●前回のおさらい●
倉津君と椿さんの待つ浜辺に、奈緒さん、素直ちゃん、ステラさんがやって来たが。
椿さんの独特の世界に引き込まれて、奈緒さんと、素直ちゃんは撃破されてしまう。
そして最後に残ったステラさんは……
「はじめまして、椿さん。私はステラ=ヴァイと申します。以後お見知り置きを」
「こんにちわ、ステラちゃん」
えぇ~~~!!ステラの奴、どういうつもりだよ?
自ら椿さんに話し掛けるなんて、なに考えてんだよ?
オマエ、自分の性格ぐらい把握してるだろうに……それ、アカンやろ。
あぁけどだな。
この『天然VS理屈垂れ』って好カードは少し面白そうなので、これは少し様子を見るべきなのかもしれんな。
勿論、この試合を観戦する場合、椿さんが不利な状況になるか、ステラに椿さんが泣かされそうになったら『TKO宣言』をしなきゃいけないけどな。
これが観戦する最低条件だ。
「椿さん。つかぬ事をお伺い致しますが、アナタは、お幾つなのですか?」
まずは此処で、ステラが先制攻撃か……
けど『ステラが防御から入らずに攻撃を仕掛ける』
これは、明らかに危険なサインだな。
このステラって女の頭の中は、相手の喋るパターンを瞬時に解析して、脳内で10手ぐらい先まで構成し、常に余裕を持って会話を成立させている。
故にもし、コイツを論破したい場合は、人と違う思考で話さなければならない。
ソンナモンは、天才か馬鹿にしか出来無いから……うん?でも、ちょっと待てよ。
椿さんって、確か頭が良かったよな。
……って事は、なにか?
この場合は、ひょっとして、ひょっとするのか?
「椿?椿はねぇ。この間、浩ちゃんに、お誕生日をお祝いして貰ったから、21歳になったところだよ。……ステラちゃんは、お幾つ?」
「私ですか?私は15歳です」
「若いね。羨ましいなぁ。ステラちゃんは、これから一杯楽しい事があるんだろうね。良いな、良いな」
「そうですか?年齢は、勝手に重ねていくものですから、若いからと言って羨むような物ではありませんよ。それに椿さんも15歳の時代が有ったのですから、今更、そんな事を羨ましがるのは変では有りませんか?」
「あぁそっか、そうだね。うんうん、椿も15歳の時があったね」
「それに15歳だからと言って、なにも良い事ばかりある訳ではありませんよ。この年だからこその嫌な事も多々あります。……ですから、羨ましいと言う表現には、少し語弊があると思いますが」
「あっ、そっか。ごめんなさい」
「解って頂ければ、それで結構ですよ」
なんだ?ステラの奴、思った以上に上手く椿さんを扱ってるじゃないか?
別に、これと言った酷い攻撃を加える訳でもないしな。
なので、今んとこ見てても、安心な感じではあるな。
けど、ステラって、何気にスゲェな。
最初から、椿さんを簡単に扱える人間は数少ないぞ。
ひょっとしてオマエ、神に選ばれた勇者か、なんかなんじゃねぇの?
そんなオマエには、椿さんの世話係に任命してやっても良いぞ。
(↑人の彼女をボロカス言ってる俺)
「あのね、ステラちゃん。椿ね、ステラちゃんが、凄くカッコ良くて、綺麗だと思うの。どうやったら椿は、ステラちゃんみたいに綺麗で格好良くなれるの?」
「なれませんよ」
「そっか……やっぱり椿じゃ、ステラちゃんみたいにはなれないんだ」
「当然です。私は、他人の事を綺麗だとか、可愛いだなんて微塵も思わないですからね。根本からして、アナタには無理ですね」
「じゃあ椿は、どうやったら、ステラちゃんに近づける?」
豪く喰い付いて行く所を見たら、椿さんは、ステラの事を甚く気に入ったみたいだな。
けど、ステラの言う通り、無邪気な椿さんが、ステラの様な意地の悪い女には、地球が逆回転しても100%なれない。
……って言うか、もし、なれるとしても、ならないで欲しい。
迷惑を被る事も多々有りますが、椿さんは、純真無垢で無邪気のままが一番です。
だから辞めて下さい。
懇願します。
「そうですね。ではまずは、人を見下す事ですね。……あっ、そうでしたね。これに関しては、椿さんは、既にクリアーされてましたね」
へっ?椿さんが、人を見下してるだって?
そんな馬鹿な。
確かに綺麗な顔をしている上に、現役東大生なんて肩書きを持ってる彼女だが、椿さんは、そう言った事を、決して鼻に懸ける様な女の子じゃない。
寧ろ、自分の事を、本気で『可愛くない』とか『馬鹿』だとかを思ってて、平気で、それを口に出してしまう様な人だ。
そんな椿さんを、何故ステラは、そんな風に思たんだろうか?
