最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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102 不良さん アリスの正体を知る

公開日時: 2021年5月19日(水) 00:21
更新日時: 2022年11月18日(金) 21:56
文字数:3,303

●前回のおさらい●


 奈緒さんとの約束を守る為に、必死にアリスのフォローをした結果。

崇秀と『どちらが会場を盛り上げれるか?』と言う賭けをしてしまった倉津君。


そして崇秀は、その賭けが成立したと同時に、アリスと倉津君を残して去っていく。


そうやって楽屋の残された2人だったが。

突然、アリスは倉津君に抱き着いて来て、大混乱を起こす倉津君(笑)


さて、その真意とは……

「でも……まだ勇気が足りません。……少しだけ、少しの間だけ、こうさせて貰っても良いですか?」

「えっ?あっ……あぁ……うっあぁ」


混乱してるとは言え、此処でも俺のヘボは健在。

こんな時に限って、大事な言葉の方はなにも出てこねぇ~~~。


……にしても、最近の俺の女運は、どうなってんだよ?

あのコンパ以来、絶好調過ぎないか?

此処まで絶好調だと、後が怖ぇよ。


しかも、この子。

このアリスって名前からしてそうなんだが、正直スゲェ可愛いんだよな。


あぁイカン、イカン、俺は奈緒さんに忠誠を誓ったんだった。


浮気はイカンな。



「だっ、だっ、だっ、大丈夫だ。みっ、みんなで、あの馬鹿の倒そうぜ」

「……はい、真琴さん」


うん、なんか知らんけど。

『倉津さん』から『真琴さん』に呼び方が変更されてるね。


あのよぉ、非常に悪いんだけどな。

ホント、そう言う細かい変化を出すのは辞めてくれないか?


俺、微妙に、そう言うのに反応しちまうんだよ。


ほらほら……また例の『困ったモノ』が爆発準備に入りそうなんだが。


しかもアリスって、奈緒さんとは違って、矢鱈、甘い匂いがするんだよな。


あと、胸もでかいし……

(奈緒さんの胸が小さいとかは、全然思ってませんよ)



「こっ、これで、ちょ、ちょっとは信用出来たか?」

「もう少しだけ……ほんのもう少しだけ、このままでも良いですか?後、ほんの少しだけ……」


うっ……あっ……もぉどうすりゃ良いんだよ?

こんな長時間、女の子に抱き付かれた事なんて産まれてこの方一度も無いから、訳わかんねぇよ。

(因みにだが、奈緒さんのあれは、訳有りだったんでノーカンって事で)



「もっ、もす良いか?」


緊張の最高潮を示すが如く、また訳の解らない言葉が出た。


『もう』って言おうとして『もす』って言っちまったよ。


大体『もす』ってなんだよ?

どこのハンバーガー屋の名前だよ。



「あっ、あの……僕の事、嫌いですか?僕……前から真琴さんの事が気になってて……その……」


いや、いや、いや、いや。

なんでこの場面で、急に、そんな告白紛いの事を言うのかな?


俺に、どうしろって言うんですか、君は?


そっ、そりゃあ、奈緒さんが居なければな。

即アリスに靡くだろうけど、俺は、奈緒さんに忠誠をだな……



「ごっ、ごめんなさい……僕なんかが、真琴さんの事を好きだなんて言ったら迷惑ですよね」

「いや、あの、あのな。俺には奈緒さんって、凄ぇ大事な人が居るんだ。オマエの気持ちは嬉しいのは本当なんだが、浮気は良くない。……そっ、それに俺は、アリスの事をよく知らないしな」


オイオイ、そう言えば、崇秀の馬鹿。

オマエ、この子が、凄ぇ人見知りだとか言ってなかったか?


これの、どこが人見知りなんだよ?


こりゃあ、人見知り処か、かなり大胆な部類だぞ。



「真琴さんは、僕の事を憶えてませんか?」


あっ、奈緒さんの、くだり流された。


女って、ホント都合よく、自分に必要ない情報は流す様に出来てるよな。



「うん?何所かで逢ったっけ?」

「そう……ですよね。忘れられてても当然ですよ。だって、中学の入学当時の事だし」

「入学当時?」

「僕、真琴さんに、不良に絡まれてたのを助けてもらったんですよ」


あぁ~~~、そんな事もあったよな。


確か、MACで山中が、咲さんに話してた奴の事か。



「思い出してくれましたか?」

「あぁ、思い出した。けど、あの助けた子って、こんなに可愛かったのな」

「あっ、あの……本当に、そんな事を思ってくれてるんですか?」

「あぁ、嘘なんか言ってないぞ。お前、かなり可愛いぞ。……けど、なんでオマエの噂を学校で聞かないんだ?それだけ可愛けりゃ、男共が放って置かないだろ」

「あぁ……やっぱり、気付きませんか?」

「はぁ?」


なんだ?


俺が、なにを気付いてないって言うんだ?



「僕です……有野……有野素直(アリノスナオ)です」


うぇ?なに言ってんだ?


