●前回のおさらい●
3人が頼み込んだ事により、この奈緒さんのライブは、崇秀指導の下で行われる事に成ったのだが。
そんな無謀な事をしても大丈夫なのか?
さぁ……その答えとなるライブの幕を、今開こうじゃないか。
会場から流れ出る。
これから行なわれる、このライブへの期待が込められた独特の熱気を、沸々と肌を通して直接的に感じられる。
これは、今までに体感してきたライブの空気とは、まさに別物。
全身にある毛穴が開き、冷や汗が止まらず、体がドンドンと汗ばんで行くのが解る。
―――これが17,000人もの人間が、奈緒さん1人に期待する熱気なんだ。
……けど、私は、ライブに関してのみ、物怖じをする事を知らない。
私は私の任せられた仕事を、出来るだけシンプルに、出来るだけ気持ち良く、観客に伝えれば、それで良いと思っている。
いつもそうやって、必要以上に楽しくライブをやってきた。
だから、観客動員数が増えても、そこだけは、なにも変わらない。
それが例え10人だろうと、100人だろうと、1000人だろうと、10000人だろうと、それは、全て同じ事。
ただ観客の皆さんが、満足いく様な演奏をするだけで良い。
いや……寧ろ、私の体や意思は、そんな事すら考えていない。
ただ、思うがまま、このアリーナでベースをかき鳴らしたいだけなのかもね。
それも一分でも、一秒でも、早く……
……でもね。
その意思に反して、今回のライブの一曲目に奏でられる曲って『泡沫』なんだよね。
本来なら、ド派手な曲を一発目からブチかますのが、ライブの定番パターンなのにさぁ。
普段と違った形で演出を行う為にも、まずは静かな曲から入るんだってさ。
なんか、ド派手な曲じゃないのが寂しい感満載。
しかもね、こんなにテンションが上がっちゃてるのに、私と、山中君はハミ子されてるのよ。
この1曲目だけは、奈緒さんのご指名で、楽器から音が出せるのは、ボーカルの奈緒さんと、崇秀のギターだけ。
たった2人だけで、こんな美味しい演出をするんだってさ。
此処に来て、なんか疎外感すら感じる。
それでね、この1曲目である『泡沫』が流れてる間、私と、山中君はステージに移動するだけなんだってさ。
……ちぇ、ツマンナイの。
あぁ因みに、今回のライブで行なう曲目は、こんな感じ♪
①『泡沫』作詞/作曲:向井奈緒
②『Miserable fellow』(情けない奴)作詞/作曲:向井奈緒
③『Dash eater』作詞/作曲:嶋田浩輔
④『Original intention accomplishment』(初志貫徹)作詞/作曲:向井奈緒
⑤『Troubling』(四苦八苦)作詞/作曲:向井奈緒
⑥★新曲★『Sold the world』(売られた世界)作詞/作曲:向井奈緒 アレンジ:仲居間崇秀
⑦『Business zombies』作詞/作曲:嶋田浩輔
⑧『Hybrid Memory』作詞/作曲:嶋田浩輔
⑨『Bubble breaker』(誰のせい?)作詞/作曲:仲居間崇秀
⑩『Not meet the time』(逢えない時間)作詞・作曲:仲居間崇秀
⑪『Blinded by me』(私に眼を塞がれ)作詞/作曲:仲居間崇秀
⑫★新曲★『Epitaph』(墓碑)作詞/作曲:向井奈緒 アレンジ:仲居間崇秀
―――アンコール
①『Serious stress』(重いストレス)作詞/作曲:向井奈緒
②『Please look at me』(私を見て下さい)作詞/作曲:向井奈緒
③★新曲★『帰郷』作詞/作曲:向井奈緒 アレンジ:仲居間崇秀
前半は、比較的、奈緒さんの曲で構成。
後半は、崇秀や、嶋田さんが楽曲提供した物で構成。
それで本番終了の際、アンコールの一曲目に、奈緒さんのファースト・シングル『Serious stress』を持って来ている。
この演出は、個人的には、中々手の込んだ渋い演出だと思う。
なんてたって『Serious stress』は、奈緒さん自身を表現する様な曲だからね。
それを敢えて、アンコールに持って行くのは、非常に良い選曲だと思いますよ。
でも……奈緒さんを表現するのが『Serious stress』って事は……それだけ私が、奈緒さんに多大な迷惑を掛けてるって事ですよね。
俗に言う私の……せいですね。
……すみません。
***
……アリーナ全体の照明が、全て落とされる。
この演出は、どこのライブでも良く使われる手法なので、これはある意味、ライブの開始を合図する様なものでもある。
だから、照明が落ちた瞬間から、会場内は『ざわざわ』と、妙にざわめき立ち始める。
そして、得も言えぬ様な『期待』に満ちた視線が、ステージに集中して向けられている。
-♪--♪-♪-♪----♪---♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……
そんな、なにも見えない様な真っ暗な中。
崇秀のギターから、悲しくも、儚い音色だけが、会場内に静かに響き渡った。
本来なら此処で、どんなスローな曲が掛かろうとも、少しは『わあぁぁ~~~!!』っと言う大きな歓声が上がるものなんだけど。
今回に限っては、全くその様子は無い。
寧ろ、なんとも言えない様な綺麗な音が会場内に充満して、観客の皆さんは、完全に静まり返り。
崇秀の出す音色にだけ、ソッと耳を傾けている。
ステージの裾から見てても、凄く良い感じ♪
格好良いよ崇秀!!
既にライブの冒頭から崇秀は、この空間を支配し始めている。
そんな中……
「♪~~~~」
ピンポイントのスポットライトが、突然、奈緒さんを照らし。
いつも、とても素敵な奈緒さんの姿が、ステージに浮かび上がらせ。
あの崇秀のギターと完全にシンクロした状態で、彼女の伸びのある綺麗な歌声が入って来る。
「「「「「……わあぁあぁぁあぁぁ~~~!!」」」」」
この時点で、漸く、静まり返っていた会場内が、まるで、息を吹き返した様に盛り上がり始めた。
それもその筈。
奈緒さんの歌声は、いつ聞いても安定感が抜群の声だし、それになにより崇秀の奏でるギターの音色との相性も抜群に良い。
これを聞いて、盛り上がらない方が、どうかしている。
これに関しては、以前行なわれた『夏の湘南ライブ』から、ズッと思っていた事なんだけど。
この2人って、他の楽器奏者では絶対に有り得ない程、息がピッタリなのよね。
まぁ勿論、そうは言っても、それが自分じゃないのが……凄く口惜しいんだけどね。
そんな盛り上がりを見せる中。
私と、山中君は、この暗闇に乗じて、自分達のポジションへと向かって行く。
……そして、盛大な拍手と、鳴り止まぬ歓声の中1曲目の『泡沫』が終わる。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
取り敢えず、今回はライブの出だし部分を書き示してみたのですが。
比較的、何事もなく、順調なスタートを切ったみたいですね。
だが、このまま順調に進まないからこそ、今話の冒頭で眞子がボロボロに成っていたと言うもの。
此処から一体、どの様なライブが開催されて行くのか?
そして、崇秀の思惑とは?
そんな感じのお話を、次回も書いていきたいと思いますので。
もし良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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