最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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391 真上さんと由佳ちゃん

公開日時: 2022年3月4日(金) 00:21
更新日時: 2022年12月28日(水) 14:40
文字数:3,328

●前回のおさらい●


 真上さんからの突然の電話に驚く倉津君だったが。

聞けば『追加のメイド服が仕上がった』との驚きの電話。

しかも彼女は、それをわざわざ学校まで納品しに来てくれていた。


当然、慌てて迎えに行く倉津君(笑)


そして教室の近くまで戻って来た時……

 ……ってな感じでだな。

真上さんを横に歩かせて、俺は荷物を持ちながらエッチラホッチラ階段を上って、我が教室のある廊下に差し掛かかる。


すると……遠目から、由佳がこちらに気付き、走って向かって来た。


う~~~~ん、なんだろうな。

由佳がコッチに向かって来ただけの話なんだが、なんだか一抹の不安が過ぎったぞ。


それに、もう1つなんでだろうな。


『妙な胸騒ぎがする』



「重そうだね。倉津君、荷物持つの手伝おうか?」

「あぁいい、いい。これぐらいなら1人で十分持てるレベルだ」

「そぉ?……ところで倉津君、その人、誰?制服からして、ウチの生徒じゃないみたいだけど」

「あぁ、この人はな。オマエ等のメイド服を、わざわざハンドメイドで作ってくれた人だ」

「マジで!!この人がそうなの?」

「えぇっと、初めまして王家真上と申します」

「あぁっと、あたし大谷由佳。宜しくね、王家さん」

「あっ、はい。コチラこそ、宜しくお願い致します」


真上さんは、いつも通りの笑顔で、丁寧な挨拶じゃのぉ。

それに、由佳の挨拶もハキハキしてて元気が有って、実に宜しい。


中々2人共、良い挨拶じゃったぞ。


だからな。

折角、知り合ったんだし、ファースト・インプレッションも悪くなかったんだから、必ず仲良くするんじゃぞ。


良いな……必ずだぞ。



「ってかさぁ。王家さんって、両目の色が違うんだね。それってカラコン?」


ぶっ!!

言った尻から由佳の奴、俺ですら一度も触れなかった禁裏に土足で踏み込みやがった!!


まぁ、その物怖じしない性格が由佳の良い所なんだが……初対面の相手に、なんちゅう事を聞くんだ、オマエは!!


ちょっとは『遠慮』って言葉を理解しろっての!!



「・・・・・・」


ほら、見ろ。

真上さんが、少し困った様子だぞ。



「気持ち悪い……ですか?」

「えっ?えっ?違う、そう言う意味じゃなかったんだけどね。ごっ、ごめんね。ひょっとして気にしてた?」

「いえ、よく言われますので、そんなに気には留めてはいませんよ。ですが、大谷さんが、この目を見て、不快な想いをされたのではないかと思いまして……そちらの方で、少し反省しました」


あぁ、そうきますか。

ホント、他人を第一に考える人だな、この人は。

普通、そういう言い回しって、中々出てこないんだけどな。


そんな真上さんの『菩薩力』に当てられてか、由佳が完全に困惑している。



「あぁ、そう言うんじゃなくてね。神秘的って言うか、凄く綺麗だなって思って」

「そうでしたか。この様な変った眼を、気持ち悪がらず、褒めて頂いて、ありがとうございます」

「あっ、あぁ、はい。……っで、それって、結局カラコンなの?」


だから、聞くなっての!!



「あぁっと、違いますよ。これは、過去にして頂いた手術の名残なんです」

「えっ?手術?ごっ、ごめん」

「あぁ、気にしないで下さい。角膜移植の手術の際に、何故か色が残っただけなので」

「えっ?ちょっと、角膜手術って事は王家さん……」

「あっ、はい。元々盲目に近い状態で、殆ど眼は見えなかったんです。……それだけですよ」


ほとんど眼が見えなかったって……この人、涼しい顔して、サラッと重たい事を言うよな。



「えっ?だったら、お父さんとか、お母さんを恨んでたの」

「あぁっと、それは全く無かったですよ。父も、母も、こんな私に良くしてくれましたから。それに……」

「そっ、それに?」

「はい、それにですね。店舗の改装や、店を大きくする話をお断りしてまで、お金を貯めて頂いて、私に角膜手術を受けさせてくれました。ですから、両親には感謝の念しか有りません。……あぁっと、すみません。なんか湿っぽい話になっちゃいましたね」


そうか、そう言う事だったのか。

だから、この人は、あんな危なっかしい橋を渡ってまで、ご両親の店を守ろうとしてたんだな。


この人が無茶な行動をする理由の一端は、そこにあったんだな。


しかしまぁ、なんとも凄く良い関係が構築されてる親子だな。

心ある両親に育てられると、ホント、良い子供が育つもんだよな。


真上さんを見てると、そう思う。


どこかの、息子や娘を放ったらかしにして姦淫に走る屑親父とは大違いだ。

馬鹿親父に、この家族の爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいわ!!

