●前回までのあらすじ●
奈緒さんの本心を聞いて感動した倉津君は、彼女を抱き締めようとしたが……何故か、自分の顔の前に手が。
「ワンパターン……そんなんじゃあ、私はドキドキしないよ。ちょっとは他のシュチュエーションも考えてみなよ、クラ」
あぁぁあぁあぁぁぁ~~~!!
この俺の顔面を押さえる可愛らしい手は、奈緒さんの手だったのね。
それにこれは、完全に、俺のパターンを拒絶されてるじゃないか!!
しかも、そこを考慮して、色々パターンを作れって言われても……ねぇ。
こんなもん、どうすりゃ良いんだよ?
「・・・・・・」
「もぉドン臭いなぁ……私は、クラのもんなんだよ。君は、私をどうしたいの?」
「あにょ、どうしたら、奈緒さん喜びます?」
「はぁ~~~~~~もぅ良い。冷めた……興醒め。大体、君ねぇ『あにょ』ってなによ『あにょ』って、それ、何所の異星人よ?それにねぇ、普通、この場面で噛む?もぉホント情けないなぁ、このヘタレ」
にょぉぉぉぉぉおおぉぉぉおぉ~~~!!
(NOoooOoooooOOOOooOoOooOOooo~~~!!(訳:戸田奈津子)
んな事を言われても、噛んじゃったんッスから、ショウガナイじゃないッスか。
それに、前にも言いましたがね。
俺は『女性経験』はおろか『女の子とも付き合った事がない』んッスよ。
そんな俺に過度な期待されても、何も出来ないのがオチッスよ。
なんて言いながら……『情けない男ですんません』っと、不甲斐無い自分に猛省。
「ヘタレで、すんません」
「素直なんだか……じゃあ1つゲームしよっか」
「ゲームっすか?なんのゲームっすか?」
「うん?こう言うゲーム。……クラ、眼ぇ瞑ってみ」
そう言いながら奈緒さんは悪戯な微笑を浮かべた。
だがこれは、絶対に意地の悪い事を考えた時の顔だ。
これだけは俺でも確信が持てる。
それでも何かを期待する俺は、眼を瞑る。
正に、その姿は、主人に従順な『犬』
他人には……いや、血縁であっても見せられねぇ姿だな。
そんな折、奈緒さんの手が、俺の手を何かに導く。
その手の先には、何か柔らかなモノが当たる……なんだこれ?
……いや、嘘。
これ、確実に、オッパイだよなオッパイ。
奈緒さんのオッパイだよな。
触った事ねぇけど……
「ねぇ、クラ。これを……もっとドキドキさせてみ」
「あにょ、あにょ、あにょ。こっ、これ、な、な、な、な、な、なんッスか?それにドキドキさせるって、なんッスか?」
「なんだろね?……教えてあげない」
「いやいやいやいや、これ、オッパイですよねオッパイ。絶対、奈緒さんのオッパイですよね」
「さぁね。どうかな?」
「な、な、な、な、な、な、奈緒さん。ダメッス、ダメッス。女の子が、簡単にオッパイを触らせちゃダメッス」
「うん?じゃあ、どうするの?……手、離そうか?」
「あうあうあうあうあうあぅ~~」
アカン……
このままやったら、絶対、揉んでまう。
勢い任せに吸うてまう。
その内、噛んでまう。
理性なんか微塵も残らず、吹っ飛んでまう。
アカン、そんなんしたらアカン。
ワイは、まだ中学生なんやで……
……等と、混乱した頭は、訳の解らない関西弁を喋りだす。
・・・・・・
いやいやいやいや……ちょっと待てよ。
動揺するのは仕方がないにせよ、此処は一旦、冷静になれ。
翌々考えたら、奈緒さん、さっき悪戯な笑顔で笑ってたよな。
……って事はだな。
矢張り、久しぶりに悪乗り女王の復活したと考えるのが、定石。
なるほど、なるほど、冷静に考えれば、段々彼女の思考が読めて来たぞ。
こりゃあ多分、胸に間違わさせる定番の『肉マン』かなんかだな。
だったら、この柔らかさも合点もいくぞ。
正体見破ったり!!
なら、思い切り揉んだれ!!
イケェ~~~俺!!
グッと思い切り握る。
「痛っ!!」
「へっ?」
肉まんらしき柔らかいものを握って、何故か奈緒さんが反応?
なんで?
なんで、そうなるんだよ?
これって、明らかに奈緒さんが用意した肉マンだよな?
なんて思いながらも、一気に不安になった俺は、徐々にうっすらと目を開けていく。
「もぉ痛いなぁ。そんなに強く揉んじゃ痛いでしょ」
眼前には、奈緒さんの制服の上からオッパイを触る俺の手。
しかも、思い切り握ってる状態。
・・・・・・
うっ、うん??
あぁぁああぁぁあ~~~!!やっちまったよ……
これって、マジの奈緒さんのオッパイじゃねぇかよぉ~~!!
うそ~~~~ん!!
