●前回までのあらすじ●
2バンドを行きかう理由を説明しだす倉津君。
上手く伝わるのか!!
……っで、全てを話し終わった後で、聞いていた者の反応と言えば……
「なるほどね。そう言う事だったんだ。……でもさぁ、だったら、最初から変に隠そうとせず、正直に、そう言ってくれれば良いじゃない。別に私、そんな事で怒らないよ」
「そうッスよね。面目ないッス」
だよな。
冷静に思い返せば、俺、さっき自分で答えを言ってたんだよな。
『奈緒さんも、素直も馬鹿じゃないって……』
頭の良い2人なら、これぐらい、瞬時に理解出来て当たり前。
なのに、なんで、あんなに酷い動揺を俺がする必要が有ったんだろうな。
馬鹿みたいだ。
まぁ終わってみればこんなもんか。
「それにしても、なんともまぁ、クラらしい話だね」
「いや、ホント、面目ないッス」
「あぁ、別に責めてないよ。私、そう言う、お人よしなクラも好きだよって話♪」
「けど、向井さん。新しいバンドの件、真琴君、そんなに上手く立ち回れますか?」
「あぁ……そこかぁ。そこは、かなり深刻な問題だね。クラは妙にドン臭いからね」
「確かに、真琴はドン臭いし、低脳ですね」
「でしょ」
ヒデェ……でも、正解ッスな。
「あぁでも、ステラさん。少し誤解してるかも……真琴君は、少しだけ馬鹿かもしれないですけど、凄く良い人なんですよ」
「まぁ、確かにそうですね。モノを考えない分、相手に、自分を正直にブツケテ来ますからね。典型的に嘘が言えないタイプではありますね」
「それ、正解♪」
いやいやいや、そこの人。
嬉しそうに『それ、正解♪』とか言わない。
アンタの彼氏ですよ、その馬鹿って言われてる人。
って言うか。
素直もドサクサ紛れに、とうとう俺の事『馬鹿』って言いやがったよ。
俺は、悲しいぞ素直。
オマエだけは、そんな事を言わない奴だと思ってたのによぉ……
「うん?って事はあれか……仲居間さんの言った通り、ステラさんも、クラの事が好きになったって事だよね」
はぁ?ステラが、俺の事を好きですと?
奈緒さん、何を言ってんッスか?
ステラですよステラ。
ステラって言えば、そこに居る女の事ですよ。
・・・・・・
いやいやいや、ないないない。
何所をどう考えても、そんなものは有り得ないっしょ。
コイツが、俺の事を好きになる理由なんて、何所を事細かに探しても、微塵も見つからないじゃないですか。
そんなもん、サハラ砂漠で1粒のダイヤモンドを探す様なもんッスよ。
だから、見つかる訳がない。
大体にしてコイツはッスね。
俺の事を、ただの馬鹿程度にしか認識してませんから、からかい易いオモチャでも手に入れた位にしか思ってない筈ですよ。
きっと、そうですよ。
そうに違いないッス!!
しくしくしくしく……
「あぁ……好きとか、嫌いって話ではないんですけどね。ただ、なんて言うか、私に真正面からブチ当たって来た人が、初めてと言うか……此処まで低脳に自分の思った事を言ってくる人は、確かに初めてですね」
「あぁ、それ、凄いわかります。真琴君って、凄く優しいし、凄く心配性じゃないですか。だから僕が、どんなツマラナイ相談をしても、直ぐ本気になってくれて、一生懸命親身になって話をしてくれるんですよ。これって、女性にとっては、凄く嬉しいんですよね。……なんて言うのかなぁ、そう言うのって、女の子だったら、ついつい惹かれちゃいますよね」
「また、この男だけは……ヤッパリ、女誑しなんだね。仲居間さんの言った通りだよ」
女誑しって……あの馬鹿なんちゅ~う事を、奈緒さんに言いやがるんだ。
女誑しの代名詞は、オマエと、山中だけで十分と言って良い程、間に合ってんだよ。
故に、俺は、絶対に女誑しじゃねぇの。
ドッチかと言えば、誰が見ても硬派だ硬派。
けどな……100%そうだとは言い切れない事実もあんだよな。
俺の体の中には、好色一代男な親父の血が流れてる訳だろ。
もし、そのDNAが、遺伝的に上手く伝わってしまったとしたらだな……
……嫌過ぎる現実だな、オイ。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ、奈緒さん。おっ、俺、こう見えても奈緒さん一筋ッスよ」
「そぉ?この間、君がアリスに、ちょっかいを出して、バンド内で大揉めしなかったっけ?」
「いや、それは……」
また、そんな過去の話を蒸し返すぅ。
奈緒さん、なんで、そんな意地悪な人になっちゃったんですか?
