最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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833 眩暈、そして、奴が……

公開日時: 2023年5月19日(金) 00:21
文字数:2,242

●前回のおさらい●


 ライブ前に解決すべきプライベートな問題は、少々不快な思いをしながらも、なんとか解決。

だがその後、トイレに行った眞子の身に、突然襲い掛かる……

「あっ……なっ、なにこれ……」


何の前触れもなく、眼前の視界が『ぐにゃ~~~』っと曲がり始めたと思ったら。

今、眼で見えるもの全てが『ぐるぐる』と螺旋を描き廻り始めた。

これはどうやら、周りが景色が気持ち悪く変わり果てた姿になる勢いで、酷い眩暈を起している様だ。


そして、次第に下半身の力も抜けていく。


・・・・・・


あれから、どれほど時間が経ったか解らない。


恐らくは、まだ数秒しか経ってないとは思うんだけど……

ただ無限に続く様な視界の歪みを感じながらも、余りの酷い眩暈に立っていられなくなったらしく。


気付けば、手だけを洗面所の縁に残して、その場の床に、お尻を付いてへたり込む。


そんな感覚だけは残っていた。



「うっ……あっ……あっ……」


残った手で頭を置いたまま俯いた状態で、更に、言葉も上手く紡げなくなり。

助けを呼ぶ事も出来ず、ただ只管、その姿勢のままでいるしかなくなっていた。


……なに……これ?


一体、私の体の中でなにが起こってるの?


でも、そうやって必至に意識を保とうとしたのが功を奏したのか。

この後も、かろうじて意識だけは切れる事は無かった。


***


 ……こうして、時間の判別が付かないまま。

恐らくは数分間、訳の解らない時間を過ごす事によって、次第に歪んでいた景色が元に戻り始めた。



「うっ……あっ、ああぁ……あぁ……はぁ、はぁ……なんだったんだろう、今の……頭が痛い……」


なにも解らないままなんだけど。

なんとか言葉や、体を動かすまでには回復してくれた様だ。


洗面所の縁を使って、力の限り力を込めて、漸く立ち上がる。


真正面の鏡に映った姿は、顔色が真っ青で全く血の気がなく。

見るも無残な程に、とても酷いものだった。


……本当に、なんだったんだろうか?

まるで、私なんかには予想も付かない様な事が、自身の体の中で起こってる様な現象だった。


そのままの姿勢で、更に数分が経って。

まるで何事もなかった様に、完全に体調は元に戻り、徐々に顔色も良くなっていった。



「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……大丈夫。多分、これまでの疲れが、少し溜まってただけなんだよ。大丈夫、心配ない」


自分に必至に、そう言い聞かせて、その日のライブに向った。


理由は当然、どうしても、このツアーで穴を開ける訳にはいかなかったからだ。


気丈に振舞う訳じゃないけど、こんな事ぐらいで、人に心配を掛けてる場合じゃないからね。

みんながみんな、人に構ってられない位、大変な時期なんだし……なんとか10日後のライブまで、この調子でも耐え切る事が出来れば、今、直ぐ、誰かに相談するよりかは迷惑を掛けないで済む。


それに最終日には、そこで崇秀に逢える訳だから。

その時にでも、彼に明確な事情を説明して、原因を究明して貰えば良いとも思う。


また……余計な迷惑を掛けるかも知れないけどね。


……ごめんね。



……っと思いながらも、この後、ライブを無理矢理敢行したんだけど。


矢張り、ただの疲れだったのか、それとも完全に体が回復したのか。

思った以上に頭がスッキリしていて、気持ち良く、いつも通り以上の演奏が出来た。


そのお陰で……オープニング・ライブから、絶大な大盛り上がりだったんだよね。


***


 ……そうやって。

8月04日(火):ニューヨーク州・ニューヨークを皮切りに。

8月05日(水):バ-ジニア州・ワシントンDC。

8月06日(木):フロリダ州・マイアミ。

8月07日(金):ミズーリ州・セントルイス。

8月08日(土):テキサス州・ダラス。

8月09日(日):アリゾナ州・フェニックス。

8月10日(月):ネバタ州・ラスベガス。

8月11日(火):カリフォルニア州・ロサンゼルス。

……っと、普段通りにドンドンとライブを重ねていった。


けど、その間にも、例の眩暈が起こるまでの期間がドンドンと短くなって来ている。


今のところ、体調によるライブでの支障は出ていないんだけど……どうやら、この様子じゃあ、本格的に、またなにかが、私の体の中で変化し始めているらしい。


それを証明する様に……


8月08日(土):テキサス州・ダラスのライブで。


とうとうおかしな幻覚が見え始めた。


この世に存在する筈の無い『倉津真琴』が、私のライブを無表情でジッと見ていた。


一瞬、余りのその衝撃に、ライブで音を初めて外し。

それに慌てて、俯いて音の調整をし終わった時には、その真琴ちゃんらしき姿はもう何処にも無かった。


一体……あれは、なんだったんだろうか?


……本当に、ただの幻覚だったんだろうか?


この時点で、少し気が変になりそうになっていた。



でも、これで、この話は終わらなかった。


……これ以降のライブでも、その倉津真琴に似た人物が、毎日の様に私の前に姿を現し。

慌てて演奏を中断して、そこに行こうとすると、その男は、まるで霧の様に姿を消し去って行く。


正に『追えば逃げる』の、いたちゴッコの様な毎日。


……本当に気が変になりそうだ。


そして……明日シアトルのライブを迎える筈だった。

8月12日(水):カリフォルニア州・サンフランシスコのライブの途中。


私は……強烈な眩暈の中、完全に意識を失った……


あれ程、逢いたかった崇秀に逢う事も出来ずに……


***


―――次回予告。


……此処は、どこなんだろう?


何故……私は、こんな所にいるんだろうか?


一体、私の身になんが起こったのだろうか?


なにも解らないまま、ただなにかを見詰ていた……だけど、一体、なにを見詰ているんだろうか?



……次回。


『Muddled consciousness』

「混濁意識」



どうして……アンタが……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第四十五話【Abnormal conditions(変調)】はお仕舞なのですが、如何でしたでしょうか?


突然、最後の最後に、眞子が訳の解らない状態に陥ってしまったのですが。

勿論、原因もなく、体の変調を起こす筈なんてありませんので、なにかこう成る原因が必ずある筈。


ですが、果たして、それはなんだったのでしょうか?


①『先程の奈緒さんや美樹さんとの会話で、余計なストレスが溜まった』

②『ハードな生活で蓄積した疲れが爆発してしまった』

③『此処数週間の間に、忘れ様としていた倉津真琴の件が思い出さされた事によるストレス』

④『その他、眞子が気付かない間、若しくは忘れてしまっている、なにかが原因』


まぁ予想をするなら、恐らくは、この4つの内のどれかが該当すると思います。


さてさて、一体、このどれが正解なのか?

若しくは、これ以外の原因が、なにか存在するのか?


それは次回から始まる第一章・第四十六話【Muddled consciousness(混濁意識)】で解明されて行きますですので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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