最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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129 不良さん 崇秀のやり方を知る

公開日時: 2021年6月15日(火) 00:21
更新日時: 2022年11月23日(水) 23:01
文字数:5,406

●前回までのあらすじ●


 崇秀の言葉に乗せられて、バンドを掛けた賭けをしてしまう倉津君。


けど、その他にも崇秀の聞きたい事があるらしく。

山中君が、素直ちゃんに、この事を言いに行った後、話を始めようとする。

「さて倉津……俺に、なんの用だ?」

「言うまでもねぇ。この話、どこで嗅ぎつけてきやがった」

「ほぉ、意外な話をしてきたな。俺は、てっきりライブの話をするのかと思ってたぞ」

「フン、決まった事を、今更、とやかく言うつもりなんぞねぇよ」

「まぁな。……そりゃあ、良い判断だ」

「っで?どこでこの情報を仕入れた?」


この件に関して謎が多すぎる。


アメリカに居た奴が。

日本のこんな小さな情報を知ってるのは、あまりにも無理が有り過ぎる。


誰かスパイでも雇ってない限りな。



「どこからでもねぇよ」

「どこからでもねぇだと?どう言うこったよ?アメリカに居た筈のオマエが、この状況を知ってるなんて、明らかに、おかしいじゃねぇか」

「そうかぁ?……ってか、これだけのメンバーが居て、3ヶ月もバンドが沈黙して、桧舞台に上がってないとなりゃあ、簡単に、なにか有った位は解るんじゃねぇか?」


あぁ、まぁ確かにな。



「……じゃあ、なにか?そこに、タイミングよく帰って来たとでも言いたいのか?」

「いいや。この話は、本当に偶々だ。現に、さっき俺が言った、実家の話も本当だしな。俺個人に対しての予約が160件以上も溜まってる。流石に、コイツを放って置く訳にもいかねぇだろ」

「そっ、そうか」

「んな事よりよぉ、倉津。オマエ、実際の所はどうなんだよ?このバンド続けられそうなのか?」

「わかんねぇな」

「そうか。……矢張り、個人の灰汁が強過ぎたのと。恋愛感情を加えたのは問題だったか」

「まぁ、その辺はなんとも言えねぇんだがな。確かに今現在では、俺のせいで協調性は皆無だな」

「なるほどな。そいつは、かなり厄介だな」


厄介と言うか……俺が、どうして良いか解ってないのが問題なんだけどな。


あぁ、そう言えば、コイツは、どうやってアメリカのバンドを纏めてるんだ?

その辺を聞いたら、少しは、打開策が見えて来るかも知れないな。



「まぁコッチは、そんな感じなんだが。オマエの方こそ、どうなんだよ?上手く行ってるのか?」

「俺か?俺の方は常に万全だ。なんの問題も起きてねぇよ」

「そうか……けどよぉ、3つのバンドを行き来して纏めるのって大変じゃねぇか?」

「あぁそこな……気になるか?」

「まぁな。なんかあんのか?」

「いや、オマエが期待してる様な回答は、全く出て来ねぇぞ。大体にして、俺が所属している3つのバンド自体、纏める必要性なんて無いからな」

「へっ?バンドなのに纏めなくて良いだと?なんでそうなるんだよ?」

「競争させる為だけに作ったバンドだからだ。そんなもん、纏める必要はないだろうに」

「へっ?はぁ?競争だと?」


纏めもせずに、なにを競争させるって言うんだ?


