●前回のおさらい●
嶋田さんの餞別として、一緒に演奏して彼をねぎらう為に必死に頑張った倉津君。
そして、それは、かなりの確率で成功を収めた。
さて、その後は……
「ハイ、んじゃあこれで第一部は終了な。……勿論、アンコール無しだ」
「ぶっ!!」
この超盛り上がった状況で、なにを言い出すんだコイツは?
この状況で『アンコール無し』って……暴動起こるぞ。
「「「「「ブゥ~~~」」」」」
「まぁまぁ、そう文句ばっかり言うもんじゃねぇぞ。これだけのメンバーのライブ見れたんだから、寧ろ光栄に思えよな。……2度とねぇぞ」
「「「「「ブゥ~~~ブゥ~~~」」」」」
「うっせぇ!!ブタかオマエ等は?ブゥ~ブゥ~ブゥ~ブゥ~、うるせぇつぅの!!」
コイツ、ほんと良い度胸してるよな。
心臓が鉄で出来てる上に、毛が生えてんじゃねぇのか?
盛り上がってるライブハウスで、普通は、こんな事を言うか?
「「「「「ブゥ~~~ブゥ~~~ブゥ~~~」」」」」
「チッ、今日の客は文句が多いな。……まぁ良いや、じゃあ、そんな音楽豚共に1つだけ良い事を教えてやるよ」
「なんだよぉ?仲居間さん」
「今日の第二部の締めくくりにな。もぅ一回、このメンバーで曲やるんだけどよぉ。……実は、そのチケットが、まだ数枚余ってるらしいんだよなぁ。まっ、その全貌を知りたきゃ、そのチケットでも買うんだな」
「「「「「ブゥ~~~、ブゥ~~~、この守銭奴~~!!」」」」」
「アホかテメェ等!!このライブをすんのに、一体、幾ら掛かってるって思ってるんだよ?ちぃとは協力しやがれ、このブゥブゥうるせぇだけの糞豚集団が!!」
金が掛かるねぇ~。
オマエ、このライブ自体、何所をどう見積もっても『超黒字』じゃねぇかよ。
チケット前売りの時点でほぼ完売。
その上、山さんてスカウトの人から1000万もガメてんだろ。
なのに、よくまぁ、そんな厚かましい事を平然と言えるな。
厚顔無恥とは、まさにコイツの事だな……
「おい、仲居間さん。買えねぇ場合は、どぉすんだよ?もぉ数枚しかねぇんだろ」
「おっ、君は良い質問をしたな。んじゃあ、この第二部のチケットを上げよう」
「オッ!!ヤッタァ~~!!マジかよ!!ラッキィ~~~!!」
「因みにだがな。彼からの質問への回答は、ちゃんと考えてある」
「なんですか先生?」
「チケットが買えない時はだな。『ブラック・リスト』『Anarchy』『Un-Virgin』って3店舗の内、好きなバーを選んでそこに行け。そこで直接ライブ映像が流せる様に交渉してるあるからよ……あぁ因みに、全店チャージは600円だったかな。ちゅう~ことで、これで告知は終わり。一回会場がはけた後に、限定50枚のライブチケットの販売開始。販売場所は此処の入り口。早い者勝ちだよ~ん。会場から出ないと販売しないよ~ん」
人を喰った様な態度にムカつきながらも。
我先にと言わんばかりに、客は一斉に会場から出て行く。
それ程までにインパクトのあった、このメンバーでのライブが、もう一度見たいんだろう。
まぁ実際俺は、なんの役に立ってるのかさえ解らないが……それを含めても、外に出たら、強烈な行列が出来てそうな勢いだな。
「さてと、客もはけた事だし……一旦、仮眠でもっすかな。……あぁ眠ぃ。んじゃあまた後で」
崇秀のアホは飄々とした態度のまま、この場にメンバーを残して去っていく。
なんて奴だ。
ふてぶてしいにも程が有る。
そんなロクデナシが、俺の横を過ぎる際に、肩を叩いて1言だけ言葉を残す。
「Excellentだったぜ。……最高だよ、オマエ」
「なっ」
「じゃあな。また後でよ。……ふあ~~~……マジ眠ぃ」
崇秀は欠伸を呼気ながら、バックステージに消えていく。
この後、立て続けにドラムから立ち上がった山中が声を掛けて来る。
