●前回のおさらい●
カジ君と千尋ちゃんを背に、学校を後にした倉津君。
そして、川崎にある真上さんの店まで来てみたものの……そこでは、なにやら言い争ってる真上さんと武藤さんの姿が。
何事かと思い、事情を聴いてみたら。
真上さんが追加報酬を受け取らない事で、武藤さんが怒ってる模様。
そして、それを理解した倉津君に、武藤さんが意見を聞いて来た。
「あぁっそ。じゃあ、ハッキリ言わして貰うけどな。今回の件に関して言えば、全面的に真上さんが悪い」
「えっ?」
「そりゃあそうでしょ。武藤にしたら、これを断られたんじゃ、後の仕事を頼み難いし。それになにより、依頼主からの追加報酬を受け取らないなんて、それ、どこの慈善団体ッスか?商売してるなら、ちゃんと金儲けをするべきですよ」
「ですが、今までお世話になったのに、また、お世話になる事は……」
まぁ、借りを作るのが嫌いな真上さんらしい言い分だな。
けど、それも根本的に間違ってますよ。
「だったら、今回お世話になった分を、また次の機会で返せば良いんじゃないですか?貸し借りなんて、商売の基本ですよ」
「でしたら、私は、商売には向いてないって事でしょうか?」
「武藤。一応、聞いて置くが、此処はハッキリ言った方が良いか?」
「好きにしろ。オマエの方が、この馬鹿より、商売の何たるかを良く理解してる」
「そうか。じゃあハッキリ言いますけど、今のままじゃ向いてないです」
「そう……ですか」
ごめんな真上さん。
本当は、こんな事を言いたくは無いんですが……アナタは、商売するには人が好すぎます。
なので、このままじゃ、いずれは誰かに騙されちゃいますよ。
「けど、向いてないなら、向いてないで、やり方は有りますよ」
「どう言う事ですか?」
「信用の置ける人間とだけ取引をすれば良いんですよ。……特に武藤みたいなお節介な奴は、俺としてもお薦めですよ」
「テッ、テメェ、余計な事を言ってんじゃねぇぞ!!もぅ黙れ。オマエは喋るな」
「はいはい。言いたい事は、全部喋ったから、俺ぁ黙るよ」
まぁ今回は、この武藤と、真上さんの話を纏めるのが先決だ。
これが解決しねぇと、追加の話も出来ねぇしな。
「それじゃあ要さんは、私の事を思って下さってたって事ですか?」
「アホかオマエは?馬鹿に踊らされて調子に乗ってんじゃねぇよ。俺はなぁ、オマエがした仕事に対しての正当な報酬が払えないのが、ズッと気に入らなかっただけだ。……つぅか、ゴチャゴチャ言わずに、サッサと受け取れボケ」
「本当に頂いても宜しいものなのでしょうか?」
「オマエ、マジでしばくぞ。コッチが払うって言ってんだから、素直に受け取れ」
「要さん。……私なんかを、いつも気に掛けて頂いて、ありがとうございます。お言葉に甘えて、受け取らさせて頂きますね」
「チッ!!最初から、そうやって素直になれつぅの。この馬鹿」
「……すみません」
はぁ~~、漸く、真上さんも受け取る気になったみたいだな。
まぁ、けど、此処まで言われて受け取らなきゃ、逆に失礼に値するからな。
これは順当な態度だよ。
「ほらよ」
……っと思ったんだがな。
武藤の奴『幾ら入ってんだよ』ってぐらい、パンパンになった封筒を机の上に放り出すんだよな。
当然、それを見た真上さんが、素直に受け取る筈が無い。
「要さん。流石に、これはちょっと……こんなには頂けませんよ」
「チッ!!いい加減にしろよ、このクルクルパー。俺の正当な評価が気にイラネェってんなら、今後一切、オマエとは縁切りだ。2度と仕事を頼まねぇから、そう思えよ」
「ですが。こんなに多くは受け取れませんよ」
「オイ、武藤。真上さんの言う通りだ。流石に、それはやりすぎだろ」
今度は、真上さん側に付く。
幾ら真上さんの事を考えてるとは言え、これは些かやりすぎだ。
「このクルクルパーマン共。テメェ等は、2人揃って、モノの本質ってもんが解ってねぇのか?誰が追加報酬だけで、そんなに金を払うかよ。それは先行投資分も含まれてんだよ」
「えっ?どういう事ですか?」
そうか!!なるほど、そう言う事か!!