(↑飲むのは屑の俺も含めてだけどな……指名は、真上さんの爪の垢で←リアル屑)



「王家さんって、凄い人なんだね。あたしだったら、そんなの、きっと耐えれなかったよ」

「そんな事ないですよ。もし大谷さんが、私と同じ境遇でしたら、きっと大谷さんのご両親もそうされた筈です。ですから、ご両親の気持ちを汲んで、大谷さんも同じくそうされた筈。こんな事、なにも特別な事ではありませんよ」

「ぐっ!!なんか心が痛い」

「どうして……ですか?」

「あぁ、なんて言うのかなぁ。王家さんの話を聞いてるとね。五体満足に産んで貰ったのに、我儘ばっかりしてるなぁって思って」

「えぇっと、それで良いと思いますよ。感謝の気持ちさえ忘れなければ、きっと、ご両親にも伝わってますよ」

「あぁっと、王家さんって『聖人君主』の類?」


俺も、そう思った。


まぁ、これに関しては、以前からズッと思ってた事なんだがな。

真上さんって、どんな些細な事でも、全てに感謝してるんだよな。


俺等みたいな人間って、基本的に雑念が多いから、中々こう言う悟りを開いた様な心理には成れないんだよなぁ。


ヤッパ、真上さんって、なにかが違うんだな。



「どうしてですか?私なんて普通ですよ」

「普通とか言わない。それだけ感謝の気持ちを持ってる子なんて、最近殆ど居ないよ」

「そうなん……ですか?だとすれば、少し悲しい話ですね」

「悲しいと来たか。……ねぇねぇ、王家さんって、ひょっとして万物を愛してる?」

「あぁっと、愛してるとまでは行きませんが、常に感謝はしてますね。人の出逢いもそうですし、良い物と出逢えると、とても嬉しいですよ」

「ヤッパ、根本からして違うね。あたしは、王家さんみたいな崇高な考えにはなれないや」

「いえいえ、崇高だなんてとんでもない。私なんかより、大谷さんの方が、ずっとお優しい方ですよ」

「どうして?」

「だって、大谷さん。荷物を持っていた倉津さんを見つけられた時、直ぐに『手伝おうか』って、おっしゃったじゃないですか。これを見た瞬間、私、この人は、凄く優しい人なんだなぁって思いましたよ」


人の好意も見逃さないな。


奈緒さんと言い、真上さんと言い。

なんか、そう言う特殊なレーダーが、どこかで売ってるんッスか?


もし市販してる場所を知ってるなら、教えて下さいな。

少々高くても即買いしますから。

(↑但し上限は100万までな)



「アハハ……まいったなぁ。あたし、王家さんみたいな人に、初めて出逢ったよ。是非、友達になって欲しいんだけど、なってくれる?」

「あっ、はい。勿論ですよ。こちらこそ宜しくお願いします」


なんか思ってた以上に、仲良くなったな。


まぁまぁ、なんにしても仲が良い事は良いこった。


さて、2人が仲良くなった所で、俺の手は、荷物の重さで、そろそろ限界だ。

教室に衣装を持って入る事を提案しなきゃな。

(↑調子に乗って一緒に話すと、実は、荷物を落としそうな感じだったんだよな)



「あぁっと、話が纏まった所で、これ、教室に運んで良いッスかね?」

「あっ!!すっ、すみません。私とした事が、倉津さんに荷物を持たせたまま、立ち話なんて……本当に申し訳有りません」

「あぁ良いッス、良いッス。由佳との楽しい時間を満喫出来たなら、それはそれでOKッスよ」

「本当に、すみませんでした」

「良いッスよ。友達なんッスから、気にしない気にしない」

「友達……。あっ、はい、ありがとうございます」

「あぁ、そっかぁ。なんか良い人って集まるもんなんだぁ」

「なんか言ったか?」

「うぅん。なんも言ってない。ってかさぁ、早く王家さんの新作の衣装見せてよ」

「そうだな」


俺がそう言うや否や、由佳は、俺の背中をぐいぐい押して教室に押し込む。


そこで一言、なにかを口走った。



「うん……私も王家さんみたいにガンバろ!!」

「なにがだよ?」

「良いから、良いから」

「なんだかなぁ?」


どうやら由佳は、真上さんから、なにか良い影響を受けたらしい。


この人の影響を受ける事は、非常に良い事です。


心が優しく成れるからな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


真上さんと由佳ちゃんは、一見すれば相性が悪い様に見えましたが。

意外と、そうでもなかったみたいですね。


良かった良かった。


ですが次回。

そんな二人を他所に、ちょっとしたハプニングが起こります。


もし此処が少しでも気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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