●前回までのあらすじ●
アメリカに単独留学中の崇秀は、止めどない進化を続けていた。
その衝撃の事実と、手の付けられない様なギターの腕前を聞いて倉津君は、一体、どうするのでしょうか?
「なっ……なんだよ、これ?」
「漸く、完全に眼が覚めたみたいやな。それが、今のアイツの隠す所の無い実力や。バンドのメンバー次第では、もっと簡単に上にいける実力を兼ね備えとる。いやもぉ、既にそう言うレベルの話ですらないわ」
「こんなもん、一体、どうすりゃ良いんだよ?太刀打ちするとか、そう言う問題以前に、どうにもなんねぇぞ」
「そういうこっちゃな。オマエの推察通り、今までのアイツやったら、これ程の力は無かった。そやけど、そのバンドからも解る様に、自分以外のメンバーなんぞ、ソコソコ楽器が弾けたら、俺等なんぞ、簡単に単独で殺せるちゅう~こっちゃな」
「グッ」
「……どや?マジでアイツを倒そう思たら、もぉ恋愛ゴッコなんかに、うつつを抜かしとる場合やないんちゃうか?」
「オマエ……これを聞いても、まだヤル気なのか?」
「あのなぁマコ。アイツが、こないに必死になっとるのに、今更引ける訳ないやろ。それになぁ、アイツに出来て、俺に出来へんなんて納得いかへん。俺は死んでも、アイツを絶対に倒すで」
「けどよぉ。そうなると、今まで以上に練習しねぇと追い付けないぞ」
「あぁ、そう言うこっちゃ。それにイラン奴は、早々に切り捨てなアカンわな」
「なんだと?」
「ヤル気の無い奴は邪魔や。バンドから切り捨てる言うとんねん。……俺の主観では、最有力はアリスやな」
なにかしろの理由が有るのか、山中は断言にも似たセリフを吐く。
だが、これはおかしな話だ。
今の現状なら、素直よりも、俺や、奈緒さん方が不調。
これを理由に最有力候補に上げられても、なにもおかしくないと思っていたが……奴の口からは、ハッキリとした言葉で『アリス=素直』と告げられた。
何故だ?
素直は、俺とは逆に、最近、絶好調な筈なんだが……
「ちょ、ちょっと待て山中。なんで素直が最有力なんだよ?」
「解らんのか?アイツは、オマエと奈緒ちゃんの心をかき乱しとる。バンドの存亡に関わる様な事も平気でしとる。俺から言わせれば、そんな奴はバンドにいらんねん」
「けどよぉ。アイツだって、別に、そんなつもりでやってる訳じゃねぇだろ。必死に頑張ってんのに、いきなりクビとか、そう言う扱いはねぇんじゃねぇか?」
「アホかオマエは?」
「なんでだよ?なんも、おかしい事は言ってねぇぞ」
「アイツの音楽は、オマエの為だけに向けられたもんや。観客相手に目線を置いてない。そんな奴が居っても客は喜ばん。意味はない。邪魔なだけや。……それともなにか?オマエ、自分に惚れとる女は邪険に扱えとか言うつもりか?」
「誰も、んな事は言ってねぇだろがよぉ」
「ほな、なんやねん?アイツが居ったらバランス悪なんの解ってんのに、なんで除外せぇへんねん?理由はなんやねん?」
酷い言い様だ。
そりゃあ確かに、コイツの言う事も解らねぇ事もねぇが、これじゃあ、あまりにも一方的過ぎる。
必死に頑張ってんのに、勝手な想像だけで排除するなんて、どう考えてもおかしいだろ。
「出来るかよ!!」
「そんな事は聞いてへん?俺は理由を聞いとんねん」
「理由は、必死にやってる奴を、そんなアヤフヤな意見で除外するなんて有り得ねぇからだよ」
「さよか。ほな、どうするねん?」
「このまま継続すりゃ良いんだよ。時間が解決する事もあんだろうが」
「なにを甘い事を言うとんねん。そんなもん、ただ逃げ口上を垂れとるだけやないか……それとのぉ。以前から、オマエにも、ズッと言いたい事があんねんけどな」
「なんだよ?言いたい事が有るんなら、ハッキリ言えや」
まだ何か有るのか?
「さよか。ほな、ハッキリ言わして貰うわ。……俺はのぉ、崇秀の事を抜いても、オマエが、アリスにハッキリせぇへん態度をとるのには、かなりイラつきを感じとる。オマエ、このバンドで、なにがしたいかは知らんが。恋愛ゴッコやったら他所でやってくれ」
「俺の目的は『馬鹿に勝つ』……これが第一だ。けど、恋愛とバンドは関係ねぇ。違うか?」
「関係有るから、ワザワザこんな事を言うとんねん。アイツが、オマエにチョッカイ出しとる間は、どうやっても、バンドのバランスは上手い事取れへんやろ。こんなもん『百害有って一利なし』や」
「・・・・・・」
「……まぁ確かにのぉ、言うまでも無く、アイツの声は対崇秀用の大きな戦力にはなる。そやけど、バンドが上手くいかへん事を差し引いたら、そこまで必要な存在や無い。……俺はな、アイツはイランと思うぞ」
「馬鹿言うな。いるに決まってるだろ」
必死に頑張ってるのに除外。
こんな理不尽な事は、絶対にあっちゃいけない。
そんなのは汚い大人の社会だけで十分だ。
俺は、こんな理不尽で不条理な事は絶対認めねぇぞ。
「ほぉ、そこまでオマエが、アイツにバンドを続けさせたい言うんやったら。えぇ加減、アリスにハッキリ言えや。『バンド以外では、オマエとは一切付き合わん』ってな。女に保険ばっかり掛け腐りやがって、やる事なす事、オマエは、まどろっこしいんじゃ」
バンドの話をしてるのに、俺の事なんざ、どうでも良いだろうが!!