「えっ?ステラちゃん。椿、そんな事して無いよ。人を見下す様な事はしちゃいけないんだよ」
「そうですか?私には、そうは見えませんよ。第一にアナタは、自分に自信が有るからこそ、人に対して『綺麗』なんて言葉を多様するんじゃないですか?自分に自信の無い人は、他人を褒めたりしませんからね。……私は、アナタの事をそう捉えましたが、如何ですか?」
「違うもん。そんな気持ちで、みんなに『綺麗』って言ってるんじゃないんだもん。椿は、本当に、みんな、綺麗だと思うから、綺麗って言ってるだけなんだもん」
「おかしな事を言いますね。それは、綺麗って言った方の、どこかの1部分を差して綺麗とおっしゃってるのですか?確かに、その女性全体の事でないなら納得は出来ますが」
「違うよ、ステラちゃん。みんな、全部、綺麗なんだよ」
「そうですか……では、アナタは、凄いブスと言う事で宜しいですか?」
「えっ?」
「何故『えっ?』っと、おっしゃったのですか?アナタから見て、全体で綺麗な人しかおられないのでしたら、アナタが、世界で一番のブスっと言う事になりますよ」
「そっか……」
「それにしても嶋田さんは、お可哀想ですね。ブスと仲良く付き合う羽目になるなんて……正直、男性にとったら地獄ですよ。それとも彼は、そう言ったブスがお好きな、物好きな方なんですか?」
おいおいステラ。
ブスって、オマエ……椿さんがブスなら、多分、この世の中の大半の女はブスって事になるぞ。
その話は、幾らなんでも無理が有り過ぎるんじゃないか?
それに、嶋田さんを出汁に使った話は、流石にマズイだろ。
これ以上オマエが下手な事を言ったら、椿さんが泣くどころか、此処で大泣きするぞ。
まぁ……コイツのこった。
そんな初歩的なミスはしねぇだろうし、なんか考えがあっての事だろうけどな。
だったら、もぅ少し見守るか。
椿さんのこう言うところは、出来れば、早く治した方が良いからな。
他の女が聞いたら、殴りかねないからな。
「ステラちゃん。椿……そんなにブスなの?それに浩ちゃんは物好きだから、ブスの椿と付き合ってくれてるの?」
「はい。今の理論から言えば、間違いなくアナタは人類最高のブスですね。それに嶋田さんは、恐らく、物好きと言う見解で間違いないです。……嫌ですか?」
「うん……私は、別にブスって言われても良いけど。浩ちゃんを悪く言われるのは嫌」
「それでは何も解決しませんよ。アナタがブスである以上、嶋田さんが物好きだと言う方程式は揺らぎませんからね」
「じゃあ、椿、ブス嫌だ。綺麗って言われる方が良い」
はぁ、なるほどなぁ。
そう言う話で、椿さんの思考を変換して行こうって腹か。
流石、10手も20手も先を読む女、色々と方法を考えるもんだな。
「そうですか。では、仕方有りませんね。私が、アナタをソコソコ綺麗だと認めてあげます」
「でも、ステラちゃんが認めてくれても、椿はブスのままなんじゃないの?」
「私の言葉が信用出来無いのですか?アナタ、さっき、私の様になりたいと言われたと記憶しておりますが……そんな私の言葉が信用出来無いのですか?」
「あぁ、そっか。それじゃあ、椿が支離滅裂だね」
「その通りです。良いですか、椿さん?私は、基本的に他人を綺麗だとは思いませんが。ソコソコ綺麗な方なら沢山居られます。その中でもアナタは、かなりお綺麗な方だと断定出来ます。ですから自信を持って頂いて結構ですよ。私が認めてあげたんですから……もし反論されるなら、私は、アナタの事を、再度ブスだと言います……どちらが良いですか?」
「綺麗な方が良い……その方が、浩ちゃんも喜んでくれるんだよね」
「そうですよ。嶋田さんも、アナタが綺麗な方が嬉しいでしょう……では、それで決定します。ですからアナタは、今日から綺麗と言う事になりましたので、自分の事を綺麗と認識して下さい。もし約束を違えた場合、アナタはブスに逆戻りです……良いですね?」
「うん、わかった、ステラちゃん」
なっんちゅう理屈……いや、屁理屈だ。
無茶苦茶な理屈で、椿さんの他人に対する綺麗願望を強引に捻じ曲げやがったよ。
なんて奴だ。
「さて、みなさん。折角、海水浴に来たのですから、そろそろ海で遊びませんか?椿さんのお陰で、無駄な時間を使いましたからね」
「ごめんなさい、ステラちゃん」
「構いませんよ。過ぎた事を悔やむのは、好きでは有りませんからね。そんな事より椿さん」
「なぁ~にぃ?」
「宜しかったら、私と一緒に遊んでくれませんか?」
「ステラちゃんは、椿と遊びたいの?」
