●前回までのあらすじ●
過去に山中君は、大阪で一度鑑別所に送られる様な大事件を起こしていた。
でも、その話を聞いた倉津君は、特に何も感じる事もなく、そのまま話を続けていたが。
流石に電車の中で話す様な話ではないし、その話を続けるのは良くないと判断し、別の話に転換させていく。
果たして、その内容は?
「ところでよぉ山中」
「なんや?」
「昨日、聞きそびれたんだが……オマエ、なんで、そんなに素直が好きなんだ?」
昨日、なんとなくあやふやに成った素直の話を聞いてやる事にした。
「ぶっ!!オマエ、急に、なに聞くねん!!関連性0やな」
「あぁ悪ぃ。昨日からズッと気になったもんでよ」
「さよか。そやけど、オマエが気になった程度で安々と話す様な話やないわ」
「ケチ臭ぇな。別に減るもんじゃねぇだろ」
「オマエなぁ……」
「それによぉ、オマエだって、散々、俺と、奈緒さんの事を聞くじゃねぇか」
「なんやオマエ。今日は、矢鱈と饒舌やのぅ。昨日、勉強して、単細胞が変化して、知恵でも付けたんか?」
「ふ~~ん……ッで、どうなんだよ?」
怒らねぇよ。
そんな安い挑発に乗るほど、俺は馬鹿じゃない。
それにコイツが反論して来る事と、嫌味を言って来るのは予想の範疇だったからな。
俺を、いつまでも、単純な馬鹿と思って貰ったら困るな。
単細胞は、直ぐに何でも吸収するから、おっかねぇんだぞ。
「うわっ、ムカツク……チッ、ホンマに知恵を付けよったみたいやで」
「っで?」
「あぁ解った、解った。どうにも今日のオマエには、誤魔化しは効かん様やな。……ホンで、俺に、なにが聞きたいねん?」
「イヤな。オマエだったら、別に、素直である必要が無い様な気がするんだよな」
「なんでやねん?」
「なんでって聞かれてもよぉ。オマエ、そこら辺に女を作ってるじゃねぇか」
「あぁ、それは『遊び』や、本気の欠片もない」
オイオイ、あまりにも最悪な回答だな。
自分が納得出来無い男(ホスト)はボコボコにするくせに、自分の性交渉は『遊び』だと……呆れてモノが言えねぇ。
コイツも、崇秀同様クズだ。
「勘違いすんなよ」
「なんも勘違いしてねぇつぅ~の」
「いいや。オマエは、確実に勘違いしとる。どうせ俺の事を最低な男やと思てんねやろ」
いや……どこをどう見ても最低じゃねぇか。
今の発言は、どんな優秀な弁護士を連れて来ても、弁護出来ねぇレベルの酷い発言だったぞ。
「あんなぁマコ。まずにして女の性欲と、男の性欲、どっちが強いと思てんねん?」
「そんなもん、男に決まってんだろ。年がら年中やりてぇ盛りなんだからよ」
「まぁ、サクランボの言いそうな意見やな」
「電車内で、人様に向かってサクランボとか言ってんじゃねぇぞ、この陰獣!!」
童貞をサクランボとか言って、馬鹿にすんな!!
大体なぁ、俺は、まだ中学生だから、童貞でもセーフなんだよセーフ。
いや、寧ろこれは、オマエ等の性欲がおかしいだけだ。
「サクランボは、どう言うたかて、サクランボじゃ」
「テメェなぁ。そこまで言うんだったら、俺が納得出来る様な、キッチリとした回答が言えんだろうな」
「アホクサ……性欲なんざ、どっちも同じじゃ。女に幻想抱くんは結構やけどな。Hした直後に、何回も求めて来るんは、大概女の方やぞ。だから、女の性欲も大層なもんや。そやけど、最初にSEXしたい思うんは男。ほんだらドッチもドッチやと思わんか?」
「そうなのか?一回やった後も、何回もしたがるのが男なんじゃないのか?」
「……アホやコイツ」
なんでだよ。
ドラマとかだったら。
Hやった後、男が『もう一回』とか言って、女に嫌がられるケースが大半じゃねぇか。
ひょっとして、あれ、嘘なのか?
