●前回までのあらすじ●
崇秀の言葉に乗せられて、バンドを掛けた賭けをしてしまう倉津君。
けど、その他にも崇秀の聞きたい事があるらしく。
山中君が、素直ちゃんに、この事を言いに行った後、話を始めようとする。
「さて倉津……俺に、なんの用だ?」
「言うまでもねぇ。この話、どこで嗅ぎつけてきやがった」
「ほぉ、意外な話をしてきたな。俺は、てっきりライブの話をするのかと思ってたぞ」
「フン、決まった事を、今更、とやかく言うつもりなんぞねぇよ」
「まぁな。……そりゃあ、良い判断だ」
「っで?どこでこの情報を仕入れた?」
この件に関して謎が多すぎる。
アメリカに居た奴が。
日本のこんな小さな情報を知ってるのは、あまりにも無理が有り過ぎる。
誰かスパイでも雇ってない限りな。
「どこからでもねぇよ」
「どこからでもねぇだと?どう言うこったよ?アメリカに居た筈のオマエが、この状況を知ってるなんて、明らかに、おかしいじゃねぇか」
「そうかぁ?……ってか、これだけのメンバーが居て、3ヶ月もバンドが沈黙して、桧舞台に上がってないとなりゃあ、簡単に、なにか有った位は解るんじゃねぇか?」
あぁ、まぁ確かにな。
「……じゃあ、なにか?そこに、タイミングよく帰って来たとでも言いたいのか?」
「いいや。この話は、本当に偶々だ。現に、さっき俺が言った、実家の話も本当だしな。俺個人に対しての予約が160件以上も溜まってる。流石に、コイツを放って置く訳にもいかねぇだろ」
「そっ、そうか」
「んな事よりよぉ、倉津。オマエ、実際の所はどうなんだよ?このバンド続けられそうなのか?」
「わかんねぇな」
「そうか。……矢張り、個人の灰汁が強過ぎたのと。恋愛感情を加えたのは問題だったか」
「まぁ、その辺はなんとも言えねぇんだがな。確かに今現在では、俺のせいで協調性は皆無だな」
「なるほどな。そいつは、かなり厄介だな」
厄介と言うか……俺が、どうして良いか解ってないのが問題なんだけどな。
あぁ、そう言えば、コイツは、どうやってアメリカのバンドを纏めてるんだ?
その辺を聞いたら、少しは、打開策が見えて来るかも知れないな。
「まぁコッチは、そんな感じなんだが。オマエの方こそ、どうなんだよ?上手く行ってるのか?」
「俺か?俺の方は常に万全だ。なんの問題も起きてねぇよ」
「そうか……けどよぉ、3つのバンドを行き来して纏めるのって大変じゃねぇか?」
「あぁそこな……気になるか?」
「まぁな。なんかあんのか?」
「いや、オマエが期待してる様な回答は、全く出て来ねぇぞ。大体にして、俺が所属している3つのバンド自体、纏める必要性なんて無いからな」
「へっ?バンドなのに纏めなくて良いだと?なんでそうなるんだよ?」
「競争させる為だけに作ったバンドだからだ。そんなもん、纏める必要はないだろうに」
「へっ?はぁ?競争だと?」
纏めもせずに、なにを競争させるって言うんだ?
