●前回のあらすじ●
崇秀が路上ライブをする羽目になって、それを見ていた倉津君。
何曲か演奏した後、最後の曲を奏でようとした時、謎の少女が出現。
その少女と崇秀は,無料の路上ライブなのにも拘らず、全力でライブを行う。
その反応は……
「・・・・・・」
……って、オイオイ!!
高々路上ライブで、此処まで凝った演出をする必要が有るのか?
今、オマエ等のやってる事は、ボランティアにも似た行動なんだぞ!!
それを、こんなに力一杯やりやがって……
なんなんだよ、コイツ等は……
ヤベェ!!凄過ぎるぞ!!
気付けば、俺の周りにまで人だかりが大きく膨らんでおり、道路を挟んだ向こう側の道からも聞いてる奴まで居る始末。
それら全員が各々の感性で、この曲を聞き入っていた。
少し時間を置いて、ギャラリーから一気に拍手の渦が巻き起こる。
中々感動のフィナーレだ。
「痛って、痛ってぇぇ。調子に乗りすぎて馬鹿やったら、地面で頭打った」
そんな感動の中。
後頭部を抑えながら崇秀はムクッと起き上がり、なんとも間抜けな一言を発する。
さっきまでの、少し静かで幽玄な雰囲気はぶち壊し。
ただ只管に、崇秀の『頭打った』って言葉だけ頭に残る。
正に、究極の台無しだ。
当然、ギャラリーは呆気にとられて、今、何が起こっているのかさえ理解出来ないで居る。
ただ、崇秀の次の行動を見守っているだけだ。
「んじゃまっ、アバヨ」
コイツ……信じられねぇ。
この後に及んで、なにをしでかすのかと思えば、イキナリ、この場から逃亡しやがった!!
つぅか、今のボケは、その逃げる為の口実だったのか?
もしそうなら、ある意味ナイスな逃げ方では有るが、それでは聞いてくれた皆さんに対して、あんまりじゃねぇか?
だが奴は、そんな事は、お構いなし。
少女の手を引いて、素早く逃げて行き。
あっと言う間に人を掻き分けて、奴の姿はライブ・ハウスに消えていった。
なっ、なんちゅう速さだ。
まぁ、そうやって張本人が消えた訳だから。
ギャラリーも諦めて、パラパラと帰り始めているみたいではあるんだが。
中には、相当奴等の事が気になったのか、奴が逃げ込んだライブハウスの中まで、奴等の正体を聞きに行った奴まで居るみたいだ。
俺は、そんな奴等を余所目に、セブンスターを咥えて一服する事にした。
「なんかもぉマジで疲れたな……つぅか、俺、此処に、なにしに来たんだよ?」
セッタを吹かしながら、つい、愚痴が口から零れ出してしまう。
まぁ、なんと言うか。
俺としては、アイツを追い掛けて来ただけなのに関わらず、こんな訳の解らない事態に陥ってる始末。
そりゃあ、愚痴の1つも言いたくも成るってもんだ。
「オマエ、なに言うとんねん?あんな凄いもんを、最初から見腐ってたくせに」
「山中?」
「クラ……酷くない?」
「奈緒さん」
「秀がギターをプレイしとんねやったら、直ぐにでも呼んでくれや……普通、此処は呼ぶところやろ」
「ホントだよね。……クラが、こんな薄情な奴だとは思わなかったよ。こんな奴、此処に置いて行こ、山中君」
「ホンマや。人として信じられへんレベルやわ……行きましょ、向井さん。此処に居ったら、薄情もんの薄情が感染るわ」
ヒデェ。
アイツが勝手にやり始めただけのライブなのに。
なんで俺が、こんな謂れのない誹謗中傷を受けなきゃいけないんだよ?
オマエ等の言ってる事は、明らかにおかしいだろ。
また無駄に濡れ衣を着せられる俺。
流石に今回ばかりは、俺に非は無いと思うんだがな。
それにそんなに、濡れ衣ばっかり着せられたんじゃ、風邪引いちまうわ。
でも、自分の大事な彼女(仮)だから、奈緒さんには謝る。
「ちょ……奈緒さん」
「気安く呼ばないでくれないかなぁ。……薄情もん」
「だからぁ~~~っ、違うんッスよ」
「クスッ……冗談よ、クラ。解ってるよ。そんな事位」
「奈緒さ~ん」
クルッと振り返った奈緒さんは、いつもの様にクスクス笑う。
なっ、なんだ冗談だったのか、良かった、良かった。
だよな、だよな。
こんな小さな事ぐらいで、奈緒さんが目くじら立てて怒るなんて、なんか変だと思ったんだよなぁ。
そんな風に思うなんて、俺自身が、どうかしてるよな。
奈緒さんは、ちょっぴり悪戯好きだけど、基本的にはスゲェ優しい人だからな。
イヤイヤ、本気でビックリした。
「嘘……マジでクタバレ」
「えぇぇええぇえぇぇぇええぇえぇ~~~ッ!!」
笑顔から一転して、目が尋常じゃなく怒ってる。
それもハンパない、その殺意に満ちた眼光は、俺を睨み殺す勢いで向けられている。
なんッスか、その眼?
奈緒さん、それ、完全に殺人者の眼ですよ。
この後、山中と、奈緒さんは、完全に俺を無視した形で、ライブ・ハウスに戻って行った。
そして俺は、そんな2人の後を追うしか選択肢が残されてはいなかった。
つぅか、マジでなにこれ?(。´・ω・)?
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
( ´,_ゝ`)プッ
倉津君、完全に謂れのない誹謗中傷を浴びせられましたね。
実は、こう言うのが、彼の生まれ持った宿命なのかもしれません(笑)
(完全に作者の悪意(笑))
さて、そんな中、次回は。
この無意味に怒られてる状況を、彼は一体どうやって抜け出すのでしょうね?
それは次回の講釈。
またお会いしましょう(*'ω'*)ノ
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