●前回のおさらい●
コンクール開始前の時間に、突然、ステラさんからの電話が掛かって来た。
何事かと思ったら、アメリカから帰国したとの事なので、倉津君の地元の駅まで迎えに来いと言う。
しかも、大量の荷物を持って来ていると言う彼女の言葉に、嫌な予感を感じざるを得なかった(笑)
……っとまぁ、そんな訳でだな。
チャリンコに乗り、急いで駅まで着いてキョロキョロ、あの馬鹿を探して見るとだな……
あの野郎。
待ってる間に、既に、寄って来た数人のナンパ男の心を潰したのか。
心を失って、ただの歩く屍になったナンパ師共が、奴の周りを無機質に歩いていた。
その姿は、まさに『ゾンビを作る魔女』の如き存在だ。
まぁ、そうは言ってもだ。
これに関しては、気軽な気持ちでステラに言い寄って行き。
這い寄る混沌と呼ばれるステラの囁きによって生じた事だから、100歩譲れば、納得出来る光景なんだがな。
これ以外で、どうしても気に喰わない事が1つだけあった。
それが、なにかつぅとだな。
アイツ、自分の口で『荷物が多い』なんて言った割りに。
荷物なんか、なに1つ持たずに、ボケ~~~っと、つっ立ってやがんのな。
しかもだ!!俺が、絶対に迎えに来る事を前提にしてやがるのか、駅から、全く動いた形跡が無い。
流石に心優しい俺でも、この態度には、ちょっと腹が立ったので、苦情をホンの少しだけ言ったら……俺の怒りに反する様な態度で、今まで俺には見せた事も無い様な可愛らしいの笑みを浮かべてよぉ。
『良かったですね、真琴。なにも荷物が無くて』
……等と、思いっ切り嘘をついてたくせに、謝罪するどころか、満面の笑顔で、そんな事をサラッとぬかしやがるんだよ。
その上、なんの遠慮もなしに、勝手に、俺の愛車であるチャリの後ろに横乗り。
お礼も無しに、さも当たり前の様に座りやがるんだよな。
それで浮かべている表情ってのが……『明らかに、早く学校まで行け』っと言わんばかりの顔を、俺に向けてきやがる。
此処で再び、ステラのムカツク態度に腹が立ったのだがな。
この『ふてぶてしい態度』こそが、ステラ最大の特徴だと言う事を思い出し、あっと言う間に怒る気力も失せ、心が一気にクールダウン。
故に俺は、ステラに反論の意思さえ見せずに、無言のままチャリを、学校に向けて走らせ始めた。
『シャ~~~~』
(↑チャリの音)
……しかしまぁ、あれだな。
こうやって、ステラをチャリの後ろに乗せて、軽快に人ごみの中を走ってると、ある事を痛感させられるんだよな。
つくずくコイツって『どこに居ても、自然と目立つ女なんだな』ってな。
現に、俺のチャリの後ろに乗ってるだけにも拘らず、殆どの道行く野郎共は、楽しげに立ち並ぶ露店商から眼を離してまで、物欲しそうな眼でステラを舐める様にジロジロ見てやがる。
オマケに言えば、彼女付きの奴なんぞは、もっと不幸だ。
自分の彼女から目を逸らしてまでステラを見ていたもんだから、漫画の様に『肘鉄』を脇腹に喰らってる奴までいる始末だ。
……アホだ。
けどまぁ、言うなりゃ。
この『男が、綺麗な女に100%釣られる』って言う現象はだな。
抑制力だけでは抑えつけられない、どうしようもない男の本能みたいなもんだから、現実問題としては、仕方のねぇとしか言い様がねぇんだけどな。
けど、考え様に寄っちゃあ、ステラ自身が、男に振り返られる様な容姿をしてやがる上に、コイツの性格云々は、口さえ開かなければ、見た分だけではわからねぇ。
そんで、その見た目だけを追求すりゃ……
『日本人好みのホリが、そんなに深くない顔立ちの外人』だし『手入れの行き届いた、長く整った綺麗な金髪』だし『体のラインも、綺麗な湾曲を描いてる』訳だからよ。
こんな風に綺麗に3拍子が揃ってる訳だから、これを男に『見るな』ってのは『韓流に嵌ってる奴に韓流を見るな』ってのと同じぐらいの酷さってもんだ。
だから、ある意味、この振り向くと言う行為は、男性として正常に機能している証拠とも言えなくも無い。
なので女性側も、馬鹿な男の本能的な行動だと理解してあげて欲しいものだ。
……そして、そんな無意味な事を、如何にも、また仰々しく説明した訳はだな。
街行く男共の羨望の眼差し浴びながら、普通では、中々味わえない『優越感に浸っている』だけのこった。
ゲスゲスゲスゲス……ある意味、ステラ最高!!
