最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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396 禁断の超生物兵器(笑)

公開日時: 2022年3月9日(水) 00:21
更新日時: 2022年12月28日(水) 15:36
文字数:4,155

●前回のおさらい●


 故意的であれ、故意的でなかったであれ、大切な紅茶の道具を壊された真上さんだったが。

怒るどころか、犯人捜しをする倉津君と由佳ちゃんを制止し、全てを不問に帰してしまう。


そして、そんな真上さんの慈愛に満ちた行動に、とうとう陶器を割った犯人は良心の呵責に耐えられなくなって自白してしまう。


それを見た真上さんは……

「そうですか。きっと、お辛かったでしょうね。気付いてあげられなくて、ごめんなさい」


ぶっ!!マジか、この人?


犯人の女子に近づいて、何を言うのかと思ったら。

相手は真上さんの大切な紅茶の道具を壊した張本人なのに、責める言葉も吐くどころか、自身が謝罪までするなんて……


なんで、そんな思考に……


いや、違う!!違うな!!

真上さんは、自分が全てを許す事で、彼女への反感を出ない様にしてるんだ!!

こうすれば、真上さんが許した以上、回りがトヤカク言うのは筋違い。


この一言で、誰も、なにも言えなくなるって事か……


なんて人だ。

人間って、此処まで悟れるものなのか?



「あっ、あの、でも、わざとじゃないんです。陶器の下に敷いてあった布に、スカートのホックに引っ掛っちゃって、カップも、ポットも、全部床に落ちて、それで割れちゃって……それで、それで怖くなっちゃって……私……」

「あっ、はい、わかりました。でしたらもう結構ですよ」

「しっ……信じてくれるんですか?」

「はい、勿論、信じますよ。こんなに正直に話してくれたのに、なにを疑う必要があるんですか?私は、アナタの言葉を信じますよ」

「ごっ、ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

「はい、もう終わった事です」


女生徒は、感動のあまり泣き崩れて行く。


それにしても真上さんは、本当に疑わないんだな……こんなの、誰が聞いても、口から出任せの嘘なのによ。


けど、彼女は一切疑わない。

それ処か、疑う素振りさえ見せない。


なんか凄過ぎて、もう訳がわかんねぇよ。


***


 結局、この後、真上さんは、本当に何も無かった様に笑顔で女子の寸法直しをして行く。

勿論、その寸法直しをした相手の中には、さっき自白した女子の姿もあった。


この様子からして、どうやら、本当に怒ってないらしい。


そんな感じでだな。

一旦、全員の簡単な寸法直しが終了すると真上さんは、それ等の衣装を着たままの彼女達を写真に収めて満足そうにしていた。



そこに由佳が……



「ねぇ、王家さんはメイド服を着ないの?」

「えっ?私ですか?……はい、着ませんよ」

「なんでなんで?予備が有るんだから、一緒に着てみようよ」

「えぇっと、私は作るのが専門なので、そう言う姿を人に見て頂くのは、ちょっと……」


うん。

確かに、これは、真上さんの言い分が正しい。


それ=とてつもなく危険な地雷になりかねないからな。


だからもぉ、これ以上は辞めとけ。


大体にしてオマエなぁ、その言葉に出す前に、少しは想像して見ろって話だぞ由佳。

仮にだぞ、もし仮に、何かの間違いで、真上さんが、そのメイド衣装に袖を通したとしよう。


さて……その時点でどうなるよ?

此処を重点的に、ちょっと想像して見ろよ。


俺の予想じゃあ、多分な。

この人のこったから、芸能人も真っ青になって逃げ出すぐらいの着こなしで、メイド服がバッチリ似合う筈だぞ。


それでオマエ。『にっ、似合いますか?変じゃないですか?』なんて、やや短いスカートでクルリと廻りながら、パンツがギリギリ見えそうな状態で、真上さんが、そんな事を言ってみろよ。