「はい。私は、今までに1度も海水浴に来た事が有りません。ですから、海では、どういった遊び方して良いのか、よくわかりません。教えて頂けますか?」
「うん!!良いよ。椿が一杯教えてあげるよ」
「では、行きましょうか」
「うん!!」
そう言って椿さんは、ステラの手を取り、無邪気に海に引っ張っていく。
あぁ……お2人さん。
美人の2ショットですから、ナンパには気をつけて下さいよ。
もし、なんかあったら、直ぐに俺を……って、ステラが居たら、ナンパなんて成立する訳ないか。
なら此処は、単なる取り越し苦労だな。
しかしまぁ、ステラの奴、また気を使ってやがるな。
ほんとアイツって、お人好しと言うか、お節介と言うか……自分が、相手の事を仲間や友達だと認識したら、トコトン良い奴になるよな。
けど……そう考えると、崇秀がコイツを病院に連れて来た時、感情に任せて、アイツの提案を断らなくて良かったよな。
あの時点で、ステラとの付き合いを断っていたら、ステラの良さは全く解らないまま、2度と逢えなかったかもしれないんだもんな。
ったく、あの野郎だきゃ~、多分、こう言う細かい事すら想定済みだったんだろうな。
「あっ、あの、真琴君。ぼっ、僕も、ステラさん達と一緒に、少し遊んで来て良いですか?」
「あぁ、良いぞ。荷物なら、俺が纏めて見て置いてやるから、行って来いよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて、少し一緒に遊んできますね」
「気をつけろよ、素直。ナンパされたら、直ぐに、俺を呼ぶんだぞ……あぁそれと、波に水着を攫われて、オッパイポロリすんなよ」
「むぅ、真琴君やらしい」
素直は、少し怒りながら。
また、少し照れた様に『アカンベー』を、俺にして走って行った。
こうやって見ると、なんか素直の奴も、少しづつだがバンドに馴染んで来たもんだよな。
最初に逢った時のアイツからは、想像も出来無い様な表情をする様になったもんな。
けど、さっきのステラの時の話を蒸し返しちまうが……この素直にしてもそうだよな。
結局、あの最初のライブの時、素直の申し出を、みんなが断っていたら、今の様な楽しいバンドには恐らくならなかった。
彼女を受け入れたからこそ、上手く成立している部分が多岐に渡ってあるもんな。
色々ややこしい問題も起したが、結局の所、素直は、うちのバンドには必要不可欠な存在になっている。
これもステラ同様、感情に身を任せていたら、素直の存在は『ただのクラスメイト』で終わっていただろう。
そして最後には、いつも、あの馬鹿の姿が有る。
なんだかんだ言っても、最終的にバンドの骨組みを作ったのはアイツだし、素直の居場所を作ったのも、ステラの居場所を作ったのもアイツ。
そうやって、バンドのレベルと、プレイヤーの精神面を上手くバランスを取って舵を切る。
そう考えると崇秀って、いつも自分が育てた人間を、俺達に受け渡してるよな。
なら、本気でアイツは、自らの手で世界中に敵を作る気なんだな。
ホント、おっかねぇ奴だよ。
「ねぇクラ……悪いんだけど、私も、ちょっと、みんなと遊んで来て良い?」
「良いッスよ。一杯遊んで来て下さい」
「うん!!じゃあ、ちょっと行ってくるね♪」
何か思いついたのか、奈緒さんは、素直達の所へ走って行った。
俺は、そんな走り去って行く奈緒さんの小振りな尻を眼で追いながら、テントの中で寝転がって、少しの間、ゆっくりする事にした。
ハァ~~~、しかしまぁ、良い天気だな。
なんて……少しでも、のんびり出来ると思ってたら、大間違いだ。
俺に対して悪名高い神様が、こんな絶好の機会を逃してくれる筈もなく。
椿さんに引き続き、再び不穏な影が数体近付いてくる。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
流石、この物語中2番目に口の立ちキャラ、ステラさんですね♪
無茶苦茶な理屈を無理矢理組み上げて、あの無邪気な椿さんを言い包めてしまいました(笑)
実に恐ろしい子です。
さて、そんな中。
仲良く女子4人で海に遊びに行ったようですが……そこにまた不穏な影が。
一体次回は、どうなってしまうのでしょうね(笑)
そんな感じで、また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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