●前回までのあらすじ●
盛り上がって行くライブの中にあって。
次曲が、余りバンドのコンセプトに合ってないアニメ調の曲だと気付き不安げなバンドのメンバー。
そんな不安が広がる中。
その曲調に合わせた様なキャラクターで、MCを始め。
会場を凍り付かせた奈緒さんであったが……この後、彼女は一体どうするのか?
「みんなぁ、ホントにありがとぉ……あッ!!そうだそうだ。今日のメンバーを紹介するのスッカリ忘れてたね。紹介しても良いかな?」
「「「「「YeaaaAAaaAaAAaaa~~~!!」」」」」
なるほど、そこか!!
この場面を打開する策として、メンバー紹介って手口が残っていたか!!
確かに1~7曲目までは、俺が無意識のままベースを弾いてたから、奈緒さんも素直もMCを入れる暇すらなかった。
更に8・9曲目は、嶋田さんと素直の2人だけが演奏。
なので、さっき奈緒さんが宣言した通り、このライブ中、一切メンバー紹介らしきものが成されていない。
寧ろ『する暇すらなかった』と言うべきかも知れない。
此処に来て、漸く、そのチャンスが巡ってきたって言う事か。
これなら、各人を紹介する事で、各々の持つファンが再度盛り上がり。
さっきまでの曲ぐらいまでは、なんとか盛り上がりを取り戻せるって算段なのだろう。
それにもう一点、今まで意味が不明だった、奈緒さんのこの変貌についてだが、これに付随して1つだけ解った事が有る。
問題視するべき場所は、奈緒さん自身の変貌ではなく、残り5曲の曲調だったんだ。
現に残り5曲は、曲の編成上、こう言うキャラクターの方が唄い易い曲しかほぼ残っていない。
解り易く言うとだな。
1~9曲目まではパンク・ロック系統の曲がメインで、バラードが一曲のみ有っただけで、比較的、音も派手で、安易に盛り上がり易い曲が軒を並べていた。
それに比べて10~14については……
10【Troubling】アニソン系
11【Fuckin face】POP系
12【Business zombies】POP系
13【Please look at me】バラード系
14【Fool's Rocker】パンク系
……と、ラストの14【Fool's Rocker】パンク系を除けば、著しく軽い系統、若しくは、しっとりした音楽になる。
それらの曲の変化を懸念して、恐らく、奈緒さんはこう言うキャラ換えを敢行したのだろう。
勿論、素の奈緒さんのまま唄っても問題はないんだが。
普通に唄ったのでは、どうにも普段の奈緒さんのキャラクター性とギャップが有りすぎて、オーディエンスも反応しづらい。
故に、何もアクションを起さずに、イキナリ曲に入った場合。
オーディエンス同様、コチラとしてもギャップの修正がやり難い状態になる。
つまり奈緒さんは、先持って『危険分子の排除』と『時間稼ぎ』をするつもりだったんだな。
しかしまぁ、この人は、よくモノを考える人だな。
俺みたいに『大丈夫か?』『本当に上手くいくのか?』なんて甘い事は一切考えていない。
『上手くいくのか?』ではなく『極力上手くいく方法』を模索していたんだろう。
そして、彼女は思考した上で、これが最良の手だと判断し実行した。
本当に恐ろしい人だ。
「じゃあ、早速メンバー紹介に行くよぉ~~!!まずはドラムのウンコ垂れのカズ!!」
ほほぅ。
ここでも一計を案じてきたな。
最も解り易い方法として、笑いを取って、ライブハウスの温度を上げるつもりだな。
「「「「「……ウンコ垂れ?ぶっ!!あはははっははっはっはっははは……」」」」」
「ちょ待てや!!なんで俺、イキナリ観客に笑われとんねん?それに、誰がうんこ垂れやねん!!せめて『うんこ垂れ掛けのカズ』って言わんかい!!今日のライブ中は一回も垂れてへんわ!!」
これを察した山中は、直ぐに、突っ込みを入れた。
さすが関西人、読みが良い!!
