやった。

 なんなら運営だって買収したっていい。


 なんたって俺の親父は、大手自動車メーカーの創業家で常務執行役だぞ。

 ちなみに次期社長なんだ。


 俺に手に入らないものは何もない。

 友達も地位も、優しくて美しい女も例外ではない……。


 しかし、ゲームの中で出てきやがったヴェロヴェマ。

 こいつが許せねぇ……。


 チートと金で稼ぎまくった俺でさえ、中将になれるのが精いっぱいなのに、こいつは大将にまでなってやがる。RMT仲間のシェリオもこいつのせいで、グングニル共和国の監獄行きだ。

 許せねぇ。絶対に!!


 このヴェロヴェマってやつは本当に腐ってやがる。

 今すぐ地獄に送ってやるぜ。

 なんといっても俺は神で、皆の師匠だもんな!


 今から、最高のクランマスターの戦略ってやつを見せてやるぜ。




「航空機全機発艦! 繰り返す、航空機全機発艦!」

「了解!」


「宇宙空母8隻より、装備A型の284機発艦致しました!」


「うむ」



「……で、敵の迎撃機は!?」

「はっ! 制空戦闘機56機及び、重雷撃機一機です!」


「うははは! 奴等は戦闘機が足らず、艦船攻撃用の雷撃機までだしてきたか!」



 ……しかし、俺は油断しない。

 これこそ俺が、みんなに師匠と言われている所以である。



「全砲門開け! 長距離射撃開始!」


 戦艦と重巡の大口径レーザーが敵巨艦を襲う。


 味方の艦載機が、多少巻き込まれるが仕方あるまい……。

 ……大事の前の小事だ。



「ち、長距離砲撃、効果がありません!」

「て、敵、電磁障壁が異常です!」


「なんだと!? では艦載機は!?」


「ぜ、全機撃墜されました!」


「……な、馬鹿な! 奴は魔神か悪魔か!?」


 しかし、未来の大戦略家である俺は慌てない。

 いつの世にも不確実なことはあるのだ……。



「仕方ない、惑星破壊砲を前に出せ! 鬱陶しいハンニバルを全力で消すぞ!」


「それはリーゼンフェルト閣下から 艦隊戦では使うと言われているはずではありませんか? 希少な兵器の喪失リスクは避けるべきです!」


「うるさい! 父ちゃんに言いつけるぞ!」

「すぐさまエネルギー充電しろ!」


「了解!」


 ……俺は勝利を確信していた。




☆★☆★☆


「ふぅ~」


 私は艦橋で煙草を吸っていた。

 サボっていたわけではない。

 落ち着くために、何でもしておきたかったのだ。



「提督! 敵は惑星破壊砲を前面に出してきましたわ!」


「よし、これさえ叩けば、我々の安全がある程度確保されるぞ!」


 ……しかし、惑星破壊砲って大きいなぁ。

 全長8kmはありそうな機動要塞型の巨砲だった。



「主砲斉射!」

「了解ポコ!」


 ハンニバルの主砲から、大口径レーザーの光条が放たれる。

 ……しかし、敵のシールドを貫いても、本体の装甲モジュールが厚く、ダメージがあまり通ってそうになかった。


「砲撃中止!」


「マイクロ・クエーサー砲、発射用意!」

「了解!」


 戦慄が走る。

 この巨砲を撃つ場合にはハンニバルのシールド力が著しく下がる。

 一刻も早く、かつ正確に撃たねばならなかったのだ。



「エネルギー急速チャージ! なりふり構うな!」

「はっ!」


「……」

「エネルギー充填50%」

「……エネルギー充填78.6%」



【魔眼判定】……現状の充填で、敵破壊率99.8%です。


 ……!?


「充分だ! かまわん撃て!」

「了解ポコ!」


 ハンニバルのマイクロ・クエーサー砲から膨大なガンマ線が放たれる。


――ズシィィィィン



 その高出力エネルギーの束は、敵旗艦と惑星破壊砲を粉々に吹き飛ばした。



「命中! やったポコ!」

「やりましたわ!」


「あなたは雑魚だ! 掃討せよ!」


「「「了解!」」」



 正直、残った無傷の敵艦船は、未だ98隻を数えた。

 雑魚というにはあまりにも多い数だった。


 しかし勢いに任せ、ハンニバルとその艦載機群は次々に敵を打ち破った 。

 主砲塔の大口径レーザー砲が咆え、大型ミサイルが次々に敵を撃破した。

 艦載機群も宙を舞い、指揮官を失った敵艦を次々に葬った。


 旗艦と頼みの惑星破壊砲を一瞬で破壊され、敵艦隊は混乱の極みだった。

 逃げまどう艦と、戦おうとする艦艇が交錯し、激突したり同士討ちをも起こす。

 敵からすれば、阿鼻叫喚の世界だった。



「私も出るぞ!」


 私も愛機に跳び乗り、管制に告げる。



「ケルベロス発進!」


「了解!」


 電磁カタパルトの強烈な加速Gが、この日だけは心地よかった。




☆★☆★☆


(……数時間後)


「敵艦隊、敗走していきます!」



「追撃せよ! 一隻も逃がすな!!」


「了解!」




 ……この日ハンニバルは、敵艦56隻を撃沈。83隻を中大破。残りの多くを敗走に追いやった。

 たった一隻で一個艦隊を敗走せしめる前人未到の大戦果と、前代未聞の大勝利を挙げた。


 ヴェロヴェマ提督という名とともに……。

☆★☆

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


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