最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
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857 誰にも断れない崇秀の説得

公開日時: 2023年6月14日(水) 17:07
文字数:4,118

●前回のおさらい●


 眞子の呼び声に応える様にして現れた崇秀。

だが、その崇秀の体は既に多くの病魔に侵されており、眞子の病室で大量の吐血を吐いた。


何故崇秀は、そんな体なのに、眞子や奈緒さんの前に姿を現したのか?

「おっと、こいつは、どうにもイケネェなぁ。豪く大量に血を吐いちまったよ。ははっ……こりゃあ、もぉ本格的にもたねぇな」

「仲居間さん!!もぉやめましょう!!治療に戻って下さい!!」

「悪いが、そいつは出来ねぇ相談だな。俺は死ぬ前に、どうしても向井さんと、眞子には、伝えて置かなければならない事があるからな。そいつだけは、聞けねぇ相談だな」

「……死にますよ。そんなの後で幾らでも聞きますから、今は……」

「そうだな。俺は、もぉ直ぐ死ぬんだよ。但し、俺は死なない」


なにを言ってるの?

そんなの意味が解らないよぉ。


もぉなにも喋らなくて良いから、大人しく病室に戻って治療を受けてよ。



「死なないって……」

「まだ、俺が此処まで無理をして、此処に来た理由が、わかんねぇか?」

「そんなの、解らないですよ。って言うか、それより……」

「良いか、向井さん?俺が言いたい話は、たった1つだ」

「1つ?」

「……この今にも死に掛けてる体はな、さっき向井さんが毛嫌いしていたクローンなんだよ」

「今の仲居間さんがクローン?……えっ?えっ?そんな馬鹿な……」


……どういう事?



「言うなればだ。俺が生まれた時に親から貰った最初の体なんぞは、もぉとっくの昔に死滅してねぇんだよ」

「そっ、そんな……」

「ハハッ、信じられないか?」

「『信じる』とか『信じない』の問題じゃなくて……」

「まぁ、そうなるわな。そう言う疑問も沸くだろうよ。まぁ、その辺の簡単な理由を挙げればだ。俺が赤ちゃんの頃、親父が、俺の体を弄繰り回して、沢山の人体実験をしたもんだから、人としての色々な性能は飛躍的に向上したんだがな。如何せん、副作用的なもので『癌になり易い体質』なっちまってな。こうやって、ストックの体を繰り返し使って生き延びてるんだよ。……どうだ、中々面白いだろ?」


まただ……


また崇秀だけが、そんな不幸に……


なんで崇秀だけ、いつも、そんな不幸な運命を背負わされなきゃいけないの?

そこまで酷い目に合う様な程、この人が、なにをしたって言うの?



「面白くなんて……」

「なんでだよ?アンタ等が『さっきまで仲居間崇秀』だと思っていた人間は、もぉとっくの昔に死に絶えていたのに、アンタ等は、俺の事を仲居間崇秀だと思い込んでいたんだぜ。これを面白いと言わずに、なにを面白いって言うんだよ?……つぅか、結局はな。人の認識なんぞ、そんな程度のもんだって話だ。……ぶはっ!!ガハッ!!ガハッ!!」


まさか……


そんなぁ……



「どうしたよ?面白くねぇつぅんなら、俺が気持ち悪いか?俺が気持ち悪いんだろ?ほら、さっきみたいに『クローンなんて倫理から外れた物は気持ち悪い』って言ってみろよ。げほっ、げほっ」

「言える訳……それに、どうして……どうして、そんな事をワザワザ言いに……」

「ハッ!!そんなの知れた事だろ。オマエ等の、そんなチープな認識力なんざ、多少の事があっても『早々は、なにも気付かない』って、俺は言いたかっただけだよ。特に眞子はドン臭ぇ。ガキの頃に出逢ってからでさえ、俺の体は3回代わってる。それをオマエは一向に気付きさえしなかった。因みにだが、コイツで4体目だ。だから、倫理なんかクソッ喰らえだ。うえぇ~~~げはっ、げはっ」

「そんな……」


……なにも気付いてあげられなかった。

病魔に1人で苦しんでる崇秀の事を、なに1つとして気付いてあげられなかった。


私は、崇秀のなにを見ていたんだろうか?