「良ぇかマコ。SEXの快楽は、なにも男と女で均等に分けられとる訳やない。男は一回イッたら、結構、満足してまうもんやけど。女は、何回でもHが出来る様に体が作られとるから、満足するまで止まらへんのや」
「じゃあ、オマエの言い分だったら、女の方が性欲が有るって事になるんじゃないのか?」
「ちゃんと話を聞いとるんかオマエわ?今のは満足度の話や。『男は射精で満足』『女はイッたら満足』これやったら同じやんけな」
「あぁ、なるほどな」
「その話を加味した上で、俺の事を、まだ最低やと思うか?」
「思うな」
「左様か。ほんだら、もう最低で良ぇわ」
コイツ、絶対、納得してねぇよな。
……って言うか、言い方に、投げやり感が漂ってるぞ。
「ちょっと待てな。じゃあ聞くが、オマエの何所が最低じゃねぇんだよ?女遊びばっかりしてる『やりチン』じゃねぇか」
「やりチンの何が悪いねん?」
「全部良くはねぇだろ」
「性欲処理に女を求めんのは、そんなに悪い事か?相手もしたい思うから、やってるんちゃうんか?……オマエの考え方やったら、一方的に男が悪い様に聞こえるけど。実際は、女の性欲処理に協力してる部分も有るんちゃうか?こんなもん男も女もお互い様や」
コイツの言い分も、解らなくはないな。
そう言われれば、そうなのかもしれないな。
まぁ確かにな。
俺は、女性に対して幻想を抱いてる部分が強い。
俺の中で女って言う生き物は『好きじゃないとHしないもの』だとも思っている。
だから、簡単にHする女って言うのは、どうかとも思っていた。
けど、山中の言う様に、もし、男女均等に性欲が有るなら、山中の行為も、なにも悪い事ではないかも知れんな。
但し、遊びと断言するなら『お互いの同意』と『コンドーム』は必要だろうがな。
遊びで『妊娠』はよくないからな。
ッで……これ、何の話だよ?
素直の件は、どこに行っちまったんだ?
ひょっとして俺、完全に、はぐらかされてないか?
「確かになぁ。まぁ、納得出来なくはないな」
「そやろ」
「っで?素直の件は、どうした?」
「憶えてやがったか……」
ヤッパリな。
別の話を持って来て、上手く素直の話を、はぐらかすつもりでいやがったな。
口の達者な奴は、これだから嫌いだ。
「あんま馬鹿にすんなよ」
「クソッ……昨日の午前中までやったら、完全に騙せとったのに。変な知恵付けやがって」
「はいはい」
「あぁわかった、わかった。ホンで何が聞きたいねん?」
「2回も言わすな」
「チッ……良ぇかマコ。さっきも言うた通り『遊び』は、どこまで行っても遊びや。お互いの性欲処理やと思たら良ぇ。そやけどアリスは、俺が初めて『生』でしたい思た女や……この意味の違い、わかるか?」
某頭のおかしい奴と、思考が似てやがるな。
この調子だと『妊娠』云々の話だな。
だが、俺が知りたいのは、そこじゃない。
『なんで素直が好きなのか?』が聞きたいんだ。
なら今度は、コチラが上手く話を繋ぎ合わせて、その話に持って行ってやる。
「要は『妊娠しても良い』って事だろ」
「そういうこっちゃ」
「じゃあ、なんで、そこまで素直を想うんだよ?今までの話じゃ、オマエ、その辺は、何も語ってねぇぞ」
「チッ」
「舌打ちは、もう良いぞ。それと『天丼』もな」
「グッ……カッ……」
なにを、そこまで嫌がってんだろうな?
大阪での『鑑別所の話』や『保護観の話』は、そんなに抵抗なく喋ったクセによぉ。
普通に考えたら、ソッチの話の方がしにくいだろうに。
コイツだけは、意味がわかんねぇわ。
「あぁ、もうわかった。正直に言うわ」
「おっ、なんだよ?」
「俺が、アイツの事が好きなんは『一途』なところや」
「見た目とかじゃなくてか?」
「あぁ、勿論、それもある。『性格は一途』『見た目良し』『大人しい』『歌唱力』『賢い』……まぁ、例を挙げたら幾らでも出て来る。アリスは、非の打ち所が無い女やんけ」
確かにな。
素直は、まぁ言うなれば、ある意味、男の理想が詰まった様な女では有るよな。
おっぱいデカイしな。
……けど、なんか引っ掛るんだよな。
今言った言葉以外にも、コイツは、まだ何か隠してるとしか思えない。
なんだ?
「オマエって、意外と、素直の良い所が見えてないんだな」
「なんやと?」
「だって、そうじゃねぇかよ。そんなもん、誰が見たって解る事じゃねぇか。そんなもんが理由だって言うなら、オマエの好きも、実際、大した事ねぇんじゃねぇか?」
誘い水を流してみたが、どうだ?
