●前回までのあらすじ●
追試を終えた2人は、タクシーを使って駅に行き。
そこから横浜にあるライブハウスに向かう為に、電車に乗り込んでいった。
さて、電車の乗り込み、席に着いた事により。
漸く、此処で、一旦は落ち着く事が出来た訳なんだがな。
テストの疲労がない訳じゃないから、本来なら、少しでも此処で寝ておきたい所。
けどなぁ。
今、少しでも睡眠したら、起きる自信が無い。
恐らく、それは山中も同じだろう。
現に奴は、眠らない為に、既に、なにかを俺と喋る準備をして、今にも口が開きそうだ。
所詮、考える事は同じか……
「しっかし、オマエって豪儀なやっちゃのぉ」
「なにがだよ?」
「さっきのタクシーの話やんけ。一銭も釣り貰わんかったな」
なんの話をするのかと思えば、そこな。
けど、そうしたのにも、ちゃんと理由はあるんだぞ。
「オマエはアホか?休憩中のオッサンに無理を言ってまで乗せて貰ったんだぞ。社会的にも、あれぐらいはしても、罰は当たらねぇだろうに」
「ほぉ。俗に言うチップ言う奴か?金持ちは凄いのぉ~。格好良ぇのぉ~」
「オマエさぁ。それ、俺に対する嫌味か?」
「いやいや、違うで、僻みや僻み。俺の金持ちに対する僻みや」
そこで僻むな!!
僻んでもどうしようもないし、虚しいだけだろうに。
それにコイツ、俺の事を少々誤解してやがる部分があるな。
まぁ家が金持ってると、自ずと、そう言う風に見えるのはわかるんだが、俺にも、金銭面には色々事情ってもんが有るんだぞ。
まぁ、普通は解らねぇ様な事情なんだがな……
一応、そこを軽くだけでも説明しておくか。
「まぁそう言うなって。俺だってなぁ、自分で稼いだ身銭を切るのは、かなり痛てぇんだからよ」
「うん?なんや、おかしな事を言うんやな?オマエがタクシーの運ちゃんに払った金って、親から貰った小遣いやないんか?」
ヤッパリだ。
ヤッパリ、そう思われてたか。
山中は良くも悪くも、こう言う事に関しては、一般的な感性の持ち主だな。
「アホか……ウチの糞親父は、生まれてこの方、俺に小遣いなんぞくれた事は一回もねぇわ。『金が欲しけりゃ、自分で稼げ』とか抜かしやがって、ガキの頃から『借金の取立て』とか、嫌な仕事をシコタマやらされてんだよ、俺は」
「ほぉ。そないな事しとったんかいな。マコも俺が思ってた以上に、金では苦労してるちゅう事か?」
「いやいや、さほど苦労はしてねぇぞ。なんせヤクザの仕事は、一般的な仕事より『報酬』が良いからな」
「左様か……そやけどまぁ、ちょっと吃驚したわ。金持ちは息子は、小遣いが良ぇもんやと、相場は決まっとる思とったからな」
まぁ、普通の金持ちなら、きっと、そうなんだろうな。
欲しい物は、親に少し頼み込めば、何でも直ぐに買って貰える……とか、あんだろうけどな。
けどよぉ、オマエ、翌々考えてもみろよ。
確かに、ウチの家って金持ちだけどよぉ……『ヤクザの本家』だぞ。
そんな一般的な金持ちの常識が、罷り間違っても、罷り通る訳ねぇだろ。
汚い金は、汚い運用をされっから、そう言う金は、早々ガキには回って来ねぇの。
「まぁそんなもんだな。けど、まぁあれだな。取立てに行くのが面倒臭ぇ時は、そこら辺で『カツアゲ』とか『親父狩り』とかも、よくやったもんだけどな」
「オマエ、ひょっとして、ソッチの方が頻繁なんちゃうか?」
「確かに頻繁だな」
「最悪やコイツ」
「全然、最悪じゃねぇし。俺のカツアゲはな、迅速かつ、丁寧がもっとうなんだ。別に、ゴタゴタ言って変に抵抗しなきゃ、暴力は振るわねぇ。実にジェントリーなカツアゲなんだよ」
この間(1話参照)は、思いっ切り暇だったから、思いっ切り暴力振るったけどな。
序に言えば、あの時は、かなりムシャクシャもしてたな。
まぁアイツは、運が悪かったって事で。
それにしてもなんだな。
自分で言って置いてなんなんだが『ジェントリー(紳士的な)・カツアゲ』って、なんなんだろうな?
『英国風カツアゲ』とかと同義語だったりしてな。
んな訳ねぇか。
「そりゃあ、良ぇこっちゃ。何事にもモラルは必要やからな」
「だろ」
『カツアゲ』や『親父狩り』にモラルなんて存在するのか?
モラルのある犯罪なんざ聞いた事もねぇよ。
けど、コイツ、此処で俺に同意するって事は、コイツも昔、大阪で、そう言う事をやってたって事だな。
ヤクザの息子と同じ行為をしてるなんざ、オマエ、最悪だぞ。
・・・・・・
……あぁそういやぁ。
普段、コイツって、馬鹿バッカしてるけど、大阪に居る時ってのは、どんな奴だったんだろうな?
俺が聞かねぇのも有るけど、コイツ、そう言うのを、全然喋らねぇもんな。
まぁ今は時間が有るし、丁度良い機会だから、ちょっとその辺を聞いてみるか。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
倉津君、カツアゲとかばかりしてるのかと思いきや。
実は実家の仕事の手伝いとかをして、ちゃんとお金を稼いでいたんですね。
まぁ、この辺は以前にも書いた事なのですが。
どうしても金持ちの息子と言うのは、そう言う誤解をされ易いので、再度書いておきました。
さて、そんな中。
次回は山中君の過去話を聞いていく様ですが……どんな過去が飛び出してくるのか?
それはまた次回の講釈。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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