最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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363 異形の鬼

公開日時: 2022年2月4日(金) 00:21
更新日時: 2023年9月9日(土) 00:22
文字数:2,852

●前回のおさらい●


 『オチ要員』にされそうな事に感づいた倉津君。

それを回避する為に思考を巡らせてたら『ある人物からの電話で回避』が出来た!!


だが、その救済してくれた電話に相手が真上さんだと思っていたら、性欲魔人のゼンちゃんからでド凹み。


そして『電話をするな』っと何度言っても。

しつこく電話をしてくるゼンちゃんに腹を立てて電話に出たら……今度の相手は別人だった(笑)


まさに鬼の様な展開(笑)

「へっ、真上さん?いやいやいや、そうじゃなくって……」


あぁ~あっ、だと思ったんだよなぁ(泣)……


電話に出る瞬間、一瞬、ナンバーディスプレイに『真上さん』の『真』って文字が見えた様な気がしたんだよな。

だから、ひょっとしたら、真上さんじゃないかとは思ったんだぞ。


けどよぉ、普通、このタイミングで真上さんから電話が掛かって来ないって……有り得ないって……思っちまったんだよな。


あぁ~あっ、あの馬鹿糞蟲のお陰で、罪も無い真上さんを怒っちまったよ。

アイツ、色んな意味で『鬼畜生』だな……マジで地獄に帰ってくんねぇかな。



「あっ、あの、おっ、お忙しい様でしたら、校門でお待ちしてますので、用事が終わられましたら御連絡して下さい……はい」

「いや、だから……」

「でっ、では、これで一旦、失礼致しますね」

「ちょ……」


『プツッ!!』


にゃああぁあぁあぁぁぁあぁ~~~!!


やっちまった!!

結局、また、やっちまったよ!!

俺、なんで、あんな良い人に向かって怒鳴ってんだよ!!


とっ、兎に角だ、こんな所で、意味もない反省をしていても埒が明かねぇ。

この状況下でなら、まずは急いで校門まで行かねぇとな。

そこで、なにを置いても謝罪だ謝罪!!


俺は、ほぼ生まれて初めて、人の為にダッシュした。


***


 ゼンの糞ツマラナイ電話のせいで、またまた慌てて移動する事になった。


そんな、どうしようもない馬鹿に、なにか文句の一つも言ってやりたいところだが、今は、そんなアホ電話に拘ってる暇はない。

一秒でも早く、真上さんに謝罪しなきゃならねぇからな。

製品の配達までして貰ったのにも関わらず、相手の気分を害させるなんて、人として持っての他な行為だ。


それに、あの人は元来からして性格が大人しい。

俺に謂れのない怒りをぶつけられて、変に凹んじまってたら、それこそ申し訳が立たないからな。


故にダッシュだダッシュ!!


命尽きるまでダッシュだ!!


***


 一気に廊下を走りぬけ、出入り口まで到着する。


すると……真上さんは気分を害するどころか、校門の前に停めてある車から、段ボールを持って、コチラに運んでいた。

しかも驚いた事に、校庭で行なわれてるクラブ活動の邪魔にならない様に『グラウンドの大外を廻って』だ。


オイオイ……この人、どこまでストイックな人なんだよ。

いや、ストイックと言うより、この人の場合、どこまで、人に親切に出来てるんだろうか?


俺は、そんな彼女の姿が健気に思え、そこまで全力で走って行く。



「真上さ~~ん!!」

「あっ、倉津さん」


俺を見つけると、彼女は重い段ボールを持ったまま、少しヨタヨタとしながら懸命に走って来る。


見てられないぐらい重そうだ。



「なっ、なにしてるんッスか?」

「えっ?時間が有りましたので、出入り口まで、お運びして置こうかと思いまして……はい」


マジか、この人……



「ちょ!!そんなの待っててくれれば、俺が全部運びますのに。重かったでしょ」

「いえいえ、こんなのヘッチャラですよ」

「けど、そんなに重たい物、一人で運べないしょ」

「全然大丈夫ですよ。荷物運びは、いつもやってますので慣れていますから」


そう言って真上さんは、汗をかいた顔で『ニコッ』っと微笑んだ。


これが『働く者の表情』って奴か。

なんとも言えない『美しさ』があるな。


そうやって俺が真上さんに見蕩れていると、彼女は再び荷物を運びだす。



「あぁじゃあ、真上さん、それ、俺が運びます」

「そう……ですか。では、お言葉に甘えて、私は、次の箱を持ってまいりますね」

「いや、そうじゃなくて、俺が全部運びますって」

「いいえ。流石に、そこまでして頂く訳には行きません。納品して、お客様にチェックして頂いて、満足して頂くまでが、私の仕事ですからね。ですから倉津さんは、それだけを出入り口に持って行って頂ければ、結構ですよ」


