●前回のおさらい●
真上さんからの突然の電話に驚く倉津君だったが。
聞けば『追加のメイド服が仕上がった』との驚きの電話。
しかも彼女は、それをわざわざ学校まで納品しに来てくれていた。
当然、慌てて迎えに行く倉津君(笑)
そして教室の近くまで戻って来た時……
……ってな感じでだな。
真上さんを横に歩かせて、俺は荷物を持ちながらエッチラホッチラ階段を上って、我が教室のある廊下に差し掛かかる。
すると……遠目から、由佳がこちらに気付き、走って向かって来た。
う~~~~ん、なんだろうな。
由佳がコッチに向かって来ただけの話なんだが、なんだか一抹の不安が過ぎったぞ。
それに、もう1つなんでだろうな。
『妙な胸騒ぎがする』
「重そうだね。倉津君、荷物持つの手伝おうか?」
「あぁいい、いい。これぐらいなら1人で十分持てるレベルだ」
「そぉ?……ところで倉津君、その人、誰?制服からして、ウチの生徒じゃないみたいだけど」
「あぁ、この人はな。オマエ等のメイド服を、わざわざハンドメイドで作ってくれた人だ」
「マジで!!この人がそうなの?」
「えぇっと、初めまして王家真上と申します」
「あぁっと、あたし大谷由佳。宜しくね、王家さん」
「あっ、はい。コチラこそ、宜しくお願い致します」
真上さんは、いつも通りの笑顔で、丁寧な挨拶じゃのぉ。
それに、由佳の挨拶もハキハキしてて元気が有って、実に宜しい。
中々2人共、良い挨拶じゃったぞ。
だからな。
折角、知り合ったんだし、ファースト・インプレッションも悪くなかったんだから、必ず仲良くするんじゃぞ。
良いな……必ずだぞ。
「ってかさぁ。王家さんって、両目の色が違うんだね。それってカラコン?」
ぶっ!!
言った尻から由佳の奴、俺ですら一度も触れなかった禁裏に土足で踏み込みやがった!!
まぁ、その物怖じしない性格が由佳の良い所なんだが……初対面の相手に、なんちゅう事を聞くんだ、オマエは!!
ちょっとは『遠慮』って言葉を理解しろっての!!
「・・・・・・」
ほら、見ろ。
真上さんが、少し困った様子だぞ。
「気持ち悪い……ですか?」
「えっ?えっ?違う、そう言う意味じゃなかったんだけどね。ごっ、ごめんね。ひょっとして気にしてた?」
「いえ、よく言われますので、そんなに気には留めてはいませんよ。ですが、大谷さんが、この目を見て、不快な想いをされたのではないかと思いまして……そちらの方で、少し反省しました」
あぁ、そうきますか。
ホント、他人を第一に考える人だな、この人は。
普通、そういう言い回しって、中々出てこないんだけどな。
そんな真上さんの『菩薩力』に当てられてか、由佳が完全に困惑している。
「あぁ、そう言うんじゃなくてね。神秘的って言うか、凄く綺麗だなって思って」
「そうでしたか。この様な変った眼を、気持ち悪がらず、褒めて頂いて、ありがとうございます」
「あっ、あぁ、はい。……っで、それって、結局カラコンなの?」
だから、聞くなっての!!
「あぁっと、違いますよ。これは、過去にして頂いた手術の名残なんです」
「えっ?手術?ごっ、ごめん」
「あぁ、気にしないで下さい。角膜移植の手術の際に、何故か色が残っただけなので」
「えっ?ちょっと、角膜手術って事は王家さん……」
「あっ、はい。元々盲目に近い状態で、殆ど眼は見えなかったんです。……それだけですよ」
ほとんど眼が見えなかったって……この人、涼しい顔して、サラッと重たい事を言うよな。
「えっ?だったら、お父さんとか、お母さんを恨んでたの」
「あぁっと、それは全く無かったですよ。父も、母も、こんな私に良くしてくれましたから。それに……」
「そっ、それに?」
「はい、それにですね。店舗の改装や、店を大きくする話をお断りしてまで、お金を貯めて頂いて、私に角膜手術を受けさせてくれました。ですから、両親には感謝の念しか有りません。……あぁっと、すみません。なんか湿っぽい話になっちゃいましたね」
そうか、そう言う事だったのか。
だから、この人は、あんな危なっかしい橋を渡ってまで、ご両親の店を守ろうとしてたんだな。
この人が無茶な行動をする理由の一端は、そこにあったんだな。
しかしまぁ、なんとも凄く良い関係が構築されてる親子だな。
心ある両親に育てられると、ホント、良い子供が育つもんだよな。
真上さんを見てると、そう思う。
どこかの、息子や娘を放ったらかしにして姦淫に走る屑親父とは大違いだ。
馬鹿親父に、この家族の爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいわ!!
