最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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144 不良さん、奈緒さんに遊ばれる

公開日時: 2021年6月30日(水) 00:21
更新日時: 2022年11月25日(金) 13:29
文字数:5,221

●前回までのあらすじ●


 奈緒さんの本心を聞いて感動した倉津君は、彼女を抱き締めようとしたが……何故か、自分の顔の前に手が。

「ワンパターン……そんなんじゃあ、私はドキドキしないよ。ちょっとは他のシュチュエーションも考えてみなよ、クラ」


あぁぁあぁあぁぁぁ~~~!!

この俺の顔面を押さえる可愛らしい手は、奈緒さんの手だったのね。


それにこれは、完全に、俺のパターンを拒絶されてるじゃないか!!

しかも、そこを考慮して、色々パターンを作れって言われても……ねぇ。


こんなもん、どうすりゃ良いんだよ?



「・・・・・・」

「もぉドン臭いなぁ……私は、クラのもんなんだよ。君は、私をどうしたいの?」

「あにょ、どうしたら、奈緒さん喜びます?」

「はぁ~~~~~~もぅ良い。冷めた……興醒め。大体、君ねぇ『あにょ』ってなによ『あにょ』って、それ、何所の異星人よ?それにねぇ、普通、この場面で噛む?もぉホント情けないなぁ、このヘタレ」


にょぉぉぉぉぉおおぉぉぉおぉ~~~!!

(NOoooOoooooOOOOooOoOooOOooo~~~!!(訳:戸田奈津子)


んな事を言われても、噛んじゃったんッスから、ショウガナイじゃないッスか。


それに、前にも言いましたがね。

俺は『女性経験』はおろか『女の子とも付き合った事がない』んッスよ。

そんな俺に過度な期待されても、何も出来ないのがオチッスよ。


なんて言いながら……『情けない男ですんません』っと、不甲斐無い自分に猛省。



「ヘタレで、すんません」

「素直なんだか……じゃあ1つゲームしよっか」

「ゲームっすか?なんのゲームっすか?」

「うん?こう言うゲーム。……クラ、眼ぇ瞑ってみ」


そう言いながら奈緒さんは悪戯な微笑を浮かべた。


だがこれは、絶対に意地の悪い事を考えた時の顔だ。


これだけは俺でも確信が持てる。


それでも何かを期待する俺は、眼を瞑る。

正に、その姿は、主人に従順な『犬』


他人には……いや、血縁であっても見せられねぇ姿だな。


そんな折、奈緒さんの手が、俺の手を何かに導く。

その手の先には、何か柔らかなモノが当たる……なんだこれ?


……いや、嘘。

これ、確実に、オッパイだよなオッパイ。

奈緒さんのオッパイだよな。


触った事ねぇけど……



「ねぇ、クラ。これを……もっとドキドキさせてみ」

「あにょ、あにょ、あにょ。こっ、これ、な、な、な、な、な、なんッスか?それにドキドキさせるって、なんッスか?」

「なんだろね?……教えてあげない」

「いやいやいやいや、これ、オッパイですよねオッパイ。絶対、奈緒さんのオッパイですよね」

「さぁね。どうかな?」

「な、な、な、な、な、な、奈緒さん。ダメッス、ダメッス。女の子が、簡単にオッパイを触らせちゃダメッス」

「うん?じゃあ、どうするの?……手、離そうか?」

「あうあうあうあうあうあぅ~~」


アカン……

このままやったら、絶対、揉んでまう。

勢い任せに吸うてまう。

その内、噛んでまう。

理性なんか微塵も残らず、吹っ飛んでまう。


アカン、そんなんしたらアカン。

ワイは、まだ中学生なんやで……

……等と、混乱した頭は、訳の解らない関西弁を喋りだす。


・・・・・・


いやいやいやいや……ちょっと待てよ。

動揺するのは仕方がないにせよ、此処は一旦、冷静になれ。


翌々考えたら、奈緒さん、さっき悪戯な笑顔で笑ってたよな。


……って事はだな。

矢張り、久しぶりに悪乗り女王の復活したと考えるのが、定石。


なるほど、なるほど、冷静に考えれば、段々彼女の思考が読めて来たぞ。


こりゃあ多分、胸に間違わさせる定番の『肉マン』かなんかだな。


だったら、この柔らかさも合点もいくぞ。


正体見破ったり!!


なら、思い切り揉んだれ!!


イケェ~~~俺!!



グッと思い切り握る。



「痛っ!!」

「へっ?」


肉まんらしき柔らかいものを握って、何故か奈緒さんが反応?


なんで?

なんで、そうなるんだよ?

これって、明らかに奈緒さんが用意した肉マンだよな?


なんて思いながらも、一気に不安になった俺は、徐々にうっすらと目を開けていく。



「もぉ痛いなぁ。そんなに強く揉んじゃ痛いでしょ」


眼前には、奈緒さんの制服の上からオッパイを触る俺の手。


しかも、思い切り握ってる状態。


・・・・・・


うっ、うん??


あぁぁああぁぁあ~~~!!やっちまったよ……

これって、マジの奈緒さんのオッパイじゃねぇかよぉ~~!!