これって、奈緒さんの悪乗りじゃなかったのねぇ~~!!
ってか、冷静に考えたら『肉まん』な訳ねぇじゃんかよ!!
もし肉まんだったとしたら、奈緒さんは、いつからそれを持ってたって言うんだよ!!
俺……アホちゃうか?
「あぁあァァ……すんません、すんません、すんません。もぉ本当に、すみません」
「このヘタレ!!此処までお膳立てしてあげたんだから、ちょっとはドキドキ位させてよね、……はいはい、もぉゲーム終了。手ぇ離してよ」
プンスカ怒る奈緒さん。
……けどよぉ。
これで奈緒さんが怒るって、なんかオカシクねぇか?
だって、これってさぁ。
奈緒さんが始めたゲームだった様な気がするんだがなぁ?
気のせいか?
・・・・・・
……あっ、嘘ッス。
奈緒さんのオッパイ揉めたから『俺が悪い』で良いです。
……って言うか。
全面的に俺が悪いで良いです……はい。
でも、最後に、この感触をもぅ1度……
「……クラ、君さぁ、自殺志願者だったっけ?その手は、なんのつもり?」
「すっ、すんません」
恐ろしい程の冷たい目線が俺を貫く。
けど、最後の1揉みで、普通ここまで怒るか?
大体これって、奈緒さんが始めたゲームで……
・・・・・・
……あっ、嘘ッス。
またまた『俺が悪い』で良いです。
……って言うか。
奈緒さんの胸の感触を名残惜しんだ俺が悪いです……はい。
……っとか言いながらも、奈緒さんのオッパイの感触が残った手を、ジッと見詰る俺。
また怒られるな、こりゃあ。
「はぁ~~~、もぉ、胸触った位で、こんなんじゃ、先が思いやられるよ」
「あの……先って、なんッスか?オッパイの先ッスか?」
「クラ……ちょっと黙ってくれる?ってか、黙れ」
「へっ?……あっ、あっ、あぁそっか、そっか。そう言う事ッスか」
「うん……本当に黙れ」
「あぁはい……」
はい、親父譲りのデリカシー欠落症候群発動。
女の子に、何言わせてんだよ俺。
当然、この後10分程、沈黙が訪れる。
***
「ねぇクラ……さっきのも踏まえて聞きたいんだけど。君は、ホントに女の子と付き合った事が無いの?」
沈黙の後、奈緒さんは、突然奇妙な質問をしてきた。
俺は、またからかってるもんだと思い、彼女の表情を確認するが、意外にも真面目な顔をしているな。
なんだ?
まぁ奈緒さん自身が真面目な顔してる訳だし、此処は正直に答えるべきだよな。
「はぁ、自慢じゃないッスけど。奈緒さんが初めての彼女ッスね」
「そっか」
「うん?けど、なんで、そんな事を聞くんッスか?」
「うん?あぁいやね。前に学校で千尋が『クラは、前世で旦那だった』とか言ってたから」
「んな馬鹿な。俺にだって選ぶ権利ぐらい有りますよ。アイツみたいな可愛げの無い女は、コッチから願い下げッスよ」
「ふ~~ん。その割りには、あのライブの時、曲に千尋への気持ち乗せてたよね」
「誤解ッス!!あぁけど、確かに『乗せて無かった』って言えば嘘になるッスけどね。けど、あれは一時的な気の迷いッス。冷静になれば、あの電波女は無いッスよ」
「ふ~ん」
嫉妬……は、しないんだよな。
じゃあ、なんで、そんなややこしい事を聞くんだ?
まぁ怒ってる様子は無いけど……
「あの、ひょっとして『気に食わない』とか?」
「あぁ、別に、そんなんじゃないんだけど。なんで『千尋が対称になってたのかな?』って思って聞いただけ」
「あぁ、あの時はですね……」
俺は、ライブでも経緯を話し始めた。
***
「あぁ、そう言う事か」
「そうなんッスよ。あの時、俺も、かなりテンパってたから、つい、樫田なんぞに相談してしまったんッスよ。今、考えたら、凄いチャレンジャーッスよね、俺」
「そっか……じゃあ千尋は、私が、お喋りなのも知ってるんだ」
「あぁ、そう言えば俺。奈緒さんの話で違和感を感じて、つい、アイツに、そんな事を話しちゃいましたね」
「そっか。バレちゃッたんだ」
「それって、なんか不味かったッスか?」
「うぅん。別に問題無いよ」
「そうッスか。なら、良かったッス」
奈緒さんは満足した様に頷く。
「所でクラ」
「なんッスか?」
「クラは、咲の事、どう思ってるの?」
「また、急な話ッスね」
「あっ、ごめん。千尋、序に聞こうと思っただけなんだけど」
「いや、別に良いんッスけど。なんでまた、そんな事を、急に聞いたんッスか?」
「うん?咲が、今も君の事が好きだから」
「あぁ、そうなんッスか」
なんかな。
奈緒さんとのさっきの話が無かったら、少し興味を持ったかも知れない情けない自分が居るんだが。
それはもぉ、今となっては過去の話。
今となってはもぉ、全然興味が無い。
まぁ確かに、咲さんは良い人だけど、奈緒さんはその数倍良い人だ。
だから俺には、本当に興味が無い話だ。
「あれ?意外と反応薄いね。実は好みじゃなかったとか?」
「いや、そう言う訳じゃないんッスけど。俺、奈緒さんが居たら、他の女とか要らないッスから」
「へっ?あっ、ありがとう。……でも、男の子って、こんな事を教えられたら、気になるもんじゃないの?」
「はぁ、なんないッスよ」
「そっか」
また満足気だ。
にしても、どうしたんだ奈緒さん?