また、さっきの事件にも似た事が、どこかでぶり返しちまうぞ。


再び、真上さんに魅了された男共は、仕事が一切合切手が付かなくなり。

女達は、そんな真上さんを見たら、さっき以上に酷い嫉妬に狂っちまう。


『百害あって、一利な……』


いやまぁ、確かに、俺個人としては非常にメリットの多い願いではあるんだが……

(↑本心では見たい俺。だから出来れば、そこは個人的に……←親父譲りの立派なクズ)


とっ、兎に角だ。

この人は、存在自体が『生物兵器』みたいなもので構成されてる人だから……危険な事は辞めとけ。


忠告したぞ。


心の中だけど……

(↑危険でも見たい俺)



「うん?作るのと、着ないのって関係なくない?」

「そっ、それは、そうなんですけど。……私、そう言うの似合わないですから」

「えぇっと、王家さん?それ、どういう意味?自慢?」

「なっ、なんでですか?服が似合わないのは、なにも自慢にはならないですよ」

「あぁ……ヤッパリ、本気で言ってんだぁ」

「あっ、はい、勿論、本気で言ってますよ。私、嘘は嫌いなので、嘘なんか付きませんよ」


必死に抵抗する真上さんなんだが……こりゃあ予測不可能な、とんでもない天然が炸裂したな。


まぁ、この人は、ホントに嘘が付けない人だから、虚偽無しで、本音で話してるとは思ってはいたんだが。

これ程までに、天然な人だとは予想も出来なかった。


つぅか、真上さん家って、服飾関係のショップのクセに、鏡が無いんだな……きっと。


だったら、しょうがないよな。

仕方が無いから、今度大きな鏡をプレゼントしよ。



……って、んな訳あるかぁ!!

大体にして、服飾のショップだったら、フィッティング・ルームに鏡が有るでしょうに!!


どんな古いボヤケタ鏡を見て生きてるんですか、アナタは?



「でもさぁ『似合わない』って事が自分で解ってるって事はさぁ。一度は、こう言う衣装に、袖を通した事が有るって事だよね」

「はぁ……まぁ、一度だけ。自分でも、何故そんな事をしたのかは良く解らないんですが。トチ狂ってたっとでも言いましょうか。気の迷いと言いましょうか。一度だけ、厚かましくも、袖を通した事が有りますね」


……着たんだ。


だったら、なんでその時、呼んでくれないんッスかね?

ひと声掛けてくれたら、地の果てからでも、絶対に見に行ったのに……


そんな貴重な機会を逃すなんて、マジで残念だ。



「っで、その時の、自分を見た感想はどうだったの?」

「えぇっと、最悪でしたよ。……辞めておけばよかったと言う、後悔の念だけが残りました」


ヤッパ、鏡がボヤケテると言う説は、本当らしい。

真上さんがメイド服を着たんなら、どうやっても『最悪』なんて言葉が出る筈が無いんだから、間違い無く、王家家の鏡はボヤけてる。


なら、今度こそマジで、特大の姿見を、真上さんにプレゼントしなきゃイケナイよな。


なんでもそうなんですけどね。

自分を知る事は、大事な事ですよ真上さん。



……って、んな訳あるかぁ!!

どう考えても、ただ単に『椿さんと同類』なだけじゃねぇかよ!!

そんな綺麗な顔を持ってるんだから、自分をもっと正確に認識しなさいつぅの!!


アナタは、一体、なに見てるんッスか?



