●前回のおさらい●
超変人の崇秀は、小さい頃からロクな事をしない人間だった。
『20万の商品の値札を、巧妙な手口で細工し2万円で買ったり』
『買ったギターを、誰にも習わずに、独学で弾ける様になったり』
っと、次々と呆気に取られる様な事実を、何も悪びれる事なく白日の下に晒していく。
そんな崇秀に興味が尽きない山中君は、次の質問をぶつけようとしていた。
「そやけどオマエ……」
「いや、山中よ」
「なんや?」
「オマエさぁ、どんだけ俺に興味あんだよ。ちょっと気持ち悪いぞ」
「あっ、あの、でも、山中君の気持ち解りますよ」
奈緒さんも、山中の意見に賛同なのかして同調してきた。
「なんで?」
「だって、仲居間さんの話……ギターの入手経路にしても、ギターの弾き方にしても、かなり普通じゃないですよ」
「そう……か?」
「だって……やっぱり変ですよ」
「そっか?じゃあ、変なんだろうな」
しかし奴は、特に反論する事もなくアッサリと自分が変だと認めやがったよ。
ひょっとして、これはあれか?
崇秀のアホンダラァも、奇跡的に自分が変人だと言う事の自覚が芽生えたか?
「それで良いんですか?」
「いや、昔から『変わった子』だって良く言われてたしね」
「そうなんですか?」
「そそ。それに俺は、モノを解読するのや、自分でアイディアを考えて実行に移すのが好きだから、他人にそう思われても、おかしくはないからなぁ」
「まぁ確かに、昔からオマエは変わった奴ではあったな」
うん、間違いなくオマエは、昔から変人だ。
「いや、オマエが言うな」
「イヤイヤ、俺は、お前ほど変人じゃない」
「なんで、そんな断言出来んだよ」
「俺には、れっきとした証拠が有るからな」
「ほぉ、証拠ねぇ……じゃあ、その証拠とやらを言ってみろよ」
罠に掛かった。
まさか、こんな単純な罠に、コイツが引っ掛るとは思いもしなかった。
良し!!じゃあ、あの小学校の入学式の逸話を、今から、面白おかしく脚色して話してやる。
「まぁ証拠って程のもんじゃねぇんだけどな……」
「なんだよ?」
「コイツ……小学校の入学式の後、教室でホームルームしてる時に、俺が、ちょっと声を掛けたら、イキナリぶん殴ってきたんですよ」
「はぁ?」
「……ヒドイ」
「いや、ちょっと待ってくれ。あれは確か……」
確かに俺は『金貸してくれ』とオマエには言ったが。
それも、ちょっと声を掛けたとなんら変わらねぇと思うぞ。
だから、俺は、なにも嘘は言ってない。
話って言うのは、相手がどう捉えるかが問題だ。
今の所、成功を収めてるな。
「入学式の直後ですよ。普通、親連中が教室に居る前で、同級生を殴りますか?」
「小学校入学と同時に、なんちゅうロカビリーなやっちゃ……その話がホンマや言うんやったら、さっきのギターの話も頷けるわ。えげつない悪ガキやな」
「オイオイ、ちょっと待てよ。ちょっとは俺の話も聞けよ」
「クラ、可哀想」
「まぁ聞いてた範囲じゃ、ヒドイのレベルが、人間のするレベルやないわな」
「あぁっそ。オマエ等、そうやって人の話も聞かずに、そこまで一方的な言い分を垂れやがるんだな……そこまで言うんなら、オマエ等も、それ相応の覚悟は出来てるんだろうな?どうやらオマエ等の見解じゃ、俺は人間のするレベルじゃない、えげつない事をする人間らしいからな」
あれ?なんか怒ってるぞ。
これはひょっとして、やり過ぎたか?