再び彼女は、俺に微笑みかける。


いやいやいやいや、こちらが無理を言って手伝って貰ってるのに、そこまで至れり尽くせりして頂かなくても良いですよ。



「いやいやいやいや、俺が運びますから、真上さんは休んでて下さい」

「そうですか。……では、一緒に運んで下さい。倉津さん一人に、全部押し付ける訳には行きませんから」

「けど……」

「それでは、ご一緒に運ばせて頂いても良いですか?私、自分の作ったものは、出来るだけ自分で運びたいので、お願いします」


『ペコッ』っと頭を下げてまで、彼女は、自分の仕事を全うしようとする。


そして、顔を上げた瞬間、また微笑む。


言い回しや、表情の使い方が上手いな。

とても、一介の中学生が言う様なセリフじゃないし、出来る表情でもない。

それに自分の信念を絶対に曲げないから、俺自身、彼女の意見を拒否する事が出来無い。


この感覚……まるで、奈緒さんと話してるみたいな感覚に陥る。


『彼女の掌で踊らされてる気分だ』


この人、本当に、俺と同い年なのか?



「わっ、わかりました。じゃあ、俺も一生懸命運びますね」

「お心遣い、ありがとうございます。では、申し訳ありませんけど、宜しくお願い致します」

「あっ、あっ、はい。頑張ります」

「くすっ」


最後に、もう1度微笑んだ。


この後、車からエントランスまで、全ての段ボールを運び。

そこから2年B組みまで、全ての荷物を運び込む。

その間、真上さんは一度の文句も言わず、また表情を崩す事もなかった。


彼女は、横を歩く俺を常に労い、ただ微笑み続けていた。


この事からわかる様に、彼女は、崇秀バリの仕事の『鬼』だ。


色々な『鬼』を見て来たが……矢張り、彼女は『異形の存在』の様に思える。


だが……それに反して俺は、そんな『鬼』の彼女に『魅入られ』始めていた。



これから起ころうとしている、不安も一切感じず……



★ほんの少し追加のお話★


 いや、先に言って置くが、全然大した話じゃないんだけどな。

今回、真上さんが作ってくれた上に、持ってきてくれた『メイド服』についての話なんだがな。


あの後な、教室に運び込んだ『メイド服』を、音楽室に居る奈緒さん・馬鹿中・エロ原・モテ口に見せたら、スゲェ好評だったって話なんだよ。


もぉ、馬鹿男共のハシャギ様ったらなかったな。


山中は……

『うわっ、女子がこれ着とるの想像しただけで勃起もんやわ。堪らんなぁ。俺、仕事休も』

……とか、アホ丸だしの馬鹿な事を言ってるし。


梶原は……

『凄いなぁ。これ、女子が着た後。写真付きでオークションに出したら、幾らぐらいに、なるんだろうな』

……とか、下衆い事を平然と言ってたし。


山口は山口で……

『凄く可愛い服だな。それに縫製も丁寧だ。是非、妹にも着せてやりたいものだな』

……っと、一見マトモな事を言ってる様だが、よくよく聞くと、自分のシスコンっぷりを露にしていた。


まぁまぁ兎に角だな。

そんな風に、男性陣全員からの好評を得た訳なんだよな。


けどな、そんな中、奈緒さんだけが小声でなんか妙な事を言ってたんだよな。


あれ……なんだったんだろうな?


確か……



「ふふっ、こりゃあ、相当に手強いね」


……って言ったんだけど、意味がわかねぇのな。


ホント、なんだったんだろ?


……謎だ。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第六話『様々な鬼』はお仕舞なのですが……


世の中には、色んな鬼が蔓延ってるものですね。


ドラムの演奏の仕方を、スパルタで教える鬼も居れば。

相手の心理を見極めながら、ボーカルの基本を理論的に教える鬼も居る。


そして、全然違った意味で、自分勝手な傍迷惑なだけ鬼糞野郎も居れば。

その真逆に、自分に厳しくしつつも、人一倍、他人の事を考えられる『仕事の鬼』も居る。


まぁ、その中でも真上さんは、かなりの異色キャラなのですが。

そんな彼女に、少しづつ惹かれて行っている倉津君……大丈夫なんですかね?


その辺は次回の『第七話・魔性の女とか言うな!!』について語って行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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