訳が解らねぇ。



「あぁ、競争させるだけで良いんだ」

「なんでだ?」

「単純な話だ。コイツ等のライブの音源を聞けば、より解り易いんだが。アイツ等はな、今のところステージに立つだけでも嬉しくてタマらねぇ様なド素人集団なんだよ。事実、俺が加入するまでは、一度もステージに上がった事もない様な連中だった訳だからな」

「まぁ、音源は、山中から聞かせて貰ったが。確かに、特筆すべき点のない連中だとは思ったな」

「だろ。どう聞いても下手糞だろ。……けど、アイツ等は、たった3ヶ月で、あそこまで登り詰めた。何故だと思う?」

「オマエ、さっき自分で言ったじゃねぇか、オマエが居たからだろ」

「そう言うこった。ド素人が、簡単にあそこまで登れたのは、殆どは俺のお陰だ……だがな、解答としては間違いだ」

「なんでだ?」

「アイツ等は下手糞也に無我夢中に頑張って、必死に腕を磨いている。俺を自分のバンドに引き止める為だけにな」

「って事は何か」

「あぁ、今以上に上に行きたけりゃ、必然的に俺の力が必要になる。奴等も、それは重々承知してる訳だから……俺はバンドを作った際に、こう宣言してやったんだよ。『最終的には1つのバンドとしかやらねぇ』ってな。……なら、これだけで俺が纏めなくても、必然的に個々のバンドが纏まるし、バンド自体も必死にならざるを得ない。……どうだ?上手いやり方だろ」


コイツだけは……



「じゃあ、なにか?その言い様だと、最後は、どこかに所属するのか?」

「しねぇよ。……さっきも言った通り、俺は『各国に敵を作ってぶっ壊す』。これは、その為の布石に過ぎねぇ」


オイオイ、冗談とは思わなかったにせよ。


そこもマジで言ってやがったんだな。



「けどよぉ。なんで、そんな事をする気になったんだ?以前のオマエなら、無駄な敵なんか作らなかった筈だが?」

「それはな。……オマエに、あの路地裏で言われた『ドライな奴だな』って1言が切欠だな」

「はぁ?」

「いやな、要は考え方なんだけどよぉ。ケチな事を考えて、ショボイ敵を倒して裸の王様気取るよりもな。自から強敵を作って、その相手を完膚なきまでぶっ壊す方が、世間的にも、俺的にも100倍面白いかなぁって思ってよ」

「ばっ、馬鹿じゃねぇの、オマエ?」

「馬鹿ねぇ……まっ、馬鹿だな」

「わかってんなら、辞めりゃぁ良いじゃねぇか」

「辞めねぇ。それ程、オマエの1言は、俺に重く圧し掛かった」


何気に言った事、マジに受けてんじゃねぇぞ。


コッチが重く感じるわ!!



「でっ、でもよぉ。最終的に倒すべき敵が居なくなったら、どうすんだよ?」

「そんなもんオマエ。大笑いして引退するに決まってんだろ」

「がぁ……なんだよそれ?マジ最悪だな」

「あぁ、結末としては最悪だな。……けどよぉ、もしそうなりたくねぇんなら。オマエも含めた上で、各国の上手い連中が集まって、俺を倒す為だけのバンドを結成すれば良いだけじゃんかよ。……まぁ当然俺は、そいつ等も、全部ぶっ倒すがな」


此処まで来たら、自信過剰とか、そう言う問題じゃねぇな。


現にコイツは、アメリカに渡り。

たった3ヶ月と言う短い期間で、恐ろしい程レベルアップしている。


これは、さっきの言葉を裏付ける証拠だ。

それにこの調子だと、恐らくこれからもコイツは妥協しないだろう。


……っとなればだ。

この話自体、あながちビッグマウスではないと言う事になる。


俺と、コイツじゃ見てる世界が違う。


器が違い過ぎる。



「なんだよ?」

「世の中には、ホントに馬鹿って居るんだなって思ってよ」

「なんだよそれ?誰が馬鹿だちゅうの?」

「オマエだよオマエ……あぁそういやぁオマエ、なんで急にアメリカでレベルアップ出来たんだ?あまりにも急激過ぎねぇか?」

「いやな。実を言うとな。それ自体は、そんな大層な話じゃねぇんだよ。ただ単に俺のヤル気を掻き立てる奴が、アメリカに居たってだけの話だからな。まぁ、それでレベルアップしたって言うんなら。それは早い話、ソイツのお陰って訳だな」

「なんだそいつ?オマエ並みの馬鹿が、この世の中に、まだ存在すんのか?悪い冗談だ、止めてくれ」

「いいや、違う。そいつは、本当に凄い奴だ。……俺なんかとは次元が違う」

「なっ、なんだと?」


マジでやめてくれ。

こんなキチガイより、上のキチガイが存在するだと?