(↑飲むのは屑の俺も含めてだけどな……指名は、真上さんの爪の垢で←リアル屑)
「王家さんって、凄い人なんだね。あたしだったら、そんなの、きっと耐えれなかったよ」
「そんな事ないですよ。もし大谷さんが、私と同じ境遇でしたら、きっと大谷さんのご両親もそうされた筈です。ですから、ご両親の気持ちを汲んで、大谷さんも同じくそうされた筈。こんな事、なにも特別な事ではありませんよ」
「ぐっ!!なんか心が痛い」
「どうして……ですか?」
「あぁ、なんて言うのかなぁ。王家さんの話を聞いてるとね。五体満足に産んで貰ったのに、我儘ばっかりしてるなぁって思って」
「えぇっと、それで良いと思いますよ。感謝の気持ちさえ忘れなければ、きっと、ご両親にも伝わってますよ」
「あぁっと、王家さんって『聖人君主』の類?」
俺も、そう思った。
まぁ、これに関しては、以前からズッと思ってた事なんだがな。
真上さんって、どんな些細な事でも、全てに感謝してるんだよな。
俺等みたいな人間って、基本的に雑念が多いから、中々こう言う悟りを開いた様な心理には成れないんだよなぁ。
ヤッパ、真上さんって、なにかが違うんだな。
「どうしてですか?私なんて普通ですよ」
「普通とか言わない。それだけ感謝の気持ちを持ってる子なんて、最近殆ど居ないよ」
「そうなん……ですか?だとすれば、少し悲しい話ですね」
「悲しいと来たか。……ねぇねぇ、王家さんって、ひょっとして万物を愛してる?」
「あぁっと、愛してるとまでは行きませんが、常に感謝はしてますね。人の出逢いもそうですし、良い物と出逢えると、とても嬉しいですよ」
「ヤッパ、根本からして違うね。あたしは、王家さんみたいな崇高な考えにはなれないや」
「いえいえ、崇高だなんてとんでもない。私なんかより、大谷さんの方が、ずっとお優しい方ですよ」
「どうして?」
「だって、大谷さん。荷物を持っていた倉津さんを見つけられた時、直ぐに『手伝おうか』って、おっしゃったじゃないですか。これを見た瞬間、私、この人は、凄く優しい人なんだなぁって思いましたよ」
人の好意も見逃さないな。
奈緒さんと言い、真上さんと言い。
なんか、そう言う特殊なレーダーが、どこかで売ってるんッスか?
もし市販してる場所を知ってるなら、教えて下さいな。
少々高くても即買いしますから。
(↑但し上限は100万までな)
「アハハ……まいったなぁ。あたし、王家さんみたいな人に、初めて出逢ったよ。是非、友達になって欲しいんだけど、なってくれる?」
「あっ、はい。勿論ですよ。こちらこそ宜しくお願いします」
なんか思ってた以上に、仲良くなったな。
まぁまぁ、なんにしても仲が良い事は良いこった。
さて、2人が仲良くなった所で、俺の手は、荷物の重さで、そろそろ限界だ。
教室に衣装を持って入る事を提案しなきゃな。
(↑調子に乗って一緒に話すと、実は、荷物を落としそうな感じだったんだよな)
「あぁっと、話が纏まった所で、これ、教室に運んで良いッスかね?」
「あっ!!すっ、すみません。私とした事が、倉津さんに荷物を持たせたまま、立ち話なんて……本当に申し訳有りません」
「あぁ良いッス、良いッス。由佳との楽しい時間を満喫出来たなら、それはそれでOKッスよ」
「本当に、すみませんでした」
「良いッスよ。友達なんッスから、気にしない気にしない」
「友達……。あっ、はい、ありがとうございます」
「あぁ、そっかぁ。なんか良い人って集まるもんなんだぁ」
「なんか言ったか?」
「うぅん。なんも言ってない。ってかさぁ、早く王家さんの新作の衣装見せてよ」
「そうだな」
俺がそう言うや否や、由佳は、俺の背中をぐいぐい押して教室に押し込む。
そこで一言、なにかを口走った。
「うん……私も王家さんみたいにガンバろ!!」
「なにがだよ?」
「良いから、良いから」
「なんだかなぁ?」
どうやら由佳は、真上さんから、なにか良い影響を受けたらしい。
この人の影響を受ける事は、非常に良い事です。
心が優しく成れるからな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
真上さんと由佳ちゃんは、一見すれば相性が悪い様に見えましたが。
意外と、そうでもなかったみたいですね。
良かった良かった。
ですが次回。
そんな二人を他所に、ちょっとしたハプニングが起こります。
もし此処が少しでも気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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