●前回までのあらすじ●
ツアーミュージシャンを嫌がる2人の理由を聞き。
少し納得した倉津君は、ステラさんの音源を聞きたいと言ったが。
言われた本人は、聞きたい理由を知りたがって、これを拒絶。
倉津君、ちょっと怒る(笑)
「るせぇな。オマエは、ゴチャゴチャ言わねぇと、なにも出来ねぇのか?」
「なにも文句が有って、言葉を発している訳ではありませんよ。アナタの言葉に疑問を感じたから問うているだけです。そんな事すら解りませんか?低脳な方ですね」
「あぁっ、そッスか。けど、俺はな。オマエの音が聴きたいって言ってるだけだ。意味なんてねぇよ」
「でしたら、尚更、私の音なんて聴く必要が無い様に思えますが……如何ですか?」
「わかんねぇ奴だな。そんな事バッカリ言ってっと、俺の中の評価がドンドン下がっちまうぞ」
「ハァ……別に構いませんよ。寧ろ、アナタの評価なんて必要有りませんが」
コイツ、思った以上に面倒臭いな。
少し怒鳴ってやるか。
「もぉいい加減にしろよ、この糞女!!なんでオマエは、そぉ素直に物事が出来ねぇんだ?もぅ良い勝手にしろ!!テメェは、何時までもそうやって、1人で自分の殻に閉じ篭ってやがれ。いい加減、俺も我慢の限界だ。テメェなんぞ、一生そうやって、何時までも1人で音楽やってろ。音楽の本質を忘れてるミュージシャンなんか、ゴミ同然だ……もう音楽なんか辞めちまえ」
「はぁ?なんで私が、アナタに、そこまで言われなきゃいけないんですか?」
馬鹿だ。
コイツは、近年稀に見る馬鹿だ。
なんで、こんな事を言ってるのかは知らないが。
ミュージシャンが、自分の音楽を聞きたいって言う奴に音楽を聴いて貰わないなんて話、聞いた事もないぞ。
なんの為に音楽やってんだ、コイツ?
「馬鹿かテメェは?そう言われる様な馬鹿な事を言ってるから。そんな事を、俺なんぞに言われてんだよ!!大体なんなんだテメェは、何様だ?音楽の神様にでもなった気で居やがるのか?えぇ、ミューズ様よぉ」
「アナタこそ、なんなんですか?そんなに偉そうな事を言える程、アナタの音楽は完成されたものなのですか?冗談じゃない!!あの程度の音楽で、アナタに偉そうな事を言われる筋合いなんてありません」
「有るんだよ。それがよ。大有りなんだよ」
「なにがあるって言うんですか?言ってみて下さい」
疲れた……
それ位、わかってくれよな。
俺、これでも一応、病みあがりなんだぞ。
少しは、その辺を考慮しろよな。
「あのなぁステラよぉ。高々音楽を聴くのに、それに見合った演奏が出来なきゃ、音源1つ聴いちゃいけねぇのかよ?そんなんだったら、そこに居る崇秀の音楽なんざ、誰も聴けないぞ……良いか?音楽ってのはな、人に聴いて貰って、初めて価値が出るんだ。それを否定するなら、音楽なんぞやってる意味はねぇ。それによぉ、もし、オマエの言う事が正しいと言うなら、オマエは、オマエの音楽を聴いた奴を、全員把握してるって事になるんじゃねぇのか?……そんな器用な真似が、オマエに出来てるのか?」
「・・・・・・」
「ぷっ……たははっは……ステラの奴を沈黙させやがった。スゲェなオマエ」
やっとステラが納得したかのように見えたと言うのに。
崇秀のアホンダラァの大笑いが病室の木霊して、場の空気が一気に崩れる。
コイツだけは……少しぐらいは、この重苦しい空気ってもんが読めないのかよ!!
どう考えても、今、大笑いする所じゃねぇだろが!!
大体にしてなぁ。
元を正せば、オマエが、コイツを此処に越させたのが原因で、こうなってんじゃねぇのかよ!!
なのに、それを我慢せずに笑い散らかすって、一体、どういう神経だよ!!
第一オマエだったら、この程度の事、コイツに説教出来た筈だろうに……
・・・・・・
……ってオイ!!
まさか、最初から、これが本当の崇秀の狙いだったんじゃねぇだろうな!!