「だったらさぁ。もう一回だけ着てみてよ。ねっ、ねっ、お願い王家さん」


由佳の奴、やけに喰い付くな。


まぁ、ある意味、違った意味での『怖い者見たさ』って処での、共感は出来るんだがな。

程々にしとけよ。


ホントに、自分が後悔する事になるぞ。



「ですが……」

「ねぇ、ホント、一回だけだからさぁ。お願い。友達じゃない」

「友達……」


あぁ~あっ、その言葉を言っちゃったか。

それを言われちまったら、真上さんにとっちゃあ八方塞に成っちまうんだぞ。


この人、その『友達』って言葉に一番弱いからな。


……けど、本気で嫌がってる様だし、そろそろ助け舟を入れないとな。



「由佳ちん。王家さん嫌がってるんだから、もぅ辞めてあげなよ」


おっと。

俺が助け舟を出す前に、伊藤の助け舟が出航したか。


じゃあ、黙ってよ。


だってよ。

こう言う女の子同士の会話に首を突っ込んだら、ロクな事にならないのが、いつもの定番パターン。

なので此処は、こう言う順当な行動をするのが、賢者クル-グマンの選択ってもんだ。


って事で、傍観を決め込む俺。



「えぇ~~、だって見たいじゃない」

「気持ちは解るけど。本人が嫌がってる以上、みんなの前で公表するのって、ある意味、虐めだよ」

「あぁっと、それは、確かにそうだね」

「だからね。まずは男子全員をクラスから締め出して。それから、王家さんに頼めば良いじゃない?それなら、王家さんも話に乗ってくれるかもよ」

「あったっま良い!!流石、舞歌だよね。うんうん、その話乗った」

「「「「「ふっ、ふっ、ふざけんなぁ~~~!!」」」」」


禿同。


けど俺は、この場面では、感情的なパートは制御するぞ。


だって俺、真上さんの友達だも~~ん。

きっと俺にだけは、その神々しいお姿を見せてくれる筈だ。



「うるさい、黙れ、さっさと出て行け男子共!!」

「横暴だぞ大谷!!」

「じゃあなに?女子が此処で着替えをするって言うのに、アンタ、此処に居て、それを見てる気なの?……この変態。信じられない」

「グッ!!くそぉぉ~~~、王家ちゃんのメイド姿が見れないなんて、女に生まれてくりゃ良かったぁ~」

「ハイハイ、来世では頑張ってね」

「ちくしょ~~~~!!」


俺は、由佳に追い出されていく虚しい男共を見送った。



さぁ諸君、これで邪魔者は居なくなったぞ。

みんなで、真上さんのメイド姿を、ありがたく拝もうじゃないか。



「うん?そこでなにやってるのかな倉津君?倉津君も、当然、外にGet-Out!!」

「いやいやいやいや、俺、真上さんの『友達』だから、見る権利有るし」

「無いから……有るのは『女友達』だけだから。惜しかったね。『友達』なんだろうけど、残念ながら『女』が抜けてるね。ハイ、ダメェ~」

「俺『友達』……」

「うん、ダメ。だよね、舞歌」

「伊藤おぉぉ~~~、俺、此処に居て良いよな、由佳の言ってる事は理不尽だよな」

「うん、ごめん。ダメだから」

「なんでぇ?」

「ハイハイ、邪魔者は出て行った。出て行った」

「ちくしょおぉぉ~~~!!ふざけんなよ由佳!!横暴だぞ!!」

「バイバイ」


背中を押されて、俺は、廊下に押し出される。


暴君かオマエは!!


大体、オマエ等に真上さんを紹介したのは、俺だぞ!!

こんなのダメ過ぎるって!!


俺にも真上さんのメイド姿を見・せ・ろおぉぉぉぉぉおおぉおぉぉぉ~~~~!!


『ガラッ』

っと思ってたら、俺の意思が神に通じたのか、天国への扉が開いた。


矢張り、あんな事を言っていたが、由佳は良い奴だった。

このままじゃ、俺が、あまりにも可哀想だと思って、みんなには内緒でコソッと中に入れてくれるに違いない。


神ですな。



「ダメだからね」


『ピシャ』

その一言だけを残して、無情にも扉が締まる。


アイツ……死ねば良いのに。



この結果、男共は、全員廊下に放り出される。


仕方が無いので、全員で、教室内の会話だけを拾う為に、壁にへばり付く羽目になった。


みっともないかも知れないが、これも青春だ。



しかしまぁ、なんともダメ過ぎる光景だな、これは(笑)


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


このアホ男子共は廊下の壁にへばりついて、一体、何をしてるんですよね?


アホ過ぎますね(笑)


まぁでも、こう言う馬鹿なノリこそが、学生の醍醐味。

ロクデモナイ事ではありますが、きっと将来、良い思い出に成るとは思いますです(笑)


さてさて、そんなダメ過ぎる状況の中。

倉津君は、真上さんのメイド姿を拝む為に、なにやら秘策がある様です。


それは一体、なんなのか?


それは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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