なんか変だぞ。
「あのさぁ」
「はい」
今度はなんだ?
「例えばだよ、例えば」
「はい」
「例えばね。私と、千尋と、咲と、アリスが、同時にクラにコクッたとするよね。だったら、誰と付き合った?」
「そりゃあ、奈……」
「あぁ、ちょっと待って、ちょっと待って。全然、知らないのを前提にして」
「う~~ん、そうッスねぇ。それって、突然の事なんッスか」
「うん。まぁ、そんな感じで」
「そうッスねぇ。まぁ、正直言えば、奈緒さんかな。……初対面で逢った時から、綺麗な人だなぁって思いましたからね」
「あっ、そうなんだ。そっか、そっか」
また納得した。
「奈緒さん、どうしたんッスか?」
「う~ん、なんかね……わかんない」
「へっ?」
「自分でも、なんでこんな事を聞いてるのか、良くわかんないのよ」
「はぁ」
「あのね。此処からは、クラだからブッちゃけて言うとね。今まで何人かの人と付き合ってきたんだけど。なんて言うのかなぁ。あんまり、相手に興味が持てなかったのよ」
「そりゃあ、またなんでッスか?付き合ってるって事は、多少は相手に興味が有ったんじゃないんッスか?」
奈緒さんが、他の男と付き合ってた事に、ちょっと嫉妬。
『過去は気にしない』とか言った割に、ちょっと嫉妬。
「それがね。全然興味が無かったのよ。その人達って、私の容姿しか見てなかったみたいだしね。……あのね……自意識過剰かもしれないけど。多分、私ってブスじゃないと思うのよ」
「いやいや、奈緒さん。ブスじゃないってレベルじゃないですよ」
「あっ、うん。そう言って貰えるのは嬉しいんだけど。別に、そこはどうでも良いんだぁ」
「あっ、すんません」
「でね。みんな、私をそう言う風に上辺しか見ないから、私も相手に興味が持てなかったのよ。……だから付き合ったと言っても、なんか上辺だけで、お互い付き合ってる感じだったのよね」
「はぁ」
「けどね。クラに関しては、何か違うのよ。……なんて言うのかなぁ。ほらほら、クラって、凄い馬鹿じゃない」
「がっ……まぁそうッスね」
また自分の彼女に、馬鹿って言われたぁ~。
確かに馬鹿だけど。
そんな1日に何回も馬鹿馬鹿言われたら、流石の馬鹿大王の俺でも凹みますよ。
傷付くんですよ俺だって。
「あぁごめん。馬鹿って言ったのは、純粋って意味でよ」
「あっ、まぁ確かに、馬鹿の要因の1つッスね」
なるほど。
マジで馬鹿だと思われてるいる訳ではないと……少し安心した。
まぁこう言う所が『馬鹿』って言われる所以なんだろうけどな。
「うん。なんかね。クラって不良だって悪ぶってる割に、真っ直ぐで愚直。それでいてお人好し。君は、なんて言うのかな、私の見た目とかじゃなくて、私に初めて真正面から、ぶつかって来た人なのよ」
「あぁ……って、言うか奈緒さん。それ、美化し過ぎッスよ。俺なんて、ホントただの馬鹿ッスから、思った事を、後先考えず、直ぐに行動に起しちゃうだけなんッスよ。奈緒さんの件も然り、バンドの件も然り。正直言えば、ベースにしたって『奈緒さんと付き合いたい』なんて邪な考えから始めた事なんッスよ。だから俺は、奈緒さんが思う様な良い人間じゃないんッスよ」
アホなのか俺は?
なにを言わないで言い様な本心をベラベ喋ってるんだよ。
ホント黙れな俺。
その時、口にホッチキスすんのも忘れんなよ。
つぅか、なんでいつもいつも、こう馬鹿正直に話をするんだろうな?
少しぐらい女の子の前なんだから、良い格好するとか出来無いのか?
人生経験を学習するって機能が無いのか?
はぁ~~~終わったな。
まさか此処に来て終わるとはな……この意見は、流石にドン引きされるだろうな。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>
今回の奈緒さんは、極普通の女子高生の態度に成っちゃってましたね(笑)
倉津君の前では気丈に振舞ってる奈緒さんでも、こう言う事があるもんなんですね。
さて、そんな中。
また倉津君が余計な事を言ってしまったようですが……この後の展開は、また次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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