最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

154 不良さん、矢張り勉強が出来ない(自業自得)

公開日時: 2021年7月10日(土) 00:21
更新日時: 2022年11月27日(日) 22:47
文字数:4,085

●前回までのあらすじ●


 倉津君と山中君のアホコンビが、追試を受ける事に成ったのですが。

勉強が出来ないアホな2人は、テストを盗んで、その場を取り繕うとしていた。


でもそれが、素直ちゃんの口から奈緒さんにバレてしまい軽蔑される。


でも、そんなアホな2人にも、奈緒さんと素直ちゃんは手を差し伸べてくれ、奈緒さんが一人暮らししている家で勉強する事に成った。


そして、みんなで家についてから、山中君は余計な事を言って、奈緒さんにノートで叩かれてポコポコにされました。

 そんな惨劇が起こった和室で、俺達は各々席に着く。


俺と、山中が並んで座り。

その前には奈緒さんと、素直が座る。


まるで既に、頭の良さを格付けされた席順だ。


そんな中、奈緒さんは、一旦、席に着いたものの、直ぐに立ち上がって、こんな事を言った。



「ところでアリス、今日、時間は、何時まで大丈夫?」

「あっ、あの……向井さんが良ければ、何時まででも」


『何時まででも』って事は。

素直の奴、最初から奈緒さん家に泊めるつもりだったのか?


あぁだからか。

だから、あんなに荷物が多かったんだな。


納得いった。



「うん、わかった。君は、ホントに用意が良いね。でも、よくご両親が許してくれたね。アリスん家って、そう言うの、かなり厳しそうじゃない?」

「あっ、あの、ウチの両親、勉強とかだったら、お泊りも許してくれるんで」

「あっ、そうなんだ。ふ~ん……じゃあ私、先に夕飯の準備をしてくるから、アリスは、そこの馬鹿2人の勉強、ちょっと見て貰ってて良い?」


奈緒さんの手料理が喰える♪

これはきっと、俺が勉強に立ち向かう為の、神様とやらの粋な計らいだな。


まぁ、そうは上手くいかないとは思うが……きっと、また何か有る筈だ。



「あっ、はい……あっ、でも、泊めて貰うのに、なんかそこまでして貰ったら……」

「良いの、良いの。そこの馬鹿2人に勉強教える方が、ズッと大変なんだからさ。だから気にしないで良いの」

「あっ、じゃあ、お言葉に甘えて」

「うん……じゃあ、ちょっと買い物に行って来るね。アリスと、私の分だったら、冷蔵庫に有る物でも事足りるんだけど。その馬鹿二匹は『餌』をタップリ食べそうだからね」


『餌』って奈緒さん……



「あっ、はい。じゃあ、お願いします」


素直まで『餌』で納得なのか?


『奈緒さんの手料理』=『人の尊厳+勉強』

これが噂の『等価交換』って奴なのか?


俺と山中は、畜生レベルの扱いをされた上に、勉強して初めて口に出来る代物なんだな。


なら、必要以上に期待してるぞ神様とやら。

もし、奈緒さんの手料理が不味かったら、日本全国の宗教関係の場所を、織田信長バリに『焼き討ち』すっからな!!