いや、良く見ると怒ってるどころか、笑ってやがる。
っと言う事は……こりゃあ、100%ロクでもない事を思い付いた証拠だな。
もしそうなら、非常にヤバイ。
「まぁ落ち着けって、冗談じゃねぇか冗談」
「冗談?……いや、俺は確かに、入学式当日にオマエを殴ったぞ。それは、今でも鮮明に覚えてる」
「まぁ殴ったな。じゃあ、この話は終わりって方向で」
「あぁ良いぞ。その代わり、オマエ等全員、俺の話を一切聞かなかったから『遊戯王バリの闇の罰ゲーム』な……当然だよな」
「へっ?ちょ!!待てや秀!!俺、なんも関係ないやんけな。マコが勝手に言い出した話やろ」
「あぁ気にするな……オマエはただの『巻き添え』だ」
「あっ、あの……ひょっとして、私もですか?」
「当然」
「なんでぇ?」
「気にしな~い、気にしな~い。一括り一括り」
オイオイ、嫌な一休さんだな。
多分、そんな性質の悪い一休さんは、この世には、絶対、存在しないぞ。
まぁ、一休禅師の本性は『滅茶苦茶破天荒な僧侶』だったらしいけどな。
ってか、オマエ、んな事よりよぉ。
山中に罰ゲームをさせるのは良いとしても、奈緒さんは可哀想だからヤメロつぅの。
マジで、奈緒さんは関係ないじゃんかよ!!
「あぁ、もぅ俺が悪かったよ。だから、奈緒さんだけは勘弁してやれよ」
「そんなもん嫌に決まってるだろ」
「オマエねぇ……」
「なぁ~に、そんな酷い事はしねぇから心配すんなっての」
「いや、ちょ、待てって。心配すんな以前の問題として、オマエ、ホンマに何をさせるつもりやねん?」
「なぁ~にね。今夜のライブに、オマエ等全員の名前を登録しておくだけのこった……オマエ等3人の名前をな」
「ちょ!!オイオイ、あんま無茶言うなよ。俺、まだまともにベースを弾けねぇんだぞ」
俺にステージに上がって『運指運動をしろ』って言うのか?
そんなもん正気の沙汰じゃねぇぞ!!
ガチの罰ゲームじゃねぇか!!
「あぁそうか。それは、ちょっと問題だな……なら、夜までに向井さんに習えば良いんじゃねぇか」
「だからよぉ」
「心配すんなって、ギリギリ出来る範囲の曲にしてやるからさぁ……それまで精々足掻いて練習しろ」
「オイ!!」
「じゃあな、頑張れよ」
そう言って奴は、1枚のスコアーを置いて立ち去っていく。
勿論、俺が声を掛けても止まる筈もない。
これって……もぉやるしか選択肢がないのか?
決してアイツは、こう言う時には冗談を言わない奴だ。
だから、どんな手を使ってでも俺等3人を追い詰めて、確実にステージに上げさせてくる筈だからな。
手段を選ばないのは、さっきのギターの話が良い例だ。
だが、そんな俺の不安を他所に。
他の2人が心配になって、そちらを見てみると……意外にもスコアーを見ながら落ち着いていた。
「クラ……これなら、夜までには、何とかなるかもしれないよ」
「あぁ、流石、秀やな。時間一杯使って練習したら、弾けるか、弾けへんかの、微妙なラインのえぇ曲書きよるわ」
俺の心配を他所に、なんだか2人は大丈夫な感じだな。
けど……俺が弾けねぇ現状だけは、何も変わってなくね?
こんなんで、マジ大丈夫なんか?
なにこれ?
余計な事を言うんじゃなかったよ(´;ω;`)ブワッ
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
これにて、第十話は終了でございます(笑)
倉津君、崇秀に余計な事を言って、まだロクにベースを弾けないのにステージに上がる事に成っちゃいましたね。
どうやら彼は、余計な事を言う癖は、なにも治っていない様です(笑)
さて、そんな状況の中、次回からは。
『夜のライブに向けての猛特訓が始まります』
倉津君は、何処まで弾けるようになるんでしょうね?
そこは次回の講釈。
また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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