最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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035 不良さん 思いも寄らない持ち主と対面する

公開日時: 2021年3月12日(金) 19:17
更新日時: 2022年11月6日(日) 23:40
文字数:2,843

●前回のおさらい●

向井さんに疑われているのを、なんとか回避した不良さんだったが。

それが原因に成って、向井さんは、不良さんを疑った事に対して凹んでしまう。


そんな中、店のカウンターにアンプを取りに行っていた国見さんが戻ってくると。

その場に居辛かった向井さんは、国見さんに『練習がないなら、今日は帰りますね』とだけ告げ、スタジオを後にしてしまう。


焦った不良さんは、それを追い掛けようとするが。

国見さんに、それを止められ、泣く泣く言う事を聞く。


そして不良さんは、この行き違いの打開遺作を探す為に、このベースを手に入れた経緯を国見さんに話し出す。


どうなる事やら。

「ほほぉ、それはまた上手くやったもんだな。そりゃあ少年、完全にプロの手口だな」

「あんなぁ。そんなツマンネェ事に感心してんじゃねぇよ……」


オッサンは俺に対して怒る事も無く。

妙に感心しながら、うんうんと頷いている。


この様子だと、多分、このオッサンも、昔同じ様な事をやってやがったな。

普通はこんな話されても、冷静に対処なんて出来たもんじゃねぇぞ。



「まぁそうだな」

「大体にして、こんなもんはな。親父に言われてた事を実行したまでのこった。……んで、なんか、この状況を打破する様な良い手口でもあんのかよ?」

「あぁ、有るぞ」

「あるのか!!」

「……ただ、確かめなきゃいけない事が2点ほどある。少年、その相手に書かせた『譲渡書』とやらを見せてみろ」

「それなら、ケースの中に入ってる」


ゴソゴソとオッサンは、ケースから譲渡書を取り出す。



「少年、これか?」

「あぁ、それだ。それで間違いねぇ」


譲渡書の確認が終わると、指で一点一点なぞりながら内容を確認。


親父に渡されていた物だから、特に問題は無い筈だ。



「うん……完璧だな」

「あぁそっかよ。けど、そんな事を褒められても、微塵も嬉しかねぇよ」

「まぁそう言うな。相手の指紋まで取ってある所なんて、本当に完璧だぞ」

「なに言ってやがるんだよ、んなもん常識だろ」

「まぁこのお陰で、2点目の確認は排除出来るな」

「なんだ?どういうこった?」

「良いか、少年?譲渡書って言うのはな、本来第三者の捺印が必要だ……ただし、ソイツは時と場合による。この場合、急ぎ……しかも路上での譲渡。なら、これが必要ない方に該当する」

「あぁ、まぁそうだな」

「だとしたらだ。指紋があるだけに、これは立派な譲渡書な訳だ」

「あぁ」

「だから、これは、確実に物的証拠になる」

「なんの物的証拠になるんだ?」


此処でオッサンは、煙草に火をつけて一服する。



「実はな、少年。このベースは元々盗品なんだよ」

「なっ、なんだと!!じゃあ、あのボンクラも、他の奴から盗んでやがったのか!!」

「まぁ、そこはそうみたいなんだが。それだけの問題じゃなくて、コイツ自体には、少々他にも問題があってな。コイツは、表沙汰には出来無い様な代物なんだ。っで、盗まれる前の所有者が、これを必死に探している」

「オイオイ、それって、どういうこった?表沙汰に出来無いって事は、なんかのイワク付きなのか?」

「そんなに心配するな。そこまで大層なもんじゃない。ただの脱税品だ」

「なんだよ。驚かせるなよ」

「シャブを運ぶ道具として使ってるとでも思ったのか?ククッ」

「まぁな」


しかしまぁ、一般人の会話じゃねぇな。

これじゃあ、どちらかと言えば、この薄暗い場所と言い、まるでヤクザ同士の裏取引じゃねぇか。


マジで何者だ、このオッサン?