訳が解らねぇ。
「あぁ、競争させるだけで良いんだ」
「なんでだ?」
「単純な話だ。コイツ等のライブの音源を聞けば、より解り易いんだが。アイツ等はな、今のところステージに立つだけでも嬉しくてタマらねぇ様なド素人集団なんだよ。事実、俺が加入するまでは、一度もステージに上がった事もない様な連中だった訳だからな」
「まぁ、音源は、山中から聞かせて貰ったが。確かに、特筆すべき点のない連中だとは思ったな」
「だろ。どう聞いても下手糞だろ。……けど、アイツ等は、たった3ヶ月で、あそこまで登り詰めた。何故だと思う?」
「オマエ、さっき自分で言ったじゃねぇか、オマエが居たからだろ」
「そう言うこった。ド素人が、簡単にあそこまで登れたのは、殆どは俺のお陰だ……だがな、解答としては間違いだ」
「なんでだ?」
「アイツ等は下手糞也に無我夢中に頑張って、必死に腕を磨いている。俺を自分のバンドに引き止める為だけにな」
「って事は何か」
「あぁ、今以上に上に行きたけりゃ、必然的に俺の力が必要になる。奴等も、それは重々承知してる訳だから……俺はバンドを作った際に、こう宣言してやったんだよ。『最終的には1つのバンドとしかやらねぇ』ってな。……なら、これだけで俺が纏めなくても、必然的に個々のバンドが纏まるし、バンド自体も必死にならざるを得ない。……どうだ?上手いやり方だろ」
コイツだけは……
「じゃあ、なにか?その言い様だと、最後は、どこかに所属するのか?」
「しねぇよ。……さっきも言った通り、俺は『各国に敵を作ってぶっ壊す』。これは、その為の布石に過ぎねぇ」
オイオイ、冗談とは思わなかったにせよ。
そこもマジで言ってやがったんだな。
「けどよぉ。なんで、そんな事をする気になったんだ?以前のオマエなら、無駄な敵なんか作らなかった筈だが?」
「それはな。……オマエに、あの路地裏で言われた『ドライな奴だな』って1言が切欠だな」
「はぁ?」
「いやな、要は考え方なんだけどよぉ。ケチな事を考えて、ショボイ敵を倒して裸の王様気取るよりもな。自から強敵を作って、その相手を完膚なきまでぶっ壊す方が、世間的にも、俺的にも100倍面白いかなぁって思ってよ」
「ばっ、馬鹿じゃねぇの、オマエ?」
「馬鹿ねぇ……まっ、馬鹿だな」
「わかってんなら、辞めりゃぁ良いじゃねぇか」
「辞めねぇ。それ程、オマエの1言は、俺に重く圧し掛かった」
何気に言った事、マジに受けてんじゃねぇぞ。
コッチが重く感じるわ!!
「でっ、でもよぉ。最終的に倒すべき敵が居なくなったら、どうすんだよ?」
「そんなもんオマエ。大笑いして引退するに決まってんだろ」
「がぁ……なんだよそれ?マジ最悪だな」
「あぁ、結末としては最悪だな。……けどよぉ、もしそうなりたくねぇんなら。オマエも含めた上で、各国の上手い連中が集まって、俺を倒す為だけのバンドを結成すれば良いだけじゃんかよ。……まぁ当然俺は、そいつ等も、全部ぶっ倒すがな」
此処まで来たら、自信過剰とか、そう言う問題じゃねぇな。
現にコイツは、アメリカに渡り。
たった3ヶ月と言う短い期間で、恐ろしい程レベルアップしている。
これは、さっきの言葉を裏付ける証拠だ。
それにこの調子だと、恐らくこれからもコイツは妥協しないだろう。
……っとなればだ。
この話自体、あながちビッグマウスではないと言う事になる。
俺と、コイツじゃ見てる世界が違う。
器が違い過ぎる。
「なんだよ?」
「世の中には、ホントに馬鹿って居るんだなって思ってよ」
「なんだよそれ?誰が馬鹿だちゅうの?」
「オマエだよオマエ……あぁそういやぁオマエ、なんで急にアメリカでレベルアップ出来たんだ?あまりにも急激過ぎねぇか?」
「いやな。実を言うとな。それ自体は、そんな大層な話じゃねぇんだよ。ただ単に俺のヤル気を掻き立てる奴が、アメリカに居たってだけの話だからな。まぁ、それでレベルアップしたって言うんなら。それは早い話、ソイツのお陰って訳だな」
「なんだそいつ?オマエ並みの馬鹿が、この世の中に、まだ存在すんのか?悪い冗談だ、止めてくれ」
「いいや、違う。そいつは、本当に凄い奴だ。……俺なんかとは次元が違う」
「なっ、なんだと?」
マジでやめてくれ。
こんなキチガイより、上のキチガイが存在するだと?