「まぁまぁ……そんな訳だからよぉ。この体が死んでも、5体目の俺が死んだ瞬間に目を覚ます。だからな。俺は、何回死んでも、死なねぇの」

「まさか……仲居間さん!!」

「あぁ、そういうこった。そうやってオマエ等が5体目の俺を受け入れられるなら、それ同様に『倉津の事も受け入れられるんじゃねぇのか?』って話だ。アイツは、俺と違って健康優良児だ。今後、俺みたいな真似をしなくても生きていける。ゲハッ!!だから、この一回限り俺の暴挙を許して欲しい。これだけを向井さんと、眞子に伝えたかっただけだ。……ははっ、以上だ」


自分の体がボロボロに成ってでも……

最後の最後まで『他人の為に生きる』って、自分の信念だけは、絶対に曲げず……

どこまでも貫きす通すつもりだ……


なんて言う『信念』の強さだ。



「仲居間さん……」

「まぁよぉ。一応、そう言う事だからよぉ。俺共々、倉津の事も、宜しく頼むわ。……自分勝手な頼みだが、頼めるか、お2人さん?」

「そんなの、もぉ断れる訳……」

「ハハッ……だよな。どうだよ?究極に卑怯な手だろ?こうやって、人の信念は曲げるもんだ。2人共シッカリ憶えて置けな」

「なんて人なの……」

「・・・・・・」


私にはもぉ言葉がなにも出なかった。


でも……じゃあ、この崇秀はどうなるの?


『ガチャ!!』


そんな疑問を持った瞬間に、扉が開き。

サングラスを掛けた、少々ガタイの良い男達が3人ほど病室に入って来る。


如何にもな感じだ。



「お時間を取らせました、仲居間様。お迎えに上がりました」

「ははっ……漸くお迎えが来たと思ったら、今回もまた、モッタ臭い天使様のお出ましだな。……んじゃま、用事も済んだ事だし。行くとすっかな。グハッ!!グハッ!!」

「待って崇秀!!今の崇秀は、どうなっちゃうの?どこに行っちゃうの?」

「あの世だよ。1人で小粋にGo to HEAVENってな。まぁ、こうやって死ぬのも4回目だから、結構、慣れっこだからな。そんなに気にすんなな」

「嫌だ!!死なないで!!もぉどこにも行かないでよ!!」

「オイオイ、死に掛けてる人間相手に、なんちゅうこと言うんだよオマエは?あんま無茶言うなよな。つぅか、心配しなくても、俺は『現代に於ける不死の魔術師』だから、必ず蘇る。まぁそん時は、また宜しく頼むな。……じゃあな。ぐはあぁっ~~、ぐはっ!!」

「嫌だ!!一緒に居て!!今の崇秀が良いの!!今の崇秀じゃなきゃ嫌だ!!」

「じゃあなにか?俺に、テメェの前で無様な死に様を晒せって言うのか?俺の死に方は、眼を覆いたくなる様な壮絶な死に方だぞ。そんなものが、敢えて見たいのか?ブハッ!!」


そんなの見たくないよぉ。


でも、死んじゃ嫌だよ!!



「そんなの……」

「まぁ、それが答えだ。……じゃあな眞子。向井さんも、眞子と、倉津の事を頼んだぜ。コイツ等は目の離せな……んっ……」


奈緒ネェは、崇秀が振り向いた瞬間。


崇秀に『キス』をした……



「なにも言わず……後の事は全て任せて。お達者で、さようなら、私の大切な親友……」

「ははっ、コイツはやられたな。……こんな事されたら、この体に未練が残っちまうな。まいった、まいった。……けど、アバヨ親友。またな」

「崇秀……私も、私も、今の崇秀に、最後まで憶えてて欲しい。今の崇秀の最後のキスの相手にして……お願い……一生忘れないから……」

「オイオイ、最後まで我儘な女だな。余計な未練を残させて、どうすんだよ?」

「我儘で……ごめんね……でも……でも……」

「……まぁ良いか」


「んっ……んんっ……んっんっ……」


崇秀は、足取りもおぼつかないまま。

全く動けない私の元まで来てくれて、深くキスをしてくれた。


凄く……長く、深い、それでいて、崇秀の血の味のするキスをしてくれた。



「ふぅ……ホント、ヤナ姉妹だな、オマエ等って……ぐはぁあぁぁ~~~!!あぁ~~~あぁッ!!……はぁ、はぁ、ペッ!!ヤベェな。本格的にきやがったな。毎度毎度の事ながら苦しいこったな」

