●前回のおさらい●
奈緒さんとの約束を守る為に、必死にアリスのフォローをした結果。
崇秀と『どちらが会場を盛り上げれるか?』と言う賭けをしてしまった倉津君。
そして崇秀は、その賭けが成立したと同時に、アリスと倉津君を残して去っていく。
そうやって楽屋の残された2人だったが。
突然、アリスは倉津君に抱き着いて来て、大混乱を起こす倉津君(笑)
さて、その真意とは……
「でも……まだ勇気が足りません。……少しだけ、少しの間だけ、こうさせて貰っても良いですか?」
「えっ?あっ……あぁ……うっあぁ」
混乱してるとは言え、此処でも俺のヘボは健在。
こんな時に限って、大事な言葉の方はなにも出てこねぇ~~~。
……にしても、最近の俺の女運は、どうなってんだよ?
あのコンパ以来、絶好調過ぎないか?
此処まで絶好調だと、後が怖ぇよ。
しかも、この子。
このアリスって名前からしてそうなんだが、正直スゲェ可愛いんだよな。
あぁイカン、イカン、俺は奈緒さんに忠誠を誓ったんだった。
浮気はイカンな。
「だっ、だっ、だっ、大丈夫だ。みっ、みんなで、あの馬鹿の倒そうぜ」
「……はい、真琴さん」
うん、なんか知らんけど。
『倉津さん』から『真琴さん』に呼び方が変更されてるね。
あのよぉ、非常に悪いんだけどな。
ホント、そう言う細かい変化を出すのは辞めてくれないか?
俺、微妙に、そう言うのに反応しちまうんだよ。
ほらほら……また例の『困ったモノ』が爆発準備に入りそうなんだが。
しかもアリスって、奈緒さんとは違って、矢鱈、甘い匂いがするんだよな。
あと、胸もでかいし……
(奈緒さんの胸が小さいとかは、全然思ってませんよ)
「こっ、これで、ちょ、ちょっとは信用出来たか?」
「もう少しだけ……ほんのもう少しだけ、このままでも良いですか?後、ほんの少しだけ……」
うっ……あっ……もぉどうすりゃ良いんだよ?
こんな長時間、女の子に抱き付かれた事なんて産まれてこの方一度も無いから、訳わかんねぇよ。
(因みにだが、奈緒さんのあれは、訳有りだったんでノーカンって事で)
「もっ、もす良いか?」
緊張の最高潮を示すが如く、また訳の解らない言葉が出た。
『もう』って言おうとして『もす』って言っちまったよ。
大体『もす』ってなんだよ?
どこのハンバーガー屋の名前だよ。
「あっ、あの……僕の事、嫌いですか?僕……前から真琴さんの事が気になってて……その……」
いや、いや、いや、いや。
なんでこの場面で、急に、そんな告白紛いの事を言うのかな?
俺に、どうしろって言うんですか、君は?
そっ、そりゃあ、奈緒さんが居なければな。
即アリスに靡くだろうけど、俺は、奈緒さんに忠誠をだな……
「ごっ、ごめんなさい……僕なんかが、真琴さんの事を好きだなんて言ったら迷惑ですよね」
「いや、あの、あのな。俺には奈緒さんって、凄ぇ大事な人が居るんだ。オマエの気持ちは嬉しいのは本当なんだが、浮気は良くない。……そっ、それに俺は、アリスの事をよく知らないしな」
オイオイ、そう言えば、崇秀の馬鹿。
オマエ、この子が、凄ぇ人見知りだとか言ってなかったか?
これの、どこが人見知りなんだよ?
こりゃあ、人見知り処か、かなり大胆な部類だぞ。
「真琴さんは、僕の事を憶えてませんか?」
あっ、奈緒さんの、くだり流された。
女って、ホント都合よく、自分に必要ない情報は流す様に出来てるよな。
「うん?何所かで逢ったっけ?」
「そう……ですよね。忘れられてても当然ですよ。だって、中学の入学当時の事だし」
「入学当時?」
「僕、真琴さんに、不良に絡まれてたのを助けてもらったんですよ」
あぁ~~~、そんな事もあったよな。
確か、MACで山中が、咲さんに話してた奴の事か。
「思い出してくれましたか?」
「あぁ、思い出した。けど、あの助けた子って、こんなに可愛かったのな」
「あっ、あの……本当に、そんな事を思ってくれてるんですか?」
「あぁ、嘘なんか言ってないぞ。お前、かなり可愛いぞ。……けど、なんでオマエの噂を学校で聞かないんだ?それだけ可愛けりゃ、男共が放って置かないだろ」
「あぁ……やっぱり、気付きませんか?」
「はぁ?」
なんだ?
俺が、なにを気付いてないって言うんだ?
「僕です……有野……有野素直(アリノスナオ)です」
うぇ?なに言ってんだ?
