●前回のおさらい●
『オチ要員』にされそうな事に感づいた倉津君。
それを回避する為に思考を巡らせてたら『ある人物からの電話で回避』が出来た!!
だが、その救済してくれた電話に相手が真上さんだと思っていたら、性欲魔人のゼンちゃんからでド凹み。
そして『電話をするな』っと何度言っても。
しつこく電話をしてくるゼンちゃんに腹を立てて電話に出たら……今度の相手は別人だった(笑)
まさに鬼の様な展開(笑)
「へっ、真上さん?いやいやいや、そうじゃなくって……」
あぁ~あっ、だと思ったんだよなぁ(泣)……
電話に出る瞬間、一瞬、ナンバーディスプレイに『真上さん』の『真』って文字が見えた様な気がしたんだよな。
だから、ひょっとしたら、真上さんじゃないかとは思ったんだぞ。
けどよぉ、普通、このタイミングで真上さんから電話が掛かって来ないって……有り得ないって……思っちまったんだよな。
あぁ~あっ、あの馬鹿糞蟲のお陰で、罪も無い真上さんを怒っちまったよ。
アイツ、色んな意味で『鬼畜生』だな……マジで地獄に帰ってくんねぇかな。
「あっ、あの、おっ、お忙しい様でしたら、校門でお待ちしてますので、用事が終わられましたら御連絡して下さい……はい」
「いや、だから……」
「でっ、では、これで一旦、失礼致しますね」
「ちょ……」
『プツッ!!』
にゃああぁあぁあぁぁぁあぁ~~~!!
やっちまった!!
結局、また、やっちまったよ!!
俺、なんで、あんな良い人に向かって怒鳴ってんだよ!!
とっ、兎に角だ、こんな所で、意味もない反省をしていても埒が明かねぇ。
この状況下でなら、まずは急いで校門まで行かねぇとな。
そこで、なにを置いても謝罪だ謝罪!!
俺は、ほぼ生まれて初めて、人の為にダッシュした。
***
ゼンの糞ツマラナイ電話のせいで、またまた慌てて移動する事になった。
そんな、どうしようもない馬鹿に、なにか文句の一つも言ってやりたいところだが、今は、そんなアホ電話に拘ってる暇はない。
一秒でも早く、真上さんに謝罪しなきゃならねぇからな。
製品の配達までして貰ったのにも関わらず、相手の気分を害させるなんて、人として持っての他な行為だ。
それに、あの人は元来からして性格が大人しい。
俺に謂れのない怒りをぶつけられて、変に凹んじまってたら、それこそ申し訳が立たないからな。
故にダッシュだダッシュ!!
命尽きるまでダッシュだ!!
***
一気に廊下を走りぬけ、出入り口まで到着する。
すると……真上さんは気分を害するどころか、校門の前に停めてある車から、段ボールを持って、コチラに運んでいた。
しかも驚いた事に、校庭で行なわれてるクラブ活動の邪魔にならない様に『グラウンドの大外を廻って』だ。
オイオイ……この人、どこまでストイックな人なんだよ。
いや、ストイックと言うより、この人の場合、どこまで、人に親切に出来てるんだろうか?
俺は、そんな彼女の姿が健気に思え、そこまで全力で走って行く。
「真上さ~~ん!!」
「あっ、倉津さん」
俺を見つけると、彼女は重い段ボールを持ったまま、少しヨタヨタとしながら懸命に走って来る。
見てられないぐらい重そうだ。
「なっ、なにしてるんッスか?」
「えっ?時間が有りましたので、出入り口まで、お運びして置こうかと思いまして……はい」
マジか、この人……
「ちょ!!そんなの待っててくれれば、俺が全部運びますのに。重かったでしょ」
「いえいえ、こんなのヘッチャラですよ」
「けど、そんなに重たい物、一人で運べないしょ」
「全然大丈夫ですよ。荷物運びは、いつもやってますので慣れていますから」
そう言って真上さんは、汗をかいた顔で『ニコッ』っと微笑んだ。
これが『働く者の表情』って奴か。
なんとも言えない『美しさ』があるな。
そうやって俺が真上さんに見蕩れていると、彼女は再び荷物を運びだす。
「あぁじゃあ、真上さん、それ、俺が運びます」
「そう……ですか。では、お言葉に甘えて、私は、次の箱を持ってまいりますね」
「いや、そうじゃなくて、俺が全部運びますって」
「いいえ。流石に、そこまでして頂く訳には行きません。納品して、お客様にチェックして頂いて、満足して頂くまでが、私の仕事ですからね。ですから倉津さんは、それだけを出入り口に持って行って頂ければ、結構ですよ」
再び彼女は、俺に微笑みかける。
いやいやいやいや、こちらが無理を言って手伝って貰ってるのに、そこまで至れり尽くせりして頂かなくても良いですよ。
「いやいやいやいや、俺が運びますから、真上さんは休んでて下さい」
「そうですか。……では、一緒に運んで下さい。倉津さん一人に、全部押し付ける訳には行きませんから」
「けど……」
「それでは、ご一緒に運ばせて頂いても良いですか?私、自分の作ったものは、出来るだけ自分で運びたいので、お願いします」
『ペコッ』っと頭を下げてまで、彼女は、自分の仕事を全うしようとする。
そして、顔を上げた瞬間、また微笑む。
言い回しや、表情の使い方が上手いな。
とても、一介の中学生が言う様なセリフじゃないし、出来る表情でもない。
それに自分の信念を絶対に曲げないから、俺自身、彼女の意見を拒否する事が出来無い。
この感覚……まるで、奈緒さんと話してるみたいな感覚に陥る。
『彼女の掌で踊らされてる気分だ』
この人、本当に、俺と同い年なのか?
