宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第六十一話……再びの目薬

公開日時: 2020年12月2日(水) 05:01
文字数:2,386

 我がエールパ星系艦隊は辛くも勝利し、スプーン星系を占拠した。

 後続の帝国軍の軍政部隊が来たため、占領政策は彼らに任せて撤収した。


 ……その後。

 蛮王様の招きに応じて、惑星リーリヤにて祝勝会を開いた。



「今回の戦いは皆さんの勝利であり、私一人での勝利は到底ありえません……」


 メモを読みながらありきたりのスピーチをした。


 一応は宴席の主人公だったが、すぐに宴席は政財界の大物たちの交流の場に代わった。

 私はいわゆる酒の肴だったらしい。



☆★☆★☆


「う~辛い」

「……飲みすぎたかな?」


 タダ酒をたらふく飲んだ私は、とってあったホテルの一室に戻る。


 靴を脱ぎ棄て、部屋にて煙草をふかす。

 気だるくも、心地よく酔いが回る。


 ……至福のひと時だ。

 どうも宴席は肩がこる。

 私は一人の方が性にあっているのかもしれない。




コンコン。


『……だれだろう?』


 深夜、ホテルの扉をノックする音がした。

 気持ちが悪いので、明日にしてほしい。


 悪いがいないふりをした。



――が、


「カズヤ様、いらっしゃいますか?」



 『……ぇ?』


 慌てて鏡を見る。

 一つ目巨人の姿だ。

 肌も緑色でゲームの中に違いない。


 なぜ私のリアルの世界の名前を知っている!?



 煙草の火を消し、急いでドアを開ける。

 そこには背の小さな老婆がいた。



「へっへっへ、こんばんは」



『!? 以前こんなことあったぞ!』




☆★☆★☆


 ……私は老婆を部屋に招き入れ、席を勧めた。



「お邪魔しますよ」

「どうぞ」


 備え付けのお茶をお出しし、すぐさま質問をぶつける。



「以前もお会いしましたよね。お婆さんはだれなんです?」


「女神じゃが!?」


「……へ?」


「女神ルドミラじゃよ」


 我こそはルドミラ教国の主神たる女神を自称する老婆。

 髪は白く細く、顔はシワシワな女神様だった。



「……、ではなぜ私の名前を知っているのです?」

「……女神じゃからの……」


 そう言って、ゆっくりとお茶をすする老婆。

 ……そう答えられては、何をどう聞いて良いかわからない。



「さてこの前、お金を貰ったのに占ってやれんかったのでな……」


 老婆はおもむろに二枚のカードをテーブルに置いた。

 片方は赤く、片方は蒼かった。



「どちらか好きな方を選べ」


 私は酔っているのもあり、何も考えず、あっさりと赤いカードを指さした。



「赤い方じゃな、よっと」


 老婆が赤いカードをめくる。


 カードの裏は赤色で描かれた地球のような絵だった。


 ……そこからすぐ、私の意識は眠気で深い闇に沈んだようだった。




☆★☆★☆


 現実世界のアパートにて起きる。

 空は良い天気だ。


 うぇ……、飲みすぎで気持ちが悪い。

 ゲームの中の二日酔いが、現実世界の体にも波及したようだ。



――ピンポーン

 玄関のチャイムが鳴る。


 宅配便だった。

 サインを書き、荷物を受け取る。



 荷物の差出人は再びの『VR・AVS』社。今やっているVRゲームの運営会社だ。


 メッセージカードには『当選おめでとうございます』と書かれている。


 箱を開けた中身は目薬だった。

 眼も疲れていたので、有難く眼薬をさす。



『!?』


 目薬をさした後、以前も貰った目薬をさしたことを思い出す。


 慌ててPCの電源を入れ、ゲームの中の自分のステータスを覗き込んだ。




【DATE】


名前・ヴェロヴェマ


提督レベル・A+級

特定スキル・羅針眼

A級スキル・魔眼

乗艦・装甲戦艦ハンニバル

階級・准将

爵位・男爵

領地・衛星アトラス、衛星ガイア


…………。

……。



『……!? A級スキル魔眼ってなんだ??』


 マニュアルを読むが、相変わらず詳しいことは何も書かれていない。

 私は少し考えた後、悩むのを諦めた。




 布団を干した後、少し歩いて駅前の牛丼屋で昼食をとる。


『……MASA中央宇宙局の報道によりますと、地球に巨大小惑星が近づいているとのことです……』


 牛丼屋に備え付けのTVでニュースを見る。


 もし、小惑星が地球に極端に近づけば、A国が戦略ミサイルで進行方向を変えるらしい。

 ……なんでもできる世の中だな。



 牛丼大盛りの卵付きを食べた後、お金を払って外に出る。

 見上げると、どこまでも続く青空だった。



 それから、のんびりとアパートの自室に帰り、再びVRゲーム用のカプセルに入る。


 カプセルを内側から閉め、いつもの赤いボタンを押す。

 心地よい冷たい白煙に包まれ、意識が遠ざかる。



――天賦スキル

【魔眼】を手に入れました。




『……知っているさ』


 誰にというわけでなく、一人呟いた。




☆★☆★☆


 ゲームの世界は、再び造船活況となっていた。

 現在、グングニル共和国はカリバーン帝国とルドミラ教国の二方面で大規模な戦闘を行っている。


 軍籍のみならず民間の宇宙船も多くが破損し、船や鋼材の値段は跳ね上がった。



「お金持ちポコ♪」

「うれしいにゃ♪」


 再びの戦時景気で活況を呈するハンニバル開発公社。


 ゲームの世界だからと、素直に活況を喜んでおく私。

 余剰な資源を売り払い、返済資金にメドを立てる。



「……いまのうちにお金を返さないとね」

「珍しいですわね……」


 クリームヒルトさんが珍しいものを見るような眼で私を見る。

 ……そりゃあ、借金を返すときもありますよ (´・ω・`)




 前回の戦いで、拿捕した船が多かったのも幸運だった。

 巨大な戦果として、巨大宇宙母艦ハボクックを衛星リーリヤに曳航。



「大きいクマー!!」


 クマ整備長殿がその大きさに驚く。


 ドックで分解してみると、何とこの船は貴重なエルゴ機関を4つも搭載していた。

 ……そりゃあ、防御スクリーンが堅いわけだ。


 帝国本国の船籍事務所に、私の名前で新規のエルゴ機関の保有登録をする。

 エルゴ機関は貴重なので、所有は登録が必要だったのだ。



 ハボクックは部品取りをした後、残念ながら解体することにした。

 あまりにも巨大で、維持費が払える見込みが無かったのだ。




☆★☆★☆


「……さてと、ログアウトするか……」


 艦長室で一人ログアウトしようとしたが、エラー表示がでる。



 『……なになに?』


【ログアウトに必要な電圧が不足しています】


 ……って、リアル社会は停電でもしてるのか!?

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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