●前回のおさらい●
ステラさんのバンドの加入が決まった後。
とある話題から、傍から見た『倉津君の女誑し具合』をステラさんに語られて、愕然とする倉津君。
そして3人の冷たい目線を浴びながらも「そんなちゃうわ~」っと言うニュアンスを残しながら第二音楽室に向けて逃亡(笑)
だが、この逃亡こそが、後に後悔を招く事に成る。
俺が、第二音楽室に向い。
いつも通り、ヤル気の無いノロノロした動きで歩いていると、何故か前方から『キュキュ』っと言う不思議な音が聞こえてきた。
これは音の感じから言って、水で濡れた靴が出す独特な足音だ。
それが数人分で聞こえてきたものだから、何かと思い、目を凝らして、そちらを必死に見てみると……真上さんのお友達である青山千秋さんと、そのご一行が、何故か、この辺鄙な場所をウロウロしている。
まだ大人達の文化祭が開催時間している時間だから、特に、これと言った不信に思う様な点はないと言えばないんだが……敢えて言えば、その中には、一緒に出店に向って行った筈の『真上さんの姿が』どうにも見当たらない。
此処だけが、唯一不明瞭な点だ。
まぁ、その事を含めてもだな。
青山さん達が道にでも迷ったと言う安易な方向性も在り得るので、出来無い親切ながらも、一旦、彼女達に声を掛けてみる事にした。
「あれ?そこに居るのって、青山さん達じゃねぇの?」
「えっ?あっ、誰かと思ったら、倉津さんじゃない♪倉津さんの方こそ、こんな所でなにしてるの?」
「いや、俺の方は、ちょっとした野暮用があってな。此処に来たんだが……いやいや、そうじゃなくてだな。そんな俺の事よりよぉ。青山さん達こそ、こんな辺鄙な場所で、なにやってんだ?道にでも迷ったのか?」
「あぁっと、まぁ、そんな感じかな」
「そっか。にしても、なんで、また、こんなややこしい所に入り込んだんだ?」
「あぁうん?折角、他校に来たんだから、校内探索の1つもしてみようって話になったんだけどね。調子に乗ってウロウロしてたら、変な所に入り込んじゃってね」
矢張り、単純に迷子の線か。
「あぁ、ヤッパリそうなのか。そりゃあ難儀だったな。それはそうとよぉ。真上さんは?姿が見えない様だが」
「えっ?真上?あっ、あれ、倉津さんの所に行くって言って、昼過ぎぐらいに別れたんだけど、教室の方に行ってないの?」
うん?
あぁ、この様子からして。
ひょっとしたら、ライブの時間と真上さんが教室に来た時間がバッテイングして、教室に誰も居ないから、そのままどこかに行っちまったのかな?
確かに、あの時帯はクラス全員が出払ってて、メイド喫茶自体が営業してなかったからなぁ。
もし、この予想が当たっているなら、真上さんには非常に申し訳のない事をしたな。
……けど、それにしては、少し変な話なんだよなぁ。
真上さんの、あの律儀な性格を考えたら『由佳達に手伝いをする』って約束をしてる以上、それを安易に反古する様な、いい加減な真似をするとは、どうしても思えない。
彼女の場合、なにかあったら、なにかあったで、間違いなく、最低でも俺に電話を掛けてくると思うんだがな。
なんか、この話、妙に納得出来ねぇな。
「あぁ、来てないな。けど、そうなると、真上さん、どこに行ったんだろうな?」
「行ってないんだ?……って事は……あぁ、また、あの子の悪い癖が出たのかも知れない」
「真上さんの悪い癖?なんだよ、それ?真上さんに、そんなもんがあるのか?」
「いや、あの、そこは悪いんだけど、聞き流して貰って良い?これ……真上の悪口に聞こえちゃうかも知れないから」
「悪口になるったって、そんな大層な話じゃないんだろ。ケチケチせずに教えてくれよ」
「そう言われても……ねぇ」
「なぁ、頼むって。真上さんとは、今後も仕事上の付き合いがあるかも知れねぇからよぉ。そう言う大事な事は、早目に知って置きたいんだよ」
「そっか。今後も付き合いがあるんだ。……ねぇ、みんな、どうしよっか?」
「あのさぁ、千秋。それなら言っちゃっても良いんじゃないかな。あの子が、倉津さんに迷惑かける前にさぁ。保険掛けといた方が良いよ」
「そうだよね。言っちゃっても、問題無いんじゃないかな。寧ろ、此処は包み隠さず、言って置いてあげるべきなんじゃない」
「そうだね。……倉津さんには、あの子の本性を知って置いて貰った方が良いよね」
オイオイ……単純に俺は、真上さんの癖とやらを聞きたいだけだったんだが、なんだかヤケの仰々しい話になってきたな。
大体にして、本性ってなんだよ?
まぁ癖から派生する本性って話なのは、最低限、俺にだって理解出来るけどよぉ。
それにしたって、これは、みんなで相談しなきゃいけない程の重大な話なのか?
なんだか彼女達とは、妙な温度差を感じるな?
「あっ、あの、倉津さん」
「なっ、なんだよ?」
「あの、1つだけ、お願いがあるんだけど。……この話は、絶対、私達から聞いたって、真上には言わないでね」
「あっ、あぁ、わかった」
妙に神妙な顔をしてるな。
こりゃあ相当、その真上さんの本性とやらで、厳しい話をされそうだな。
けどだな。
真上さんは、どこまで行っても真上さんだから。
どんな話が青山さん達から齎されたとしても、此処は、全てを受け入れるべきだよな。
おかしな話を聞いたとしても、彼女を変に疑う必要が無いのだけは、確かだからな。
「あっ、あのね。私達の言う、真上の悪い癖って言うのはね。約束を平気で破ったり、直ぐに嘘を付いたりする『虚言癖』の事なのよ」
はっ、はい?