この馬鹿、俺にステラの思考をやわ楽させるだけに留まらず。
本当は自分がステラに説教するのが面倒臭くて、俺の所に寄越したんじゃねぇだろうな。
「おいおいおい、コラ、馬鹿秀さんよぉ!!まさかとは思うが、テメェこうなる事を予測して、俺の所に、ステラを連れて来たんじゃねぇだろうな」
「おっ……ご名答。オマエ、本当に、今日は冴えてるな。流石、ミカヅキモの王だけの事はあるな。単細胞最強の知恵者だ」
「誰がミカヅキモの王だ!!オマエは、マジで百一回死ね。そんで絶対に蘇って来るな」
「前にも言ったが、断然断る。オマエが、向井さんと別れたら、考えてやっても良いぞ」
「なんで俺が、オマエのショウモナイ死の為に、奈緒さんと別れにゃならんのだ……断る」
「必死だな、オイ……だったら、俺も当然断る」
ったくよぉ。
人が折角、良い話をして感動させてるって言うのに、オマエの馬鹿クソ話のせいで、全てオジャンじゃねぇか。
マジで死んでくれねぇかな、コイツ。
「……っで、結局、どうするつもりなんだ?」
「あぁもぉ、此処まで俺が、好き勝手、コイツ等に言っちまったらしゃあねぇだろ。俺が責任とって、コイツ等と組んでやるよ」
「ほぉ、そいつは面白い発言だな。じゃあ、今のバンドはどうするんだ?」
「続けるに決まってんだろが。辞める理由なんてどこにもねぇわ」
「ほぉ~って事はなにか、同時に2バンド動かせるって事か?」
「まぁそう言う事になるな……だがな、1つ条件付きだ」
「条件?あぁ良いだろう、テメェがリスクを背負うつもりなら、無条件でその話には乗ってやる」
「アホか?テメェにじゃねぇよ。俺が用が有るのは、その2人だ」
「ほぉ~、なるほどな。そうくるか」
崇秀は、何か納得したらしく深く頷いた。
まっ、こう言う場合にだけは、コイツのエスパー技能は有用だよな。
必要以上に語る必要が無いからな。
さて問題は、この馬鹿以外の他の2人だ。
少しでも、さっきの会話の中で、俺の心中を察してくれていれば良いがな。
「って事で。オイ、ご両人。もし俺とやるつもりがあるんだったら、ケジメだけはキッチリ見せろや。それが出来ねぇなら、この話は御破算だ」
「けじめ?けじめッテ、ナニスルデスカ?私、真琴乃助サンニ、ナニスレバイイデスカ?」
おっ!!これは、中々良い展開だぞ。
ジミーの奴が、早速撒き餌に喰い付いてきやがったぞ!!
……なんてな。
流石に、ジミーが直ぐに喰い付いて来る事は解っていた。
そりゃそうだろ。
あれだけツアーミュージシャンになるのを嫌がってる奴が、この話に喰い付かないと思う方が、どうかしている。
これは、誰が見ても確定事項的な話だ。
だからジミーは、此処では問題にはならない。
どちらかと言えば、全然、素直じゃないステラの方に対する撒き餌だと思う方が正確だろうな。
「いや、別に、何か特別な事をしろって訳じゃねぇよ。オマエが俺と『やりたい』と、少しでも思うなら、それ相応の『礼儀』は必要だ。それさえすりゃ、俺は、オマエを気持ち良く迎えてやる腹積りはあるって話だ」
「マサカ、真琴乃助サン……金カ?」
「アホか!!金なんぞイラネェわ。俺が欲しいのは覚悟だけだ。オマエの誠意が伝わりゃ、それで良いんだよ」
「OHナラ、是非トモ御願イシマス、真琴乃助サン!!私ト一緒ニヤッテ下サイ。私、一杯良イ曲書イテ見セマスヨ」
「そっか……じゃあ、頼むぜ相棒。オマエの曲を世界に響かせてやろうぜ」
「了解シタ」
茶番に等しいが、ジミーは予想に反する事無く『礼儀』を了承した。
故に、此処までは、俺が書いた筋書き通りだ。
さてさて……問題はステラだ。
この強情な女が、早々に、俺の言う『礼儀』が出来るかどうかは、かなりの難問。
もし素直に『礼儀』を弁える可能性があるとしたら、このジミーの一件ぐらいだ。
なんて言ってもな、ジミーを俺が受け入れた事によって、ステラは1人になった。
勿論、心細いとか云々を、コイツは考える弱い人間じゃないだろうが、それでも心的状況には、かなり厳しい筈。
幾ら、日本語が達者でも、海外で仲間が消える事は、そう言うものだ。
後は、自分の中で『1人ぼっち』と『礼儀』を天秤に掛けて、重い方に行動する。
まぁ、なので、この辺は賭けだな。
世の中には崇秀みたいな、何所に居ても1人でナンデモカンデモやり遂げるトンデモナイ糞野郎が、少なからず居るから筈だからな。
「……っで、オマエは、どうすんだよステラ?」
「そうですね。どうしたものでしょうか?」
おっ!!なんだよ。
豪く素直な方向で、話が進むパターンか?