うそ~~~~ん!!

これって、奈緒さんの悪乗りじゃなかったのねぇ~~!!


ってか、冷静に考えたら『肉まん』な訳ねぇじゃんかよ!!

もし肉まんだったとしたら、奈緒さんは、いつからそれを持ってたって言うんだよ!!


俺……アホちゃうか?



「あぁあァァ……すんません、すんません、すんません。もぉ本当に、すみません」

「このヘタレ!!此処までお膳立てしてあげたんだから、ちょっとはドキドキ位させてよね、……はいはい、もぉゲーム終了。手ぇ離してよ」


プンスカ怒る奈緒さん。


……けどよぉ。

これで奈緒さんが怒るって、なんかオカシクねぇか?


だって、これってさぁ。

奈緒さんが始めたゲームだった様な気がするんだがなぁ?


気のせいか?


・・・・・・


……あっ、嘘ッス。

奈緒さんのオッパイ揉めたから『俺が悪い』で良いです。


……って言うか。

全面的に俺が悪いで良いです……はい。



でも、最後に、この感触をもぅ1度……



「……クラ、君さぁ、自殺志願者だったっけ?その手は、なんのつもり?」

「すっ、すんません」


恐ろしい程の冷たい目線が俺を貫く。


けど、最後の1揉みで、普通ここまで怒るか?

大体これって、奈緒さんが始めたゲームで……


・・・・・・


……あっ、嘘ッス。

またまた『俺が悪い』で良いです。


……って言うか。

奈緒さんの胸の感触を名残惜しんだ俺が悪いです……はい。


……っとか言いながらも、奈緒さんのオッパイの感触が残った手を、ジッと見詰る俺。



また怒られるな、こりゃあ。



「はぁ~~~、もぉ、胸触った位で、こんなんじゃ、先が思いやられるよ」

「あの……先って、なんッスか?オッパイの先ッスか?」

「クラ……ちょっと黙ってくれる?ってか、黙れ」

「へっ?……あっ、あっ、あぁそっか、そっか。そう言う事ッスか」

「うん……本当に黙れ」

「あぁはい……」


はい、親父譲りのデリカシー欠落症候群発動。


女の子に、何言わせてんだよ俺。


当然、この後10分程、沈黙が訪れる。


***


「ねぇクラ……さっきのも踏まえて聞きたいんだけど。君は、ホントに女の子と付き合った事が無いの?」


沈黙の後、奈緒さんは、突然奇妙な質問をしてきた。


俺は、またからかってるもんだと思い、彼女の表情を確認するが、意外にも真面目な顔をしているな。


なんだ?


まぁ奈緒さん自身が真面目な顔してる訳だし、此処は正直に答えるべきだよな。



「はぁ、自慢じゃないッスけど。奈緒さんが初めての彼女ッスね」

「そっか」

「うん?けど、なんで、そんな事を聞くんッスか?」

「うん?あぁいやね。前に学校で千尋が『クラは、前世で旦那だった』とか言ってたから」

「んな馬鹿な。俺にだって選ぶ権利ぐらい有りますよ。アイツみたいな可愛げの無い女は、コッチから願い下げッスよ」

「ふ~~ん。その割りには、あのライブの時、曲に千尋への気持ち乗せてたよね」

「誤解ッス!!あぁけど、確かに『乗せて無かった』って言えば嘘になるッスけどね。けど、あれは一時的な気の迷いッス。冷静になれば、あの電波女は無いッスよ」

「ふ~ん」


嫉妬……は、しないんだよな。


じゃあ、なんで、そんなややこしい事を聞くんだ?


まぁ怒ってる様子は無いけど……



「あの、ひょっとして『気に食わない』とか?」

「あぁ、別に、そんなんじゃないんだけど。なんで『千尋が対称になってたのかな?』って思って聞いただけ」

「あぁ、あの時はですね……」


俺は、ライブでも経緯を話し始めた。


***


「あぁ、そう言う事か」

「そうなんッスよ。あの時、俺も、かなりテンパってたから、つい、樫田なんぞに相談してしまったんッスよ。今、考えたら、凄いチャレンジャーッスよね、俺」

「そっか……じゃあ千尋は、私が、お喋りなのも知ってるんだ」

「あぁ、そう言えば俺。奈緒さんの話で違和感を感じて、つい、アイツに、そんな事を話しちゃいましたね」

「そっか。バレちゃッたんだ」

「それって、なんか不味かったッスか?」

「うぅん。別に問題無いよ」

「そうッスか。なら、良かったッス」


奈緒さんは満足した様に頷く。



「所でクラ」

「なんッスか?」

「クラは、咲の事、どう思ってるの?」

「また、急な話ッスね」

「あっ、ごめん。千尋、序に聞こうと思っただけなんだけど」

「いや、別に良いんッスけど。なんでまた、そんな事を、急に聞いたんッスか?」

「うん?咲が、今も君の事が好きだから」

「あぁ、そうなんッスか」


なんかな。

奈緒さんとのさっきの話が無かったら、少し興味を持ったかも知れない情けない自分が居るんだが。


それはもぉ、今となっては過去の話。

今となってはもぉ、全然興味が無い。


まぁ確かに、咲さんは良い人だけど、奈緒さんはその数倍良い人だ。

だから俺には、本当に興味が無い話だ。



「あれ?意外と反応薄いね。実は好みじゃなかったとか?」

「いや、そう言う訳じゃないんッスけど。俺、奈緒さんが居たら、他の女とか要らないッスから」

「へっ?あっ、ありがとう。……でも、男の子って、こんな事を教えられたら、気になるもんじゃないの?」

「はぁ、なんないッスよ」

「そっか」


また満足気だ。


にしても、どうしたんだ奈緒さん?