「そう来るか。ホンマ、今日のオマエは冴えとるで……豪い見透かしや」
「伊達に、オマエや、素直と一緒にバンドをやっちゃいねぇよ。普通、それぐらいは解んだろ」
「しゃあないな。そこまで見透かされてるんやったら、ホンマの事を言うわ……アイツな、見た目も、性格も、実は、俺の姉貴にそっくりやねん。特に一途な所はそっくりや」
「冷やかしじゃなくて聞くが『シスコン』か?」
「ちゃうちゃう。全然とは言わんが。恐らく、オマエが思とる程の重症ではない。俺が懸念しとるのは、あのまま放っといたら、どこかで俺の姉貴と同じ目に遭う可能性が高い言うこっちゃ。俺としたら、そんなもん2度と見たない訳や。だから、俺が保護したろう思てん……勿論、言わんでもわかってる思うけど。好きなんは大前提での話でやで」
そう言う事か。
なんかコイツって、結局、どこまで行っても、お節介なんだな。
ドイツもコイツも、よくもまぁ、そんな人の事バッカリ考えられるな。
凄ぇよ。
けど、ここまで聞いた以上、最後に、もう一回だけ確認しなければならない事があるな。
「なぁ山中」
「なんや?」
「さっきの話で、オマエが、素直に対して本気なのは、よくわかった……けどよぉ、やっぱり、オマエに対する懸念が1つだけ残るんだよ」
「だから、なんやねん?」
「オマエ、ホントに浮気しねぇんだろうな?」
「そりゃあ、アリスと付き合ったらせぇへんで」
また、あの馬鹿と同じ答えか……残念過ぎるぞ、オマエ等!!
いやいやいや。
山中は此処まで、素直に対する気持ちを正直に言い切ってるから、この言葉にもなにかある筈だ。
あの自分勝手な淫獣とは違う筈だ。
きっとなにかある。
少しは期待してるぞ。
裏切るなよ。
「じゃあ、素直と付き合ってない間は、どうなんだ?ヤッパリ、他の女に手を出すのか?」
「いや、他の女には一切、手は出さへんで。そやけどオマエ、なんでそないな『けったいな事』を聞くんや?」
「いや、実はよぉ。馬鹿秀の奴が、オマエ同様、最近片思いしてるらしいんだよ」
「はぁ?それ、なんの話や?……それに、アイツが片思いしてるやと?どんな相手やねん?モデルとか、女優とか、そんな類か?」
あっ……ダメだ。
山中の気が、完全にソッチに行ってしまい、話が逸れちまった。
まっ、まぁ、布石として話すか……
「いや、学生だ」
「学生?はぁ?アイツがか?……なんや、豪いシックリけぇへん話やな」
まぁ、シックリはこないだろうな。
あの馬鹿の好きな相手が学生なんて、普通は考えられない。
この話を、アイツを知る奴が聞いたら、きっと山中と同じ反応をするだろう。
「それがな。そうでもねぇんだよ」
「なんでやな?ただの学生なんやろ」
「いやいや。アイツに聞いた所、その女、滅茶苦茶アイツの好きそうな女なんだよ」
「なんや?どう言うこっちゃ?」
「なんかなMITとか言う、おっかない大学に、中3で飛び級した女なんだとさ」
「中3でMITって、オマエ……」
あの馬鹿者は、そう言う化物を好むだろうに。
「それで、その女は可愛いんか?」
「いや、詳細は、俺もよく知らねぇんだが。本人も逢った事が無いらしい」
「アッ、アホや。可愛いかどうかも解らんのに片思いするやなんて、アホとしか言い様がない。あいつドンだけ『才能マニア』やねん」
「けどよぉ、らしいと言えばらしいだろ」
「そやな。まぁそやけど、吃驚して腰抜かす位のドブスであって欲しいわ。天に恵まれんのは、その頭脳だけで十分や。それ以上は、ごめん被りたいもんや」
そこに関しては、誰でも同じ事を思うよな。
『眉目秀麗』とかは漫画だけにして欲しいもんだもんな。
あぁ因みに、俺の中で奈緒さんは『眉目秀麗』だ。
けど、あの人は、存在自体が漫画の世界の住人みたいなもんだし、俺の彼女だから大いにOK。
「だよな」
「そやけど、その話と、さっきの『浮気』の話が繋がらんなぁ」
「あぁ、それなんだけどな。さっきオマエにした話を馬鹿秀にもしたら『俺は付き合うまでは好きにする』って言い切りやがったんだよ。だからオマエも、そうなのかなって思ってよ」
「アホ抜かせ。最低でも、自分がアリスと付き合うか、アイツが信用出来る彼氏が出来るまでは、他の女には手ぇ出さへんわ。俺かて、そこまで人間捨てたないわ」
だよな。
いや、普通そうあるべきだよな。
女誑しの山中に言われる位だから、アイツ、相当終わってんな。
これで、あの馬鹿が正しくない事が2:1って事になった。
……良いデータが取れた。
それに山中の素直に対する気持ちが、本物だと解ったのは凄く良い事だ。
俺自身、山中のこの恋愛については、かなり疑心暗鬼な部分があったからな。
いやいや、中々男気が有るじゃありませんか、山中君。
少しは見直したぞ。
その分、馬鹿秀の株は暴落中。
アイツ、早く死ねば良いのにな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
山中君、意外と真面目な考えで、素直ちゃんの事が好きだったみたいですね(笑)
さて、この話は、どう続いていくのか?
それはまた次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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