最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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638 今世紀最悪のライブの始まり

公開日時: 2022年11月6日(日) 00:21
更新日時: 2023年1月18日(水) 18:24
文字数:2,566

●前回のおさらい●


 3人が頼み込んだ事により、この奈緒さんのライブは、崇秀指導の下で行われる事に成ったのだが。

そんな無謀な事をしても大丈夫なのか?


さぁ……その答えとなるライブの幕を、今開こうじゃないか。

 会場から流れ出る。

これから行なわれる、このライブへの期待が込められた独特の熱気を、沸々と肌を通して直接的に感じられる。


これは、今までに体感してきたライブの空気とは、まさに別物。

全身にある毛穴が開き、冷や汗が止まらず、体がドンドンと汗ばんで行くのが解る。


―――これが17,000人もの人間が、奈緒さん1人に期待する熱気なんだ。


……けど、私は、ライブに関してのみ、物怖じをする事を知らない。

私は私の任せられた仕事を、出来るだけシンプルに、出来るだけ気持ち良く、観客に伝えれば、それで良いと思っている。


いつもそうやって、必要以上に楽しくライブをやってきた。


だから、観客動員数が増えても、そこだけは、なにも変わらない。

それが例え10人だろうと、100人だろうと、1000人だろうと、10000人だろうと、それは、全て同じ事。


ただ観客の皆さんが、満足いく様な演奏をするだけで良い。


いや……寧ろ、私の体や意思は、そんな事すら考えていない。

ただ、思うがまま、このアリーナでベースをかき鳴らしたいだけなのかもね。


それも一分でも、一秒でも、早く……



……でもね。

その意思に反して、今回のライブの一曲目に奏でられる曲って『泡沫』なんだよね。


本来なら、ド派手な曲を一発目からブチかますのが、ライブの定番パターンなのにさぁ。

普段と違った形で演出を行う為にも、まずは静かな曲から入るんだってさ。


なんか、ド派手な曲じゃないのが寂しい感満載。


しかもね、こんなにテンションが上がっちゃてるのに、私と、山中君はハミ子されてるのよ。

この1曲目だけは、奈緒さんのご指名で、楽器から音が出せるのは、ボーカルの奈緒さんと、崇秀のギターだけ。


たった2人だけで、こんな美味しい演出をするんだってさ。


此処に来て、なんか疎外感すら感じる。


それでね、この1曲目である『泡沫』が流れてる間、私と、山中君はステージに移動するだけなんだってさ。


……ちぇ、ツマンナイの。


あぁ因みに、今回のライブで行なう曲目は、こんな感じ♪


①『泡沫』作詞/作曲:向井奈緒

②『Miserable fellow』(情けない奴)作詞/作曲:向井奈緒

③『Dash eater』作詞/作曲:嶋田浩輔

④『Original intention accomplishment』(初志貫徹)作詞/作曲:向井奈緒

⑤『Troubling』(四苦八苦)作詞/作曲:向井奈緒

⑥★新曲★『Sold the world』(売られた世界)作詞/作曲:向井奈緒 アレンジ:仲居間崇秀


⑦『Business zombies』作詞/作曲:嶋田浩輔

⑧『Hybrid Memory』作詞/作曲:嶋田浩輔

⑨『Bubble breaker』(誰のせい?)作詞/作曲:仲居間崇秀

⑩『Not meet the time』(逢えない時間)作詞・作曲:仲居間崇秀

⑪『Blinded by me』(私に眼を塞がれ)作詞/作曲:仲居間崇秀

⑫★新曲★『Epitaph』(墓碑)作詞/作曲:向井奈緒 アレンジ:仲居間崇秀


―――アンコール

①『Serious stress』(重いストレス)作詞/作曲:向井奈緒

②『Please look at me』(私を見て下さい)作詞/作曲:向井奈緒

③★新曲★『帰郷』作詞/作曲:向井奈緒 アレンジ:仲居間崇秀


前半は、比較的、奈緒さんの曲で構成。

後半は、崇秀や、嶋田さんが楽曲提供した物で構成。

それで本番終了の際、アンコールの一曲目に、奈緒さんのファースト・シングル『Serious stress』を持って来ている。


この演出は、個人的には、中々手の込んだ渋い演出だと思う。


なんてたって『Serious stress』は、奈緒さん自身を表現する様な曲だからね。

それを敢えて、アンコールに持って行くのは、非常に良い選曲だと思いますよ。


でも……奈緒さんを表現するのが『Serious stress』って事は……それだけ私が、奈緒さんに多大な迷惑を掛けてるって事ですよね。


俗に言う私の……せいですね。


……すみません。


***


 ……アリーナ全体の照明が、全て落とされる。


この演出は、どこのライブでも良く使われる手法なので、これはある意味、ライブの開始を合図する様なものでもある。


だから、照明が落ちた瞬間から、会場内は『ざわざわ』と、妙にざわめき立ち始める。

そして、得も言えぬ様な『期待』に満ちた視線が、ステージに集中して向けられている。



-♪--♪-♪-♪----♪---♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……


そんな、なにも見えない様な真っ暗な中。

崇秀のギターから、悲しくも、儚い音色だけが、会場内に静かに響き渡った。


本来なら此処で、どんなスローな曲が掛かろうとも、少しは『わあぁぁ~~~!!』っと言う大きな歓声が上がるものなんだけど。


今回に限っては、全くその様子は無い。


寧ろ、なんとも言えない様な綺麗な音が会場内に充満して、観客の皆さんは、完全に静まり返り。

崇秀の出す音色にだけ、ソッと耳を傾けている。


ステージの裾から見てても、凄く良い感じ♪


格好良いよ崇秀!!



既にライブの冒頭から崇秀は、この空間を支配し始めている。



そんな中……



「♪~~~~」


ピンポイントのスポットライトが、突然、奈緒さんを照らし。

いつも、とても素敵な奈緒さんの姿が、ステージに浮かび上がらせ。

あの崇秀のギターと完全にシンクロした状態で、彼女の伸びのある綺麗な歌声が入って来る。



「「「「「……わあぁあぁぁあぁぁ~~~!!」」」」」


この時点で、漸く、静まり返っていた会場内が、まるで、息を吹き返した様に盛り上がり始めた。


それもその筈。

奈緒さんの歌声は、いつ聞いても安定感が抜群の声だし、それになにより崇秀の奏でるギターの音色との相性も抜群に良い。


これを聞いて、盛り上がらない方が、どうかしている。


これに関しては、以前行なわれた『夏の湘南ライブ』から、ズッと思っていた事なんだけど。

この2人って、他の楽器奏者では絶対に有り得ない程、息がピッタリなのよね。


まぁ勿論、そうは言っても、それが自分じゃないのが……凄く口惜しいんだけどね。


そんな盛り上がりを見せる中。

私と、山中君は、この暗闇に乗じて、自分達のポジションへと向かって行く。


……そして、盛大な拍手と、鳴り止まぬ歓声の中1曲目の『泡沫』が終わる。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


取り敢えず、今回はライブの出だし部分を書き示してみたのですが。

比較的、何事もなく、順調なスタートを切ったみたいですね。


だが、このまま順調に進まないからこそ、今話の冒頭で眞子がボロボロに成っていたと言うもの。

此処から一体、どの様なライブが開催されて行くのか?


そして、崇秀の思惑とは?


そんな感じのお話を、次回も書いていきたいと思いますので。

もし良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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