●前回までのあらすじ●
ライブ中に刺されたナイフを引き抜きながら演奏した倉津君だったが。
最後にはぶっ倒れて、救急車で病院送りに(笑)
そして病院で目が覚めた倉津君は、ボンヤリとしながら、昨晩のライブの事を振り返っていた。
そこに……素直ちゃんが。
「あっ……真琴君、気が付いたんですね?」
少し予定と違ったが、病室に現れたのは、見舞いの花束を抱えた素直。
まぁ、奈緒さんでないとしたら、順当と言えば、順当な線だな。
「あぁ、今しがた起きた所だ」
「体……大丈夫ですか?頭がフラフラとかしてませんか?」
「あぁ、お蔭さんでな。俺は頑丈なのだけが取り柄だからな」
「そうですか……良かったぁ」
俺の安否を気遣ってくれてたのか、素直は、やけに安心しきった安堵の表情を浮かべた。
そんなに心配しなくても、俺は、あの程度じゃ、くたばらないのにな。
ホント、心配性な奴だ。
まぁそんな事よりも俺は、あの後、ライブがどうなったのか知りたくて、詳細を素直に聞こうとした。
……んだが、俺は、ある事を思い出して、口の閉じた。
翌々考えたら、素直は、あの直後、動揺して、とても唄える状態じゃなかったからだ。
あの様子から見ても、きっと一曲も唄ってなかっただろうし、当然、シンセが弾ける様な心境でもなかった筈。
なら、そんな奴に、敢えて、その質問をするのも、どうかと思ったからだ。
「あの、真琴君」
「うん?なんだよ?」
「あの……ごめんなさい」
「へっ?おいおい、イキナリなんの話だよ?なに、急に謝ってんだオマエ?」
「あの……実は僕、あの後、真琴君の行動が理解出来なくて、バンドの命運が懸かってるって言うのに、なんの役にも立てなかったんです。……本当に、ごめんなさい」
あぁ、ヤッパリ、そこはそうだったんだな。
けど、あの場合は仕方が無かったんじゃないか。
素直は、元々良い所のお嬢さんだから、今まで、あぁ言ったショッキングな場面に出くわす機会も無かっただろうし。
そんな奴が、あの場面でイキナリなにか対応なんて出来るもんじゃない。
育った環境が違い過ぎるから、これはもぉ仕方がない事だ。
なので此処は、少しフォローしてやらないとな。
「んな事、イチイチ気にすんな。あの場面で、他のメンバーが対応出来たのはな。みんなどこかで、俺が無茶する事を望んでる節が有ったからだ。だから、オマエが気にする程の事じゃねぇよ」
「でも……なにも出来なかったのは辛いです」
「そっか。じゃあ今後は、ゆっくりでも、あぁ言った場面にも慣れていきゃ良いじゃねぇのか?人間つぅのはな、そうやって、ゆっくり成長していくもんなんだぞ」
オイオイ、病み上がりの癖に、語ってるよ俺。
普段はメンバーに諭されてバッカリの俺が、素直相手に語ってるよ。
まぁそれだけ、素直が凹んでるって事だな。
「それで良いのかな?本来は、その場、その場で成長しなきゃ、いけないんじゃないんですか?」
「オマエって、頭が良いのに、そう言う所の柔軟性は無いんだな。出来なかった事を悔いるなら、先で、それを凌駕するパフォーマンスを見せ付けりゃ良いだけじゃねぇかよ。……メンバー全員、そんなオマエを望んでるんじゃないのか?」
「あっ……」
納得したか?
それが、みんなが、オマエに求めてる解答だと思うぞ。
だから、オマエが凹む事なんぞ、誰も望んでねぇと思うんだけどな。
「まぁ、兎に角、前だけを見ろよ。後ろなんか見ても、ツマンネェだけだぞ」
「あっ、はい。……もし、次のライブが有って、まだ僕を呼んで貰えるなら、絶対に、みんなの期待に沿える様に頑張ります」
「そうだよ。それで良いんじゃねぇの」
おぉスゲェな俺。
頭にから余分な血が抜けた分、少しは冷静に物事を解決出来る様になってるんじゃねぇか?