もしそれが事実なら、先進国アメリカって、ホントに、おっかねぇ国なんだな。
あの国……キチガイ養成所でもあんのか?
「オイオイ、勘違いするなよ。先に言って置くが、音楽で俺に敵はいねぇ。正直1部の人間を除けば、落胆すべき人間しか見た事がねぇ。プロだろうが、アマだろうが、実際は大した奴なんか居ねぇ」
「じゃあよぉ。なんなんだよ、そいつは?」
「いやな。これも偶々、新聞で見たんだがな。俺より1つ上の年の奴で『MIT』に飛び級で入った奴がいんだよ。これには正直、俺も度肝を抜かれた」
「『MIT』?なんだそりゃ?」
聞いた事もねぇな。
どこだよそれ?
「チッ……人が機嫌良く話してるのに。んな事も知らねぇのか?」
「知らねぇよ」
「マサチューセッツ工科大学( Massachusetts Institute of Technology)通称MIT。マサチューセッツ州ケンブリッジ市に本部を置く私立大学だ。ノーベル賞受賞者を多数輩出している学校でな。全米屈指のエリート名門校の1つとされるいる大学だ。まぁ手っ取り早く理解して貰うなら、天才が集まる集落みたいな所だな」
「へぇ~~~……でも、なんかよぉ。天才の集落って言われてもよぉ。よく知れねぇからシックリこねぇな」
「あぁじゃあよぉ、日本でも有名な『ハーバード大学』か『ケンブリッジ大学』って知ってるか?」
「おぉ、それなら、一応程度には知ってるぞ。滅茶苦茶頭の良い大学だな」
「その大学のライバル校だ」
「ぶっ!!」
なんだそれ?
そんな天才が集まる様な所に、中学生が入れるものなのか?
どう考えても、ソイツの頭の中は、普通じゃねぇな。
「まっ、そいつの影響で、俺も、まだまだ青いなって思ったんだよ」
「って事はなんだ?そいつとは逢ったのか?」
「いいや、逢ってねぇよ」
「じゃあ、なんで、そんなに影響を受けんだよ?」
「それがな。……ソイツ、日本人なんだよ」
「はぁ、なるほどな。同年代で、同じ国籍だから影響を受けたと」
「いや、それだけじゃねぇ。一番興味を引いたのは、ソイツが女って事だ」
「おっ、女?女だと!?」
いやまぁな。
別に女性蔑視をする訳じゃないんだが。
中学生の女が、そのMITとか言う大層な大学に入ったのか?
凄い女が居たもんだな。
どんな脳味噌の構造してるんだソイツ?
少しで良いから、俺にも、その知性を分けてくれないモンか。
「だからよぉ。そんな女が居たら、どんな女か見てみたくなるのが、男の本能ってもんだろ?」
「そりゃあ、まぁ興味はあるよな」
「っで、その為にバンドを作ったんだよ」
「はぁ?なんだよ、それ?どう言うこった?」
「なにな。どんな賢い学校にも文化祭みたいなもんがつき物だろ。だからバンドやってりゃ、自ずと、そのチャンスが巡ってくる可能性がある。だがな『文化祭にバンドを呼ぶ』って言っても、奴等天才共はド素人の糞バンドなんて眼中にもねぇ。なら、知名度を上げなきゃなんねぇ訳だな。んでだな、せめてインディーズぐらいには上げねぇとイケネェと思ったから、インディーズまで上げてみた。……まぁそうやってる内に、レベルが上がったんじゃねぇか?」
馬鹿極めりだな。
見た事も無い女の為に、普通そこまでするか?