そうやって既に、勉強より、奈緒さんの手料理に眼がいってる俺。



「それじゃあ、始めますね」


この素直の言葉に『ハッ』っと我を取り戻し、気分を勉強をする方向に転換していく。


何所まで出来るかは、勿論、未知数だがな……


***


 勉強を始めて約1時間。

素直は、馬鹿でも解る様に、かなり適切に勉強を教えてくれている。


内容は、こんな感じだ。


『現国』

漢字を除く解答の全てが文面に有り。

出題者が好む解答を繰り出すだけで、点数は取れる。


故に読解力が、鍵だそうだ。


『古文』

上記と同じなのだが。

古文を解読する手法さえ理解してしまえば、簡単に解ける。


此処は、読解力よりも手法を重点的に置く。


『数学』

計算間違いをしない事と、数式を憶えるだけ。


俺は基本的に計算をあまり間違えないので、図形の計算方法を覚えろとの事だ。


『英語』

単語のスペル及び文法。

基本はスペルに置き、後は並べ方。


俺の場合は、会話が出来る為、スペルを優先的に憶える。


『現社』

『M.P.L.A.アンゴラ解放人民運動』と言う様な訳語と、年表を憶えるだけでOK。


要は暗記だな。


『歴史』

同じく年表・人名を覚えるだけ。


こちらも暗記だ。


『理科』

記号や数式を憶える。


これもまた暗記だ。


……暗記が多いな。


っとまぁ、簡単に解答を導き出す為の手法を、説明してくれた訳なんだがな。

これがまた……言うに安し、やるに難し、それが即座に出来れば、誰も勉強なんかで苦労はしない。

第一俺には、どの教科も憶える事が多過ぎて、どれから手を付けて良いのかすら、全く見えてこない状態で彷徨ってる。


実際は、その程度しか素直の話を理解出来なかった。


矢張り『馬鹿の一夜漬け』では、根本的に話にもならないらしい。


そこでだ。

急に横で勉強をしている馬鹿の相棒である山中が気になる。


これ自身は、自分だけ出来無いのは、あまりにも情け無いからだ。


だがなぁ。

そちらを見てみると……山中は、思った以上に、素直の説明が納得出来ている様子だ。

素直の教科書やノートを借りながら、彼女がマーカーペンでチェックした所を、必死に写している。


普段から少しでも勉強してる奴と、全く勉強しない奴の差が、此処で顕著に現れ始めた。



……こりゃあ、まいったな。


俺は、イマイチ、何をして良いか解らないまま。

素直に借りた別の教科書を眺めているしか出来無いまま、時間だけがドンドンと過ぎて行った。



「あの、真琴君。僕の説明じゃ解り難かったですか?」

「いや、そんな事ねぇぞ。言ってる自体は、なんとなくはわかってるんだがな。どうにも、何をどうやって良いものか、全く見当も付かねぇ状態なんだよな」

「ごめんなさい……きっと、僕の教え方が下手なんですね」


オイオイオイオイ。

心配しなくても、そんな事は全然ねぇってばよ。



「違う違う。そうじゃねぇよ。こんなもんはな。俺が、普段から勉強してねぇから、わかんねぇだけの話だ」

「あっ……」


いやいや、ホント、大丈夫だって素直。

オマエの教え方は、なにも間違っちゃいねぇ。


寧ろ、どちらかと言えばだな。

一般の学生が聞けば、親切丁寧で、解り易い説明の筈だ。


ただ、その解説を聞いても理解出来無い俺が、どうしようもない馬鹿なだけだ。

だから、オマエが凹む事なんて何も無いんだぞ。


そう思ったので、早速、素直をフォローしようと思ったら……



「ハイ。じゃあ、ちょっと手を止めて、そろそろご飯にしよっか。……人間の集中力なんか、1時間も続かないんだからさ」


奈緒さんが、ご飯の用意を終わらせて、部屋に戻って来た。



「ウッシャ!!飯や!!」


しかも、その声に反応するが如く。

余裕が有るのか山中は、即座に奈緒さんの言葉に反応する。


だが、俺は、とてもそんな気分じゃない。

それに手料理だとか浮かれてる場合でもない。

折角、素直が教えてくれてるのに、まだ、なんの成果も出せていないんだからな。


馬鹿なのにも、困ったもんだ。


どうしようにもねぇな。



「奈緒さん……俺、奈緒さんの飯を喰う程、何も出来てねぇッスよ」

「ふ~ん、そうなの。どれどれ見してみ」


ほぼ何も書かれていないノートを彼女に手渡す。



「あぁ、これなら大丈夫。思った以上に出来てる」

「へっ?なっ、なんでッスか?俺、素直が言った事を、なんにも理解出来てないッスよ」

「ふふっ、良いから、良いから。そんな事よりも、クラも先にご飯食べなよ。……カズ、君の方はどぉ?」

「はいよ」


山中も、奈緒さんにノートを手渡す。