「それでだな。このブツを探してる奴を、俺は知ってる訳なんだが……少年、どうするよ?」

「そんな厄介なもんだったら、本来なら四の五の考えず処分するに限るが。持ち主が居るなら、返すのが筋ってもんだろ」

「ソイツが、少年の家と対立する組でもか?」

「敵対だと……オイ、まさか」

「少年の思ってる通りだ。ソイツの持ち主は『遠藤組』の……」


今オッサンの口から出た『遠藤組』って言うのは、ウチの組と関東の覇権争いをしている兎に角デカイ勢力を持つ組だ。

そこに倉津組の組長の息子である俺が、こんな盗品を持って行った日にゃあ、みすみす殺してくれって、言ってる様なもんだぞ。


こりゃあ、マジで最悪の展開だな。

その発想はなかったわ。



「チッ、面倒だな」

「少年」

「なんだよ?」

「話は、最後まで、ちゃんと聞け」

「なんだよ?まだ続きでもあんのか?」

「あぁそうだ。遠藤組と言っても、その本体じゃない。持ち主は組長の息子だ」

「なんだよ。そんなんじゃあ、あんま変わらねぇじゃん」

「そうか?」


組長の息子ねぇ。


まぁ、組に関係する奴では有るが。

まだヤクザに成ってない息子だってんなら、直接的じゃない分、マッシか。


それに、俺と立場が似てるから、まぁ話をする位なら、特に問題はねぇのかもな。


但し、ソイツが、人語を理解出来無い馬鹿じゃないのが、前提条件だがな。



「まぁ、んな事は、どうでも良いやな。んで、ソイツは、どんな奴なんだよ?」

「カツアゲをする様な誰かさんとは違って、好青年だな……今、確か、W大に通ってる」

「って事は、なにか?人の言葉が通じる相手って事か?」

「それ処か、類稀に見る頭の良い奴だ」

「ふ~~~ん。ヤクザの息子でも、そんな奴がいるんだな」

「まぁ、そう慌てずとも。そのうち、本人が此処に来るだろうよ」

「はぁ……そりゃあまた、用意周到なこったな」


***


 待つ事30分。

スタジオの扉が開き、それらしい人物が入って来た。


だがソイツは、ヤクザなんかとは無縁っぽい、如何にも優男な感じだ。



「こんにちわ、国見さん」

「おぉ、康弘か。待ってたぞ」

「遅くなって、すみません。此処に来る前に、少し野暮用があったもので」

「構わんよ」

「それで、さっきの話は、本当なんですか?例のベースが見つかったとの事なんですが」

「あぁそれなら、彼が見つけてくれたよ」

「コチラの方ですか?」

「そうだ。倉津真琴君……倉津組組長の息子さんだ」

「えっ……」


まぁそりゃそうだわな。

そういう態度にもなるわな。

敵対する組の……しかも組長の息子が、自分の組の不始末を尻拭いしてくれるとは夢にも思わねぇわな。


けど真実ってのは、意外とそんなもんだ。



「どもッス。倉津真琴ッス」

「あっ、あぁ、初めまして、遠藤康弘です」


取り敢えず、握手を求めてきたので、握手する。



「あっ、あの、それで早速なんですが」

「構わねぇよ。なにも言わず、そのベースは持って行ってくれ。そりゃあ、元々アンタのもんだからな」

「なっ!!……しかし、それでは」

「俺ゃあ、面倒が嫌いなんだ。それに俺は、アンタと話してるだけであって、別に、組がどうとか、こうとかを言うつもりもねぇ。ただ偶然アンタの探してるベースが、俺の手元に有った。ただそれだけに過ぎねぇんだよ。だから気にすんな」

「そうですか。では、お言葉に甘えて」

「あぁ、もぉ、なにも言わず持って行ってくれ」


面倒を無くすには、自らのメリットを捨てれば良い。


たったそれだけで、意外と物事は上手く運ぶもんだ。



「ありがとうございます……ところで倉津さんは、お見受けしたところ学生さんの様ですが。将来は、もぅお決めになってるんですか?」

「あぁ?んなもんは、生まれた時から決まってるだろ。良くも悪くもアンタと一緒だ」

「っと言う事は、襲名される可能性が高いって事ですよね」

「まぁなぁ。順当に行けば、そうなるんじゃねぇの」


順当に行きたくは無いが、順当にそうなるだろうな。



「ならば、少しお時間を頂いて宜しいですか?手間は取らせませんから」

「んっ?なんの話だ?」


またおかしな事を言う出しやがったぞ。


つぅか。

なんで、この場で、敵対組織同士が顔を突き合わせてるのに、話なんぞをしなきゃいけないんだ?


寧ろ、なにを話すって言うんだよ?



コイツのこの行動、謎だな?


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


奈緒さんの件は保留に成っていますが。

一応、国見さんのお陰で、ベースの問題は解決しそうな感じですね(*'ω'*)


ですが、問題は解決した筈なので、そのベースの持ち主である遠藤さんから話があると言われましたね。


一体、なんの話をされるのでしょうか?

それはまた、次回の講釈と言う事で(笑)


【オマケ】

氏名:遠藤康弘(エンドウ・ヤスヒロ)

職業:W大の学生・次期遠藤組組長・ベーシスト

外見:一見、優男で柔らかい感じを出しているが、時折鋭い眼光に成る。

人格:物腰が柔らかく、言葉は綺麗で、天然に見える部分があるが、どこか黒い物を感じる。


遠藤さんの設定でしたぁ(*'ω'*)ノ

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