もしそれが事実なら、先進国アメリカって、ホントに、おっかねぇ国なんだな。


あの国……キチガイ養成所でもあんのか?



「オイオイ、勘違いするなよ。先に言って置くが、音楽で俺に敵はいねぇ。正直1部の人間を除けば、落胆すべき人間しか見た事がねぇ。プロだろうが、アマだろうが、実際は大した奴なんか居ねぇ」

「じゃあよぉ。なんなんだよ、そいつは?」

「いやな。これも偶々、新聞で見たんだがな。俺より1つ上の年の奴で『MIT』に飛び級で入った奴がいんだよ。これには正直、俺も度肝を抜かれた」

「『MIT』?なんだそりゃ?」


聞いた事もねぇな。


どこだよそれ?



「チッ……人が機嫌良く話してるのに。んな事も知らねぇのか?」

「知らねぇよ」

「マサチューセッツ工科大学( Massachusetts Institute of Technology)通称MIT。マサチューセッツ州ケンブリッジ市に本部を置く私立大学だ。ノーベル賞受賞者を多数輩出している学校でな。全米屈指のエリート名門校の1つとされるいる大学だ。まぁ手っ取り早く理解して貰うなら、天才が集まる集落みたいな所だな」

「へぇ~~~……でも、なんかよぉ。天才の集落って言われてもよぉ。よく知れねぇからシックリこねぇな」

「あぁじゃあよぉ、日本でも有名な『ハーバード大学』か『ケンブリッジ大学』って知ってるか?」

「おぉ、それなら、一応程度には知ってるぞ。滅茶苦茶頭の良い大学だな」

「その大学のライバル校だ」

「ぶっ!!」


なんだそれ?

そんな天才が集まる様な所に、中学生が入れるものなのか?


どう考えても、ソイツの頭の中は、普通じゃねぇな。



「まっ、そいつの影響で、俺も、まだまだ青いなって思ったんだよ」

「って事はなんだ?そいつとは逢ったのか?」

「いいや、逢ってねぇよ」

「じゃあ、なんで、そんなに影響を受けんだよ?」

「それがな。……ソイツ、日本人なんだよ」

「はぁ、なるほどな。同年代で、同じ国籍だから影響を受けたと」

「いや、それだけじゃねぇ。一番興味を引いたのは、ソイツが女って事だ」

「おっ、女?女だと!?」


いやまぁな。

別に女性蔑視をする訳じゃないんだが。

中学生の女が、そのMITとか言う大層な大学に入ったのか?


凄い女が居たもんだな。


どんな脳味噌の構造してるんだソイツ?


少しで良いから、俺にも、その知性を分けてくれないモンか。



「だからよぉ。そんな女が居たら、どんな女か見てみたくなるのが、男の本能ってもんだろ?」

「そりゃあ、まぁ興味はあるよな」

「っで、その為にバンドを作ったんだよ」

「はぁ?なんだよ、それ?どう言うこった?」

「なにな。どんな賢い学校にも文化祭みたいなもんがつき物だろ。だからバンドやってりゃ、自ずと、そのチャンスが巡ってくる可能性がある。だがな『文化祭にバンドを呼ぶ』って言っても、奴等天才共はド素人の糞バンドなんて眼中にもねぇ。なら、知名度を上げなきゃなんねぇ訳だな。んでだな、せめてインディーズぐらいには上げねぇとイケネェと思ったから、インディーズまで上げてみた。……まぁそうやってる内に、レベルが上がったんじゃねぇか?」


馬鹿極めりだな。


見た事も無い女の為に、普通そこまでするか?