……んな訳ねぇよな。
どうせ神様が用意してくれた、酷い落とし穴でも待ってるに違いない。
いつ何時、なにが起こるかわからねぇから。
レッドアラートを鳴らしたままで、警戒モードは、常に発動しておかないとな。
「やっぱ、俺じゃあ不満なのか?」
「いえ……そう言う訳じゃないんですが、少し不審な点が有りまして」
「不審な点なぁ。……まぁ相手が俺じゃ、そうなっても仕方がないだろうな。……所詮、俺だし」
「いえ……そう言う話でもないんです」
「じゃあ、なんだよ?」
「・・・・・・」
なんだ?
珍しく、モノをズケズケ言うステラが黙りこくったぞ。
それに、なんで崇秀の奴は、さっきから1人でくぐもって笑ってやがんだ?
なんか、この馬鹿が笑うほど、そんな面白い事を言ったか俺?
なんだこの状況?
「おいおいステラ?どうしちまったんだよ?オマエが黙ってちゃ、話が一向に進まねぇじゃねぇかよ」
「ですよね」
いや……わかってんのかよ。
だったら、いつもみたいに罵詈雑言を交えながら、普通に会話をすりゃ良いんじゃねぇのか?
こうも素直になられると、逆に心配になってきたぞ。
んでよぉ、序と言っちゃなんだがな。
オマエだけが、なんでそんなに笑い続けてんだ崇秀?
さっきから、何がそんなに面白いんだよ?
「あぁじゃあよぉ。俺と一緒にやろうぜステラ。多分だが、1人で音楽やるより、数十倍楽しいと思うぞ」
「!!」
「ブッ……あはははははっはははっはっはははっははっ!!無理だ無理。こんな女誑し見た事がねぇ。こりゃあもぉ天然ものだ天然モノ」
「はっ、はぁ?」
はぁ?なんで俺が女誑しなんだよ?
なんでこの状況で、俺が、そんな嫌な言葉を言われなきゃなれねぇんだよ!!
「『はっ、はぁ?』じゃねぇよ。オマエって、ホント女の心に入るのが上手いな。感心したぞ」
「いやいやいや、俺、そんなつもりは全然ねぇし!!コイツが、少しでも良い方向に向くなら、俺から誘ってやった方が良いのかな?って思っただけだしよ。……大体よぉ、コイツ、凄い頑固そうじゃねぇかよ」
「ぷっ……ダメだコイツ。マジの天然物だ」
「だからよぉ、なにが天然なんだよ?」
「あのなぁ、倉津。オマエって奴はなぁ……ぷっ!!あはははっはっははっ、やっぱ教えねぇ。その方が、今後も面白そうだ」
「オッ、オイ、オマエねぇ」
「んじゃま、面白い事になってきたから、俺は、この辺でお暇するかね……じゃあな、女誑しさんよ」
「ちょ!!おっ、おいってばよ、馬鹿秀!!」
そう言って奴は、いつもの様に、ゴールドセイントの速さでこの場を去る。
それと入れ替わりに入って来た奈緒さんと素直。
そして奴は、そんな2人が眼に入ると。
なにか一言だけ言って出て行くんだが……何故か、その後の2人の顔が険しい。
おいおい、なんだよ、この展開は……イヤな予感しかしねぇぞ。
ってか、なんでアイツは、どうして、こうも悪夢しか運んで来ねぇんだよ……
もぉ誰か助けてくれよ!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
これにて第三十四話『悪夢を運ぶ者』は終了と成ります。
まぁ、この後も倉津君の苦難は、最悪度を増して行くのですが。
始まった時のカツアゲをしてた様な倉津君とは、大分、変わって来ましたね。
自分が他人にして貰って嬉しかった事を、徐々にではありますが、他に人に実行出来る様に成ってきました。
これは、少し成長したと言っても良いと思います。
さてさて、そんな風に微妙に成長した倉津君なのですが。
崇秀が病室を出る際に、また余計な事を奈緒さんと素直ちゃんに吹き込んで行ったので。
当然の様にアクシデントに見舞われます(笑)
それを上手く乗り越えられるのか?
それは次回から始まる。
第三十五話『女女女とポンコツ』でお送りしたいと思います。
なので、また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!