……ってか、有野って男じゃねぇか。



「ちょ!!オマエ、オカマの有野?ホモなのか?」

「くすっ……違います。僕は女ですよ」

「いやいやいやいや、だったらおかしいだろ。有野は、カマっぽいけど男だって」

「それ……双子の兄の事ですよね。それに胸も、ちゃんと有りますよ」

「あぁオッパイね、オッパイ。あるね、確かに」

「そんなオッパイ・オッパイ言わないで下さい」

「あぁすまん、あの因みにだが……」

「一応Dですけど……」


恥ずかしそうに、自分のバストサイズを言ってくる。


そうか、Dか。

それは中々ロマンの詰まった数字だな。


……って、違うちゅう~の!!

そう言う事を聞いてんじゃないの俺は!!



「いやいやいや、そうじゃなくて、お兄さんは、なんて名前なのかな?」

「同じ字で、有野素直(アリノモトナオ)って読みます」

「あぁそうなのか……知らなかった」

「真琴さんは、学校あまり来ないですもんね。知らなくても当然ですよ」

「まぁ、そうなんだけど」

「それに、この間のコンパの時、楽しかったですよ」

「えぇ?」


いや、なんの話?


なんで、女の子の君が、あのコンパに居る訳?



「あぁ、やっぱり気付いてなかったんですね。僕が兄の代わりに学校に通ってるんですよ」

「へっ?なんでまた?」

「あの、実は、ウチの家って、ちょっとした資産家なんですけど。兄が、少し精神的な病を患ってまして引き篭もりなんです。それで父が僕にモトナオの替わりに、兄のフリをして学校に行けって言うもんですから……世間体なんですかね。くすっ、おかしいでしょ」


って事はなにか?

俺はコンパの時、女の子を捕まえてオカマって言ってたのか?


そりゃあ泣くわな。


それにアリスの奴、サラッと言いやがったが……なんだ、この重い話?



「なんかオマエん家って、凄ぇ家だな」

「ですよね」

「ところで素直さん」

「なんですか?」

「そろそろ、抱き付くのは辞めにしませんか?」

「もぅ少しだけ……女の子で居させて下さい」


あぁダメだ、ダメだ。

マジで守ってやりてぇ~~~。


けど、こう言うのって『二股』って言うんだよな。


あぁもぉ、どうすりゃ良いんだよ!!



「あの……1つ聞いても良いですか?」

「なっ、なんッスかね?」

「もし、僕が向井さんより先に告白してたら……僕と付き合ってくれてましたか?」


100%付き合ってただろうな。


でも、後で、奈緒さんに逢ってたら、こんな思いをしたのかもな。



「たらればは無しだ。そう言うのは、お互いが傷付くだけだからな」

「そうですね。……じゃあせめて、絡まれてるのを助けて貰ったお礼だけでも、しても良いですか?」


いや……このシュチュエーションの女の子って、絶対キスするよな。


どうしたもんかな?



「あっ、あっ、あのよぉ。こっ、この件は取り敢えず、後にしような、後に。保留だ保留」

「真琴さん……」


そのウルウルした目で見るのは辞めてくれ。


俺も精一杯、我慢してるんだからよぉ。



「いや、あの、まぁ、なんだ。兎に角、ライブを成功させてからにしような。なっ」

「わかりました。……じゃあ僕、精一杯、真琴さんの為にも頑張りますね」


あぁ~~~、もぉなんなんだよ?

どうして女って生き物は、そう、俺を惑わすんだよ。


しかも素直の奴、今のセリフを言う時も、小さくガッツポーズだぞ。


かぁ~~~~、もぅ悪いけど、他の誰か好きになってくれないか?

こんな状況が続いたら、絶対に山中や、崇秀クラスの最低な男になりそうだ。


若しくは、誰か俺の体2つ……いや、4つに分けてくんねぇか?

そうしたら奈緒さん・素直・樫田のアホ・咲さんの4人と心置きなく付き合える。

しかも誰を選んでも、間違いなく美人、若しくは可愛いの、外れ無しのフィーバー状態。


どう考えても、この状況、勿体無過ぎるだろう。


なんなんだよ、この地獄の選択肢は……



まぁなんだかんだ言っても『奈緒さんNo1』は揺るがないけどな。


でも、出来れば割ってくれ。

気持ち良く『パカッ』って4分割にしてくれ。


こんな調子のまま、俺と素直はライブステージに向っていく。



ライブには魔物が住んでるって、昔、誰かが言ってたんだが……これは違うよな。


女の子の事で、ライブハウスで悩む事なんて無いよな。

普通、山中が言った様な『音楽性』『人付き合い』『音楽レベル』で揉めるって話だよな。


これ、絶対、違うよな。


こんなんで大丈夫か俺?


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


第十九話『ライブの魔物』は、アリスちゃんの正体が分かった所でお仕舞いです(*'ω'*)ノ


これ多分、気付いた人も少ないと思うんですが。

アリスの本名って『有野素直』

……っで、本名の頭文字を取ると『有素(アリス)』と言う所から来てたりするんですよ


お気付きに成られてでしょうか?(笑)


さてさて、そんな事情のアリスちゃんを引き連れて、ステージに向かう倉津君なのですが。

次回の第二十話『Nightmare stage』では、崇秀との賭けの話がメインに成ってきます♪


どう言う展開になるかは、次回の講釈。


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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