●前回のおさらい●
仮説を倉津君に説明していく崇秀だったが、なにやら様子が少し変。
倉津君自身は、これには気付いていなかったのだが……崇秀は、突然倉津君に謝罪を始めた。
それは、何故か?
「えっ?なにがだよ?」
「俺が余計な事さえしなきゃ、こんな事態には成らなかったかも知れないのにな。さっきから加害者かも知れない俺が、なに調子良い事を言ってんだろな」
「へっ?なんだよ?どうしたんだよ?なに、急に謝ってんだよ」
「俺……なんて事しちまったんだ。仮説が正しかったら、オマエの人生滅茶苦茶じゃねぇかよ。……俺……ホントに、すまん」
なっ!!
たっ、崇秀が……あの、人に頭を下げる事を良しとしない傍若無人な生き物の崇秀が、沈痛な面持ちで深々と謝罪した姿が脳裏に浮かんだ。
それどころか、完全に落ち込んで頭を抱えてる姿さえ浮かぶ。
小学校からの腐れ縁で、コイツとは長い付き合いだが、こんな崇秀は1度も見た事ないぞ。
……って事は。
コイツ……仮説を立ててる内に、なにか他にも思い当たる節が有って、俺の体が元に戻らない可能性が高い事に気付いたんじゃないのか。
この様子からして、恐らく90%以上の確率で『無理だ』と踏んだと思われる。
……こりゃあ、相当に厳しいな。
・・・・・・
はぁ~~~……いやでも、しょうがねぇわな。
天才のコイツが此処まで反省しちまったら、もぅ覚悟どうこうの騒ぎじゃねぇんだろうしな。
……それにまぁ、この件で唯一の問題点だった奈緒さんとは、今朝、ちゃんと話をしたから、ある程度は和解してくれてる。
それに、女のままでも、奈緒さんとは離れる事は無いって言うのも、ほぼ確定してる。
此処だけ押さえてりゃ、基本的に後は問題なしだ。
つぅか、崇秀のこんな無様に凹んでる所なんか、声だけでも聞きたくねぇしな。
世の中の為にもコイツは『他を寄せ付けない暴君』で在り続けなきゃイケネェ。
だからオマエは、なにがあっても凹むなつぅの!!
それによぉ、此処までハッキリ言われたら、諦めるしかねぇもんよ。
ある意味『変に希望がある』と思わされるよりスッキリしたのかもしんねぇ。
だからよ、自分の人生ぐらいなんとかすっから、俺の事なんぞで悩むな暴君。
(↑雑魚秀の為に、やせ我慢しまくってる超カッコイイ俺)
「オイオイ、だとしても、なにも絶対に元に戻れないって決まった訳じゃないだろ。だから仮説を立てた位で謝んなよ。つぅか、元々俺の人生なんて、生まれた時から半分以上滅茶苦茶なんだしよ」
「違うんだよ、倉津。そうじゃねぇんだ。……戻らねぇ可能性の方が、遥かに高いんだよ」
ヤッパリだ。
まぁ確かに、男と言う性別に未練はタップリ残るが、こうなっちまったら、今更、もぉどうでも良いわ。
女にゃ、女ならではの楽しみ方があんだろしよ。
「そっかよ。……じゃあ、しょうがねぇじゃねぇの。女に生まれ変わった気持ちで、人生やり直すのも悪かねぇだろ」
「オイ、冗談で言ってんじゃねぇんだぞ」
「だったら、なんだよ?」
「えっ?」
「例え男に戻れなくたって、俺は、こうやって生きてんだぞ。なら今更、女だとか、男だとか、どうだって言うんだよ?俺が女になったら、テメェは、今まで通りの付き合い出来ねぇって言うのか?」
「・・・・・・」
「そうじゃねぇんだろ?……だったら、そうやってお互いが生きてる限り、俺と、オマエの関係は、なんも変わりはしねぇよ」
……ってか、なんで俺が慰めてんだよ?