「オマエって、ホントに、つくづく馬鹿なんだな。普通、そんな不確定なもんの為にバンド作るか?」

「作るぞ。俺は快楽主義者だから、これって決めた事には手段は選らばねぇ」

「あのなぁ馬鹿秀。変な期待せずに、よく考えてもみろよ。大体、そんな勉強ばっかしてる女が可愛い訳ないだろ。どうせ髪の毛もボサボサで、服のセンスもねぇ。……しかも、そう言う手合いは、大概ブスと決まってる」

「おぉ……そいつは、中々好都合じゃねぇか。それなら俺が、ソイツを可愛くしてやれば済む話だ。どこの誰よりもな。いやはや、オマエに言われて楽しみが増えたわ」


あぁ……また無駄にヤル気にさせてしまった。


言葉に気をつけないと、この馬鹿、どんどんヤル気が増して行きやがる。


ホント病気だ。



「とんでもないブスな事を願うわ」

「いいや……俺の予想だと『素材が有ってブスに見える』って感じだな」

「なんでそこまで断言出来んだよ?写真でも見たのか?」

「いいや、見てねぇよ」

「じゃあ、なんで、そんなに固執すんだよ?」

「ん?なんとなく気に入ったから」


訳わかんねぇ?


逢った事もねぇ。

性格もわからねぇ。

見た目もわからねぇ。

普通、そんな女に固執するか?


普通なら解り易く、奈緒さんみたいに可愛くて、性格の良い人に惚れるだろ。


ホント、コイツだけは訳がわからねぇ。


それとも天才同士で、俺等凡人にはわからねぇ共感でもするものなのか?



「ブッ、ブスに決まってる」

「やけに拘るな。……なんだオマエ、そんなにブスであって欲しいのか?」

「当たり前だ!!そんな『天にニ物も三物も与えられた人間』が居たら、俺等、凡人はやるせないわ!!」

「なるほど。じゃあよぉ賭けるか?」

「オイオイ、この話で、なにを賭けるって言うんだよ?」

「俺の人生……って、のはどぉだ?」

「はぁ?」

「いやな。俺は、なんか知らねぇが。事この事に関しては、凄ぇ自信があるんだよ。見ねぇ内から美人だと確信出来る」

「だから、なんなんだよ?それだけじゃあ、オマエの人生どこにも賭ってねぇじゃねぇか?」

「だからよ。ブス・美人に関わらず、俺は、ソイツを必ず自分のものにして、幸せにしてやる。……どうだ?それなら面白そうだろ?」

「はぁ?」


なっ、なに言ってんだコイツ?

自分の人生を、一体、なんだと思ってやがるんだ?


それ以前に、相手の意思を完全に無視してやがるな。

相手がブス・美人以前の問題として、オマエが迷惑この上ない存在だな。



「オイオイ、オイオイ、なんでそこまでする気になるんだよ?訳がわからねぇぞ?」

「ん?俺のインスピレーションが、そうしろって言ってるからだが……おかしいか?」

「アッ、アホだ……オマエは、底の知れないアホだ」

「全然アホじゃねぇよ。オマエは、いつも、そうやって一方向でしかモノを見ないから、そんな馬鹿な事が平気で言えるんだよ。……ホント、頭悪いよな」

「いやいや、いやいや、普通そんなもんだろ。なにがオマエを、そこまで突き動かすのか、俺には理解出来ねぇよ」

「そっかぁ?現時点でも、その女には、十分な程に、それだけの価値があるんだがなぁ」

「はぁ?」


なにがあんだよ?


この馬鹿の意見は、もぉマジでさっぱりわからん。


最後までお付き合い、ありがとうございましたぁ<(_ _)>


なにやら話の方向性がドンドンとズレて。

バンドとは関係ない所で、また新たな賭けが成立しそうな雰囲気ですね。


なにやってるんでしょうね、この2人は?(笑)


さて次回は、まさにその続きでございます。


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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