……ってか、有野って男じゃねぇか。
「ちょ!!オマエ、オカマの有野?ホモなのか?」
「くすっ……違います。僕は女ですよ」
「いやいやいやいや、だったらおかしいだろ。有野は、カマっぽいけど男だって」
「それ……双子の兄の事ですよね。それに胸も、ちゃんと有りますよ」
「あぁオッパイね、オッパイ。あるね、確かに」
「そんなオッパイ・オッパイ言わないで下さい」
「あぁすまん、あの因みにだが……」
「一応Dですけど……」
恥ずかしそうに、自分のバストサイズを言ってくる。
そうか、Dか。
それは中々ロマンの詰まった数字だな。
……って、違うちゅう~の!!
そう言う事を聞いてんじゃないの俺は!!
「いやいやいや、そうじゃなくて、お兄さんは、なんて名前なのかな?」
「同じ字で、有野素直(アリノモトナオ)って読みます」
「あぁそうなのか……知らなかった」
「真琴さんは、学校あまり来ないですもんね。知らなくても当然ですよ」
「まぁ、そうなんだけど」
「それに、この間のコンパの時、楽しかったですよ」
「えぇ?」
いや、なんの話?
なんで、女の子の君が、あのコンパに居る訳?
「あぁ、やっぱり気付いてなかったんですね。僕が兄の代わりに学校に通ってるんですよ」
「へっ?なんでまた?」
「あの、実は、ウチの家って、ちょっとした資産家なんですけど。兄が、少し精神的な病を患ってまして引き篭もりなんです。それで父が僕にモトナオの替わりに、兄のフリをして学校に行けって言うもんですから……世間体なんですかね。くすっ、おかしいでしょ」
って事はなにか?
俺はコンパの時、女の子を捕まえてオカマって言ってたのか?
そりゃあ泣くわな。
それにアリスの奴、サラッと言いやがったが……なんだ、この重い話?
「なんかオマエん家って、凄ぇ家だな」
「ですよね」
「ところで素直さん」
「なんですか?」
「そろそろ、抱き付くのは辞めにしませんか?」
「もぅ少しだけ……女の子で居させて下さい」
あぁダメだ、ダメだ。
マジで守ってやりてぇ~~~。
けど、こう言うのって『二股』って言うんだよな。
あぁもぉ、どうすりゃ良いんだよ!!
「あの……1つ聞いても良いですか?」
「なっ、なんッスかね?」
「もし、僕が向井さんより先に告白してたら……僕と付き合ってくれてましたか?」
100%付き合ってただろうな。
でも、後で、奈緒さんに逢ってたら、こんな思いをしたのかもな。
「たらればは無しだ。そう言うのは、お互いが傷付くだけだからな」
「そうですね。……じゃあせめて、絡まれてるのを助けて貰ったお礼だけでも、しても良いですか?」
いや……このシュチュエーションの女の子って、絶対キスするよな。
どうしたもんかな?
「あっ、あっ、あのよぉ。こっ、この件は取り敢えず、後にしような、後に。保留だ保留」
「真琴さん……」
そのウルウルした目で見るのは辞めてくれ。
俺も精一杯、我慢してるんだからよぉ。
「いや、あの、まぁ、なんだ。兎に角、ライブを成功させてからにしような。なっ」
「わかりました。……じゃあ僕、精一杯、真琴さんの為にも頑張りますね」
あぁ~~~、もぉなんなんだよ?
どうして女って生き物は、そう、俺を惑わすんだよ。
しかも素直の奴、今のセリフを言う時も、小さくガッツポーズだぞ。
かぁ~~~~、もぅ悪いけど、他の誰か好きになってくれないか?
こんな状況が続いたら、絶対に山中や、崇秀クラスの最低な男になりそうだ。
若しくは、誰か俺の体2つ……いや、4つに分けてくんねぇか?
そうしたら奈緒さん・素直・樫田のアホ・咲さんの4人と心置きなく付き合える。
しかも誰を選んでも、間違いなく美人、若しくは可愛いの、外れ無しのフィーバー状態。
どう考えても、この状況、勿体無過ぎるだろう。
なんなんだよ、この地獄の選択肢は……
まぁなんだかんだ言っても『奈緒さんNo1』は揺るがないけどな。
でも、出来れば割ってくれ。
気持ち良く『パカッ』って4分割にしてくれ。
こんな調子のまま、俺と素直はライブステージに向っていく。
ライブには魔物が住んでるって、昔、誰かが言ってたんだが……これは違うよな。
女の子の事で、ライブハウスで悩む事なんて無いよな。
普通、山中が言った様な『音楽性』『人付き合い』『音楽レベル』で揉めるって話だよな。
これ、絶対、違うよな。
こんなんで大丈夫か俺?
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
第十九話『ライブの魔物』は、アリスちゃんの正体が分かった所でお仕舞いです(*'ω'*)ノ
これ多分、気付いた人も少ないと思うんですが。
アリスの本名って『有野素直』
……っで、本名の頭文字を取ると『有素(アリス)』と言う所から来てたりするんですよ
お気付きに成られてでしょうか?(笑)
さてさて、そんな事情のアリスちゃんを引き連れて、ステージに向かう倉津君なのですが。
次回の第二十話『Nightmare stage』では、崇秀との賭けの話がメインに成ってきます♪
どう言う展開になるかは、次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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