大体にして、あの話自体、奈緒さん自身も、ちゃんと納得してたじゃないですか。
それなのに、敢えて今、その話をしなくても……
そんな意地の悪い事バッカリ言うんなら。
これからは『悪影響を及ぼす崇秀と話しちゃいけません!!』って言う制限つけますよ。
「呆れましたね。アナタ、向井さんって言う彼女がありながら、そのアリスって子にまで手を出したんですか?病気なんですね。……それはそうと、その時の心境は、心の浮気なんですか?それとも体目的で、自身の性欲の捌け口にしただけなんですか?どちらだったんですか?」
興味があるらしい……いや、多分これは、俺をいたぶる為の情報収集だな。
「あぁ、確か両方だったかな。心の浮気を曲に乗せて聞かされるわ。クラの体には、その女の子の匂いが付いてるわで、ホント、災難だったよ」
また面白がって、直ぐに、そう言う事を言う。
「そうですか。まぁどちらにしても、粗悪で最低で低脳なゴミ以下の人間がやる事には違いありませんね。真琴、アナタって、ゴミ以下の人間だったんですね」
ゴミとか言ってくれるなよ、ステラ。
そりゃあ確かにな。
ウチの親父はヤクザの組長だから『社会のゴミ』と言って過言じゃない程、人としてOUTな人生を歩んでやがる。
そこは否めない話だ。
けど俺は、意外と違うんだぞ。
俺としては、そんな糞親父みたいな人生は真っ平御免だから、少しぐらいモラルを持って生きているつもりだ。
だから、俺は、そんなゴミと一緒にされるのは心外なんだぞ。
……っと、心の中で断言してみたが。
ステラの俺を見る眼は、まさにゴミを見る目。
いや、だから、違うって……
オマエ、そんな眼で見るなって……俺は違うんだぁぁぁあぁぁ~~~!!
「オイ、あのなぁ、ステラ。人を簡単にゴミとか言うもんじゃねぇぞ」
「では、なんですか廃棄物?」
がっ!!
その呼名も、かなり嫌な感じだなオイ。
「いや、オマエねぇ、事情も、よく知らないのに。よくもまぁ、そんなに人の事をボロクソに言えたもんだな」
「事情を知らないですか?まぁ確かに、廃棄物のアナタが言う様に、私は、その現場に居合わせた訳では有りませんので、明確な事実は知りません。ですがアナタ場合は、巧みな話術で、直ぐに、女性の心に入って行くのだけは解ります。ですので、アナタの普段の行動なんて簡単に見破れます。言うなれば、一目瞭然じゃないですか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、ステラ。俺が、いつ、そんな話術を使ったって言うんだよ?俺、そんなつもりで何かを言ってる訳じゃねぇぞ」
「あぁ、なるほどね。クラって、ヤッパリ天然なんだ」
「いやいやいや、奈緒さんまで」
「だって、そうじゃない。私の時も、同じ手口で口説いたじゃない」
「手口って……」
あのねぇ奈緒さん。
アナタは、そうやって手口とか言いますけどね。
そこには下心なんて、全然ないんッスよ。
寧ろ、全てが本音ですよ本音。
あぁでも、確かに、アナタの言う通り、奈緒さんの時は、そうだったかも知れないッスよ。
けど、その他の人の時を、シッカリ思い出して下さい。
咲さんの時も、アホの樫田の時も、素直の時も、ステラの時も、一切合切、そんなつもりで言葉を発してなかったでしょ。
まぁ……敢えて、その中で下心が有ったとするなら、咲さんの時ぐらいッスよ。
第一、あの時は、まだ奈緒さんと付き合ってなかったし。
俺自身必死に『彼女が欲しい』なんて思っていたから、確かに、そうだったのかも知れませんが……アホの樫田に関しては、違うと断言出来るッス。
まぁ……素直の件も、そうと言えば、そうなるんですが。
あの場合は、素直から告白して来たんですから、しょうがないじゃないですか。
告白されるなんて体験は、俺にとっては生まれて初めての経験だったんッスから、そりゃあ、男心として揺れた部分は有りましたよ。
けど……アホの樫田は、此処でも違うと断言出来ます。
それにッスね。
ステラについても、良かれと思ってやった事なんッスよ。
勿論、此処には下心なんてモノは微塵も無かったんッス。
コイツの件に関しては、樫田と同じぐらい断言出来るッスね。
ねっ……だから、ほら、俺のトータルした実績を見てみると『下心が有った』なんて言葉は出てこない筈ッス。
奈緒さんを含めても、たったの3/5しか下心がなかったんッスから。
・・・・・・
……ってオイ!!