奈緒さんは、俺の時とは違い。

ノートを指でなぞりながら、キッチリとチェックしている。



「うん、まぁ大丈夫かな。カズも、ご飯を食べて良いよ」

「オッシャ!!ほな喰うでぇ」


奈緒さんが言葉を発すると同時に、山中は勢い良く飯を食べ始める。


けど、俺はと言えば……

一応、お許しが出たから、飯を喰ってはいるんだが。

今の俺には、奈緒さんの手料理の味すら殆ど解らない状態。


ただ箸を使って、口に物を運んでるに過ぎない。


折角作ってくれたのに、こんなんじゃあ奈緒さんに申し訳ないな。



「はい、アリスも食べて」


最後に素直に、奈緒さんが箸を渡した。



「あっ、はい。すみません。頂きます」

「っで、どうだったアリス?」

「……あの、向井さん、少し言い難いんですけど。このままじゃ真琴君が、少し……」


素直は、俺に聞こえない様に、小さな声で話してくれてるみたいなんだが、それだけに余計に耳に入る。

その気を遣ってくれてる態度が、また俺にとっては、スゲェキツかったりするしな。


これじゃあ尚更、食い気も無くなれば、箸も全然進まない。



「そっか。そう言う判断ね。けど私は、あれで、十分だと思うよ」

「どうして……ですか?それって、真琴君に対する信頼ですか?」

「うぅん、違うよ。これは信頼じゃなくて確証」

「確証……ですか?」

「そぉそぉ。……良いアリス、普段のクラは、誰に何と言われ様とも、絶対に、勉強なんてしない様な子なんだよ。それが君が教えただけで、少しでもソッチを向く様になった。これだけでも十分な進歩。確証に至れるよ」

「そうですか。でも、テストは明日なんですよ。少し進歩したぐらいで、大丈夫なものなんでしょうか?」

「そうだね。大丈夫なんじゃない。……後は、如何に興味を持たせるかがポイントなだけだし。この子ってね。凄い単純だから、それだけで点数は取れる筈だから」

「でも、どうやって、真琴君に興味を……」

「アリス……それは、ご飯の後で教えてあげるから、先にご飯食べなさい。冷えると美味しくなくなるよ」

「あっ……ごめんなさい。折角、作って頂いたのに。あの、直ぐに頂きます」


そう言って素直は、漸く食事を始めた。



「……美味しい」

「そっ、良かった」


旨いんだ。


俺には今現在、味覚が無いからわからない。

ただ食べているだけに過ぎないから、良くはわからねぇけど。


ヤッパリ、奈緒さんの飯は美味いんだな。



「向井さん……」

「うん?なに?どうかした?」

「向井さんは、どうして、そんなに何でも出来るんですか?」

「さぁ?なんでだろうね。……まぁ言うなれば、家庭の事情かな」

「あの……ご両親が家に居られなかったとか……」

「あぁ違う、違う。そう言うんじゃなくてね。ウチの家ってね。ちょっと複雑なのよ」

「あっ、あの、ごめんなさい。立ち入った事まで聞いちゃって」

「あぁ、気にしなくても良いよ。私が、全然、気にしてないから」

「……ごめんなさい」


聞いちゃいけない事を触れてしまった素直は、それを自覚して落ち込んだ。



「くすっ。ほら、そんな事は良いから、ご飯食べて……残したら許さないんだからね」

「あっ、はい」


そんな素直に、奈緒さんは微笑んでいる。

素直も、そんな奈緒さんを見て、照れたまま箸を進めている。


……にしても、この人、本当に優しい人だよな。

つい、この間まで、素直の事で、結構揉めていたって言うのに……中々此処まで、人を受け入れられるもんじゃないぞ。


この後30分程、ご飯を食べさせて貰い。

奈緒さんが後片づけをしている間に、俺は、今の自分が、一体なにをすべきなのか模索し続けた。


最後までお付き合いくださいまして、誠にありがとうございますです<(_ _)>


まず勉強をするにあたって、一番必要な事は、興味を持たす事なんですね。

この心構えが出来ていないと、どんなに上手く教えて貰っても「馬の耳に念仏」

何をやっても、頭に入って来る事はありません。


恐らく、その辺を考慮した上で奈緒さんは、最初に素直ちゃんだけに勉強を見させた所が見受けられます。


さてさて、そんな奇妙な勉強の仕方でスタートしたのですが。

次に奈緒さんは、どんな手を打ってくるんでしょうね?


それはまた次回の講釈。


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ



倉津君は勉強しなさい(*'ω') (;∀; )嫌だぁ~~~


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート