宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第七十六話……屋上の夕日

公開日時: 2020年12月7日(月) 16:31
文字数:2,199

「えぃ!」


 副官殿が敵ロボットをレーザーブレードで叩き切る。

 彼女は返り血ならぬ、返り機械油を沢山浴びていた。



「あと、3体メェ!!」

「おうよ!」


 司令室らしきところに、ごまんといた謎の敵ロボットもあと3体。

 バフォメットさんが、両手にもったガトリンク砲でなぎ倒す。


――DODODO!


 煙の下には動く敵の姿は無かった。

 ようやくのことでの勝利の様だった。



「司令部占拠クマ!」

「勝ったポコ!」


 足元は血の海ならぬ、機械油の海だった。

 コチラも負傷者を多数出した激戦であった。


 辺りは屑鉄スクラップになった敵ロボットの残骸が山となっていた。



「どれどれ?」

「結構狭いですわね」


 私達は陥落させた敵指令室を見学する。

 ところどころ漏電し、煙が上がっている。


 多数のモニターが並んでおり、別ルートで苦戦する味方の映像も映っていた。



「スイッチOFFっと!」


 私は手元のブレーカーらしきものを落とした。


 ……SHUUU!


 部屋の灯が落ち、映像先の敵ロボットは音も無く停止していった。

 すぐさま、非常灯が灯った。



 私は再び電源が入ったモニターに映った文字を読む。



「ふむふむ、再起動しますか? って、NOだよね?」


「アニキ! なんでその文字が読めるんだ!?」


「え? 皆読めないの?」


「読めませんわ!」

「読めないポコ」


 同じくモニターを覗き込むみんなには読めないようだが、私にはスラスラと読める。


 ……なになに再設定のやり方?

 分からないなりにキーを打ち込んでみた。




 ……PIPIPI


 稼働した機械音と共に、辺りに白い光が戻る。



【新支配人・ヴェロヴェマ様 Y/N?】


 ……YESっと。

 壊れたロボットたちは動かなかったが、画面上に新たにナビゲーターの姿が映る。



『何なりとご命令を、ヴェロヴェマ様!』


 ナビゲーターが我々の言葉で挨拶をしてくれた。



「凄いポコ!」

「やっぱアニキは凄いんだな!」


 よくは判らなかったが、この謎の惑星のシステムを乗っ取ることに成功したようだった。



『……王家ノ方デスカ?』


 家事用らしきロボットが、瓦礫の陰から這い出てきた。



「!?」


『貴様、王家ノ者デハナイナ!』

『……サテハ、邪眼ノ継承者ダナ?!』


――DOW!


「うっせぇんだよ!」


 家事ロボットはアルベルト王子のハンドガンで破壊されてしまった。

 ……しかし、いったい、この家事ロボットは何が言いたかったのだろうか?


 その後、我々は別ルートへ向っていた負傷者たちを助け、一旦ハンニバルに戻った。




☆★☆★☆


 ハンニバルに帰ると、艦橋は負傷者で溢れかえっていた。


 我々が地下に突入した際、アルベルト王子の部下たちは激しい地上戦を展開してくれていたらしい。

 我々のルートはその分手薄だったようだった。



「分析終わったクマ♪」

「ありがとう!」


 謎の惑星の正体が、ハンニバルのコンピューターによって一部解析された。


 不明な事項は多いが、惑星そのものが古代アヴァロンの超兵器とのことだった。


 古代アヴァロンの遺跡は基本的に動かない状態で発見される。

 先ほどのように稼働中で発見されたのは、この100年では記録されていなかった。



 ……正体としては、古代アヴァロンの貴族の別荘とのことだった。

 近づく敵対者に対して、セキュリティシステムが正当防衛をした感じなのだろう。


 かなり物騒なセキュリティシステムだが……。



「……で、この謎惑星はどうするポコ?」


「利用できるなら、接収したいよね」

「いただきニャ♪」


 全ての解明はしばらく時間がかかるとクマ整備長に言われた。




 ……私は疲れたので、一旦艦長室に戻った。


 機械油で汚れた装甲服を脱ぎ棄て、ベッドに寝転がる。


「……疲れたなぁ……」




 ……PIPIPI

 突如、枕もとのアラームが鳴る。



【システム】……ログアウトされますか?


「ぇ? 帰れるの!?」


【システム】……YES


 私は久々にこの世界から、ログアウトすることにした。




☆★☆★☆


 瞼が重い……。

 目を開けると、そこは見知らぬ白い天井だった。



「おう、カズヤ起きたか?」


 寝ている私を、兄が上からのぞき込んでくるのが見えた。



「兄ちゃん、ここはどこ?」


「病院だ、まあ、まだ寝てろ!」


 私には兄が二人いた。

 親はもういない。

 死んだという訳ではなく、二人でどこかへ行ってしまっていた。


 ……よって私の育ての親は、上の兄二人という訳だった。



 私の右腕には点滴が繋がれていた。

 そう、しばらく食べていないので、腕はやせ細っていた。


 久方ぶりに食べた現実世界の食事に、体が受け付けず、激しくむせた。

 ……弱った病人の様だった。




 兄に押され、屋上に車いすで連れて来られる。

 外は気持ちの良い風が吹いていた。



「お前さ、親の顔を覚えているか?」


「……あんまり覚えていない」


「お前はさ、かあちゃんに聞いたら捨て子だったらしいぞ……」


「え!?」


 初めて聞いた。


 ……私はこの兄と血がつながっていないというのか!?



「じゃあ、私は誰の子なのかな?」


「ははは、宇宙人じゃないか?」


 兄が快活に笑いながらにこたえる。



「……え!?」


「だってお前は先日、遥か宇宙の向こうの世界から、この世界に大砲撃っただろ!?」


 兄は夕日をぼんやり眺めているようだ。



「あれって、ゲームの世界からなのかな?」


「さあなぁ、今俺たちが立っている世界も、俺たちが勝手に現実と呼んでいるゲームの世界かもなぁ……」


 私は寂しい気持ちになったが、兄が楽しそうな顔をしていたので少し安心した。



「……まぁ、晩飯にしようや!」


 兄に優しく肩をたたかれ、屋上の夕日をあとにしたのだった……。

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