我がエールパ星系艦隊は辛くも勝利し、スプーン星系を占拠した。
後続の帝国軍の軍政部隊が来たため、占領政策は彼らに任せて撤収した。
……その後。
蛮王様の招きに応じて、惑星リーリヤにて祝勝会を開いた。
「今回の戦いは皆さんの勝利であり、私一人での勝利は到底ありえません……」
メモを読みながらありきたりのスピーチをした。
一応は宴席の主人公だったが、すぐに宴席は政財界の大物たちの交流の場に代わった。
私はいわゆる酒の肴だったらしい。
☆★☆★☆
「う~辛い」
「……飲みすぎたかな?」
タダ酒をたらふく飲んだ私は、とってあったホテルの一室に戻る。
靴を脱ぎ棄て、部屋にて煙草をふかす。
気だるくも、心地よく酔いが回る。
……至福のひと時だ。
どうも宴席は肩がこる。
私は一人の方が性にあっているのかもしれない。
コンコン。
『……だれだろう?』
深夜、ホテルの扉をノックする音がした。
気持ちが悪いので、明日にしてほしい。
悪いがいないふりをした。
――が、
「カズヤ様、いらっしゃいますか?」
『……ぇ?』
慌てて鏡を見る。
一つ目巨人の姿だ。
肌も緑色でゲームの中に違いない。
なぜ私のリアルの世界の名前を知っている!?
煙草の火を消し、急いでドアを開ける。
そこには背の小さな老婆がいた。
「へっへっへ、こんばんは」
『!? 以前こんなことあったぞ!』
☆★☆★☆
……私は老婆を部屋に招き入れ、席を勧めた。
「お邪魔しますよ」
「どうぞ」
備え付けのお茶をお出しし、すぐさま質問をぶつける。
「以前もお会いしましたよね。お婆さんはだれなんです?」
「女神じゃが!?」
「……へ?」
「女神ルドミラじゃよ」
我こそはルドミラ教国の主神たる女神を自称する老婆。
髪は白く細く、顔はシワシワな女神様だった。
「……、ではなぜ私の名前を知っているのです?」
「……女神じゃからの……」
そう言って、ゆっくりとお茶をすする老婆。
……そう答えられては、何をどう聞いて良いかわからない。
「さてこの前、お金を貰ったのに占ってやれんかったのでな……」
老婆はおもむろに二枚のカードをテーブルに置いた。
片方は赤く、片方は蒼かった。
「どちらか好きな方を選べ」
私は酔っているのもあり、何も考えず、あっさりと赤いカードを指さした。
「赤い方じゃな、よっと」
老婆が赤いカードをめくる。
カードの裏は赤色で描かれた地球のような絵だった。
……そこからすぐ、私の意識は眠気で深い闇に沈んだようだった。
☆★☆★☆
現実世界のアパートにて起きる。
空は良い天気だ。
うぇ……、飲みすぎで気持ちが悪い。
ゲームの中の二日酔いが、現実世界の体にも波及したようだ。
――ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
宅配便だった。
サインを書き、荷物を受け取る。
荷物の差出人は再びの『VR・AVS』社。今やっているVRゲームの運営会社だ。
メッセージカードには『当選おめでとうございます』と書かれている。
箱を開けた中身は目薬だった。
眼も疲れていたので、有難く眼薬をさす。
『!?』
目薬をさした後、以前も貰った目薬をさしたことを思い出す。
慌ててPCの電源を入れ、ゲームの中の自分のステータスを覗き込んだ。
【DATE】
名前・ヴェロヴェマ
提督レベル・A+級
特定スキル・羅針眼
A級スキル・魔眼
乗艦・装甲戦艦ハンニバル
階級・准将
爵位・男爵
領地・衛星アトラス、衛星ガイア
…………。
……。
『……!? A級スキル魔眼ってなんだ??』
マニュアルを読むが、相変わらず詳しいことは何も書かれていない。
私は少し考えた後、悩むのを諦めた。
布団を干した後、少し歩いて駅前の牛丼屋で昼食をとる。
『……MASA中央宇宙局の報道によりますと、地球に巨大小惑星が近づいているとのことです……』
牛丼屋に備え付けのTVでニュースを見る。
もし、小惑星が地球に極端に近づけば、A国が戦略ミサイルで進行方向を変えるらしい。
……なんでもできる世の中だな。
牛丼大盛りの卵付きを食べた後、お金を払って外に出る。
見上げると、どこまでも続く青空だった。
それから、のんびりとアパートの自室に帰り、再びVRゲーム用のカプセルに入る。
カプセルを内側から閉め、いつもの赤いボタンを押す。
心地よい冷たい白煙に包まれ、意識が遠ざかる。
――天賦スキル
【魔眼】を手に入れました。
『……知っているさ』
誰にというわけでなく、一人呟いた。
☆★☆★☆
ゲームの世界は、再び造船活況となっていた。
現在、グングニル共和国はカリバーン帝国とルドミラ教国の二方面で大規模な戦闘を行っている。
軍籍のみならず民間の宇宙船も多くが破損し、船や鋼材の値段は跳ね上がった。
「お金持ちポコ♪」
「うれしいにゃ♪」
再びの戦時景気で活況を呈するハンニバル開発公社。
ゲームの世界だからと、素直に活況を喜んでおく私。
余剰な資源を売り払い、返済資金にメドを立てる。
「……いまのうちにお金を返さないとね」
「珍しいですわね……」
クリームヒルトさんが珍しいものを見るような眼で私を見る。
……そりゃあ、借金を返すときもありますよ (´・ω・`)
前回の戦いで、拿捕した船が多かったのも幸運だった。
巨大な戦果として、巨大宇宙母艦ハボクックを衛星リーリヤに曳航。
「大きいクマー!!」
クマ整備長殿がその大きさに驚く。
ドックで分解してみると、何とこの船は貴重なエルゴ機関を4つも搭載していた。
……そりゃあ、防御スクリーンが堅いわけだ。
帝国本国の船籍事務所に、私の名前で新規のエルゴ機関の保有登録をする。
エルゴ機関は貴重なので、所有は登録が必要だったのだ。
ハボクックは部品取りをした後、残念ながら解体することにした。
あまりにも巨大で、維持費が払える見込みが無かったのだ。
☆★☆★☆
「……さてと、ログアウトするか……」
艦長室で一人ログアウトしようとしたが、エラー表示がでる。
『……なになに?』
【ログアウトに必要な電圧が不足しています】
……って、リアル社会は停電でもしてるのか!?
読み終わったら、ポイントを付けましょう!