「わっ、わかりました。じゃあ、俺も一生懸命運びますね」
「お心遣い、ありがとうございます。では、申し訳ありませんけど、宜しくお願い致します」
「あっ、あっ、はい。頑張ります」
「くすっ」
最後に、もう1度微笑んだ。
この後、車からエントランスまで、全ての段ボールを運び。
そこから2年B組みまで、全ての荷物を運び込む。
その間、真上さんは一度の文句も言わず、また表情を崩す事もなかった。
彼女は、横を歩く俺を常に労い、ただ微笑み続けていた。
この事からわかる様に、彼女は、崇秀バリの仕事の『鬼』だ。
色々な『鬼』を見て来たが……矢張り、彼女は『異形の存在』の様に思える。
だが……それに反して俺は、そんな『鬼』の彼女に『魅入られ』始めていた。
これから起ころうとしている、不安も一切感じず……
★ほんの少し追加のお話★
いや、先に言って置くが、全然大した話じゃないんだけどな。
今回、真上さんが作ってくれた上に、持ってきてくれた『メイド服』についての話なんだがな。
あの後な、教室に運び込んだ『メイド服』を、音楽室に居る奈緒さん・馬鹿中・エロ原・モテ口に見せたら、スゲェ好評だったって話なんだよ。
もぉ、馬鹿男共のハシャギ様ったらなかったな。
山中は……
『うわっ、女子がこれ着とるの想像しただけで勃起もんやわ。堪らんなぁ。俺、仕事休も』
……とか、アホ丸だしの馬鹿な事を言ってるし。
梶原は……
『凄いなぁ。これ、女子が着た後。写真付きでオークションに出したら、幾らぐらいに、なるんだろうな』
……とか、下衆い事を平然と言ってたし。
山口は山口で……
『凄く可愛い服だな。それに縫製も丁寧だ。是非、妹にも着せてやりたいものだな』
……っと、一見マトモな事を言ってる様だが、よくよく聞くと、自分のシスコンっぷりを露にしていた。
まぁまぁ兎に角だな。
そんな風に、男性陣全員からの好評を得た訳なんだよな。
けどな、そんな中、奈緒さんだけが小声でなんか妙な事を言ってたんだよな。
あれ……なんだったんだろうな?
確か……
「ふふっ、こりゃあ、相当に手強いね」
……って言ったんだけど、意味がわかねぇのな。
ホント、なんだったんだろ?
……謎だ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
これにて第六話『様々な鬼』はお仕舞なのですが……
世の中には、色んな鬼が蔓延ってるものですね。
ドラムの演奏の仕方を、スパルタで教える鬼も居れば。
相手の心理を見極めながら、ボーカルの基本を理論的に教える鬼も居る。
そして、全然違った意味で、自分勝手な傍迷惑なだけ鬼糞野郎も居れば。
その真逆に、自分に厳しくしつつも、人一倍、他人の事を考えられる『仕事の鬼』も居る。
まぁ、その中でも真上さんは、かなりの異色キャラなのですが。
そんな彼女に、少しづつ惹かれて行っている倉津君……大丈夫なんですかね?
その辺は次回の『第七話・魔性の女とか言うな!!』について語って行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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