このパンパンに封筒の意味が、漸く見えたぞ。
金銭面で苦しんでる真上さんに武藤は『先行投資』をして、経営を楽にしてやろうって寸法なんだな。
深いな。
俺も、そこまでは読めなかったぞ。
(↑いつも大して読めないがな)
「ほぉ、なにも言わない処を見ると、デカブツの方は、今の俺の話で理解出来た様だな。……って事はだ。此処に居る中で、理解出来無いてないのはクルクルパー子のオマエだけだ、真上」
「そんな事を言われましても……」
「いや、違うか。なまじオマエみたいな餓鬼に理解しろって方が間違いなのかもな。綺麗事だけじゃ、世の中は半回転すらしてくれないぜ。……そうだろデカブツ?」
「はぁ……そうだな。確かにその通りだ。糞みたいな騙し合いが出来無いんじゃ、いい食い物にされるだけだ。……けどな要。世の中は全てが『悪徳』って訳じゃねぇ。『美徳』なんて言葉もあるんでな」
「ふん、ヤクザのテメェが、ノウノウとそれをぬかしやがるか。大したタマだな」
「耳を穢して悪いな。俺は、こう見えても綺麗事が大好きなんだよ」
さて、真上さん、ちょっと遠回しな言い方になっちまったけど。
これで話を理解してくれたかな?
「もしかして、要さんは、私の店を気遣って頂いてるのでしょうか?」
「そうッスよ。そう言う事ッス。コイツ、ナンダカンダ文句ばっかり言ってますけど、基本的には、真上さんの事が心配で堪らないんッスよ」
「はぁ?テメェ、なに言ってやがんだ。いつ、俺がそんな事を言ったよ」
おぉ焦ってる、焦ってる。
「そう言う言い方しか出来無い照れ屋さんなんッスよ、コイツ」
「オイ!!勝手な事バッカリぬかしてんじゃねぇぞ、デカブツ!!誰がそんな事を言ったよ。俺はなぁ……」
「はいはい、真上さんが好きなんだろ。心配で仕方ないんだろ」
「えっ?」
だろだろ。
だから必要以上に、此処までお節介するんだろ。
今回のオマエは、見え見え過ぎんぞ。
「ハァ~~~?この糞デカブツ、マジでなんもわかってねぇな。テメェの脳味噌は、デッカイババか?」
「わかってる、わかってるってよ。それ以上は何も言うな」
「あのなぁボウフラ。俺が真上に金を出すのは、1企業としての、金の先渡しだ。なんか有った時に、急な仕事でも頼める様にしてるに過ぎねぇ。なにボケた事を、さも解った様な顔して言ってんだ、オマエわ。糞過ぎんぞ」
あれ?
「それとなぁ、こんな機会だから、序に、もぅ一点だけ言っておくがな。俺には好きな奴がいる。だから、真上に恋愛感情なんて微塵も抱いた事はねぇよ」
あれあれ?
もしそれが本当なら、飛んだ肩透かしな方向だな。
俺はテッキリ、真上さんに気が有るものだと思ったぞ。
違ったのか……
「じゃあ、なにか?純粋に利潤を求めた結果って事か?」
「最初から、そう言ってんだろうが、カス。なに聞いてやがったんだ?」
「あの、要さんが、そう言われるっと言う事はですね。この先で、何か入用な話が出て来るって事ですよね」
「あぁ、そういうこった。まだ詳細は決まってないが、近々、デカイ仕事が入って来る。今置いた金のオーバー分は、その時の材料費って処だ」
「それなら、そうと、最初からおっしゃって頂ければ、私も納得出来ましたのに……」
「知るかよ。そこのアホが、勝手な妄想だけでシャシャリ出て来やがったから、タイミングを逃したんだよ。……ったく、迷惑な話だ」
あ~い、ちゅんまちぇ~~ん。
此処に関しては、完全にアッシの勘違いでやしたぁ。
けどよぉ。
あの態度だったら、誤解すんのも頷けるだろうに……
「つぅこったから真上。その金は全部納めとけ。もし、不安なら金庫にでも入れて、抱いて寝ろ。そうすりゃ、金の価値も解ってくんだろよ」
「えぇっと、銀行に預けては、ダメなのでしょうか?」
「このパー子。オマエ、銀行なんぞには絶対に預けるなよ。そんな事をしたら、金の有り難味が、全然解らないまま消えちまうぞ」
「どうして……ですか?」
「脳味噌入ってるなら、ちっとは自分で考えろボケ。……つぅこったから、俺は、もうこれ以上、テメェ等暇人に構ってる暇はねぇ。あばよ」
「えっ?ちょ、要さん」
要は、真上さんの声が聞こえないフリをして、1度も振り返らず、そのまま出て行く。
完璧に真上さんを無視しやがった。
よくもまぁ、こんな可愛い子の声を無視して出て行けるもんだ。
精神面の強い化物め!!
けど、あれだよな。
武藤のお陰で、困った顔の真上さんを見れたのは儲けモノだったな。
この人の困った表情って、妙にそそられる。
俺は、自分では気付かぬ間に、そんな真上さんをジッと見ていた。
ジィ~~~(。。)
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
金銭問題は、本当に難しい問題ですね。
特に真上さんは金銭感覚がイマイチな部分があるので、此処を理解するのは難しかったのだと思います。
まぁ、そうやって、一応は事なきを得たのですが。
此処で去り際に武藤さんが残して行った言葉だけが気に成りますね。
一体、どんな意味があるのか?
それは次回の講釈。
また良かったら遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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