よく考えたら3/5って事は、過半数を超えて、余裕で下心が有ったって事じゃねぇか!!
これじゃあ、全然、断言出来てねぇし……説得力もねぇ筈だわな。
・・・・・・
いや、あの、でもッスね、奈緒さん。
これでも、本気で良かれと思ってやってるのだけは事実ッスよ。
そこだけは、絶対わかって欲しいッス。
無理ッスね……そうッスね。
俺は、自分の愚かさに、撃沈されたUボートの様に深い深海に沈んでいく。
「ところで向井さん。そのアリスって子は、どうなったんですか?」
「あの、ステラさん……そのアリスって言うのは、実は僕なんですよ……」
「そうだったんですか。可哀想に、産業廃棄物の酷い毒に当てられたんですね」
うぉい!!幾らなんでも、そりゃねぇだろステラ!!
さっきオマエの話を、素直が従順に受け入れて聞いたからって。
事情も知らないのに、俺がイキナリ悪役ってのは、それはあんまりじゃねぇか?
……まっ、良いっか。
此処で、素直が変に責められるのも可哀想だしな。
俺が悪役になって、それで事が収まるなら、それはそれで有りだな。
それに、これ以上ツッコミを入れたら、色んな意味で傷口が悪化しそうだし。
「あのよぉステラ」
「なんですか生きた産廃?」
うぉ!!オマエの中で、俺の呼名は、それで決まったんだな。
まぁ良いけどよ。
「そろそろ、俺の話よくね?」
「ですね。私も、そろそろ飽きてきました」
がっ!!
この言い分だったら、事情を知ってて、ワザと俺をからかってただけかよ。
……最悪だなコイツ。
つっても、翌々考えたら。
コイツって、崇秀の知り合いだから、その辺の事情を知ってても、おかしくはないか。
まぁ良いや。
もぅ面倒臭ぇ。
果てしなく妥協し続ける俺。
「じゃあ奈緒さんも、それで良いですね?」
「うん、良いよ。私も飽きたし」
だと思った。
「オイ、素直も、もう良いな?」
「あっ、はい」
素直って、ホント良い奴だよな。
擦れてないって言うか、なんて言うか……奈緒さんも、そんな素直を少しは見習って、崇秀の邪悪な魂を捨てなさい。
「みんな、それで了解なら。じゃあ、話を戻しますよ」
「でしたら、私から1つ提案が有るのですが」
おいおい……此処で再び、ステラが話の主導権を握るって言うのか?
まぁ俺としては、別に構いはしないが。
主導権を渡す代わりに、頼むから、これ以上、俺の心が傷付く様な事を言うなよ。
こう見えても俺は、結構、神経がデリケートなんだぞ。
「なに?おもしろそうね。なんの提案?」
奈緒さんは、直ぐに喰い付かない!!はしゃがない!!
少しは自重しなさい!!
もぉダメだこりゃあ。
最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
最近、めっきり、みんなの玩具に成りつつある倉津君なのですが。
本人は、それでいて、ぶぅぶぅ言いながらでも、結構、楽しんでるみたいですね(笑)
さて、そんな中で、2バンドを行きかう倉津君に対しての提案が……あのステラさんから為されるようです。
大丈夫なのでしょうか?
それは次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)
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