なんか変だぞ。



「あのさぁ」

「はい」


今度はなんだ?



「例えばだよ、例えば」

「はい」

「例えばね。私と、千尋と、咲と、アリスが、同時にクラにコクッたとするよね。だったら、誰と付き合った?」

「そりゃあ、奈……」

「あぁ、ちょっと待って、ちょっと待って。全然、知らないのを前提にして」

「う~~ん、そうッスねぇ。それって、突然の事なんッスか」

「うん。まぁ、そんな感じで」

「そうッスねぇ。まぁ、正直言えば、奈緒さんかな。……初対面で逢った時から、綺麗な人だなぁって思いましたからね」

「あっ、そうなんだ。そっか、そっか」


また納得した。



「奈緒さん、どうしたんッスか?」

「う~ん、なんかね……わかんない」

「へっ?」

「自分でも、なんでこんな事を聞いてるのか、良くわかんないのよ」

「はぁ」

「あのね。此処からは、クラだからブッちゃけて言うとね。今まで何人かの人と付き合ってきたんだけど。なんて言うのかなぁ。あんまり、相手に興味が持てなかったのよ」

「そりゃあ、またなんでッスか?付き合ってるって事は、多少は相手に興味が有ったんじゃないんッスか?」


奈緒さんが、他の男と付き合ってた事に、ちょっと嫉妬。


『過去は気にしない』とか言った割に、ちょっと嫉妬。



「それがね。全然興味が無かったのよ。その人達って、私の容姿しか見てなかったみたいだしね。……あのね……自意識過剰かもしれないけど。多分、私ってブスじゃないと思うのよ」

「いやいや、奈緒さん。ブスじゃないってレベルじゃないですよ」

「あっ、うん。そう言って貰えるのは嬉しいんだけど。別に、そこはどうでも良いんだぁ」

「あっ、すんません」

「でね。みんな、私をそう言う風に上辺しか見ないから、私も相手に興味が持てなかったのよ。……だから付き合ったと言っても、なんか上辺だけで、お互い付き合ってる感じだったのよね」

「はぁ」

「けどね。クラに関しては、何か違うのよ。……なんて言うのかなぁ。ほらほら、クラって、凄い馬鹿じゃない」

「がっ……まぁそうッスね」


また自分の彼女に、馬鹿って言われたぁ~。


確かに馬鹿だけど。

そんな1日に何回も馬鹿馬鹿言われたら、流石の馬鹿大王の俺でも凹みますよ。


傷付くんですよ俺だって。



「あぁごめん。馬鹿って言ったのは、純粋って意味でよ」

「あっ、まぁ確かに、馬鹿の要因の1つッスね」


なるほど。

マジで馬鹿だと思われてるいる訳ではないと……少し安心した。


まぁこう言う所が『馬鹿』って言われる所以なんだろうけどな。



「うん。なんかね。クラって不良だって悪ぶってる割に、真っ直ぐで愚直。それでいてお人好し。君は、なんて言うのかな、私の見た目とかじゃなくて、私に初めて真正面から、ぶつかって来た人なのよ」

「あぁ……って、言うか奈緒さん。それ、美化し過ぎッスよ。俺なんて、ホントただの馬鹿ッスから、思った事を、後先考えず、直ぐに行動に起しちゃうだけなんッスよ。奈緒さんの件も然り、バンドの件も然り。正直言えば、ベースにしたって『奈緒さんと付き合いたい』なんて邪な考えから始めた事なんッスよ。だから俺は、奈緒さんが思う様な良い人間じゃないんッスよ」


アホなのか俺は?

なにを言わないで言い様な本心をベラベ喋ってるんだよ。


ホント黙れな俺。

その時、口にホッチキスすんのも忘れんなよ。


つぅか、なんでいつもいつも、こう馬鹿正直に話をするんだろうな?

少しぐらい女の子の前なんだから、良い格好するとか出来無いのか?

人生経験を学習するって機能が無いのか?



はぁ~~~終わったな。


まさか此処に来て終わるとはな……この意見は、流石にドン引きされるだろうな。


最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>


今回の奈緒さんは、極普通の女子高生の態度に成っちゃってましたね(笑)

倉津君の前では気丈に振舞ってる奈緒さんでも、こう言う事があるもんなんですね。


さて、そんな中。

また倉津君が余計な事を言ってしまったようですが……この後の展開は、また次回の講釈。


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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