「崇秀!!」

「仲居間さん!!」

「さぁさぁ、もぉ楽しい時間は終わりだ。……本格的に体がもたなくなってきやがった。これ以上、ミットモナイ姿を晒すのだけは御免だ。悪いが、もぉ逝かせて貰うぜ」

「うえっ!!……うえっ!!……うえ~~~~ん!!崇秀……崇秀……」

「ぐすっ!!ぐすっ!!あぁ~~~ん!!仲居間さん……仲居間さん!!……」

「泣くなブス共。ほらほら、綺麗な顔が台無しになってるぞ」

「うわ~~~~ん!!ヤッパリ嫌だぁ!!行かないで!!」

「るせぇなぁ。眞子、オマエはなぁ。向井さんが『倉津の件を認めてくれた』から、もぉ俺の彼女なんだろ。俺の彼女がメソメソしてミットモネェ姿を他人に晒してんじゃねぇぞ。自覚しろ自覚」


あっ……



「私が……崇秀の……」

「あぁ、だからオマエは、俺の為だけに存在しろ。それと、オマエが向井眞子で、俺の彼女であるなら『二度と倉津を前に出すな』良いな?やれるな?……ってか、やれな」

「……うん。もぉ2度と真琴ちゃんを出しません……だから、死んじゃ嫌だぁ……」

「あのなぁ……俺も死にたかねぇよ。けど、しょうがねぇだろ。これが俺なんだよ」

「そっ…そんなのないよ……うわ~~~~~ん!!うわ~~~~~ん!!」


……それでも。

こんな死は、ヤッパリ理不尽だよ……


生き返るって解ってても、なんで死ななきゃいけないの?


生き返るなら、死なないでよぉ……



「ハハッ……アホが泣いてらぁ。まぁまぁ、今度逢う時は、奈緒は幸せイッパイな顔で。眞子は、本当の眞子だけの顔を見せてくれな。2人の綺麗な顔での再開を楽しみにしてるぞ」

「なんで、仲居間さんだけ……こんな目に……」

「うわ~~~~ん!!うわ~~~~ん!!」


涙がぁ……


涙がぁ……



「オイ、最後に言って置くがなぁ。変に履き違えるなよ。……じゃあな、馬鹿姉妹。アバヨ。またな」


この後。


崇秀は、それだけを言い残して。

SPらしき人の肩を借りて、ただ無邪気な笑顔を見せながら出て行った。


本当は苦しい筈なのに……


最後まで……そんな苦しそうな表情は1度も見せず……


私と、奈緒ネェだけの為に……笑って出て行った。



……崇秀……


***


―――次回予告。


……静かに流れていく、奈緒ネェとの2人の時間。


先程の壮絶な生き様を見せた崇秀の影響で……多くを語る言葉は出てこない。


でも……なにも語らなくても、お互いの、なにかを失くした気持ちだけが伝わってくる。


私は、そんな奈緒ネェを見詰ながら。

崇秀の生まれ持っての『波乱万丈な人生』を、ただ少しだけ恨んでいた。


『天才』っと言う自分を生かし続ける為の『悲劇』を……



……次回。


『A certain woman's consciousness』

「ある女の自覚」



もぉ、私は立ち止まらない……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第四十七話【In hospital(病院内)】はお仕舞なのですが、如何だったでしょうか?


『信念を通す』っと言うのは、こう言う事であり。

自身の意見を通す為なら、自身の命さえも顧みない事を言うんですよ。


まぁ、此処まで極端な人間なんて早々居はいないでしょうが。

倉津君のクローンを作る為に、奈緒さんを説得するには、こうするしかなかったのかもしれませんね。


でも私は『他人の為に、此処まで出来る生き方』は格好良いと思います。


さてさて、そんな中、崇秀が去り。

病室に残された眞子と奈緒さんなのですが……この崇秀の行為により、彼女達の中で、どんな心境の変化が起こるのか?


その辺を次回から始まる。

第一章・第四十八話【A certain woman's consciousness(ある女の自覚)】で書いて行きたいと思いますので。

良かったら、次話も、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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