「重力波ビーム砲用意!」
「てぇ!」
――ドォォォン
赤黒い光線の先にある山脈が、轟音を立てて削れる。
……N国への新カリバーン帝国の攻撃が終わっても、未だ地球上で、南半球のルドミラ側の同盟諸国と、北半球側の国連諸国の戦いは続いていた。
ルドミラ教国は地球での利権を確立すべく、アルデンヌ星系のワームホールを使って、次々に兵力を投入していた。
なぜなら、地球側の抵抗も大きく、地上戦力の増援が必須だったのである。
ルドミラ教国は、その持てる戦力の八割強を、アルデンヌ星系及び地球へと振り向けていたのだった……。
「今こそ立ち上がれ!」
「おう!」
こうした中、ルドミラ勢力圏で、戦力が薄い地域では、迫害されていたアンドロイドたちや、非人族系民族たちが反乱を起こす。
ルドミラ教の教義は、人族絶対優位のモノだったのだ。
たまった鬱積は相当なもので、内乱はルドミラ教国の各地へと飛び火。
大規模な反乱となった……。
……民衆の反乱など、武器も持たず、物資も乏しいことが多い。
よって、安易に反乱は鎮圧されるかにも見えた。
「反乱軍側の攻撃機接近!」
「……や、奴らは何故そのような兵器を持っているのだ!?」
「仕方ない、撤退しろ!」
「了解!」
意外にも、反乱軍は立派な兵器を携え、ルドミラ各地の地方宇宙港などの要地を占領。
瞬く間に、地方警備部隊などを追い出した。
「我々は独立を宣言する!」
「……自治を要求する!」
各地で自治を目指す勢力が勃興した。
……しかし、その戦力の出どころとは!?
「お支払いは5年後でよろしくニャ♪」
「いつも助かってるよ!」
高速戦艦オムライスが、物資を満載したコンテナを反乱軍にコッソリ届ける。
……反乱軍の背後にいたのは、造船などの工業力を有していたハンニバル開発公社だった。
「お客さんから注文が入ったニャ♪」
「そんな早く作れないクマ!」
「時は金なりニャ! 急ぐニャ!」
「急ぐポコ!」
エールパ星系及び、ラム星系の工廠などの工業プラントは、大増産体制でフル稼働だった。
「凄い売り上げですわ!」
「ほとんど売掛だけどね!」
……ある種、回収不能になるかもしれない案件であったのだが。
間接的に、地球への援護となるので、私は反乱軍への武器や物資の供与を推し進めていたのだった……。
☆★☆★☆
「提督もお仕事するニャ!」
狐耳の猫族であるマルガレーテ嬢に怒られる。
「……でも、何したらいいの?」
「ハンニバルで反乱軍を助けて来るにゃ!」
「ええー!?」
N国支援でハンニバルは傷つき、メンテナンスに入っていた。
「軽い損傷だから大丈夫ニャ! 会社の売り上げが掛かっているニャ! 急いで行くニャ!」
ペシペシと尻尾で叩かれる。
「艦長、行くポコ!」
「いきましょうですわ!」
幕僚の皆様はやる気満々だ……。
久しぶりにゴロゴロできると思ったら、皆様からお叱りを受けた。
……仕方ない、行きますか (`・ω・´)シ
(……三日後)
「ハンニバル出航用意!」
「エネルギーを機関部へ注入、圧力制御良し!」
「機関点火!」
「ハンニバル始動!」
「長距離跳躍開始!」
……再び、ハンニバルは戦いの地へと赴いていった。
☆★☆★☆
「危険宙域が続くぞ、気を引き締めろ!」
「了解!」
ルドミラ教国の搦手側から反乱軍を援護する作戦を立てる。
よって、主要航路が使えないために、ブラックホールやら中性子性やら、宇宙海獣の巣窟のある危険宙域を通っていた。
「左舷、大型彗星至近!」
「主舵一杯、第二戦速へ!」
ありとあらゆる障害物をさけ、航海を続ける。
――スキル【邪眼】報告……【航海スキル】が【AA+】に上昇しました!
特殊スキルである【邪眼】がステータス上昇を教えてくれる。
このスキルを得てから、PCでステータスを確認する手間が省けていたのだ。
『今日のランチは何だろう?』
――スキル【邪眼】報告……【ハンバーグ】の可能性が89.62%です。
……実は、滅茶苦茶どうでもいいことにも使っていた (´・ω・`)
しかし、ハンバーグなら人気なので、お昼はダッシュで食堂に並ばないとだな。
私は意外と危険宙域の航海は慣れっこになっていたかもしれない……。
☆★☆★☆
「長距離跳躍ワープアウト!」
「目標星域の外縁部に到達! 近くに敵影確認せず!」
「機関状態も正常ですわ!」
「良し!」
「……では、作戦開始!」
「「「了解!」」」
ハンニバルは早速、反乱軍の手助けをするために、コソコソ動き回った。
それは、時には艦砲射撃による支援であり、時には惑星地上軍への航空支援であり、食料などの物資輸送だった。
「……これもお願いしますわ!」
「了解です!」
しかし、最も頼りにされたのは、ハンニバルの左舷に付属してある簡易修理ドックであった。
200m級の艦船ならば、半格納の上、修理が出来たのだ。
……このサービスは価格を高めに設定していたが、便利だという話が反乱軍全体に伝わり、大盛況であった。
「……い、忙しいクマ!」
一人、整備班長のクマ殿だけは不満のようだったが……。
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