この調子で血を抜けば、脳の回転も少しは……いや、その前に死ぬな。
もし、この理論が正しいとしても。
頭が良くなる前に、完全に血が無くなってしまう方が、きっと早い筈。
命を落として、冷静になってもしょうがねぇよな。
まぁ死んじまいそうだから、取り敢えず、この方法はやぁ~めた。
「あっ、そうだ、いけない。……向井さんに、真琴君が目覚めたって連絡して上げなきゃ。向井さんも、凄い心配してましたから」
「あぁそっか。だったら、また奈緒さんにも迷惑かけちまったんだな、俺。ホント、あの人には迷惑掛けっぱなしだな」
「向井さんは、真琴君の彼女なんだから仕方ないですよ。彼女が、彼氏の心配をするのは当たり前なんだと思いますし」
「……だと良いんだがな」
「真琴君が、そんな事を言っちゃダメですよ。向井さん、真琴君が倒れた後、泣きながら、ズッと真琴君の名前を呼んでたんですよ」
「そうなのか?……悪ぃ」
奈緒さんか……ホントに、あの人だけは、何所まで俺の事を心配してくれてるんだろうな?
素直の話が本当なら、結局、俺は、アナタに心配掛けっ放しじゃないッスか。
自分のやった事のケツも拭けねぇなんて……格好悪過ぎだろ、俺。
「あの、凹まないで真琴君」
「はぁ、そうは言ってもなぁ。みっともなさ過ぎて、穴が有ったら入りたい心境だ」
「あっ、あの、あのね、真琴君……僕が、こんな事を言うのも変だけど、女の子だったら、みんな、向井さんと同じ行動をとると思いますよ。自分の好きな人が怪我をしたら、不安で仕方なく成っちゃいますから」
「まぁよぉ、言っちまえば、そうなんだけどよぉ。あの人の場合は、俺がやった不祥事から、全て守ろうとするだろ。それがよ。男としては情けなくってな」
「だったら。さっき真琴君が、僕に言ってくれた事を実行してみたらどうですか?僕に、後ろ見てもツマラナイって言ってくれたのは、真琴君ですよ」
「……まぁな」
うわっ……これは、流石に痛過ぎだろ俺。
他人に説教した事を、丸々返されてる様じゃ、偉そうに説教した意味が無いよな。
ヤッパリ、人に説教出来るほど、俺は人間出来てないんだな。
みっともねぇな……
「あっ……偉そうな事を言って、ごめんなさい」
「いや、オマエが謝る様な話じゃねぇんだよ。これは、ただ単に俺が不甲斐無いだけの話だ」
「ごめん……なさい」
あぁダメだ。
自分の愚かさに、ドンドン気が滅入ってきた。
このままじゃ、折角、素直が見舞いに来てくれたのに、コイツまで一緒に凹ましてしまいそうな勢いだ。
兎に角、それだけは、なんとしても避けなきゃな。
「あぁイカン、イカン。オマエの言う通りだな。反省をして、前を向けなきゃ意味無いよな。グジグジ考えんのは辞めだ辞め」
「真琴君……」
「だから、オマエも辞めろ、辞めろ。こんな事してても辛気臭くなるだけだ。一緒に前だけを見ようぜ素直」
「あっ、はい……じゃあ、僕もそうします」
強引な方向転換だったが、なんとかかんとか誤魔化しきれたか?
……って言うか。
この件については、実際に『まぁ良いか』って感じなんだよな。
凹んでても、なにも成長しないしな……
第一そんなもん、なんの意味ねぇし。
だからまぁ、ダメはダメ也に、じっくり成長するさ。
次回からは、そんな事にならない様に努力してな。
「あっ、いけない……僕、向井さんに連絡するんだった」
「そうだな。じゃあ、悪いが素直。奈緒さんには、馬鹿がゾンビみたいに起き上がったって言っといてくれ」
「はい、わかりました。そう伝えておきます」
そう言い残して、素直は、奈緒さんに電話をする為に出て行った。
***
『ガチャ』
それからほんの少しして、再び扉が開いた。
俺は、てっきり素直が帰ってきたもんだと思い込み。
身構える事もなく扉の方を見ていた。
だが……そんな愚行を、俺に嫌がらせする事を生き甲斐にしている神様が見逃す筈もなく。
また例によって、厄介な事が起こる。
もぉ最悪だよ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
倉津君、素直ちゃんを元気付け様として語っては見た物の。
結局最後は、特大のブーメランを喰らってしまいましたね(笑)
まぁ、これが彼の人生と言う物ですから、こればかりは仕方がありませんね(笑)
さてさて、そんな中。
この程度のブーメランで倉津君の不幸が終わる筈もなく。
更なる悪夢が、彼に襲い掛かってきます。
そしてそれは、私がストックしている分の中で、一番のお気に入りキャラの登場でもあります♪
倉津君……まぁ、精々頑張って下さい(笑)
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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