「あぁ、ごめん……ビッチマシーン・カズの方が良かった?」
っで、そんな山中に、更に追い討ち。
「アホか!!どっちも嫌やちゅう~ねん!!」
「紹介してあげたんだから、そんな我儘は言わないの……このうんこ垂れ」
んでオチ。
完璧だ。
「「「「「あはははっはははっはっはは……うんこ垂れ!!うんこ垂れ!!……」」」」」
「……くっそぉ~~~。腹立つわぁ~。奈緒ちゃん、後で絶対に憶えとけよ」
……そう呟きながらもドラムを叩く。
-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪--♪-♪♪--……
あぁヤッパ上手いな。
なんだかんだ文句を言いながらでも。
ドラムの演奏をムラ無くこなすのが、コイツなんだよな。
この辺は感心するし、たいしたもんだ。
まぁ本人は、こうやって文句を言ってる様だが。
絶対に本心じゃ、この状況を『美味しい』なんて思ってるんだろうけどな。
これだけは間違いない筈だ。
「はい、よく出来ましたぁ。ドラムを上手に叩けたカズ君には、奈緒おねぇさんが後で、キャベツ太郎を2袋も買ってあげるね」
「2袋もいらんわ!!それ以前にいらんわ!!」
「じゃあ、次行ってみようか!!」
「……此処に来て、またやりよった。また恒例の無視か」
「「「「「あはははっはははははははっはっはっははは……」」」」」
ハイ、山中の紹介は、これにて終了。
多分、これ以降、奈緒さんは、山中の事に関しては絶対触れない筈だ。
この人は、そう言う『無視オチ』が、結構好きだからな。
「次はねぇ……横浜が生んだ死神様。数々のバンドを渡り歩き。その音でメンバーを破壊してきた男。バンドキラー・コウ!!」
ほらな。
……って、うわっ!!
なにを言い出すかと思ったら、イキナリ、嶋田さんの一番触れちゃいけない部分を平然と触れちゃったよ。
嶋田さん、変に傷付いてなきゃ良いけど……
♪~~~~~!!-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪……
……あぁ、ヤッパ、その辺については考えるだけ無駄だったな。
嶋田さんが、そんな程度の事でイチイチ落ち込む筈ないか。
……にしても、あの最初の『キュイ~~~ン』って奴、マジで格好良いな。
次のライブこそ、俺もやってみよっかな?
あれが、ベースで出来るかは知らんが……
「・・・・・・」
「あれ?コウは、なにも言わないの?ファンの皆さんの為に、なんか一言ぐらい言って欲しいんだけどなぁ。ダメかな?」
「あぁ、そう?じゃあ、一言だけ」
「はい、どうぞ」
奈緒さんはマイクスタンドからマイクを外して、チョコチョコっと嶋田さんの所まで駆け寄る。
近付くと直ぐに、嶋田さんにマイクを向けて、コメントを貰おうとする。
だが此処で、嶋田さんも、奈緒さんに対してトンデモナイ事を言い出す。
「あぁ、じゃあ、奈緒ちゃんに1つ質問」
「私に質問?コメントじゃなくて?」
「そう。コメントじゃなくて、奈緒ちゃんに質問」
「はぁ……良いですけど、なんですか?」
「……あのさぁ、今日、奈緒ちゃんのパンツって縞パンだったよね。あれって、今のキャラクターに合わせて、狙って履いて来たのかい?」
奈緒さん、今日のライブに合わせて、縞パンなんか履いてるんだな。
なら、俺の好みとしては、定番の『ブルーと白のストライプ』が希望なんだが……
・・・・・・
……ってオイ!!ちょっと待てぇ~~い!!
なんで嶋田さんが、そんな奈緒さんのパンツ事情を知ってるんッスか!!
まさか楽屋に居る時、こっそり、奈緒さんのパンツを覗いたんじゃないでしょうね?
「へっ?……履いてない、履いてないよ。そんなの履いてないよ」
「あれ?あぁじゃあ、それを否定するって事は、今日の奈緒ちゃんはノーパンなんだ?じゃあ、ノーパンの奈緒ちゃんだね」
「いや、そう言う意味じゃなくて、パンツは、ちゃんと履いてますよ!!」
「あぁ、そうなんだ……じゃあ、やっぱり縞パンの奈緒ちゃんなんだ」
「だから、そうじゃなくて!!」
「あっそ。じゃあ、こんな所で口論してても始まらないから……確かめてみよっかっ」
「えっ?どうやって?」
うわっ!!
イキナリ、なにをするかと思えば。
嶋田さんは満面の笑みで、イキナリ奈緒さんのスカートを捲り上げた。
勢いよく捲り上げられたスカートからは、観客には、見事なまで奈緒さんの下着が丸見えだった筈だ。
俗に言う、小学校低学年の男が、好きな女の子になんかによくやる『スカートめくり』だ。
……にしても嶋田さん、普通、こんなライブの途中で、そんな事しますか?
あぁ因みにだが……勿論、俺の高センサーエロレーダーは、奈緒さんのパンツをチャッカリ捉えている。
俺の立ち位置では、微かにしか見えなかったんだが。
俺の見えた範囲で言えば、奈緒さんのパンツは、多分、白だった様に思える。
白かぁ……ブルーストライプの縞パンじゃなかったのは、非常に心残りだが、まぁ白も、よく似合ってますよ、奈緒さん。
・・・・・・
……ってオイ!!