なんて?
「はっ、はぁ?……あんな真正直な真上さんが嘘吐きだって言うのかよ?」
「うん。こんな事を急に言われて、気分を悪くしたら、ごめんね。でも、これ、全部、事実だから。出来れば信じて欲しい」
馬鹿な事を言うもんじゃないぞ。
真上さんが嘘吐きだなんて言葉、どこをどうやれば信用出来るって言うんだよ?
それでも、もし、あの人が嘘つきだって言うなら、世界中の人間の大半が嘘吐きになる、って言っても過言じゃないぞ。
あの人は、それ程の正直者だ。
だってよぉ、メイド服を作ってくれた時も、納期よりもズッと早くに納めてくれたし、追加注文の時も然り、一度として約束を違えた試しが無い。
それにだな、本人自身も『嘘を付くのも、付かれるのも嫌い』って断言してる。
これ等の行動を見れば『嘘吐き』なんて言葉は、どこにも当て嵌まらないんだがな。
何故、彼女達は、そんな事を言ったんだろうか?
……かと言ってだ。
今、俺の眼の前で話す青山さんも、嘘を付いてるとは思えない様な真剣な表情を浮かべている。
真実が見えないだけに、まずは此処に行き着いた詳しい事情を聞きださないとな。
判断するのは、そこからでも遅くない筈だ。
「ちょっとだけ待ってくれ。それって、本当に事実なのかよ?疑ってる訳じゃないんだが、俺には、どうにも信用出来無いんだが」
「あぁ、これだけじゃあ、信用出来ないのも当然だよね。けど、これ、本当なのよ」
「でも、少し話がおかしいくないか?俺が注文した衣装を納期より早く納めてくれたし。追加注文した衣装についても、これ同様に早期に納品してくれた。これじゃあ、嘘を付くどころか、彼女の対応は、実に誠実な対応だと思うんだが」
「あぁっと、言いたい事はわかるよ。それに理解したくない倉津さんの気持ちも良くわかる。けど、見た目に惑わされないでね。あの子は、いつも、そう言う手口を使うんで」
「手口って……それ、どういう事だよ?」
「う~んとね。本当は、友達の事を、こんな風に言いたくないんだけど。真上って、見た目があれでしょ。だから、自分に嵌るまでは、相手に、只管親切に振舞って、その人の心に入り込むのよ。それで、それが確認出来たら、自分の好き勝手な行動をし始める。……冷静に考えてみて、その辺に心当たりが無い?」
いやまぁ、そりゃあ親切にして貰ってるのも、多少は俺が真上さんに好意が有るのも否めねぇ話だがな。
ヤッパリ、どう考えても、あの人が、そんな『悪女』には見えないんだけどな。
なんなんだろうな、この嫌な違和感は?
「そりゃよぉ。全然、心当たりがないって言えば嘘になるけどよぉ。たった、それだけの事で、全てを信じろってのは、ちょっと証拠不十分だし、無理があるんじゃねぇか?」
「うん……そうだよね。イキナリこんな話を振られて、信用してじゃ、混乱もするよね。……だったらもぉ、いっその事、私が言った、この話の事は全部忘れてくれない?」
「いや、ちょっと待ってくれよ。一旦、此処まで聞かされて、イキナリ『忘れろ』って言われても、そう簡単には忘れられねぇって」
「けど、信じて貰えないなら、お互いの為にも忘れて貰った方が都合が良いんじゃない?この際だから、こんな話自体無かった事にして仕舞わない」
「まぁなぁ……確かに、そう言う手もあるんだろうけどよぉ。けど、聞いちまった以上、なんで、そんな話になるのか、気になるのも事実だろ。その話に行き着いた経緯でもなんかあんのかよ?」
そんな事を口に出しながらも、俺は、プンプンっと危険な臭いを感じていた。
故に、此処は、全てを聞かざるを得ないと判断した。
じゃないと、この青山さんが言う話の事実がどうあれ。
最後まで話を聞かないと、この意見が俺の中で影響して、多かれ少かれ真上さんを、そういう目で見てしまう可能性もあるからな。
ただそれだけに、イヤな話にならない事だけを望む。
「そんなに、この話の続きが気になるの?」
「そりゃあな。今後の為にも、真実を知ってる方が良いからな」
「だったら、知り合ったばかりで悪いんだけど。これから言う私の話を、どういう形であれ、一旦は、必ず信じて。じゃないと、流石にこれ以上は話せない」
「あぁ、わかったよ」
この後、予想もしなかった、とんでもない話が飛び出してくる。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
青山さんが語る真上さん像は『信頼を勝ち得るまでは献身的で、それ以降は我儘の成る』っと言う見解。
普通に聞けば、全くあり得ない話ではあるのですが。
真上さんの普段の生活を知らない倉津君にしたら、これが正しいのか、正しくないのかの判断はしづらい。
そして、そんな状況下の中にあって、語られて行く『真上さんの過去』
そこでは一体、どんな過去が語られて行くんでしょうね?
さぁ、真実はどれだ!!
……ってな感じのお話を次回は書きますので。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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