「……だな。確かにそうだな」
「だろ」
「つぅか、落ち込んでてもしょうがねぇか」
「ったりめぇだ!!つぅか、そんな風に落ち込んでる暇が有るんだったら、サッサと戻す方法の1つでも考えろつぅの」
「あぁ、確かに、そうだよな。……つぅか、それ以前に、オマエを男に戻せたらノーベル賞モノだよな。だったら、それも悪くねぇやな」
コイツ……
「出たよ。ちょっと許したら、これだよ。オマエ、本当は、反省なんか微塵もしてねぇだろ」
「いや、流石に、今回ばかりは反省してる。だから、その償いと言っちゃあなんだが。オマエ、女の内は好き勝手やって良いぞ。やりたい事の金は、俺が全部負担してやる。これは、俺が加害者である可能性がある以上、支払われる賠償金だと思え。……良いな、遠慮なんかすんなよ」
「へっ?」
「それと、その姿でも大舞台に立ちたいって思えるなら、いつでも俺に言え。オマエの為だけに最高のステージを用意してやるよ。取り敢えずの処は、それで文句はねぇだろ」
うわっ!!イキナリ破格の賠償金だな。
「好き勝手って……破産しても知らねぇぞ」
「しねぇつぅの。第一オマエ、この案件が立証出来りゃ、アッサリ、巨万の富を得る事が出来るんだぞ。だったらオマエの使う金なんざ、端金でしかねぇの」
「うわっ!!マジで最低だな、オマエ」
「いいや、最高だ。だってよぉ、この案件さえ上手く出来りゃ『インターセクシュアル』で、親が誤った性別を選んだ性同一性障害で悩む人を助けられる訳だし。序に言っちまえば、本当の性同一性障害で悩む人も、XY染色体、若しくはXX染色体を体内で増やす事により、本来の性別を取り戻す事が出来る可能性於生まれてきた訳だからな。……オマエの起こした奇跡ってのはな。そんな可能性がある貴重なもんなんだよ」
モルモットか俺は……
「オイ、崇秀。先に言って置くがな。俺は、まだ『男に戻る事』を諦めた訳じゃねぇからな。そこを勘違いすんなよ」
「解ってるつぅの。出来るだけ、早く戻せる様に、俺が、全て謎を解き明かしてやるよ」
「ケッ……良い心掛けじゃねぇかよ」
「だろ」
ヤッパリ、崇秀は、こうじゃなきゃな。
どんな状況にあっても、凹んだ崇秀なんかじゃ、なんの張り合いもねぇんだもんよ。
それに、この無駄にまで溢れ返ってるやる気こそが、この馬鹿の原動力。
これがなきゃ、崇秀じゃねぇしな。
「まぁ、兎に角だ。まずは一旦、中国に居る親父の研究所に行って調べモノをするわ。っで、解明された結果は、逐一報告すっから、期待して待っとけ」
「えっ?……けど、オマエ、全米ツアーと、3個のフェスは、どうすんだよ?準備とかは良いのかよ?」
「アホか?んなもんはな、ボブと、西海岸の奴等に丸投げすりゃ問題なしだ。それにツアーの代役に関しても、さっきメールを送って了承済みだ。どっちも、なんの問題もねぇよ」
早ッ!!
コイツ、俺と電話で話しながら、同時に他の準備も進めてやがったのかよ!!
相変わらずのキチガイ振りだな。
けどな。
普段は、そうやって、ただのキチガイ野郎にしか見えないけど。
こう言う、普通の奴じゃ解決出来無い様なピンチな時になると、そのキチガイ振りが逆に輝いて見える。
不思議なもんだな。
「崇秀……マジで頼むな。俺、こう言う関係の知り合いは、オマエしか居ねぇから、他に頼れる奴が居ねぇんだよ。それとよぉ。……オマエに相談して、マジで、マジで良かったよ」
「おぅ、そっか。じゃあ後は、全部、俺に任せとけ。……オマエは、ただ吉報だけ待ってりゃ良いからな。心配すんな。必ず戻してやる」
「わかった。それまでは、不本意だが女を満喫してるよ」
「そりゃあ良いや。……んじゃまぁ、速攻で移動開始すっから、電話切るな」
「おぉ、じゃあな」
崇秀はヤル気を強く感じさせながら、静かに電話を切った。
そして……また1人の時間が訪れる。
……だが、そこには、崇秀と話す前の様な孤独に苛まれる不安感はない。
今朝、奈緒さんが理解してくれ。
今も、こうやって崇秀が、俺を助ける為だけに、全てをキャンセルしてまで動き出してくれたんだから、もぉ怖いなんて感じるものはなにもないとすら感じている。
いつもこうやって、俺を理解してくれる2人さえ居れば『もぉ結果なんて問題じゃない』とすら思える様になっている。
寧ろ、どう転がろうが安心だ。
奈緒さん以外で、こんな気持ちになれるなんて……マジで、アイツに相談して良かったよ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
相手が本気で取り返しのつかない様な事をして凹み、悩んでいる際にこそ。
そんな相手に救いの手を差し伸べて上げれるのが『本当の絆』っと言うもの。
それを常に、自分に対して実行してきてくれていた崇秀に、倉津君は、自分がどうしようもなく大変な状態にあっても、彼と同じ様に救いの手を差し伸べて行きましたね。
こう言った行動を起こせる絆こそが『本当の親友』であり『本当の腐れ縁』っと言う証明だと私は思います。
上辺だけでの付き合いなら、こんな言葉は絶対に出せない筈ですからね♪
さてさて、そんな熱苦しい展開の中。
崇秀は、倉津君の想いに応えるが如く、全てを予定をキャンセルしてでも、早速研究に移ったのですが。
倉津君本人にも、まだまだ解決しなきゃいけない事が残っています。
その第一弾が……は、次回の講釈。
とうとう覚悟を決めた倉津君が『アレ』に挑戦いたしますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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