もう一回、ちょっと待てぇ~~い!!
冷静に考えたら、嶋田さん、人の彼女になんちゅう事するんッスか!!
……って、怒りたい所なんだけどだな。
実際、今回に限っては、どう考えても、奈緒さんがイラン事バッカリ言ったのが原因なので、嶋田さんの件は許しておきましょう。
それに……
以前、嶋田さんの彼女である椿さんのパンツを【事故とは言え】散々拝まして頂いたんで、これで一応チャラって事にして置きます。
でも、次やったら、幾ら嶋田さんとは言え許しませんよ。
「きゃあ」
「あぁごめん、縞じゃなくて、ただの白だったね……じゃあ、白パンの奈緒ちゃんって事で決定だね」
「もぉ~~~馬鹿ぁ~~~!!コウなんか死んじゃえぇえぇぇぇ~~~!!」
「グハッ!!」
『ピュ……テテンテテテテテンテンテン』
嶋田さんには、ジャンピング脳天奈緒チョップが炸裂!!
相当な威力があったのか、嶋田さんはストリートファイターⅡで言う『ピヨり状態』
足元が、完全にフラフラしている。
だが、嶋田さんは、転んでもタダで起き上がる様な柔な男ではなかった。
足元及び、脳がフラフラになりながらも、ライブを盛り上げる為に『スーパーマリオの死んだ時の音』を、即座にギターで再現している。
凄いな、この人。
よくあんな状態で、正確にギターが弾けるもんだ。
おもしれ!!
いや……ちょっと待てよ。
流石に、此処まで来たら、話が、ちょっと上手く出来過ぎてないか?
山中の件もそうだが、普通に考えても、奈緒さんが、あんなキャラクターするか?
嶋田さんも、奈緒さんも、山中も、まるで『用意されたシナリオを淡々とこなしている』様に見えるんだが。
う~ん?なんだ、この違和感は……気のせいか?
あっ!!
ちょっと待て、これってひょっとして……嶋田さんの家に訪ねた時に、嶋田さんが言っていた『秘策』って、この事なんじゃないのか?
確証は殆ど無いんだが、嶋田さんについては、1つだけ思い当たる節が有る。
なにかって言うとだな……
この人、前回のライブで初めて逢った時、確か自分で『シド・ビシャスの熱狂的なファン』だとか言ってたんだよな。
んで、シドと言えば、路上で奈緒さんに説明して貰った通り、自分の担当するベースですらロクに弾けないが、パフォーマンスについては天才的な奴だった筈だ。
それを今の現状に当て嵌めるとだな。
『シドのパンク・パフォーマンス』と『スカート捲り』っと、完全にカテゴリーは違えど、観客が盛り上げるパフォーマンスには違いない。
そうすれば自ずと、嶋田さんと奈緒さんが『ワザと』これをやっている様にしか思えなくなってくる。
考え過ぎか?
イヤ……どうやら、この考えは間違ってなかった様だ。
今しがた、俺と嶋田さんの眼が合った瞬間。
嶋田さんが、観客には解らない様に、右手でコソッと俺に謝罪を示す形をとったぞ。
多分、この謝罪は、俺がマジにとっちゃいけないとの合図のつもりだな。
いや、あのねぇ、嶋田さん。
俺が、幾ら馬鹿中学生だからって、そんな事ぐらいでイキナリ怒ったりしませんよ。
俺だってね、ヤクザの世界とは言え、少しは大人の世界を知ってるんですから、そんな風に舐めて貰っちゃ困るな。
彼女のスカートを捲った位じゃ怒りませんよ。
まぁけど……嶋田さんの行為は、大概ロクなもんじゃねぇけどな。
あぁ序に、もぅ一回確認の為、追加事項を言っておきますよ。
もし今度、奈緒さんにスカート捲りをやったら、椿さんをステージに上げて、俺が彼女に『スカート捲り』しますからね。
椿さんの黒パン(俺の中の決定事項)を大衆に晒したくなかったら、もぅやっちゃダメですよ!!
心に念じて、よく憶えておく様に!!
……っとまぁ、奈緒さんの彼氏である俺は、こんな感じなんだが。
この後……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
奈緒さん、イラン事バッカリした為に、ステージ上でスカート捲りの刑に遭いましたね(笑)
まぁこの辺は、倉津君の言う様に『演出』だったみたいなので、特に問題はないのですが……
矢張り、此処でも、なにか問題が発生しそうな雰囲気ですね(笑)
さてさて、なにが起こる事やら。
それはまた、次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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