宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第百三十八話……新首都星セイレーン

公開日時: 2021年1月22日(金) 10:51
文字数:2,019

「貴官を元帥に任じる、又、宇宙艦隊司令長官にも任ずる。もって帝国艦隊の全数を指揮下に収めよ!」


「はっ!」


 レオナルド星系の仮宮廷において、私は皇帝陛下から元帥杖を賜る。

 二階級昇進。

 この世界では不吉なことではなく、たまにあるらしい……。


 任命式会場は、現在避難先という感じの為、文武百官が居並ぶ中というほどではなかったが、それなりの来賓の中での任命式だった。


 ちなみに、非人族での元帥に任命は初。

 クリームヒルトさんも同時に、准将に昇進した。

 こちらも、アンドロイド史上初の将官である。



 ……その後、立食式のパーティーとなった。



「ヴェロヴェマ殿、おめでとうございます!」

「ありがとうございます!


「……」

「……」


 名士と思しき方から、次々に祝辞を受けるが、正直誰が誰やらわからない。

 凋落の感がある、パウリーネ朝でもこれだけの来賓がくるのだ。

 皇帝陛下のご威光は凄いものがあった。



「小僧! おめでとう!」

「あ、ありがとうございます!」


 シャルンホルスト退役中将に肩を叩かれる。

 私の師ともいえる人だ。

 この先も、地上戦では永遠に勝てないだろうが……。


 パウルス元帥など、歴戦の諸将は帝都バルバロッサへの惑星破壊砲の攻撃によって、現在も行方不明だ。

 よって、現在のパウリーネ様を奉じる戦力は、1個艦隊と惑星地上軍2個師団に過ぎない。

 また、宇宙艦隊司令長官と言っても、現在はわずか一個艦隊250隻余りの長といった感じだった。


 ……まぁ、これから増やせばいいよね。



「お料理が美味しいクマ♪」

「お肉が美味しいポコ♪」


「……あ、メインのお肉でてきたの? 食べに行かなきゃ!」

「おくれると、なくなりますわ!」


 宇宙一、食い意地の張った元帥と、その幕僚たちだった……。




☆★☆★☆


「この書類もお願いしますね!」

「これにもサインをお願いします!」


「はい!」


 宇宙艦隊司令長官にもなると、軍政の比率も大きくなった……。

 前線の一提督という訳にもいかない。


 ……しかし、事務仕事の裁量幅も大きかった。



「新規工廠計画は如何しましょう!?」

「ハンニバル開発公社に発注して!」


「了解です!」


 ……え?

 汚職?

 きっと、きのせい (´・ω・`)




 このころになると、トロスト提督を失い凋落気味の新カリバーン帝国に対して、グングニル共和国が協定を破棄して、宣戦布告。

 ……両国が戦闘状態に入る。



「また、宇宙船の発注入りましたわ!」

「すぐヨハンさんに伝えて!」


「了解ポコ!」


 資材や鉱石価格の上昇と、宇宙船価格の上昇。

 再びハンニバル開発公社は、造船活況で潤っていったのだった……。




☆★☆★☆


 惑星破壊砲によって、首都バルバロッサがあった惑星を破壊されていたため、パウリーネ政権はレオナルド星系に、新首都建設を予定していた。


 新首都建設予定惑星は、第三惑星セイレーンに定められた。

 いくらか寒冷惑星だが、気候が安定していたのがメリットだった。



「浚渫工事ポコ!」

「ガンガン掘ってね!」


 私は、首都建設に伴い、港湾施設建設の任務を帯びていた。

 水上型の港湾の予定で、海上船舶と宇宙航行船舶兼用の施設の予定だった。


 港の予定地の横では、高炉を設置し、鋼材を大量生産した。

 新規の居住地など、鋼材と硬質セメントはいくらあっても足りなかった。


 食料生産プラントを建設し、衛星軌道上には、簡易の小型防衛衛星も打ち上げた。

 雲に飛び込むロケットの灯が美しい……。



「……並んで下さい!」

「押したらダメポコ!」


 新規に建設した仮宇宙港には、早速大量の移民が押し寄せてきた。

 建設ラッシュにおける好景気が、人々の利益と雇用を大量に生み出したからだ。

 すぐに住宅プラントは埋まり、下水処理プラントはフル稼働した。


すぐにも公害が発生し、治安問題も浮上してきた。

……にぎやかになれば良いと言ったものでもなかった。




――三か月後。


「……全人類に告げる、朕はここを全宇宙発展の中心の礎となす!」


 皇帝パウリーネ様の宣言と共に、惑星セイレーンはカリバーン帝国正統政府の首都星となった。

 街はお祭り騒ぎとなり、にぎやかな喧騒に包まれた。


 次々にお祝いの花火が揚がる。

 出店がでており、パレードも行われた。

 道化師の催し物に、小さな子供たちが喜んでいた……。


 大きな皇帝の住居である美しく荘厳な宮殿も完成し、各種役所も整備された。

 警察本部、入国管理施設、外交部、中央銀行。

 さまざまな建設物が、次々と建っていった……。


 ……そう、私のオフィスである帝国艦隊司令本部も完成した。

 各作戦課の施設も入り、惑星地上軍の司令部も併存した。

 他に人材もいないので、一応は本部長も兼務予定である。


 ちなみに、この本部の倉庫には、『ヴェロヴェマ元帥府』の一室を設けた。

 今は、畳三畳の寂しい小さな部屋である。


 何時かは予算を付けてもらって、大きな施設にしてみたいものだ……。


 私の夢は広がる。

 目指せ! 銀河一の宇宙艦隊の提督へ!

 ハンニバルも宇宙最強の戦艦を目指して……。


 翌日の朝日はまぶしく、のぼる太陽は帝国の前途を祝福しているように思えた。


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