宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙を駆け敵を撃つ! タヌキの砲術長と副官のアンドロイドの仲間と一緒に敵を倒して目指せS級宇宙提督!
黒鯛の刺身♪
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第六十四話……子爵昇進とヨハン

公開日時: 2020年12月2日(水) 16:13
文字数:2,090

――カリバーン歴852年11月。



 私はツエルベルク星系、帝都バルバロッサの宮廷に呼び出されていた。

 スプーン星系攻略の褒美が与えられることになっていたのだ。


 宮殿の中、皇帝陛下に直々に目通りを許される。



「ヴェロヴェマ男爵! 朕はそなたを子爵にしようと思う!」


「あ……有難き幸せ」


 実は特に有難いとも思わないが、それは皇帝陛下に失礼だと思って、感謝の意を述べひれ伏した。



「……実はの、そなたに星系をやろうと思う。準星系じゃがな」


「ははっ」


 子爵以上になると、帝室より惑星などが与えられるらしい。

 当然のことだが、一定以上の税の納付が義務となる。



「これから忙しかろうと思うから、軍務は休ませてやるぞ!」


「……はい?」


 ……どういう意味だろう?

 素っ頓狂な返事をすると、



「陛下からの有難い仰せよの! ヴェロヴェマ予備役准将殿!」


 後ろから、この場に列席する将官たちの声が聞こえる。


 この世界において予備役とは、非常勤のことである。

 降格というより一種のお休みであり、正規軍からの解雇通告だった。


 ……子爵になって領地を貰ったが、軍をクビになった!?

 私はショックを受けたまま、その場を黙って引き下がった。




☆★☆★☆


 その後の宮廷晩さん会で、同席した蛮王さまに笑われる。



「うはは……、まぁな、3年で准将になったわけだし、当然に妬まれるわ!」


「しかし、明日から何をすればいいんでしょう?」


「それは頂いた領地の経営だろう?」


 私はサイドビジネスで開発を行っていたが、どうやらそれが本業になろうとしていた。



「もし戦役がひっ迫し、お主が必要となれば、再び准将でもどれるのだ。悪い話でもあるまい」


「……し、しかし」


 ゴネる私に、蛮王様はため息をつき、



「妬まれて暗殺される奴もいるのだ、ここはおとなしくしておけ」


 ……そうだった、私は一度暗殺されかけたのだ。

 現実社会で嫉妬されるほど出世したことがないので、思いもしなかった恵まれた環境だった。



「わかりました!」


「うむ、良い心がけだ!」


 蛮王様にいわれて、暫し頂いた領地の経営とやらに精神誠意取り組んでみようと思った。


 気を取り直し、出された高級料理を冷めないうちに頂いた。

 やはり上等なご飯は美味しいね。




☆★☆★☆



 次の日、ホテルを出て、帝国の内務管理局を訪ねる。

 ここで領地の証書の受け取りをするのだ。


 なんだか、現実世界の市役所か、銀行みたいな地味なところだった。



「こちらになります」


 番号札をとって待合室で待っていたら、中年の事務員さんが書類をもってきてくれた。

 その後、丁寧な説明を受けてサインをした。


 ……なんだか、凄く事務的だ。

 もっと華やかで厳かなのを期待したが、現実は凄く要らないコストを排除した手続きだった。

 無駄がないけど、夢もないね……。



 頂いた証書を手にして、登記手続きをしたあと、近くの喫茶店でデータセンターにアクセスした。



 頂いたのは準星系【ラム】。

 端末に打ち込み検索をかける。

 私は皆とドキドキして検索結果を覗き込んだ。



「……どんなところポコ?」


「たのしみですわね♪」



【検索結果】


 ……ラム星系。

 惑星一個。総人口0人。



 ……(´・ω・`) ぇ? なにここ?

 しかも場所が辺境連合国家の隣という、すごく辺鄙なところだった。


 ……どうやら私は、めちゃめちゃ辺境の惑星の領主になってしまったようだった。




☆★☆★☆


 ……2週間後。

 私は衛星アトラスにもどっていた。



 しかし……なんだかしょんぼりしている私。

 子爵になったがとても虚しい。

 いままで頑張ったのはなんだったんだ、と思う。


 私は軍を非常勤になり、エールパ星系艦隊司令官も罷免された。


 装甲戦艦ハンニバルを含め、幕僚と艦の保持は認められたが、新たに貰ったのは子爵の爵位と人口0人の領地のみ。

 しかも、帝室に毎年500万帝国ドルの上納金が必要と来ている。


 なんだかやっぱり釣り合わないようなぁ……。




「提督、領地支配に適任な人を連れてきましたわ♪」


 ……そう言えば、クリームヒルトさんに領地開発の為の人材を頼んでいたのだっけ。

 我が幕僚は戦闘士官ばかりで、内政向きの人がいなかったのだ。



「帝国製アンドロイドのヨハンと申します、閣下!」


 肌が緑色の初老の紳士といった感じの人だった。

 オールバックで白いひげが特徴の人の良さそうなおじさんだった。



「よろしく頼みますね」


 しかし……、この人の良さそうなおじさんが、人口0人の惑星を何とかしてくれるのだろうか、と拗ねるわたしだったが、



「とりあえず、住民2000人を募って参りましたが、いかがいたしましょう!?」


「是非、お願いいたします!!」



 ……ごめん、凄く使える素晴らしいおじさんのようだった (ノ∀`)




 その後、ヨハンさんの勧めでハンニバルの中に農園や養殖池などの食料プラントをつくった。

 赴任先の惑星で食料が手に入る保証がなかったのだ。


 ハンニバルは現在、800m級の大型双胴戦艦である。

 空いている区画はいくらでもあったのだ。




☆★☆★☆


【ヴェロヴェマ子爵家】概要


〇領主

・ヴェロヴェマ


〇家宰・メイド長

・クリームヒルト


〇家臣

・ポコリーヌ

・マルガレーテ

・バフォメット

・熊五郎

・ヨハン


〇領民

2000名


〇領地

ラム星系 他


(※注・エールパ星系の領地を除く)

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