「テメェなぁ。さっきから聞いてりゃ好き勝手ほざきやがって……大体よぉ。それ以前に、このバンドは、何時からテメェだけの所有物になったんだ?オマエの決定は、全てなのかよ?ふざけんじゃねぇぞ!!」
「ボケが。オマエは、なに聞いとんじゃ?これは俺の主観の話や。誰も決定事項やなんて言うとらへん。……そやけどなぁマコ、これはなにも、俺だけの意見やないで、嶋田さんかて、このバンドの結成時から思てる事やぞ」
「嶋田さんもだと?」
「あぁそうや。バンド内での歪な女関係には懲り懲りしとる」
「だっ、だからってよぉ。なんで、素直だけ集中的に攻撃すんだよ?」
「ハッキリ言えばな。アイツ、鬱陶しいねん。……序に言えば、ゴチャゴチャ能書きばっかり垂れて、ハッキリせぇへん、オマエも鬱陶しい」
なっ……
「鬱陶しい……そんな理由で、素直を除外するつもりなのか」
「あぁそうや。俺はなぁ、元来オマエ等みたいな金持ち言う人種が大嫌いやねん。ぬくぬく育ったオマエ等には解らんやろうけどなぁ。金の無い貧乏人は、常に気焦りして生きとんねん。余裕なんか微塵も無いねん」
「んだと、この野郎!!この期に及んで、また金の話だと?今、金の話なんざ関係ねぇだろがよぉ」
「ボケが……どこまで天然やねん?『金が関係ない』やと?そんな事が言えるんは、金に余裕の有る金持ちの特権や」
「特権だと?」
「あぁ、そうや、特権や。ほな序に聞いたるわ……その言葉を、まんま奈緒ちゃんや、嶋田さんにも言えるか?さっきも言うたけど、奈緒ちゃん・嶋田さん・俺も含めて、この3人は、金に余裕なんかあらへん。金に余裕が有るのは、アリスと、オマエの2人だけやなんや。俺等には余裕も猶予もない。なんのリスクもなく遊びでやっとんのは、オマエ等2人だけなんや。いつまでもボケた事してバンドの空気を乱すな」
「馬鹿かテメェは?そんなもん、テメェのただの僻み根性じゃねぇかよ。……『金がねぇ』だと?知るかよ、そんなもん。崇秀の馬鹿ん家も貧乏だが、アイツは、そんな僻んだ事は言った事がねぇぞ」
「だから!!俺もそうなろう思とんじゃ。その為にはなぁ、効率を重視せなアカンねん。わからんか?」
わかんねぇな。
わかりたくもねぇし。
「だったらよぉ。そこに素直も加えて考えてやれよ。そんな事も出来ねぇ奴が、アイツになんか勝てる筈がねぇだろ」
「だからや。俺は、最初から、どっちかにハッキリせぇ言うてるやろがぁ。効率を重視する言うたかって、アリスの件が上手く行くんやったら、それに越した事はない。けど、オマエがハッキリせんへんから、アリスの存在が他人に鬱陶しゅうなるちゃうんかい?……物事を、もう一寸、多角的に見ぃ、このボケ」
「・・・・・・」
「一寸は解ったみたいやな。……大体、俺の立場で、あの子等になにを言えちゅう~ねん?オマエがしっかりせぇへんから。アリスを出汁に使って、話をしとんねんやろうが」
「・・・・・・」
山中の話の本質が、漸く見えた。
コイツは『奈緒さんの演奏』『素直の態度』『崇秀のレベルアップ』『嶋田さんの金銭問題』
それらの話を加味する事によって、俺に『警告』を入れるつもりだったんだな。
けどよぉ。
素直の話は、俺自身どうして良いのか、本当に解らないのが現状だ。
情けねぇな。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
倉津君、また怒られましたな(笑)
でも、こうやって山中君が本音をぶつけられるのは、なんだかんだ言ってても、倉津君を友達だと思えるからこそ、こういった事を正直に言えるものだとも思います。
私は、そう言う隠し事なしに言える関係って、凄く良いと思いますです(*'ω'*)
さて次回は。
そんな風に山中君の本質に気付いた倉津君が、どう言う行動に出るかが注目です。
彼は一体、何をするつもりなのでしょうか?
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!