●前回のおさらい●
親切にしてくれてる真上さんに、どうしても恩返しがしたい倉津君。
なので今日も、音楽室での練習を終えて、真上さんの手伝いに行こうとしたら。
カジ君達から『あの子は魔性の女だから危険だ』と注意されるが……あまりしっくりこない倉津君。
そこに、山中君まで現れて……
「昨日カジから連絡が有って顔を出したんや。『最近オマエが、なんや、おかしな事になってる』って、相談受けてな」
「はぁ?なに言ってやがるんだ?俺は、なにもおかしくねぇつぅの」
「ほれ見ぃ。言うてる傍から、もぅ自分の事が見えてへんやんけ」
「なにがだよ?オマエの方こそ、なに言ってんだよ?」
突然現れたと思ったら、おかしな事ばっかり言いやがって!!
なんなんだよ?
それに、なにが『ホンマや』だ?
真上さんの事を良く知りもしない癖に、揃いも揃って変な言いがかりバッカリ付けてんじゃねぇよ!!
オマエなんぞ所詮は、Tシャツを作って貰っただけの仲じゃねぇかよ。
出しゃばんな!!
「あんなぁマコ。俺は、なんの根拠も無しに、こんな事を言うとんのとちゃうぞ。昨日な、カジから電話があった後、ちょっと、あの子について調べてみてん。ほんだら、出て来るわ、出て来るわ。あの子の黒い噂がな」
「『黒い噂』……だと?オイ、なにが出てきたって言うんだよ?オマエじゃあるまいし、真上さんに、そんなややこしい過去がある訳ないだろ」
「ところがや。公表されてる案件だけでも5件。非公開のものやったら、何軒有るか知れたもんやないぞ」
「公表……なにが有ったんだよ?教えろよ!!」
案件なんて言葉が出て、俺は更に動揺する。
気付けば山中に押し迫っていた。
「そんな近付いて来んでも、シッカリ、全部教えたるわ。えぇか?あの子の起した事件の大半は『恋愛の縺れからくる刃傷沙汰』や……かと言ってもや。真上ちゃん自身は、なんも悪ないんやで。けどな、その中心におったんは、間違いなく真上ちゃんなんや」
どう言う事だよ?
その言い分じゃ、犯人じゃなくて、黒幕みたいな言い方じゃねぇか。
あの人が、そんな犯罪紛いの事に関わるなんて、イマイチ『ピンッ』っと来ねぇぞ。
「矢張り、そうだったか。……って事は、あの案件も、あの子絡みか」
「ちょっと待てな。ほっ、本当になんの話だよ?」
「憶えてないか倉津?去年、川崎であった『中学生同士の刃傷事件』その他にも『女子高校生、男子高校生殺人未遂事件』」
「あぁ、それなら知ってるが。確かそれって、男子中学生同士が遊び半分で彫刻刀を刺しちまった事件と、女子高生が浮気した彼氏に嫉妬してボコボコにしたって事件だろ。だったら真上さんには微塵も関係ねぇじゃねぇかよ」
「それが大有りやから、困りもんなんや」
「だから、なんでそうなるんだよ?いい加減、言い掛かり染みた話をするのは辞めろよな」
「アホ。よう考えてみぃや。中学生が、普通、遊びで刺し合って、そんな大怪我するかいな。それに、嫉妬の事件の方も、女の力やったら、なんぼなんでも、早々には殺人未遂にはならん。オマエ、なんで、そうなったと思ってんねん?」
そんなもん答えるまでもねぇ。
『馬鹿だからだ』
若しくは『自分を弁えてない』かのどちらかだ。
感情に任せて、調子に乗ったのが『中学生同士の刃傷事件』
同じく感情に任せて、自分の顔のレベルも忘れ、ヒステリーを起こしたのが『女子高校生、男子高校生殺人未遂事件』
どちらも、明白な犯行理由が有るじゃねぇかよ。
「どうせ、馬鹿共が限度も知らずに、度が過ぎたんだろ」
「ちゃうなぁ。真上ちゃんに対する嫉妬心が、そうさせるんや」
「あのなぁ、幾らなんでも強引過ぎるぞ。それに、なんでそこまで真上さんを悪人に仕立てたいんだ、オマエ等は?」
そこまでして、真上さんを悪く言う理由がわからねぇよ。
なにが言いたんだ、コイツ等は?
推理オタクの事件マニアかつぅの!!