「まいったわ。この化物2号が」
「へっ?……ゴフッ!!」
山中のアホが、声掛け序に、鳩尾を狙った思い切りの良いボディブローを入れやがった。
しかも、一切の容赦なし。
マジで殴んなっての。
危うく『ゴパァ~~~!!』って胃液が出そうになっただろうに……
「イッテェ!!なにしやがんだ、テメェはよ!!」
「嫉妬や嫉妬……まぁ今の演奏で、オマエとバンドやんのが、滅茶苦茶楽しみになってきたわ。期待してんでマコ……ほなな」
山中はステージから降りて、少し離れたカウンターにドリンクを注文しに行く。
奴から目を離し、ふとステージに目を戻すと、今度は間近にアリスが立っていた。
「アナタさぁ、ド素人のクセに中々上手いじゃない。後でもう一回使ってあげるから、しっかり練習しとくのよ……ド素人さん」
「なっ……」
「アナタ、返事も、ちゃんと出来無いの?原始人並の馬鹿なのね」
初対面で、口も聞いた事も無い相手なのに、イキナリこの酷い扱い。
なんだコイツ?
これでも褒めてるつもりなのか?
流石は崇秀のバンド・メンバー、なんか変な女だな。
けど、コイツ、確か学校で崇秀が『人見知り』だって言ってたよな。
なのになんで、こんなに高圧的にペラペラ喋って来るんだ?
・・・・・・
あぁそうか。
これが例の『なりきりモード』とか言う特技なんだな。
なら、ちょっと、からかってみるか。
「るせぇぞ、クソチビ!!なめてっと、素っ裸にして、ステージで踊らさせるぞ!!誰にもの言ってやがんだ、ゴラァ!!」
「えっ……」
俺の怒声に、変身が解けたのか。
強気だった表情が、見る見る弱々しくなっていく。
なんだコイツ……おもしれ。
「あっ、あの、ごめんなさい、ごめんなさい。……あっ、あの、僕……あの、その……」
おぉ、リアル『僕っ娘』だ。
産まれてこの方、初めて見たぞ!!
リアルの世界でも、ほんとに『僕っ娘』って存在するのな。
ビックリだわ。
けど、少し度が過ぎたのか、このままだとアリスと言われる子は泣きそうな勢いだ。
また、こんな事がバレでもしたら、崇秀になにを言われたものか解ったもんじゃない。
此処は1つ、早急にフォローを入れる必要があるな。
「冗談だよ冗談。こんな歌の上手い奴に、んな事する訳ねぇだろ」
「あっ、あの……ぼっ、僕……ごめんなさい」
あれ?結局は、走って逃げて行っちまった。
ちょっと悪い事したな。
……あの程度で、そんなにビビるとは思わなかった。
まぁ良いか。
この辺に関しては、後で崇秀にフォローして貰っておこう。
面倒は懲り懲りだ。
さて、まぁこれで。
ステージに残ってるのは、奈緒さんと嶋田さんと俺だけの訳だが……嶋田さんは忙しそうにしているし、実質、奈緒さんと俺の2人と変わらない。
……っと言う訳でだ。
邪魔者は居ない状況にもなった事だし。
さっきの事があって、少し話し掛け難いが、奈緒さんに言い訳の1つもして置かないとな。
いや、寧ろ……早く謝ろう。
「あっ、あの……奈緒さん?」
「へっ?あっ、あの……何方ですか?どこかでお逢いしましたか?それにアナタは、どうして、私の名前を知ってるんですか?」
へっ?なにこれ?
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
どうやら、すべて上手く行っていたみたいですね。
……奈緒さんが、最後にややこしい言葉を言わなければですが(笑)
さて、そんな奇妙な言葉を発した奈緒さん。
その言葉の真意は一体……
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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