(↑結局、それが言いたかっただけの俺)
「ところで真琴」
そうやって、ステラの威を借りて優越感に浸っていると。
ステラが背後から、黙って座ってれば良いのに、なにやら話し掛けて来た。
優越感に浸り過ぎて、かなり呆けていたので少し驚いた。
「おっ?なっ、なんだよ?」
「別に大した事ではないのですが。1つ聞いても良いですか?」
「なんだよ?」
「奈緒は、何故、このタレントとして大事な時期に、わざわざ、真琴の学校なんかに行く事を選択したのでしょうか?此処で奈緒は、一体、なにをしようとしてるんですか?」
「あぁ、それな。それ自体は、そんな神妙な話じゃねぇんだよ。奈緒さんなら、いつも通り、俺をからかう為に悪乗りをしてるだけだ」
「そうですか。それは具体的に、どの様な事をしているのですか?」
「いや、聞いてくれよ。それがよぉステラ。この文化祭が、此処まで大々的に成ったのは、殆ど、あの人のせいなんだよ」
「なるほど、そう言う事ですか。それは簡潔で、非常に解り易い説明ですね」
「だろ」
ステラの最大の特徴は『ふてぶてしさ』や『口の悪さ』等と思われがちだが……実は、この『一定の言葉に対しての理解力の高さ』こそが、最大の魅力なんだよな。
大体の説明なら、1言えば8~9を理解してくれるから非常に説明が楽。
故に、コイツには、多くの言葉を語る必要性が無く。
聞いた言葉を、コイツ自身の思考の中で明確に分析して、自らが最も理解し易い解答に導いて行くって機能が装備されている。
こう言う、非常に便利な技能を持ってるんだよな。
まぁ、その分、自分が納得出来ない事に対しては、絶対に折れる事は無いけどな。
そこは、逆に面倒な所なんだがな。
「1つの疑問が解消されたので、もう1点質問です」
「うん?なんだよ?まだなんかあんのか?」
「えぇ。これは奈緒にではなく。真琴に対する質問です」
「俺に質問?なんだよ?」
「真琴は、奈緒の作った遊び場の中で、なにをしているのですか?」
「俺か?そりゃあオマエ。俺の出来る事と言えば、楽器の演奏か、アコギな金儲けぐらいしかねぇだろ」
「『演奏』ですか。……では、なにかしろ、このイベントの中で、真琴が演奏すると言う解釈で良いですか?」
「まぁ、そんなもんだな。……つぅってもな。今回は、ツレに頼まれてHELPで演奏するだけだから、大した事はしねぇし。本格的なライブをやる訳でもねぇけどな」
「そうですか。……久しぶりに、真琴と一緒に演奏出来るものだと思いましたから、少し残念ですね」
あら?ステラって、俺の演奏を、そんなに気に入ってくれてたのか?
以前コイツと演奏してた時は、そんな素振りは一切見せ無かったんだがな。
いつも飄々と演奏してたイメージしか無かったから、そんな風に思ってくれてたなんて、全然知らんかったぞ。
けどよぉ。
なんか、そう言われるとだな。
コイツと、久しぶりに演奏してみたくなって来たな。
だったら……なんか良い方法ねぇかな?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
なにやら、ステラさんが助っ人としてバンドに加わる理由が、少々見えてきた感じですね。
倉津君自身も、それを望んでいる様ですし(笑)
っとなると、どうやって助っ人の申し出をするのか?が問題。
倉津君は上手く説得出来るのでしょうか?
それは次回の講釈。
なので、また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
読み終わったら、ポイントを付けましょう!