そんなに邪推がしたいんなら、探偵事務所にでも就職しやがれ。
「別に悪人に仕立てたいんやない。ただ事実を述べてるだけや」
まだ言ってやがるよ。
面倒臭ぇなぁもぉ。
こんな事してる間に、真上さんと逢う時間がなくなるだろに。
「だ~か~ら~」
「まぁ、えぇから聞けって。1個目の事件の被害者は、真上ちゃんの当時の彼氏。ホンで刺した相手は元彼や。……っで、2個目の事件は、付き合うてもせぇへんのに、アホ男が、自分の彼女と別れたい一心で、真上ちゃんを遠目から見せて『自分の彼女』やって嘘付いたんが原因。ほんで女の方は、真上ちゃんを見るなり逆上。その場で男をボコボコにシバキよったんや。これが事件の真相や」
「ほれみろ。だったら真上さん、なにも悪くねぇじゃねぇかよ」
「そうやないやろボケ。あのなぁ、ドッチも、あの子に対する嫉妬心から逆上しとんねん。可哀想やけど、あの子にはな、そういう『人が扱いきれん魅力』があんねん」
「なんの証拠が有って、そんな事を言ってんだオマエ?」
「簡単な理由や。現にな、俺も昨日、真上ちゃんに嵌りそうになったからや」
「なっ!!カジや、グチだけに留まらず、オマエまでもがか?」
「そうや。この間、あの子に逢った時、あまりの楽しさに、アリスの事なんかスッカリ抜けとったわ。それ程あの子の『魅力』は強力なんや」
ばっ、馬鹿な!!
カジやグチが『真上さんに惚れた』って話も、確かに驚きでは有ったが。
山中が、素直の事を忘れてまで、真上さんを自分の物にしようとしてたなんて有り得ねぇ。
だってよ、コイツの素直に対する気持ちは、そんな生半可なものじゃなかった筈だぞ。
有り得ねぇよ!!
そんなの、いつものオマエ流の性質の悪い冗談だろ。
「俺が正直に此処まで言うたんや。ちょっとは眼ぇ覚ましてくれ」
「けどよぉ。結論から言やぁ、結局、真上さんのせいじゃねぇんだろ。だったら問題ねぇだろに」
「まだ言うか?それとも、そこまで嵌りきっとるんか?」
「そうじゃねぇよ。それに第一な。俺には奈緒さんが居るんだから、変な気になんねぇよ」
「既に、なっとるちゅうねん」
「だ~か~ら~、どこがなってるちゅ~んだよ?ただ手伝いに行ってるだけだろ」
お世話になった人の手伝いをして、なにが悪い。
こんなもん個人の自由だろ。
他人にトヤカク言われる筋合いはねぇよ!!
「あのなぁマコ。あの子は、商売でオマエと取引をしたんやで。ホンで取引も、既に成立しとる。それやのに、あの子を手伝う理由がどこにあんねん?貸し借りを考えんねやったら、チャチャと金で済ませや。それが一番手っ取り早いし、彼女も助かるんちゃうんか?」
まぁ、オマエのその言い分は解る。
けどな、真上さんは、絶対に、そう言う金を受け取らないんだよ。
あの人は慈悲と献身の心で出来てる様な人だから、必要以上の金は受け取ってくれないんだよ。
だから俺は、手伝いで返そうと思ってるだけだ。
これのなにが悪いんだよ?
迷惑だから、いい加減、変な勘違いすんな!!
「あぁ、もぉ良い。オマエ等の妄想には付き合い切れん。そう思いたいんなら、勝手にそう思っとけ」
「マコ、頼むから、この話だけは聞き入れてくれ。俺は、オマエと奈緒ちゃんが別れる所なんか見たないねん」
「だから、心配すんなっての。真上さんとは何にもならねぇって」
「マコ……」
「兎に角だ。奈緒さんって存在が有る以上、俺が真上さんに靡く事は、絶対にない。……まぁそういうこったからよ。俺、もう行くぞ」
「わかったわ。そこまで言うんやったら、もうえぇ。ただ、これだけは肝に銘じとけ。あの子の魅力の効果はなぁ……」
「はいはい、わかった、わかった。もう沢山だ……じゃあな」
とても聞いてられない馬鹿話。
聞くにも値しねぇ。
クッダラナイ妄想を語りたいなら、NHKに申し込んで『しゃべり場』にでも行っとけ。
幾らでも、自分勝手に思い込んだ妄想話が出来るだろうからよ。
俺は、山中の忠告も聞かずに、教室を後にした。
「マコ、ちゃうねん。あの子の効果は、なんも男だけやないんや、女の子にも…………」
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
倉津君は、軽く聞き流している様ですが。
こう言う異性から異常なまでにモテる子って、本当に怖いんですよね。
本人の意図しない所で事件が起こったり、同性からは妙な嫉妬心を持たれる事が多いですからね。
そんなやや危険な雰囲気を纏う真上さんなのですが。
倉津君は、こんな軽い感じで、本当に真上さんと関係を持っても大丈夫なのでしょうか?
ちょっと怖いですよね(笑)
さてさて、そんな感じのまま、真上さんの所に出向いて行った倉津君なのですが。
次回、どういう展開が待っているのか?
少しでも気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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