「オマエって、ホントに、つくづく馬鹿なんだな。普通、そんな不確定なもんの為にバンド作るか?」
「作るぞ。俺は快楽主義者だから、これって決めた事には手段は選らばねぇ」
「あのなぁ馬鹿秀。変な期待せずに、よく考えてもみろよ。大体、そんな勉強ばっかしてる女が可愛い訳ないだろ。どうせ髪の毛もボサボサで、服のセンスもねぇ。……しかも、そう言う手合いは、大概ブスと決まってる」
「おぉ……そいつは、中々好都合じゃねぇか。それなら俺が、ソイツを可愛くしてやれば済む話だ。どこの誰よりもな。いやはや、オマエに言われて楽しみが増えたわ」
あぁ……また無駄にヤル気にさせてしまった。
言葉に気をつけないと、この馬鹿、どんどんヤル気が増して行きやがる。
ホント病気だ。
「とんでもないブスな事を願うわ」
「いいや……俺の予想だと『素材が有ってブスに見える』って感じだな」
「なんでそこまで断言出来んだよ?写真でも見たのか?」
「いいや、見てねぇよ」
「じゃあ、なんで、そんなに固執すんだよ?」
「ん?なんとなく気に入ったから」
訳わかんねぇ?
逢った事もねぇ。
性格もわからねぇ。
見た目もわからねぇ。
普通、そんな女に固執するか?
普通なら解り易く、奈緒さんみたいに可愛くて、性格の良い人に惚れるだろ。
ホント、コイツだけは訳がわからねぇ。
それとも天才同士で、俺等凡人にはわからねぇ共感でもするものなのか?
「ブッ、ブスに決まってる」
「やけに拘るな。……なんだオマエ、そんなにブスであって欲しいのか?」
「当たり前だ!!そんな『天にニ物も三物も与えられた人間』が居たら、俺等、凡人はやるせないわ!!」
「なるほど。じゃあよぉ賭けるか?」
「オイオイ、この話で、なにを賭けるって言うんだよ?」
「俺の人生……って、のはどぉだ?」
「はぁ?」
「いやな。俺は、なんか知らねぇが。事この事に関しては、凄ぇ自信があるんだよ。見ねぇ内から美人だと確信出来る」
「だから、なんなんだよ?それだけじゃあ、オマエの人生どこにも賭ってねぇじゃねぇか?」
「だからよ。ブス・美人に関わらず、俺は、ソイツを必ず自分のものにして、幸せにしてやる。……どうだ?それなら面白そうだろ?」
「はぁ?」
なっ、なに言ってんだコイツ?
自分の人生を、一体、なんだと思ってやがるんだ?
それ以前に、相手の意思を完全に無視してやがるな。
相手がブス・美人以前の問題として、オマエが迷惑この上ない存在だな。
「オイオイ、オイオイ、なんでそこまでする気になるんだよ?訳がわからねぇぞ?」
「ん?俺のインスピレーションが、そうしろって言ってるからだが……おかしいか?」
「アッ、アホだ……オマエは、底の知れないアホだ」
「全然アホじゃねぇよ。オマエは、いつも、そうやって一方向でしかモノを見ないから、そんな馬鹿な事が平気で言えるんだよ。……ホント、頭悪いよな」
「いやいや、いやいや、普通そんなもんだろ。なにがオマエを、そこまで突き動かすのか、俺には理解出来ねぇよ」
「そっかぁ?現時点でも、その女には、十分な程に、それだけの価値があるんだがなぁ」
「はぁ?」
なにがあんだよ?
この馬鹿の意見は、もぉマジでさっぱりわからん。
最後までお付き合い、ありがとうございましたぁ<(_ _)>
なにやら話の方向性がドンドンとズレて。
バンドとは関係ない所で、また新たな賭けが成立しそうな雰囲気ですね。
なにやってるんでしょうね、この2人は?(笑)
さて次回は、まさにその続きでございます。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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